ピノコ

登録日:2022/03/02 Wed 21:32:00
更新日:2024/12/24 Tue 21:52:59
所要時間:約 6 分で読めゆわのよ





ピノコとは、漫画ブラック・ジャック』の登場人物である。

CV:水谷優子、日髙のり子(嚢腫時)

■概要

ブラック・ジャックと行動を共にする舌足らずな話し方と三頭身なのが特徴のょぅι゙ょ
自称「ちぇんちぇのおくたん(先生の奥さん)」(オクタンではない)。
戸籍上は0~1歳で外見も幼児だが、後述する理由により、実年齢は18~20歳である。
「18歳なのか20歳なのか、手塚治虫の描き方があいまいでわかんなくなっちゃう」とは本人の談
ブラック・ジャックが信頼を寄せる数少ない人物でもあり、公私共に彼をサポートしている。

■キャラクター

おかっぱ頭にリボンをつけた、愛らしい幼女
髪の色は基本茶色だが、原作だとたまに灰褐色になる。まあ昔の漫画にはよくある事だ
名前は「ピノキオ」から取ったとブラック・ジャックから語られている。
本人の中に18歳という実年齢の意識があるゆえか、「としごよのレレイ(年頃のレディ)」と言い張っている*1
しかし、ブラック・ジャックや周囲からは娘・あるいは子供扱いされてそれに不満をあらわにすることもしばしば。
ピノコ本人は成長することのない自分の体をコンプレックスに思っており、八頭身美人になるのが
そのため、彼女が姿見として使うは凹面鏡となっており、映る姿は背が高くなって見えるようになっている。

舌足らずな口調が特徴で、語尾に「〜よのさ」「〜わのよ」とよく言っている。
うまく言葉を話せないが、驚いたときなどには、両手を両頬に強く押しつけ「アッチョンブリケ」と叫ぶのが癖(元ネタは手塚氏が子供の頃に使ってた意味不明な言葉とのこと)。この他にも「シーウーノアラマンチュ」などと言った意味のない独特の言葉を話す事がある*2
ブラック・ジャックの家の家事を引き受けており、料理や掃除、洗濯などの複雑な作業も行うことができている。
とはいえ身長が低いので、背が低い故に踏み台を使用していることが多い。
最初はまだ人間という自身の存在に慣れていなかったこともあってか、家事のかの字も知らない悲惨な状態で凶暴な面もあったが、徐々に研鑽を積んでいった。
特に料理に関しては、最初期にはパンを6時間焼いてケシズミにし「いい子だから明日から朝飯は作らなくていい」と凄まじい作り笑いで言われたり、ブラック・ジャックに好物であるカレーを振舞った際にはあまりの不味さブラック・ジャックが「オマエったらいつんなったらマトモなカレーライスが作れるんだ?」とガチで泣くほどの状態だったが、魚をさばいたり、揚げ物を作ってみたりと各段に腕が上がっていっている。
ただピノコが出す料理はカレー率が高いらしく、原作最終エピソード*3ではカレー好きのブラック・ジャックをして「お祝い」*4として出されたカレーライスに「だがお前、無罪でも有罪でもいつでもカレーライスなんだなァ」と嘆いていた。
カレー好きなのに結局最後までピノコのカレーに悩まされるブラック・ジャック先生であった
あるエピソードでは購入した卵を全部割ってしまい、店の台所を借りて全部まとめて卵焼きにして持って帰ったりしている。
昼食にそれを出して食べるように言われたブラック・ジャックはその巨大卵焼きに*5うんざりした表情ながらも食べていた。

