惑星大戦争

登録日:2011/06/26 Sun 01:41:30
更新日:2024/09/25 Wed 13:25:12
所要時間:約 6 分で読めます




惑星大戦争』は1977年12月17日に公開された東宝の特撮映画である。
併映は三浦友和、山口百恵主演の「霧の旗」。

【概要】

時は1977年―
日本の映画界では海の向こう、アメリカで公開されたある大ヒット映画に衝撃を受けていた。


スター・ウォーズ


である。

スター・ウォーズ」のヒットは日本にも伝わり、「宇宙戦艦ヤマト」のヒットもあり日本にSFブームが到来した。
しかし「スター・ウォーズ」の公開は配給の関係で翌年1978年夏となっていた。この時間差を利用し、東映と東宝でSF映画の企画が立てられていた。

1977年10月半ば、当時の東宝で特撮の監督をしていた中野昭慶氏は田中プロデューサーに呼ばれ、取り寄せた「スター・ウォーズ」のフィルムを見せられながらこう言われた。

こんな感じのを12月に公開するから今から作って。」

と。
中野氏は社員であり職人である。無理だなんて言えなかった。

さらに田中プロデューサー達の希望で主役艦が「轟天」になったり、敵戦艦が「ローマ風戦艦」になったりする等、
スター・ウォーズとは何かが違くなっていった

そんな訳でスタートしたが、時間も金も無く都市破壊は「世界大戦争」など過去の作品から流用せざるを得ない等、苦しい製作だった。

それでも「轟天」のミニチュアには1m級と3m級の2通りを用意し、ギミックを組み込む等の工夫をし、メインに見せ場を集中させることで何とか乗り切った。

本編にはアクション系の職人監督、福田純氏が起用され、キャストは森田健作、浅野ゆう子、東映の宮内洋、日活出身の沖雅也、池部良等注目の若手からベテランまで揃えてはいた。

本作はそういった事情から国内ファンからの評判はさほどではないが、海外ではそこそこ受けたようである。

また、1978年春には東映3倍の予算、3倍以上の製作期間、石ノ森章太郎氏や深作欣二氏起用で『宇宙からのメッセージ』を製作しており*1、こちらの方は活劇寄りにしたせいか評価は比較的良いようである。


【あらすじ】

1988年、世界各地でUFO騒ぎや通信障害が起こる。そして国連の宇宙ステーションがローマ船のような謎の宇宙船に破壊される。

かつてUFO騒ぎがあった際に計画され途中で計画中止になった宇宙戦艦「轟天」だが、責任者の滝川が宇宙人から襲撃を受けたことをきっかけに轟天の建造は再開される。
世界中に宇宙人からの攻撃が始まる中、轟天号は完成、出撃した。


【登場人物】

◆三好

(演:森田健作)
主人公で轟天の乗組員。ジュンに惚れていたがアメリカ行きで疎遠になっていた。さらわれたジュンを助けに敵艦に潜入する。
ちなみに演者は後の参議院議員時代の1995年、河崎実監督作品『地球防衛少女イコちゃん』の子供向け防犯映画版にて企画・制作総指揮を務め、自らも出演している。この戦いの経験を後の千葉県政に活かしたりはしない。

◆滝川ジュン

(演:浅野ゆう子)
ヒロインで同じく轟天の乗組員。艦長の滝川の娘である。
途中で敵に捕まってしまうが……
演じた浅野ゆう子は当時17歳でスタイル抜群のアイドル女優として活躍していた。そのためか途中で自前の足を露骨に見せる衣装にされた。

◆室井

(演:沖雅也)
轟天のパイロット教官。三好がアメリカに行ってる間にジュンと婚約する。三好達の敵艦潜入をスペースファイターで援護するが……
若くして亡くなった沖雅也氏の唯一の特撮映画出演*2だった。ちなみに三好役の人とはドラマ版『青葉繁れる』でも共演していた。

◆冬木

(演:宮内洋)
三好達の友人で、轟天の乗組員。三好と共に敵艦へ潜入する。
V3ズバットには変身出来ないがため……

◆滝川正人

(演:池部良)
轟天の艦長でかつ、宇宙科学者で設計者。厳しくも優秀な司令官。最後の切り札に……

◆三笠

(演:新克利)
三好達の同僚で、国連宇宙ステーション「テラ」に勤務していたが、「ローマ船」と呼んだ大魔艦の襲撃を受けて死亡。
その死体は、敵に乗り移られて人質を取る廃品利用される。


