鉄人28号(2004年版)

登録日:2010/10/18(月) 21:34:02
更新日:2025/03/22 Sat 11:04:51
所要時間:約 3 分で読めます





戦うために作られたもの

全てを破壊するために作られたもの

時代の遺物



正 太 郎


鉄人28号(2004年版)は、2004年に放映された横山光輝原作「鉄人28号」の第四作目のアニメ。

監督は「機動武闘伝Gガンダム」「ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日」でお馴染みの今川泰宏
アレンジが強いことと、作品を区別するため、ファンからは今川鉄人とも呼ばれる。

第二作「太陽の使者 鉄人28号」や第三作「鉄人28号FX」と比べ、キャラクターやロボットは原作に近く、第一作「鉄人28号」に比べ「戦後」であることが強調されている。

本作は深夜放送だったのだが、放送中に原作者の横山光輝が本作を見るために寝煙草をしていたところ、それが原因で家が火事にあい、
横山もその時の火傷が原因で逝去してしまった。
なお生前の横山は本作に対して「暗すぎる」という感想を遺している。


登場人物

金田正太郎(声:くまいもとこ)
皆さんご存知、少年探偵でありショタコン(=正太郎コンプレックス)の語源。(正確には太陽の使者版だが)
運動神経、推理力の高さは原作通りだが、見た目以外の点は「大人」として描かれていた原作とは違い、今作では良くも悪くも「子ども」であることが強調されている。またよく縛られる。
大人の事情により銃を所持できず、代わりにバナナで威嚇することも。劇場版では晴れて?発砲する。
そのくせ車を運転している事に突っ込んではいけない。

大塚署長(声:稲葉実)
正太郎の育ての親的な存在でありムードメーカー。
敷島博士とは親友の間柄。
途中で警察をクビになってただの大塚になってしまう。
九大天王ではないので空は飛ばない。

敷島博士(声:牛山茂)
正太郎の育ての親的存在その2。
今は亡き正太郎の父・金田博士の元助手であり、鉄人の研究にも関与した。
現在は妻子持ちで、敷島重工の社長。
とあるシーンでは彼のMADな一面が窺える。
今川作品のあるあるで大事なことをなかなか言わない。

村雨健次(声:幹本雄之)
兄の竜作と子分の辰と一緒に兵器関連の物を盗むギャング。銃は使わない主義で武器はナイフ。
とある事件で家族を失ったことをきっかけに正太郎と鉄人に因縁を持つようになる。
ちなみに不死身ではない……が、不死身を自称する。
釈放された後は事件記者として社会的に鉄人を追い詰めようとするが…。

高見沢秘書(声:石塚理恵)
大塚署長の秘書であり、実質このアニメの紅一点でムードメーカーその2。
正太郎におごってもらおうとするなど子供っぽい所がある。
なおデザインのモデルは大塚署長の夫人だが、本作での大塚署長は独身。


本作の鉄人28号

正太郎の父・金田博士が生み出した「無敵の兵士」であり「もう一人の正太郎」。リモコン(操縦機)によって操縦可能だが、それ故に正義の味方にも、悪魔の手先にもなりうるのはいつも通り。
今作では戦中に開発されたメカニックなのを考慮して「大型メカとしては高い腕力や防御力を誇るが、ロボットとしては戦後に開発・製造された機種には劣る」と戦闘能力としては微妙な位置付けがなされている。ただし飛行能力についてのみ原作漫画より高めに設定されているようで、音速を越える速度での飛行も可能。
ちなみに起動音はOVA版ジャイアントロボと同じ。
敷島博士が27号を持ち出してくるのが実質的な第1のエピソード内で描写されたため、1~27号がいるのは変わっていないと思われる。

主題歌

OPテーマ
「鉄人28号」
作詞・作曲:三木鶏郎
編曲:千住明
歌:六本木男声合唱団(現・同ZIG-ZAG)

EDテーマ
「進め正太郎」
作詞:伊藤アキラ
作曲:越部信義
編曲:千住明
歌:六本木男声合唱団(現・同ZIG-ZAG)

メンバーに以前のアニメ化世代や原作世代が多かったことから、六本木~が参加。上述のようにOP映像に恵まれたこともあり、単なるロボソンとしても評価の高い一曲となった。

その正体は1963年のアニメ第1作の主題歌をほんの少し編曲+権利上の配慮*1でアウトロを変更しただけのもの。21世紀リメイクに使うための良アレンジとして以前よりのファンからも評価は高い。

あまり知られていないが、ED「進め正太郎」は第一話のTV放送時のみ、恐らく仮歌を採用したと思われる単独歌唱版が流れている。
DVD等にも収録されておらず、現在はまずお目にかかれないので非常に貴重である。

また、超人間ケリー編では挿入歌としてデヴィッド・ボウイの「Space Oddity」が、京都編では特別EDとして「なのにあなたは京都へゆくの」が採用されている。


評価

物語自体は主に戦争に翻弄された人間達の悲哀や滅びなど、人間ドラマを中心に描いている。
そのため鉄人があまり活躍しないうえ、妙にリアルな戦後感もあって、後半は特に暗く重い作りになっているため賛否両論
当初はNHKで流す予定が流れてテレ東に落ち着いたという逸話もあり。
これはケチで見切り発車に定評のあるガンジスのプロデューサー・大月俊倫の意向により、予算が削られ、今川が「ロボットアニメに必要とする作画枚数」が実現できなかった。
そのため、今作のような人間ドラマ重視の作風になった、と今川が愚痴混じりでバラしている。
メカデザインもつけてないので、鉄人もロボじゃなく「ひとりのキャラクター」として見ているんじゃないか、とのこと。

