登録日:2009/12/01 Tue 00:12:22
更新日:2025/05/22 Thu 22:26:30
所要時間:約 5 分で読んだのは貴様か!?
ズバッと参上、ズバッと解決!
人呼んでさすらいのヒーロー!
『快傑ズバット』とは、誰が何と言おうが日本一のヒーローである。
本項ではその活躍を描いたテレビ番組について記述する。
概要
放浪する風来坊・早川健が科学者の友人の死の真相を突き止めるために様々な敵と戦う。
番組は1977年2月2日から9月28日まで東京12チャンネル(現在の
テレビ東京)で全32話が放送された。
当時のテレビ東京はネット局の無いローカル局だったため、中京・近畿では独立局が受け皿となった他、
北海道などのようにリアルタイムで観られなかった地域も存在した。
第1話から
最終回まで全国ネット放送されていない、東映特撮ヒーロー史上唯一の作品である。
『
人造人間キカイダー』や『
アクマイザー3』の長坂秀佳がメインライターを務め、全32話中30話を担当。
あまりに濃い上に「偉大なるマンネリ」を貫いた作風や、主演の
宮内洋氏の熱演などでマイナーなものの知る人ぞ知る人気があったが、近年は『
スーパーヒーロー作戦』2作での優遇やネットの普及でその怪作ぶりが広く知れ渡ったことで、少なくとも特撮ファンの間ではだいぶメジャーになってきている。
当時東京12チャンネルが製作に関わったアニメ・特撮作品の中でも特に高い視聴率をマークしたのがこの『ズバット』であり、3月9日に放送した第6話では15.5%に達した。
しかし関連玩具の売れ行き不振などを理由にスポンサーだったタカトクトイスが降板したため、企画当初は1年間の放送予定だったが全32話で
打ち切りとなる。
最終回(前後編)が唐突すぎるのは打ち切りが原因と思われる。
実際、番組の支持層は、製作側が設定していた年齢層より上の年代が中心で、それがキャラクター商品の不振の一因ともなった(特撮
オタクが
多々買い始めたのは平成以降の話である)。
また、関連商品が売れなかったもう一つの要因として
「変身ヒーローとしてのズバットよりも変身前の早川の方に人気が出てしまったから」という指摘も多い。
第10話で原作者の石ノ森章太郎先生がゲスト出演している。
あらすじ
科学者の飛鳥五郎は妹の勤める
幼稚園に地域掌握のため現れた暴力団・地獄組と対峙し、命を狙われる。
そこに妙な風来坊が現れた。
その男こそ、飛鳥の子供の頃からの親友であり、自称「日本一の
私立探偵」・早川健だった。
地獄組を追い払った早川は幼稚園バスに
爆弾が仕掛けられていることを発見。
園児達を無事に避難させるが、飛鳥がバスを安全な所まで運ぶ際に爆発で重傷を負ってしまう。
敵の魔手は飛鳥の入院先の病院にまで伸び、再び爆発が起きた。
混乱の中飛鳥は銃撃で蜂の巣にされ、早川の腕の中で息を引き取った。
早川は飛鳥の遺した設計図を頼りに、開発途中の宇宙探検用強化服「ズバットスーツ」と空飛ぶスーパーカー「ズバッカー」を自力で完成させ、地獄組組長・地獄竜を倒す。
……しかし地獄竜は、飛鳥を殺した犯人ではなかった。
親友を殺した真犯人を突き止めるため、早川の
復讐の旅が始まった。
基本的な話の流れ
- 早川の行く先で、悪の組織ダッカーの各地域のボスとその用心棒が乱暴狼藉を働き、地元住民を苦しめている。
- 用心棒は何らかの特技を持っており、自分はその分野で一番の腕の持ち主であると自負する。
- 早川は「○○の達人、××。ただし、その腕前は日本じゃあ二番目だ」と言って挑発。
- 「ならば日本一は誰だ!?」と問われ、キザな舌打ち・深く被った帽子の鍔を押し上げる仕種と共に“オレさ”と指差す。
- それに怒った用心棒は技を披露するが、早川はそれ以上の技を見せつける。
- それを見た用心棒は早川に敬意、もしくは畏怖を表して一旦退散する。
- ピンチを救ってもらった地元住民は早川を厚くもてなすが、平和は長く続かず、ダッカーは住民を誘拐するなどして報復を行う。
- 人質を取られるなどして拘束された早川は戦闘員らに痛めつけられるが、ふと気が付くと、拘束されていたはずの早川が姿を消している。
- 高笑いと共に、颯爽とズバットが登場。名乗り口上を披露する。
- 用心棒およびボスとズバットとの戦い。
