登録日:2025/05/26 (月曜日) 09:49:00
更新日:2025/05/30 Fri 06:58:39
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皆さま、間もなく1号線に宝塚方面へ向かう電車が到着します。
阪急宝塚本線は、大阪梅田駅から宝塚駅までを結ぶ阪急電鉄の鉄道路線である。
路線のラインカラーはオレンジで、宝塚線系統(宝塚本線・箕面線)全体のカラーとなっている。
路線記号はHK。会社名のHanKyuから取ったもので、阪急電鉄全路線で使用されている。
▽目次
概要
阪急電鉄の主要三路線のひとつで、阪急創業の路線のひとつでもある。
正式な名称は「宝塚本線」だが、「宝塚線」という名称も頻繁に使われる。
大阪の繁華街である梅田と
宝塚歌劇団の本拠地である宝塚を結んでおり、両都市間輸送の他、豊中市、池田市、川西市の通勤需要も担っている。
また、川西能勢口駅で接続する能勢電鉄との直通運転も行っている。
大阪梅田~十三間は三複線となっており、神戸本線との二重戸籍となっている。
なお、神戸本線・
京都本線と比べると線形が良くないせいもあってか、最高速度が100km/hと低めになっている。
京都線と異なり19m級・幅2750mm車が入線可能となっているため、同条件となる神戸本線と同じ形式が入線する。
この理由から定期の直通列車がないにもかかわらず、宝塚本線・神戸本線をまとめた「神宝線(系統)」という言い回しが使われることもある。
他社線との競合
全区間に渡り福知山線(
JR宝塚線)が並行しており、国鉄時代はあまりにアレすぎて阪急の圧勝だった。
JR化後、列車増発や
JR東西線・
JR京都線への直通運転開始など積極的なテコ入れを実施。大阪~宝塚間ではJRの普通列車の方が阪急の優等列車よりも所要時間が短くなった。
一方、大阪梅田~川西能勢口間は当路線が大阪府側の豊中市、池田市を経由するのに対し、JRは兵庫県側の尼崎市、伊丹市を経由するため一定の棲み分けがされている。この区間だけであれば所要時間の差も1~2分程度と少ない。
それに加え大阪梅田⇔宝塚のピンポイント移動であれば、阪急線内でも神戸本線特急~西宮北口乗り換え~今津線経由の方が所要時間が短くなることがある。
歴史
前述の通り阪急創業の路線のひとつで、阪急の前身である箕面有馬電気軌道により支線の箕面線と共に1910年に開業した。
元々は会社名の通り有馬温泉まで開業する計画であったが、宝塚の開発に注力するため断念した。割と近年まで「三田・有馬方面」と書かれた案内掲示があったのもこれの名残である。
実際、開業させようにも50‰の急勾配、最少半径40mの急カーブが想定されたため建設費高騰が確実視されていたので、実現は難しかっただろう。
開業当初は途中区間が農村だったせいもあり、「ミミズ電車」などと皮肉られていた。
「クマでも乗せるのか?」と皮肉られた路線もあったな
しかし、当時専務だった小林一三の「郊外に住宅地を開発し、その居住者を電車で市内へ運ぶ」という私鉄経営の基礎をとなる鉄道建設と住宅開発の同時進行を進め、住宅ローンの基礎となる月賦販売を提案。
この方法は鉄道会社が沿線不動産、レジャー施設、小売業(百貨店等)を通じて鉄道需要を高めるモデルとなり、日本の鉄道経営に大きな影響を与えた。宝塚歌劇、今はなき宝塚ファミリーランドや阪急西宮球場(阪急ブレーブス)も元をただせばこの「電車を走らせるのなら、なにがしら「目的地」が必要」ということで阪急の鉄道以外の事業として開始されたのがもともとである。
実際前例のない子会社だったためか
- 歌劇団の黎明期はイチからお話を書ける脚本家が間に合わず、『桃太郎』や『不思議の国のアリス』を題だけ変更して
ドンモモタロウも登場!みたいなアレンジすら入れないまま内容はそのまま上演した
- 阪急百貨店梅田本店の店員に、昨日まで阪急電車の運転士だったため支払い計算がマトモにできないヤツがいた
- 福本豊の奥さんがブレーブスの存在をちゃんと理解しておらず、指摘されるまで夫は駅員になったと思っていた
などの逸話も残す。
まあ歌劇とブレーブスは社内でも経営・財政的にあんま評判は良くなかった時期も長いけど。
高級住宅街という概念が出てきたのも、こういった事業開発が大きく関わっている。
運行形態
日中は全区間通しの急行と大阪梅田~雲雀丘花屋敷間の普通が毎時6本ずつ運転されている。
朝ラッシュは大阪梅田行き特急「日生エクスプレス」、通勤特急、準急が運転される。
夕ラッシュは能勢電鉄直通の特急「日生エクスプレス」、全区間通しの通勤急行が運転される。
早朝・深夜帯を除けばほとんどの時間帯で毎時6本は確保されている。
かつては10両編成の列車もあったが、現在は全て8両で統一されている。
種別
○特急「日生エクスプレス」
能勢電鉄直通の列車で線内最上位の種別。
平日のみの運転で朝ラッシュの大阪梅田行き、夕ラッシュの日生中央行きが運転される。
川西能勢口ではスイッチバックを行って能勢電鉄に入る。
○通勤特急
平日の朝ラッシュのみの運転で、川西能勢口発大阪梅田行きが運転される。
○急行
終日運転される宝塚本線の主力。
