エイリアン:ロムルス

登録日:2024/09/12 Thu 00:30:34
更新日:2025/04/08 Tue 19:26:27
所要時間:約 14 分で読めます




※本記事には(折り畳んでいますが)ストーリーのネタバレが含まれます。閲覧の際はご注意ください。






逃げ切れるか?

生存率0%の絶望から……



A L I E N
R O M U L U S



「エイリアン:ロムルス(原題・Alien: Romulus)」とは、2024年に公開されたSFホラー映画である。



【概要】

SFホラー映画『エイリアン』シリーズのスピンオフ作品。8月16日に全米公開、日本では約3週間後の9月6日に劇場公開された。
本シリーズが新たに制作されたのは、2017年に公開された「エイリアン:コヴェナント」以来。約7年ぶりとなり、ディズニーが20世紀フォックスを買収して以来初のエイリアン作品である。

監督・脚本はリメイク版「死霊のはらわた」「ドント・ブリーズ」で知られるフェデ・アルバレス
製作は「エイリアン」の監督として知られるリドリー・スコットが務めた。
時系列は初代エイリアンから20年後。1と2の間の物語となる。

特に、「生活苦にあえぐ若者たち」「一念発起し危険な綱渡りを歩く」「立ち寄った廃墟は実は恐怖の地だった……」など、アルバレス監督の代表作「ドント・ブリーズ」との共通点が見られる。

第97回アカデミー賞にて視覚効果賞にノミネートされた。

【ストーリー】


太陽の光の届かない鉱山の星、ジャクソン星。
2142年。二十歳の女性レインとアンドロイドのアンディは、ウェイランド社との勤務契約を満了し惑星ユヴァーガへの移住を考えていた。
しかしウェイランド社は人手不足を理由に契約の期間を倍に、移住が5~6年先延ばしになってしまう。
さらに劣悪な環境の鉱山で働くよう命じられてしまい、鉱山の環境が原因で両親を亡くしていた彼女は深く絶望する。

そんな中、元彼のタイラーからある計画を持ち掛けられる。
それは放棄されたウェイランド社の宇宙船から休眠ポッドを戴き、それを使って自分たちの力で惑星ユヴァーガへ向かうというもの。
宇宙船に入るためには、同じくウェイランド社製のアンドロイドであるアンディの力が必要だという。

そして一行はタイラーの妹ケイ、いとこのビヨン、ビヨンと義理の姉弟ナヴァロを合わせた6人で出発。
一行は宇宙船……いや、ロムルスとレムス、2つの区画で構成されたルネッサンス宇宙ステーションへと向かう。

鉱山からの脱出という"希望"を胸にステーションに乗り込む一行。
しかしそれは、とある"絶望"の始まりだった…

【登場人物】


●レイン・キャラダイン
演:ケイリー・スピーニー /声:戸松遥
主人公、20歳の女性。3周期前に両親を亡くし、アンドロイドのアンディと共に不自由な生活を送っている。
ウェイランド社では農業担当だったらしい。
父が生前に遺したアンディのことを、自分の弟のように思っている。ただ彼にある隠し事をしているようで……?
真面目な性格でアンドロイドだろうと家族のように扱う。
エイリアンシリーズでシガニー・ウィーバーが4作の主演を務めたリプリーを彷彿とさせるシーンが多く、真っ向から困難に立ち向かっていく。

●アンディ
演:デヴィッド・ジョンソン /声:内田雄馬
ウェイランド社製のアンドロイド、見た目は黒人男性。
かつて植民地惑星開拓に使われたモデルで、レインの父が生前にガラクタから運び出した。
子供っぽい言動が目立ち、旧式ゆえか性能はポンコツ。「レインのために行動する」ことを第一目標にプログラムされている。
ダジャレを言うのが癖。

●タイラー・ハリソン
演:アーチー・ルノー /声:石川界人
レインの元彼で、ビヨンのいとこ。一行のリーダー的立ち位置。
彼女への思いを吹っ切れないでいる。

●ケイ・ハリソン
演:イザベラ・メルセード /声:内田真礼
タイラーの妹。
妊娠しているが、心配をかけたくないとタイラーには伝えていない。

●ビヨン
演:スパイク・ファーン /声:畠中祐
ジャクソン星で働く青年で、ひょうきん者。
母がアンドロイドに見捨てられて亡くなってからというもの、アンドロイドを嫌っている。

●ナヴァロ
演:アイリーン・ウー /声:ファイルーズあい
ジャクソン星で働く坊主の女性。オタクっぽいところがありメカに強い。
血はつながっていないが、幼少期から共にいるビヨンを弟のように思っている。

見てわかる通り登場人物6人は、レインとアンディ、タイラーとケイ、ナヴァロとビヨン、それぞれが姉弟(兄妹)の関係である。



◎ゼノモーフ(エイリアン
本作で主に登場する地球外生命体。
黒光りする体表、細長い頭部、鋭く長い尻尾、酸性の血液などの特徴を持つ。
また宇宙空間や食事無しでも生きていけるほどの生命力を有している。
詳細は紐づけ先のリンクを参照。

◎フェイスハガー
カニのような胴体と、蛇のような尻尾を持つ生物。母体となる生物を見つけると、とびかかって顔に貼りつき、食道を通してゼノモーフの幼体を植え付ける。
本作の予告編では尋常でない数のフェイスハガーが登場し、視聴者の度肝を抜いた。