自分自身を手術中に致命的なミスを犯してしまったブラック・ジャックのピンチを救ったのをきっかけに、彼が自宅や往診先で手術を行う時はメスなどの受け渡しを行う助手も務めるようになる。*6
ピノコの機転により手術が成功した事もあり、その際はブラック・ジャックも誇らしげに「あれは最高の助手です」と語っている。
とはいえある程度以上の専門的な器具を扱うことはできず、人工心肺の接続を指示された際には「できない」と返答したことも(この時はピノコの助手としてある医師がついていたのでそちらにやってもらった)。
また薬学の知識はからっきしで、ブラック・ジャックがいない状態で自分が看護していたある患者に飲ませようと無茶苦茶な調合の薬を作った(結果、戻ってきたブラック・ジャックがジュースと間違えて飲んでしまいとんでもないことになった)り、睡眠薬を飲まされて手術中に眠ってしまったブラック・ジャックを起こすのに覚醒剤ではなくカラシを丸ごと一ビン食わせることで対応したりしている。
以上のように医療知識はほぼ皆無の素人だが、名目上だけながらも執刀医を任されたことがある。これは、ブラック・ジャックに手術を依頼してきた患者が特撮作品の怪獣担当スーツアクターであり高額な手術費用を捻出できない状況だったものの、たまたまピノコが作品のファンだったことから、「ピノコが執刀し、作品終了後に怪獣の着ぐるみを報酬として譲る」という形をとることで患者に気を利かせたためである。なお、手術はちゃんとブラック・ジャックが成功させた。

実際の知能や行動は見た目通りの幼児そのもので、一時的に幼稚園に入園したこともあったが、他の園児たちとうまくいかず、園で暴れまわったために入園を拒否された。
戸籍上は1歳だが、後に大学受験*7にも挑戦。
当然先方からは断られるが、ブラック・ジャックが大金を払い無理矢理受験した。
しかし試験中に極度の緊張で倒れ結局は不合格に。

TVアニメ版では平日夜19時放送ということもあるのかより子供らしい部分が表に出ている。

OVA版ではリアルさを重視した作風に合わせにくいキャラだったこともあり、監督や声優からも難しいキャラとして扱われていた。
しかし、途中から慣れてきたのか扱いが良くなっており、ドシリアス一直線のOVA版の清涼剤として活躍する。
原作と比べて頭身が上がっており表情もリアルなのだがマスコット感は健在、普段は舌っ足らずなしゃべり方をしているがモノローグ形式の時は普通の言葉使いになっている等の特徴がある。

■過去と体質

本来は双子の姉妹の片割れとして産まれるはずだったが
『奇形嚢腫』という非常に稀な腫瘍として双子の姉の腹部に手足や内臓、はたまた脳髄や毛髪までがバラバラの状態*8で十数年間生きながらえていた。

だが、姉を始めとした親族などの関係者たち(本来ならばピノコの家族にもなるはずだった者達)は名家の人間であり、世間体が悪い*9ということでとにかくピノコの存在を疎み、彼女を排除しようと嚢腫の摘出手術を試みる。

しかし。嚢腫だったころのピノコには手術に使用する精密機械を壊すほど強力な念動力や、周囲の医師を苦しめるためのテレパシー能力を始めとした今からは想像できないほどの高い知能があり、それらを使ってことごとく姉からの摘出(≒摘出後に処分される≒自身の死亡)を拒んだ。

紆余曲折の末、双子の姉の主治医が最後の望みとばかりにブラック・ジャックの家に患者を運び込み、手術を依頼。
なお、双子の姉はよほど素性を明かせない身分からなのか、単に世間体を気にして見せたくないのか、おたふくのお面をつけた状態で運び込まれた。*10
手術の際も、これまでの医師達同様に念動力とテレパシーでブラック・ジャックを妨害するピノコだったが、
ブラック・ジャックからの「お前は生きたいんだな?」という提案と説得により、彼の手でいったん培養液に浸された後、合成素材の部品等を用いて人間の体に形成される。
手術後は、ブラック・ジャックから自力で生きられるようにと過酷なスパルタ教育を受けて、現在のように動いたり話すことができる状態になった。*11
なお、肉体を得て以降は幼児の体に精神を引っ張られたのか、それとも身体の機能上の都合からなのか前述の通りの幼児そのものな口調や振る舞いになったが、
テレパシーで外部に語りかけていた頃には実年齢相応の知的な語り口だったからか超然とした印象を与えてもいたため、なかなかギャップが凄い。


しかし、人として形を与えられた彼女を待ち受けていたのは、双子の姉からの拒絶だった。
非常に険悪な姉妹同士の面会と捨て去られたも同然の処遇を経て、ブラック・ジャックと同居するようになる。
なお、肉体の数割は人工物で構成されている為、その重さで水に入るとあっという間に沈む。つまりは泳げない。
塩分濃度を滅茶苦茶に高めた水場ならば泳げるが、そうすると今度は生身の部分が塩分に耐え切れないので泳げるのは数分のみである。
また、ピノコの顔のモデルは、ブラック・ジャックが「医療雑誌*12で見かけたかわいい女の子『ロミ』をモデルにしており、後々になって公害病に侵されていたロミを偶然診察することになったブラック・ジャックは、ピノコとの縁もあって思い入れを抱きながら接していた。