日中は途中の追い越しも行わないため、他路線の主力種別と比べると所要時間は遅め。それがJRに負ける原因にもなっているわけだが
○通勤急行
平日の夕ラッシュのみの運転で、大阪梅田発宝塚行きが運転される。
○準急
平日朝ラッシュのみの運転で、宝塚発大阪梅田行きが運転される。
かつては雲雀丘花屋敷始発列車や箕面線直通列車もあったが、2018年7月の改正で全てなくなった。
○普通
各駅停車。
大阪梅田~雲雀丘花屋敷間の運転が基本で、全線通し列車は早朝・深夜帯のみ。また、少数ながら朝ラッシュ時には豊中・池田発着列車、夕ラッシュ時以降は川西能勢口発着列車がある。
2022年12月までは箕面線直通列車も運転されていた。
車両
基本的な設計は京都線系統とほぼ同じだが、冒頭にも記した通り神戸線と規格が統一されているためトレードも頻繁に行われている。
電装品は東芝製品を使用している(京都線系統は東洋電機製造)。
走行距離が短いこともあって、京都線のような特急専用車両や観光列車に分類できるような編成は存在しない。
2025年2月から導入された車両。
基本設計は京都本線用の2300系(2代目)がベースだが、座席は全てロングシートとなっている。
車内の乗務員室扉の位置が右寄りになったため、従来車にあった運転席後方の座席がなくなっている。
2013年から導入された車両。
環境性能の向上を目指した車両をコンセプトにした車両であり、車内照明や灯火類すべてにLEDが使用されている。
車内のカーテンは使用状態でも駅名標が見やすいように上下で編み方を変えているという他社ではまず見かけない凝った設計で、これ以降のリニューアル車および新車にも採用されている。
従来車よりも車体幅が若干大きくなっている。
阪神ジェットカーの5700系は、電装品および機器配置を本形式と共通化させた兄弟車である。
2006年に建造された車両。
京都本線用9300系の神宝線バージョンだが、座席は全てロングシートなので側窓が少し小さい。
阪急電車では本格的にLED方向幕を採用した形式で、その方向幕は他社のような明朝体やゴシックではなく、従来車と同じナールフォントをグラフィックで再現という阪急ならではのこだわりが感じられ、以降の新車にも引き継がれている。
車内には液晶モニターによる案内表示器が採用された。
阪急で初めてVVVFインバータ制御を採用した車両。
前面の標識灯が角型に変更され、窓も大きく拡大され顔つきが大きく変わった。
また、1993年以降の増備車では前頭部の形状が半流線形に変わっている。
塗装は従来と同じマルーン一色だが、この形式から屋根肩部にアイボリー塗装が採用されている。
一部の編成は中間に転換クロスシートを設置して落成したが、リニューアル後はロングシート化された。
アルナ工機で最後に建造された阪急車両である。
現在の阪急で製造数が最も多い形式の車両。
編成時期により車体が普通鋼とアルミ合金に分けられている。
リニューアルにより前面が9000系に準じた編成や、観光列車「京とれいん 雅楽」に改造された編成と多彩。
また、一部車両は能勢電鉄に譲渡されて7200系を名乗っている。
2200系の車体と5100系の機器類を組み合わせて製造された車両。
ほとんどの編成は普通鋼で製造されているが、1編成のみ阪急初のアルミ車体が採用された。
能勢電鉄6000系は阪急から譲渡された車両だが、運用は他の阪急車と共通で宝塚本線で運用されている。
これは阪急車が日生エクスプレスとして能勢電鉄に片乗り入れすることで発生する車両使用料金(乗り入れ先の能勢電鉄が阪急に支払う)を「能勢電所有の電車が同じ距離を阪急に乗り入れた」ことで相殺するため。
一部車両は改番の上、能勢電鉄7200系に編入されている。
車両冷房の試作車だった5200系に続き、本格的♂冷房車として製造された。
元々は6000系として製造される予定であったが、大阪市営地下鉄60系の6000番台と番号競合が問題視されたため、5000番台の空き番だった5100系が付けされた。
初期車は標識灯が左右の窓上部に設置されていて、行先・種別方向幕もなかったが、リニューアルにより6000系などと同じ顔つきになった。
また、一部車両は運転台を撤去して中間車に組み込まれている。
駅一覧
駅番号 |
駅名 |
普 通 |
準 急 |
通 勤 急 行 |
急 行 |
通 勤 特 急 |
特 急 |
HK-01 |
大阪梅田 |
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HK-02 |
中津 |
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↓ |
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↑ |
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HK-03 |
十三 |
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HK-41 |
三国 |
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↑ |
↓ |