【用語】


●ウェイランド・ユタニ社(Weyland-Yutani Corporation)
"Building better worlds(より良い世界を築く)"を掲げる企業。「エイリアン」シリーズではおなじみのブラック企業。
今作では人手が足りないからという理由でレインとの労働契約の期間をその場で倍に(12000時間を24000時間に)するなど、ブラック度に拍車がかかっている。
エイリアンシリーズの設定によれば、この時代には地球の地下資源が掘り尽くされており、都市は荒廃してヒャッハーな感じになっているらしい。

●ジャクソン星(Jackson's Star)
2781人の住民が暮らしている惑星で、ウェイランド・ユタニ社が保有する鉱山・コロニーでもある。レインたちはここで働いている。
暗い雲とスモッグのため太陽の光は届かず、惑星は常に薄暗い。
鉱山の環境は劣悪で、レインたちがジャクソン星を出発した月には12人が亡くなっていた。レインの両親は、鉱山の環境によりライム病を発症して亡くなっている。
ちなみに有毒ガスを警戒してなのか、カナリアが持ち込まれている描写がある。遠い未来でも彼らの運命は過酷なようだ。
星そのものが監獄のような仕組みであり、一部の作業員は宇宙空間への飛行が許可されているが、人が生きていけるような惑星まで逃亡するためには食料も水も足りないため、冷凍睡眠装置が必須となっている。

●惑星ユヴァーガ(Yvaga III)
レインたちが目指す惑星。ウェイランド社が提携していない数少ない惑星の1つで、ジャクソン星から行くと9年かかる。
どうやら素晴らしい夕日が見られるようで、レインも夢に見ている。

●コルベラン号(Corbelan IV)
宇宙貨物船。レインたちを乗せてルネッサンス宇宙ステーションへ向かう。

●ルネッサンス宇宙ステーション(Renaissance)
本作の主な舞台で、ウェイランド社が保有していた研究施設。ロムルスとレムスと呼ばれる2つの区間で構成されている。
170日前のとある事件がきっかけで放棄されていた。ナヴァロがこの施設に冷凍休眠ポッドを発見したことで、レインたちはステーションへ向かう。
彼女らが到着した時には、36時間後に環状惑星LV-410へ衝突するとされていたのだが…?

●X線投射装置
宇宙ステーションの内部にあった30cmほどの機械。文字通りX線を照射し、医療設備がなくても人体の内部を透視することができる。
これがエイリアンの映画に出てくるなんて、いったい何に使うんでしょうかねえ……?

【トリビア】

  • ストーリーは監督が本作のオファーの際に思い浮かべた、エイリアン2で没シーンとなった入植者の場面から着想を得ている。

  • 本作の制作にあたり監督が掲げたのは"原点回帰"。純粋なホラー映画を制作すること、そして昔ながらの特殊効果に力を入れている。
    例を挙げると、エイリアンがいる場面の撮影はほとんどがCGではなく、アニマトロニクスやパペットが用いられている。
    また作中ではグリーンバックをほとんど使用しておらず、実際に製作されたセットを用いている。
    なんと制作陣には「エイリアン2」で宇宙船の模型制作を担当したスタッフもいるというこだわりぶりである。

  • 製作体制のみならずシナリオも「宇宙進出が進んだ時代、閉鎖空間でエイリアンに襲われまくる」原点回帰のモンスターパニック映画に徹している。

  • 予告編では「In Space No One Can Hear You(宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない)」という初代エイリアンとほぼ同じチャッチコピーが用いられている。

  • 本作は随所に「エイリアン」シリーズのオマージュともとれるシーンやセリフが存在する。
    予告編で確認できるシーンを抜粋すると、1で成体となったゼノモーフが初登場シーンで頭を上げる場面や、3でリプリーの眼前までエイリアンが迫る場面などが挙げられるだろう。

  • ゲーム「エイリアン:アイソレーション」の要素も確認できる。
    作中ではゲーム内でセーブポイントの役割を果たしている受話器などが見られる。
    監督のXでは参考資料に「エイリアン:アイソレーション」のアートブックが挙げられている*1
    余談だが映画の影響によるものだろうか、映画の日本公開数日前にSteamにて、本作の日本からの購入規制が解除されている。

  • 比較的最近の『エイリアンVSプレデター』シリーズ、『プロメテウス』『エイリアン:コヴェナント』が「新しいエイリアンを作ろう」と制作陣が意気込むも空回り気味だったのに対して、「原点回帰」の看板通りの正統派のエイリアン映画といえるだろう。
    シンプルなシナリオながら過去作を思わせるシーンや要素がこれでもかと詰め込まれ、古くからのファンはニヤリとできるかもしれない。
    総じて監督の作品愛を感じる出来栄えであり、難解な設定もないのでエイリアンを見たことがない初見さんにもオススメ。
    観客やシリーズファンからの評価はおおむね高く、SNSや感想サイトには「こういうのでいいんだよ、こういうので」という書き込みが並んでいる。



『DANGER』
..SPOILER ALERT..




追記・修正は惑星ユヴァーガまで9年間眠って、二日酔いみたいになった状態でお願いします。

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最終更新:2025年04月08日 19:26

*1 https://x.com/fedalvar/status/1713325963634004205 監督はXでゴリゴリに本編のネタバレをしているので、閲覧の際は注意

*2 岩崎氏は『エイリアン』ディレクターズ・カット版で日本語吹き替えを担当。

*3 酸で溶けているのに胸が爆発したような演出がされているが、これは酸性の血液が心臓に達して破裂したためである。

*4 https://www.instagram.com/sanvecino/?igsh=bDhtOHk3MWZ3c3A3