- 勝利したズバットがボスを組み伏せ、「2月2日、飛鳥五郎という男を殺したのは貴様か!?」と拷問もとい問い詰める。
- 飛鳥の仇でないことが分かると戦闘能力を奪って失神させ、「この者○○(今回の悪事の内容)犯人」と記した「ズバットカード」を悪人の傍らに置いて立ち去る。
- それを駆け付けた東条・みどり・オサムが見つけるも時すでに遅く、早川はまた別の土地へ向かう。
主な登場人物
演:宮内洋
黒いウェスタンルックに身を包み、白いギターを背負って各地を旅するさすらいの私立探偵。
言動こそ非常にキザであるが、実際は正義感が強く、困っている人を見過ごせない、人情に厚い男。
2月2日に殺された親友・飛鳥五郎の仇を探して日本中を旅している。
彼の前ではどんな敵でも「日本で二番目」になってしまう、何をやっても日本一のかなりのチートスペック。
ただし「歌唱力だけはその限りでない」というのは鉄板ネタ。
幼い頃に母と生き別れている。
演じた宮内洋は、「偉大な先輩の後釜(
仮面ライダーV3)」でもなければ「集団ヒーローの一員(
アオレンジャー)」でもない、完全新規作品でピンで主役を張れるということもあって並々ならぬ熱意を持ってこの役に打ち込み、今でも彼の代表作と言えばこの早川健を推す声が多い。
『
仮面ライダー(新)(スカイライダー)』にほぼ早川と同じファッションで客演したこともある。
モチーフは1950年代末〜60年代初頭に公開された日活のアクション映画『渡り鳥』シリーズの主人公・滝伸也(演:小林旭)だと言われている。
早川健がズバットスーツを着用した姿。
登場時の決めゼリフは「ズバッと参上、ズバッと解決!人呼んでさすらいのヒーロー!快傑ズバット!」。
戦いの動機が私怨である事、正体を知る者はまず誰もいない事から、世間への認知度は殆どゼロであるはずなのに、
エラく自意識が過剰なヒーローである。
武器はズバットのトレードマークを模したZ型の赤い柄を持った
鞭。
必殺技は飛び蹴りのズバットアタック。
活動時間には5分間という制限があり、それを過ぎると爆発する。
そうなる前にスイッチを切れば爆発は防げるが、ズバットスーツが鉛のように重くなってしまう。
早川は何でも日本一のくせに結局この欠点だけは解消できなかった。
残り1分を切るとヘルメットの両耳部分にあるタイマーが警告ブザーを鳴らす。
……が、生身でも十分チートであるために
「ズバットスーツは敵へのハンデである」というのがファンの間では定説である。
もっとも、先述したように早川は大抵の回でボコられるので「ハンデ説」は冗談めいて語られることのほうが多い。
ただ、どんなにガッチリ拘束されていても結局はアッサリ縄抜けしてしまうことから、やはり舐めプをしている可能性も否定はしきれない……というのが正直なところ。
演:岡崎二朗
早川の親友、またの名を「山登りが好きな貧乏学者」。
優れた科学者でズバットスーツやズバッカーも彼が宇宙探検用に設計した。
ダッカー総統の顔を見たために殺された。
登場自体は第1話のみだが、その最期は本作のオープニングや早川の
回想シーンで挟み込まれる事から、印象に残った人も多いとか。
演:大城信子
飛鳥五郎の妹。
幼稚園の保母をしていたが、兄が殺されてからは早川の後を追う。
演:中野宜之
早川を慕う少年。早川の助手になろうと、みどりと共に後を追う。
演:斉藤真
警視庁八課の課長を務める優秀な刑事。
早川とは大学時代からの友人。
ズバットの正体を知る唯一の人物であるが、刑事として暴力行為を黙認するわけにいかず、友情と職務の板ばさみの状態となっている。
演:矢吹二朗
31話から登場した国際秘密警察の捜査官で、進吾とは中学時代からの親友。早川から見れば友達の友達。
秘密警察の捜査官という職業柄か変装の名人であり、非常に高い記憶力の持ち主。
ダッカー
暴力団・ギャングなど日本中のワルを影から操り、暴利を貪る大犯罪組織。警察さえその全貌を掴めていない。
傘下の組織のボスはほぼ全員が「D」のマークを身につけており、銃刀類や車両などの備品はもちろん、
戦闘員が着用する帽子やネクタイ、果ては計器類や弾丸にまでご丁寧に「D」の文字が刻まれている。
その割に早川は終盤までダッカーの存在に気づいておらず、正体が明かされた時にはかなり驚いている。情報収集力も日本一ではないのか