【登場メカ】

◆宇宙防衛艦「轟天」

来たるべき宇宙からの侵略に備えて建設された万能戦艦。
海底軍艦」の轟天号と同じく、これ一隻で人類大勝利になったチート兵器である。

主力兵器はリボルバービームや砲塔からのレーザー。最終武器としてドリルに搭載された宇宙を破壊しかねない威力のエーテル破壊爆弾がある。
本作の宇宙にはエーテルがある設定のようである。

金星上空の大魔艦との決戦でダメージを受け不時着するが、エーテル破壊爆弾搭載のドリルだけを飛ばした特攻で敵艦を撃破する。
その後金星を脱出し地球へ帰還する。金星はエーテル破壊爆弾で木っ端微塵である。

◆スペースファイター

轟天に搭載されていた戦闘機で、リボルバー型のカタパルトから発進される。機首からのパルスビームが武器。
金星での前哨戦で活躍したが、全機撃墜されてしまった。

◆ランドローバー

轟天搭載の探査車。敵艦偵察や潜入の際に使用された。R2レーダーを搭載しホバー機能で悪路もスイスイ。
イギリスの四輪駆動車ではない。


【ヨミ惑星人】

遠い宇宙からの侵略者で、母星の寿命が尽きそうなため環境の近い地球へ侵略を仕掛けた。肌は緑色で地球人への変装も可能。古代ローマをイメージしたような装束や戦艦である。

◆ヘル

(演:睦五郎)
古代ローマの将軍のような姿をしたヨミ惑星人の支配者で、侵略の指揮を取る。護身用の武器として波動棒を所持。
メカゴジラを使ったりはしない。

◆宇宙獣人

ヘルの用心棒的な獣人。ビームを吸収してしまうが武器で捕まえた三好とジュンを処刑に向かうが脱出した三好のレーザーナイフであっさり倒される。

◆大魔艦

何故か古代ローマのガレオン船みたいな巨大戦艦。金星上空で轟天と戦う。
普段はエネルギー・システムで作り出した赤いバリアで防御。主砲は両側面のオール型のレーザー砲で、切り札に東宝特有のパラボラ型をした重力砲を備える。

◆ヘル・ファイター

地球攻撃に使われた小型戦闘機。ぶんぶくちゃがま型円盤に翼を付けたような形状である。パルスレーザーが武器。


【余談】

「惑星大戦争」というタイトルは当初「スター・ウォーズ」の国内版タイトルだったが、アメリカの世界共通のタイトルにしたいという意向でボツになった。

本当に時間が無かったらしく、脚本の決定稿の日付は10月12日であった。
また、DVD収録の中野監督への本作に関するインタビューで、真っ先に出たのが製作期間の短さに対する愚痴だった。

中野監督の担当作品は予算たっぷりで爆発しまくりな作品か、予算も時間も異常に少ない作品なので、歴代特撮監督でも不憫な部類だろう。

当時この「惑星大戦争」版の轟天のプラモデルが販売されたが、変な潜水艦にドリルが付いただけの詐欺同然の商品だったらしい。

シン・エヴァンゲリオン劇場版:||で惑星大戦争のテーマが使用された。通称「冬月のテーマ」

【DVD】

DVDには特典として上述の中野監督へのインタビューが収録されている。

オーディオコメンタリーはヘル役の睦五郎氏。睦氏は
浅野ゆう子の足以外はすべて忘れていた
撮影期間も短く数ある仕事の1つだったんだろう。
睦氏はこれで初めて本作を見たそうである。
話しは主に『逃亡者』や『ファイヤーマン』の思い出だった。


見てくれる方は追記・修正よろしくお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 東宝
  • 特撮
  • 映画
  • スタッフに同情する映画
  • 轟天号
  • 轟天無双
  • 東宝特撮映画
  • 惑星大戦争
  • 1977年
  • 宮内洋
  • 森田健作
  • 睦五郎
  • エヴァ
  • エヴァンゲリオン
  • ヱヴァンゲリヲン新劇場版
  • シン・エヴァンゲリオン劇場版:||
  • 冬月コウゾウ
最終更新:2024年09月25日 13:25

*1 余談だが『宇宙からのメッセージ』の方には元東宝の天本英世氏・佐藤允氏と『モスラ』に出演したジェリー伊藤氏がサブキャラで出演しており、偶然だが『惑星大戦争』側に東映の宮内洋氏が参加したのと入れ替わるような感じとも取れるかも知れない。

*2 広義のファンタジー・SFまで含めると同じ東宝映画の『火の鳥』『ブルークリスマス』も入るか。