登録日:2011/06/03(金) 18:46:52
更新日:2024/01/23 Tue 13:58:23
所要時間:約 4 分で読めます
むかしむかし、地底の世界に病気も苦しみもない王国がありました。
その国には美しい王女様がおりました。
王女様はそよ風と日の光、そして青い空をいつも夢見ていました。
ある日、王女様はお城をこっそり抜け出して人間の世界へ行きました。
ところが明るい太陽の光を浴びたとたん、彼女は自分が誰なのか、どこから来たのかを忘れてしまったのです。
地底の王国の王女様はその時から寒さや痛みや苦しみを感じるようになり、ついには死んでしまいました。
姫を亡くした王様は悲しみましたが、いつか王女様の魂が戻ってくる事を知っていました。
そしてその日をいつまでも、いつまでも待っているのでした。
2006年公開の
メキシコ、スペイン、
アメリカ合作映画。
監督は『
パシフィック・リム』で脚光を浴びるギレルモ・デル・トロ(同監督作は「ミミック」「
ヘルボーイ」など)。
製作は『
ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』『
ゼロ・グラビティ』で監督を務めたアルフォンソ・キュアロン。
血沸き肉踊る特撮バトルアクション映画という印象の強いデルトロ作品だが、本作は陰鬱なホラー作品である。
日本公開時のポスターおよびDVDジャケットは児童向け
ファンタジーのような雰囲気になっているが、騙されてはいけない。
スペイン内戦後を舞台に、人の死が後を絶たない現実世界と、無垢な少女が迷い込んだ童話の世界が交錯する。
特殊メイク技術も高く評価されている作品であり、特に怪物“ペイルマン”の恐怖はこの映画の見所の一つ。
PG-12指定となっており、地味に
グロや暴力シーンがあるので視聴の際は注意。
〜あらすじ〜
童話が好きな少女オフェリアは、身重である母と共に新しい父親の待つ森の要塞へと赴く。
森では軍とゲリラとの衝突が続いており、軍人然とする父ビダル大尉の態度もあり、オフェリアにとって気を休める所ではなかった。
ある時彼女は、虫から変身した妖精につれられて森の迷宮に訪れる。
そこには羊頭の大男パンが待っており、彼女を一目見るなり「あなたは地底の王国の王女だ」と言い放つ。
一方、外の世界ではビダル大尉のゲリラ狩りによって殺伐とした状勢となっていた。
そして出産をひかえる母親も容態が悪化する。
オフェリアはパンに与えられた三つの試練に臨む最中に、現実の無情さを目の当にする。
〜登場人物〜
演:イバナ・バケロ/吹き替え:宇山玲加
この物語の主人公。
透明感漂う無垢な少女だが、劇中での境遇はとにかく薄幸の一言に尽きる。
内戦中に実父を亡くしており、大尉を父とは認めていない(お互い様だが)。
脳内お花畑かと思いきや、家政婦の正体を見抜くなど、身の周りの状勢を一応理解している模様。
演:ダグ・ジョーンズ/吹き替え:山口りゅう
森の迷宮の深部にある“王国への入り口”の番人をしている。
オフェリアが王女である確証を得る為に三つの試練を与える。
ギリシャ神話に登場する牧羊神の名であるが、醜悪な容貌や誘惑的な物言いから
悪魔の様にも見える。
「僕の試練を受けて王女になってよ」
最初は大きな
バッタかナナフシの様な虫であったが、後に小人の妖精へと変身する。
オフェリアを試練達成へと導くが、彼女の犯した過ちから仲間を失うことに(わりとグロい場面)。
演:セルジ・ロペス/吹き替え:諸角憲一
スペイン独裁政権軍の大尉。森の要塞で指揮を執っている。
新たに生まれて来る自分の子供を待望する一方、妻や娘を顧みない非情な人間。
軍人としては優秀だが、自分の妻を診察する医師を射殺したり拷問に精通したりするなど、人格にかなり難有り。
常に父の形見の懐中時計を身につけている。
演:アリアドナ・ヒル/吹き替え:瀬尾恵子
オフェリアの実母。胎内に第二児を宿している。