■対人関係

自分を救ったブラック・ジャックに対しては前述通り「おくたん(奥さん)」を自称しており、ラブレターを書いたり、ご褒美としてキスをするなどとにかく大好きだが、嫉妬深い一面もあり、患者にしろ誰にしろブラック・ジャックが若い女性と関わることを嫌っている*13
一方、ブラック・ジャックの方はピノコに対して突き放すような言動もとっている*14が、なんだかんだ言いながらも大切に思っており、ピノコには結構甘い部分も多い。
世界医師会連盟から特別に医師免許を出してもらえるというチャンスをフイにしてでも、行方知れずとなったピノコを探して駆け回った事もある程。
それと同時に、ブラック・ジャック最大の弱点と言える存在で人質にされた事も何度もある。
鉄腕アトム』第2期やゲーム『アストロボーイ鉄腕アトム アトムハートの秘密』でも人質にされていた。あと、前者ではやはりというかなんというかウランとケンカしている

しかし、ピノコのことは完全に娘として見ており、娘として育てているためにその辺でピノコと噛み合わないこともしばしば。
BJからおみやげとして渡された、メキシコのひょうたん人形の台座に「わがむすめピノコへ」と書かれていたときにはかんしゃくを起こしている。BJ先生曰く「ついうっかり」。ただし、その後なんだかんだで気に入ってもらえた。
それでも、連載最終話*15でブラック・ジャックが夢の中に現れた大人の姿のピノコに向けた言葉は……

唯一の血縁と呼べる双子の姉については、自分を殺そうとした相手であるとして初対面時には食ってかかるなど、姉としての存在を認めておらず、
必要があっても「ピノコねーたんなんかいないよのさー!」「あんなどこのウマノクソ(馬の骨)…」と会いたがる素振りを見せていない。
そして、姉の方もピノコは長年自分を苦しめてきた存在であるという考えを変えず、必要があってピノコと接触せざるを得ない場合も最初は主治医を通して「自分は死んだ」とを付いてまでさんざん断るほど嫌っている。
やっとの思いで接触に成功するも変わらず世間体を気にしており、挙げ句の果てに「私には婚約者もいるからもう関わるな(意訳)」と言うなど一貫してとして認めていない*16
しかし、頭に大怪我*17を負って記憶喪失になった姉がブラック・ジャックの元を訪ね、手術と治療のために彼の家に滞在した際には、記憶を失っていたこともあり、逆に本当の姉妹のように仲良く過ごすことができていた*18
ちなみに記憶を失っていたとはいえ、ピノコをブラック・ジャックの「奥さん」として扱っていたのはこの姉だけである。

原作ではこのように険悪な関係となっている2人だが、1993年~2011年にかけて出崎統監督によって製作されたOVAアニメシリーズ内では設定が大幅に変更されたオリジナルのエピソードが挿入された。


■余談

ブラック・ジャックは幼少期の事故でバラバラになった身体を、本間丈太郎医師の手術によって繋ぎ止められて命を救われたが、
ピノコもまたバラバラの身体からブラック・ジャックの手術によって命を救われ、人間の姿を与えられている。
二人とも身体を動かすために決死のリハビリを行い、自分を救った医師に尊敬の念を抱いているのも共通。
ピノコは大学に行きたい動機としてブラック・ジャックを手伝えるという理由から、彼のような無免許の医師になりたいことをあげている。

原作最終話をはじめ、作中にて、ピノコの妄想やブラック・ジャックが見た幻影等で大人になったピノコが何度か描かれている。
大体が幼女状態のピノコをそのまま大人にしてスタイルを良くした感じに描かれているが、その中でも、中山昌亮氏のスピンオフ作品『ブラック・ジャック~青き未来~』に登場する成人したピノコ(クロエ)は中々の美人。
実際、前述のエピソード内にて素顔を見せた状態の双子の姉も美人なので、ピノコが美女になるのはほぼ確定事項と言える。*19