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↑ |
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HK-42 |
庄内 |
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↑ |
↓ |
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↑ |
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HK-43 |
服部天神 |
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↑ |
↓ |
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↑ |
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HK-44 |
曽根 |
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HK-45 |
岡町 |
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↑ |
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HK-46 |
豊中 |
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HK-47 |
蛍池 |
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↑ |
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HK-48 |
石橋阪大前 |
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HK-49 |
池田 |
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HK-50 |
川西能勢口 |
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HK-51 |
雲雀丘花屋敷 |
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能 勢 電 鉄 直 通 |
HK-52 |
山本 |
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HK-53 |
中山観音 |
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HK-54 |
売布神社 |
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HK-55 |
清荒神 |
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HK-56 |
宝塚 |
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駅紹介
○HK-01
大阪梅田
起点駅。
10面9線という日本最大の頭単式ホームを持ち、宝塚本線は真ん中の4~6号線を使用する。
乗換路線及び詳細は該当項目参照。
2つ隣の十三駅まで神戸本線・
京都本線と共に三複線区間となる。
○HK-02 中津
三複線区間の中間駅で、神戸本線と宝塚本線のみホームがある。
ホームがかなり狭いので待つ場合は要注意。
Osaka Metro御堂筋線にも同名駅があるが、300mほど離れているため乗り換え案内はない。
某位置情報ゲームでも阪急の中津・御堂筋線の中津で別カウントになっており、阪急の車内からOsaka Metroの中津を拾うのはかなりタイミングがシビアなほどの距離。
○HK-03 十三
神戸本線・京都本線との分岐駅。
駅名は「じゅうそう」と難読駅である。
周辺は阪急沿線有数の繁華街・歓楽街となっている。
大阪駅からなにわ筋線に乗り入れ、更に
新大阪駅へ向かう新線「なにわ筋連絡線」の接続駅となる予定。
○HK-41 三国
駅の北側に神崎川が流れており、川を越えると豊中市に入る。
駅直結の複合商業施設や東側には商店街もある。
2005年にシンガーソングライターaikoのシングル「三国駅」が発売された際、駅構内に約100枚のパネルやポスターが貼られたが、そのほとんどが盗まれるという事件が発生している。
○HK-42 庄内
ここから豊中市。
駅前には豊南市場を中心とした商店街がある他、大阪音楽大学の最寄り駅でもある。
1956年に車両故障での対応不手際に加え、神戸線・京都線より冷遇されていることに不満を募らせた乗客が列車の運行を妨害した「庄内事件」が起きたのはここ。
○HK-43 服部天神
駅名にもなっている服部天神宮の最寄り駅。