温和な良母であるが、神経が衰弱している為かヒステリックな一面もある。
夫を亡くして頼りもなく、再婚相手であるビダルの言いなり状態となっている。
また無理をして山奥まで連れられたり、娘とビダルとの不和などの心労からか身体は徐々に悪くなっている。
母娘そろって幸が薄い。
演:マリベル・ベルドゥ/吹き替え:塩田朋子
砦で働く家政婦。その正体はゲリラの
スパイ。
医師と共謀して貯蔵庫から物資を横流ししていた。ゲリラの中に弟がいる。
彼女の歌う子守唄は名曲だが軽く鬱る。
演:アレックス・アングロ/吹き替え:伊藤和晃
砦でカルメンを診察している医師。だが、彼もゲリラを支援する者の一人。
患者の気持ちを酌む事の出来る人格者であるが、非常時とはいえ患部切断を即決する迷いのなさも持つ。
演:ダグ・ジョーンズ
この映画の看板的存在。
パンの与えた第二の試練で登場する、のっぺらぼうのような人型の怪物である。
狭い部屋の中に一人いて、普段は椅子に腰掛けて微動だにしない。
しかし目前の卓に並べられた豪華な料理に手を付けると、その者を捕食しようと襲いかかる。
二つの眼球を両の掌に取り付け、それを顔に寄せる事で前方を目視する。
ゆっくりと追い掛けて来る様子は某静丘のクリーチャーに似ている。
ちなみに部屋の中の料理は彼が食するのではなく、部屋に訪れた者の注意を引く為のもの。
「手目ぇ〜〜〜〜ッ!!!!」
追記修正お願いします。
- 異世界?も現実も難易度高すぎて・・・監督はヘルボーイの人だったのか -- 名無しさん (2013-03-21 11:56:01)
- シンプソンズのハロウィンスペシャルのOPでかなり優遇されていたな。ちなみにこのOPもデル・トロが監督 -- 名無しさん (2013-10-07 22:56:57)
- ペイルマンの手目は仮面ライダーZOのコウモリ怪人にソックリ。アイズドーパントも仲間かな。 しかし、かなりよく出来た映画。他のファンタジー映画とは雰囲気や完成度が違う。オーディオコメンタリーでデル・トロが解説してたけど、パンは登場するごとに少しずつ容姿が綺麗になっていくが、それに比例して行動が悪魔的になる。見かけにとらわれないオフェリアの心を試すためだとか。あと、実はペイルマン=パン。 -- 名無しさん (2013-10-07 23:25:54)
- 残酷でやるせないけれども、美しい映画だった。 -- エブリン (2014-07-23 21:38:39)
- パシリム放送記念に、この作品も地上波のゴールデンで放映して欲しい(おそらく無理) -- 名無しさん (2016-03-10 18:43:08)
- ペイルマンは日本妖怪の手の目がモデル ライダーのも恐らくそれがモチーフだろう ついでにパンはギリシャ神話のパンとは何の関係もない、監督が子どものころにみたと言い張る存在と同一 -- 名無しさん (2018-07-11 09:13:46)
- ラストのアレが妄想の可能性もあるしなぁ -- 名無しさん (2018-08-02 15:21:36)
- ↑この映画は2通りの見方ができるからね。姫が長く苦しい試練を乗り越え、ついに真の姿を取り戻して故郷へ帰る話なのか。実父の死と不仲の継父、日々弱る母、戦争…ストレスに苛まれた少女が妄想を発したのか。 -- 名無しさん (2019-07-05 13:13:00)
- ペイルマンの動きはどこかカブキの見え切りのようにも見える -- 名無しさん (2021-10-31 11:02:21)
- 監督がコメンタリーで話しているけれども背景となっている戦争描写にも力をいれている作品 -- 名無しさん (2023-04-13 19:48:14)
- ビダル大尉にかぶせる怪物論や何が本質的に彼にとどめをさしたのかもコメントを観てほしい -- 名無しさん (2023-04-13 19:49:29)
最終更新:2024年01月23日 13:58