特撮の敵組織としては珍しく、上から下まで普通の人間のみで構成されている。
だがそれゆえに「人間の恐ろしさ」を浮き彫りにした、貴重な存在ともいえる。
演:はやみ竜次
ダッカーの首領。
普段は屋敷から配下のボス達を呼び出して命令を下している。武器は
ブーメラン。
飛鳥の仇ではないかと疑われたが、実は真の首領である総統Dの手駒に過ぎなかった。
演:仙波和之(竜天丸)/佐藤好将(竜海丸)/守屋俊志(竜山丸)
31・32話に登場。総統Dの直属の用心棒である竜天丸、竜海丸、竜山丸の殺し屋三兄弟。
金剛杖マシンガンや
仕込み金剛杖が武器。32話でズバットスーツの十倍の強度を持つシルベール製のスーツを着用してズバットに挑戦するが……。
「人前に姿を現す時はその人間が死ぬ時だ」と称される、ダッカーの真の首領。
黄金の覆面で素顔を隠している。黄金の
マシンガンが武器。
総統Dのもう一つの顔、それは神竜伸介である。
「殺人による世界征服」というとんでもない野望に取りつかれており、その実現のためにダッカーを組織、首領Lを隠れ蓑として裏から組織を操っていたのだ。
そして飛鳥五郎を殺害した真犯人でもある。
一見唐突な感じもするが、実は
「警察関係者にダッカーとの内通者がいる」というのは割と初期から
伏線が張られている。
「ズバットスーツの活動時間は5分が限界」という設定は第11話で初めて説明されるのだが、この時早川は
ぱっと見で東条だけいる状況でこのことを説明しているにもかかわらず、次の場面で
首領Lがこの情報を支部長に話すという展開になっており、東条(警察)の周囲に何かある……と匂わせていた。
天海山三兄弟と同じシルベール製のスーツを装備してズバットと激突したが、シルベールは元々飛鳥が作ったものであり、かつその製法を知るのは妹のみどりの他には神竜しかいなかったため、この事実から早川に正体を見破られた。
全身黒づくめの服装に
サングラスという恰好。
各組織によってファッションに細かな違いがある。
ボス
毎週早川が旅先で遭遇するダッカー下部組織のボス。
初期はブラックスターや金仮面などスーツアクターに声優がアフレコする形が多かったが、のちに中庸助など東映作品でもおなじみの悪役俳優がキャスティングされている。
中盤から2月2日のアリバイを
問い詰められて東京にいなかったことを弁明するシーンが定番となるが、行先は夜桜会のボス・夜叉丸を除いて全員海外だった。慰安旅行?
最後の最後になるまで飛鳥を殺した真犯人は特定できなかったが、「もし倒したボスの誰かひとりでも嘘をついていたら永遠に謎のまま終わっていたのでは?」という点はファンからもよくネタにされる。
用心棒
ダッカー下部組織のボスに雇われており、毎回律儀に早川とお笑い特技合戦を繰り広げる。
初期はガンマンのランカークや
居合術の名人・風流之介(演じたのは
死神博士でお馴染み天本英世氏)にナイフ投げが得意な殺し屋ジョー、サイで戦うワルツ・リーなど、用心棒らしいキャラが多かった。
……しかし、回を重ねるごとに
コンパチヒーローシリーズでの扱い
ズバットをメジャーに押し上げた、一番有名な事例と思われるので分けて紹介。
ズバットそのものが登場するわけではない。ないのだが……
など、
V3に変身してデストロンと戦う以外は完全に早川健という、いくら演者が同じとは言え風見ファンにとっては許しがたい改変を施され、逆に全国の原作未見のちびっこ達に風見志郎の人物像を勘違いさせてしまった。
そもそも
風見は復讐のために戦う早川とは対極的な人物なのだが、よくこれを通そうと思ったな…
けど光太郎なんて南の方も東の方も完全に原作のキャラが崩壊してたんだから、中の人ネタのキャラになっていた風見はマシな方かも
ちなみにこの設定のせいか、本作のV3は無茶苦茶強い。というか、隠しでのマサキ&シュウほどではないがレベルがおかしい。
なお、本作で飛鳥五郎を殺したのはデストロンであった模様。本作のデストロンは
ドクトルGのワンマン組織なので、ある意味総統Dである。
『悪の秘密結社デストロン壊滅』
数々の技の腕前が「日本一」から「宇宙一」にランクアップ。
- 鞭を振るって一瞬で大・中・小の3つのサイズの石球を空中に飛ばし、
- 更に飛ばした石が落下している最中に鞭でそれぞれの石を削ってウルトラマンの形に加工、
- あまつさえそれを三段重ねに!