境内にあった御神木の楠がホームの屋根を貫いており、神棚としめ縄も設けられている。
毎年8月24日には服部天神宮の祭に合わせて、構内で安全祈願祭が行われている。
○HK-44 曽根
2面4線のホームでラッシュ時には通過待ちが行われる他、宝塚寄りに引上線がある。
大正時代末から昭和初期にかけて住宅開発が進み、「西の芦屋、東の曽根」と呼ばれるほどの邸宅街になった。
開発に際し、小林一三の意向で当時中津にあった東光院(萩の寺)が移されている。
○HK-45 岡町
豊中市役所をはじめ豊中市の行政機関が多く集まる駅。
駅周辺に桜塚古墳群が点在しており、一部は国の史跡にも指定されている。
○HK-46 豊中
豊中市の代表駅で、特急「日生エクスプレス」以外の種別が停車。
大阪梅田寄りに留置線、宝塚寄りに引上線があり、当駅始発列車も数本ある。
駅周辺は金融機関や商店が集まる豊中市の商業中心地。
○HK-47 蛍池
大阪モノレール本線乗り換え。
大阪国際空港(伊丹空港)はモノレールで隣の大阪空港駅に直結しているため、空港アクセスの乗換駅となっている。
空港まで歩いて行けないこともないが、かなり遠回りとなるので素直にモノレールに乗ることをオススメする。
○HK-48 石橋阪大前
箕面線乗り換え。ここから川西能勢口駅までは全列車停車駅。
元々は石橋駅だったが、2019年に現駅名に改称した。
箕面線と合わせて3面5線の構造駅となっているが、宝塚本線と箕面線の分岐点に繋がる3・4号線は閉鎖されている。
この3・4号線を使用して梅田⇔箕面線の直通列車も運転されていたが、現在は回送列車が通るのみ。
○HK-49 池田
池田市の代表駅で、当駅までが大阪府。
阪急電鉄の登記上の本店所在地で、かつては車庫も併設されていた。
私鉄で初めて郊外住宅地を開発した地であり、小林一三に関わる記念館や文化施設もある。
○HK-50 川西能勢口
能勢電鉄妙見線乗り換え。
JR宝塚線川西池田駅とは550mほど離れており、ペデストリアンデッキで連絡している。
かつて両駅間は大きく離れており、妙見線も1981年まで川西池田(川西国鉄前駅)まで延びていた。
両駅に挟まれたエリアに商業施設が集中している。
特急「日生エクスプレス」は当駅から能勢電鉄に乗り入れるが、駅配線の関係でスイッチバックを行う。
○HK-51 雲雀丘花屋敷
宝塚線系統の車両基地である平井車庫の最寄り駅で、ほとんどの普通列車は当駅で大阪梅田方面に折り返す。
現駅名は元々あった雲雀丘駅と花屋敷駅を統合した際に付けられた。
行先方向幕は「雲」と「花」の文字を大きく記した独自のものが使用される。
○HK-52 山本(平井)
宝塚山手台住宅の玄関口で利用客が多く、特急や快速急行が運行されていた時代には停車駅になっていた。
旧山本駅と平井駅が統合されて現駅名となったが、住所的には平井寄りにあるため副駅名として「平井」が付けられている。
○HK-53 中山観音
安産祈願の中山寺最寄り駅で、開業当初は駅名も中山寺だった。
大規模新興住宅である中山台ニュータウンの入口駅にもなっている。
○HK-54 売布神社
読み方は「めふじんじゃ」と難読で、駅名の神社最寄り駅でもある。
駅周辺は住宅街だが、阪神・淡路大震災後に再開発が行われて複合商業施設が完成した。
○HK-55 清荒神
開業時から清荒神清澄寺の参拝に利用されており、駅から参詣道が整備されている。
宝塚市の文化施設ベガ・ホールや中央図書館も駅目の前にある。小説およびその映画『阪急電車』で言及される「宝塚市の図書館」はここのこと。
○HK-56 宝塚
今津線、JR宝塚線乗り換え。終点駅。
「宝塚大劇場・宝塚ホテル前」という副駅名が付けられている。
2面4線の頭端式ホームで宝塚本線は3・4号線を割り当てられており、日中は今津線の列車が3号線を使用するため対面乗り換えが可能となっている。
平日朝ラッシュ時は宝塚本線・今津線双方から準急大阪梅田行きが発車するため、放送ではそれぞれ「石橋阪大前経由」・「神戸線経由」と案内される。
阪急の牙城ともいえる宝塚の中心駅で、住宅街だけではなく副駅名にもある大劇場や宝塚温泉など行楽施設も多数ある。
そして何よりも
宝塚歌劇団の聖地である。
創業時の最終目的地であった有馬温泉への鉄道は繋がらなかったものの、バスでのアクセスは可能で東の玄関口として機能している。
余談
「
頭文字D」の同人パロディである「電車でD」は、原典の秋名峠に相当する路線として本線が使用されている。
カーブが多く直線が少ない点がおそらく似ていると判断されたらしく、三国駅の近くで
元ネタの5連ヘアピンに相当するらしきR300コーナーを曲がる旨のセリフが出てくるほど(現在は線形改良により存在しない)。
この理由と赤城峠が神戸本線になっていることから、原典における第1部相当部分の半分くらいは阪急区間でのバトルとなっており、原典ではいろは坂に遠征していたエンペラー戦は、本線および神戸本線でのバトルに変更されている。
主人公の乗る(初代)2000系は宝塚線最速という設定だが、実際に宝塚線で運用されていたのは派生車種の2100系だったりする。
追記・修正は沿線開発と宝塚歌劇団で公演を行い、最速の2000系を目撃してからお願いします。
最終更新:2025年05月30日 06:58