本来は原作の様なロボット活劇にしたかったが、大月は鉄人の皮を被った『プロジェクトX』を作りたかったようだ。
最初、大月が「鉄人出さなくていいよ」と言ったので、制約もあってその通りにするといざ始まると「鉄人出番少ないよ!」と最初の発注と180度異なる発言。
彼の酷い掌返し不満に「お前が言ったんだろうが!!」と今川は相当オカンムリだったそうな。

なおそのせいであまり動かないアニメと言われがちだが、OP(とそれを流用したED)はガチで動く。
というか本当に同じアニメなのかというくらい金がかかっており、現代でも見劣りしないとんでもクオリティである。
あとロボット戦はアイデア勝負な回も多く、まったく見所がないわけではない。

戦後の時代背景や登場人物の情念の描写、千住明作曲の音楽、OP&ED、何よりストーリーは非常に完成度が高いので、是非一度見ていただきたい。

ラストシーンは原作者・横山光輝が本来やりたかったものを踏まえている。


白昼の残月

放送から終了から大体3年後の2007年には劇場版「鉄人28号 白昼の残月」が上映された。
今川泰宏の劇場アニメ初監督作品だが、現在は同時にこれが最後の映画版ともなっている。
元々は放送終了から間を置かない2005年の公開予定だったが、何故か公開予定が伸びに伸びて2年もかかってしまった。
アフレコがもう終わっていることが出演者である麦人によって明かされていたこともあり、
これはポシャったとアニヲタ達の誰もが公開を諦めていた。

詳しい理由は不明だが、その後制作していたパルムスタジオが潰れたため、その辺りのゴタゴタが原因だと思われる。
しかし当時は鉄人の熱もすっかり冷めきっていたうえ、ミニシアター上映だったこともあり、客の入りはそこまでだったようだ。
基本的にスタッフは共通であるが、BGMは伊福部昭の楽曲を許可を得て流用している。

TV版とキャラクターや世界観、キャストはほぼ同じであるが、それぞれ役割が大きく異なるため、物語上の繋がりは無い。
辰の代わりに村雨一家に高見沢秘書がただの高見沢として紅一点の活躍を見せたりしている点が一番大きく違うところ。
一部TV版には登場しないキャラも存在し、言ってみればTV版の別ルートといった感じの作品。
またタイトルで多くが期待したものの、十傑集の誰かとも関係はない。

なお、劇場アニメということもあって、TV版とは比べ物にならないくらいロボットが動く
むしろTV版では出来なかったからとばかりに、今川が鬱憤を晴らすが如くお得意のロボットプロレス
これでもかというくらいやってくれる。
TV版でロボットが動かなくてモヤモヤしていたアニヲタ諸君には是非見て欲しい一作。

お話はTV版同様暗めではあるが、村雨一家がコメディ枠として暴れてくれていることもあって明朗なシーンも多い。
また、劇中では「お富さん」がしばしば歌われるが、本作でこの歌を知ったアニヲタもいるのではないだろうか?

PS2版ゲーム

プレイヤーが正太郎として鉄人を操縦でき、操縦機の再現度と操縦の自由度の高さから評価は高い。
ただし、劇場版ともまた異なってストーリーはおろか、世界観もゲーム独自のものになっており、2004年版アニメのような重い展開ではない。
2004年版の声優などを使用した「鉄人28号」のゲーム化といった方が近い。
あまりに自由(建物・人を持ち上げる、攻撃が可能etc…)なので、正太郎or鉄人を正義の味方にするか、悪魔の手先にするかはプレイヤー次第である。




ここに、一つの鉄の塊がある

かつて鉄人28号と呼ばれたそれは、日本の高度成長期を支えた礎のように姿を変え

平成と呼ばれる今もなお、この日本のどこかに、人知れず身を隠している

そしてその姿は、時代のすべての罪を一身に背負ったように

赤く

黒い



そう、良いも悪いも追記・修正次第なんだ…。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/
画像出典:鉄人28号(2004) ©光プロ/敷島重工/テレビ東京

+ タグ編集
  • タグ:
  • アニメ
  • 映画
  • 横山光輝
  • リメイク
  • 良いも悪いもリモコン次第
  • ショタ
  • 蘇る無敵の兵士
  • 隠れた名作
  • 傑作
  • 良作
  • 良アニメ
  • 涙腺崩壊
  • ロボット社会を語りたいなら見ろ!
  • ロボット
  • スパロボ参戦 ←太陽の使者版が
  • 皇帝の紋章
  • 長谷川裕一
  • 白昼の残月
  • 神アニメ
  • 若本規夫
  • 漫画は良作
  • 漢の義務教育
  • 鉄人28号
  • 今川泰宏
  • 04年春アニメ
  • 千住明
  • 鬱展開の嵐
  • 幻の旧日本軍決戦兵器
  • 2004年
  • 鬱燃展開
  • スパロボ参戦希望
最終更新:2025年03月22日 11:04
添付ファイル

*1 第1作はアウトロでそのまま提供スポンサーを紹介していたため、実質的にここは広告枠だった。(現)江崎グリコ一社提供だったことから、本来はここにも「♪グリコ・グリコ・グーリーコー」という歌詞が入っているため。ちなみに63年版の再放送時は「スペシャル協力扱いで江崎グリコをクレジットに入れる」ことでカットしないことが多い