という神技を見せつける。
クロスオーバー的にはやはり
中の人ネタで『
宇宙刑事ギャバン』との絡みが多い。
不思議界が崩壊する際、宇宙刑事たちはそれぞれの専用マシンを使って脱出する中、ズバットだけ
超空間に浮かんでいた鉄パイプに鞭を巻きつけて自力で脱出してしまう。さすがは日本一改め宇宙一の男である。
挙句にはエンディングで全ての世界が統合前に戻った後、他のキャラは
皆朧気にしか覚えていない中
一人だけ完全に記憶を保ったままという異様な優遇をされていた。
本作きってのジョーカー枠というか、もはやデウス・エクス・マキナの域に達している感すらある。
優遇したのは「他と比べて知名度の低いマイナーヒーローだから」らしいが……絶対スタッフの趣味だろ!
と言うか
攻略本の一冊で
寺田貴信Pがファンであることを公言しており、企画会議は毎回ズバット鑑賞会になっていたんだとか。
そして最大のポイントは宮内氏が久々に早川役でCMに出演したことだろう。
「おおっと!君のそのゲーム、日本じゃあ二番目だ」
「じゃあ日本一は?」
「『スーパーヒーロー作戦』!!」
前作でやりすぎた反省により、今回はクロスオーバーが薄くなったので
自重。
相変わらず前作の記憶を保持しているようで、「ガイアセイバーズ」というチーム名に妙に反応する。
今回も宮内氏が早川役でCMに出演。
「俺が誰かって?……お父さんに、聞いてみな」
V3が参戦するため、風見志郎と一緒に登場するバージョンもある。
風見「いくらゲームがしたくても!」
早川「学校・会社は、休むなよ?」
キャラクターとしては登場しないが、なんとV3・アオレンジャー・ビッグワンの合体技「トリプルZ」の時にだけ登場する。
まさにズバットの面目躍如である。
その他の出番
第9話「サメ」に登場する、深海魚の親方(※中の人は東条と同じ)に日々しごかれているブロードウェイスター志望のサメの「いつの日かスーパーヒーローが現れて、私を助けに来てくれる」という希望の象徴がなぜかズバットだった。恐らく東条刑事が出るなら……とひらめいたスタッフの遊びかも
イメージシーンのみの出番なので、特に宮内氏の声で喋ったりはしないが、思わず見てる番組を間違えたのかと錯覚してしまいそうである。
終盤に、デンライナーオーナーの「正義を守るのは仮面ライダーだけではありませんよ」というセリフを受けてちょっとだけ登場。
「せっかく宮内氏が出るんだからついでに出すか」程度の扱いだが、一応見せ場はあった。
昭和100年を記念して登場した怪人「
昭和ノーワン」も
どハマりしている昭和のヒーロー番組として登場。
元々ナンバーワンバトルというものが「本作の日本一勝負(仮称)のオマージュではないか」というファンの声から登場が決まったらしい。
公式に『昭和』と付けられている東映制作のヒーロー作品を差し置いての登場。また令和の時代に話題になった昭和出身のキャラという事で緑のおじさんとも肩を並べてしまった
また、登場に伴って東映特撮ファンクラブ(TTFC)ではヒーローと一緒に写真が撮れる機能の1つとして、現行作品でもないのにズバットを登場させていた。
実際にこのエピソードごっこをできるようにするという意味合いもあった様子。
無法日本一&ナンバーワン
また、劇中で昭和ナンバーワンバトルにおける反撃のために登場したズバットグッズも実際に販売されたもので、特にTシャツは放映日でも
プレミアムバンダイで「在庫あり・購入可能」となっていた。
余談
- オープニングテーマは水木一郎の歌う「地獄のズバット」、エンディングテーマは「男はひとり道を行く」。
- 新録版が『スーパーヒーロー作戦』イメージソング「スーパーヒーロー作戦!」の8cmCDに収録された。宮内氏の「飛鳥ー!」のセリフも入ってるぞ!
- 一部BGMが『科学戦隊ダイナマン』に使われている。
- 『ダイナマン』『ズバット』のどちらもオープニングのイントロで薩摩琵琶が使用されているが、これは音楽担当の京健輔氏の十八番。
- 『帰ってきたウルトラマン』と同様、後のガイナックスのメンバーによる自主制作パロディ映画として『快傑のーてんき』がある。
- それ以外で有名なパロディとしては『燃える!お兄さん』の早見姿郎あたりか。
- ……もっとも、あっちは別の意味で有名かもしれないが。
「追記・修正の達人、
Wiki篭り。だがその腕前は日本じゃ二番目だ。」
Wiki篭り「ならば日本一は誰だ!?」
最終更新:2025年05月22日 22:26