堤幸彦監督・本木雅弘主演の実写2時間ドラマシリーズでは何故か双子になっていた。両方が同時にハモるような喋り方をし、両方とも名前は「ピノコ」らしい。演者は中山詩央里&中山紗央里。
原作同様ブラック・ジャックによって「作られた」ことが示唆されているが、詳細は一切明かされなかった。この世界線では姉も「ピノコ」になったということだろうか。
原作に比べると外見年齢は高めで、性格も非情で冷静沈着。ブラック・ジャックに電子レンジを買って貰えずに力ずくで帰宅させられそうになると「誘拐される―!」と騒いで買わせる等、ずる賢い。意見が合わないと「ブス!」と罵り合うなど、姉妹(?)仲はあまり良くない模様。

「TezukaOsamu@Cinema」にて配信されたアニメ版でのCVは、かの有名アーティスト宇多田ヒカルが起用されていた。演技? これ を見てお察し下さい。

カサハラテツローの『アトム ザ・ビギニング』では彼女にそっくりなピンクというベトナム人技師が登場している。(子供の頃は更にそっくり)
心なしかいつも黒い服を着ていてツンケンしている天馬がお気に入りな所も似ている(笑)。



ピノコ「追記・修正、あらまんちゅ~!」

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最終更新:2024年12月24日 21:52

*1 原作の最初期では、「処女わのよ」という発言までしている。

*2 「アラマンチュ」に関してはアニメ版において「了解」の意味があるという風に設定が存在している。

*3 第231話「オペの順番」。アニメ版では最初の話であった。

*4 例によって無免許医療で捕まってたのを出所したため、「無罪祝い」のつもりだった。実際は大金出して保釈。

*5 見た瞬間思わず「ゲー」と嘆声をもらした

*6 自宅で手術する際も非人道的な手術にはピノコを関わらせないようにブラック・ジャックが配慮している回が存在する。

*7 TVアニメ版は高校受験。

*8 なお切開したBJによると普通の奇形嚢腫でもここまでヒトとしての部品が揃っている事はまず無いという

*9 姉の身分について姉の主治医は一貫して「さる高貴なお方」「ある身分の高いおかた」という風にぼかしているが、原作においては資産家の娘、あるいは門跡寺院(皇族や旧貴族・華族といった公家が仏門に下って住職を務める寺院を指す。つまり位の高い寺院。)の家柄の娘と設定が分かれている

*10 これ以降も登場する際はお面やベールを被って登場している。

*11 初出時は身体を与えられて数日後には動けるようになり、手術直後でBJ宅に滞在中だった姉と対面していたが、「過酷なスパルタ教育を受けた」の件がこのエピソードの後の話しの中で描かれたことで矛盾が生じたため修正が加えられ、文庫版などでは定期健診でBJ宅に訪れた姉と対面したことになっている

*12 TVアニメでは子供服の広告。

*13 BJが女性を手術するときは機嫌が悪くなるらしく、その理由として「女の子が相手だと手術が丁寧になるから」と不満を漏らしたこともある。実際にそうなのかピノコの考えすぎなのかは不明。

*14 これに関しては特に原作初期に多く見られていた。しかし、ピノコが登場するようになってからのブラック・ジャックは喜怒哀楽の感情を目立って表に出すようになっている。

*15 第218話『人生という名のSL』。この後も不定期連載されたため231話まで続いている。

*16 この発言にはさすがのブラック・ジャックも「ピノコだっていつか結婚する日が来る」「冷たいもんだ」と吐き捨てている。

*17 ちなみに、ピノコの姉が大怪我を負った理由は、一族のお家事情から来るゴタゴタにノイローゼとなり、思い詰めた果てに自室から飛び降り自殺を図ったからである。

*18 その後、姉の記憶が戻る前に相手方に迎えに来てもらおうとしたブラック・ジャックから連絡を受けて迎えにきた主治医の顔を見て記憶を取り戻した姉は、主治医からつい先程まで仲良く過ごしていた幼女がかつて自分の腹部にあった嚢腫から生まれた「妹」のピノコであると聞かされた途端に、逃げるように去っていった。

*19 ただし、スピンオフで成人しているとはいえ身体の大半が人工素材であるピノコがまともに成長できるかは怪しいところではある。