バッタ

登録日:2024/01/22 Mon 01:09:00
更新日:2025/05/23 Fri 22:09:44
所要時間:約 ? 分で読めます




バッタとは直翅目というグループに属する昆虫の総称である。
漢字では飛蝗、英語ではGrasshopper(グラスホッパー)という。
なお直翅目(バッタ目)はバッタ亜目とキリギリス亜目に大別でき、単にバッタと呼ばれるのは主に前者。
後者のキリギリス亜目にはキリギリスやコオロギ、スズムシ、カマドウマ等が含まれる。

+ 目次


【概要】

日本では、夏から秋の季節にかけて姿を現す昆虫。
発達した後ろ脚と同じく発達した翅、そして例外こそあれど、ほとんどの種が緑色の体色を持った姿をしているのが特徴。
危険が迫るとその発達した脚力を存分に生かして飛び跳ねたり、更にそこから飛行に繋げて逃げる事でも有名。

主に背の高い草の生える草原に好んで生息するが種類によっては森林や荒れ地、果ては砂漠に生息しているものもいるなど、意外と様々な環境に生息している。
世界中に1万5千種が存在し、その内390種が日本に生息、固有種も多い大所帯グループ。
メスの方が大柄である。
卵は主に地中に産み付けられるが生まれた幼虫も直翅目に共通して芋虫の時期がなく、翅がないことを除けば成虫にそっくりな姿で生まれてくるのだ。
これまた直翅目に共通する点として蛹を介さずに脱皮を繰り返すことで幼虫から直接成虫になる成長サイクルを持つ。
専門用語ではこの成長サイクルを不完全変態と呼ぶ。

全ての種が草食性であり、イネ科の植物を好んで食べるが後述の通り飼育下ではキュウリニンジンなどの野菜もよく食べる。
しかしその食性故にイナゴを含め農家からは厄介視・敵視される事がある上、時に大発生して壊滅的な被害を与えることもある。

ちなみに捕まると口から黒い液体を吐くことがある。
これは未消化物…言うなればゲロであるのだが何故ゲロを吐くのかは不明であり、捕まったストレスから吐くとも、手などに付着させて捕食者に不快感を与えることで解放させるためとも言われているが、研究が進んでいない為か未だに結論はついていないという。

尚、見た目が似ているイナゴとは同じ仲間でありながら地域によっては別の虫として区別される事が多い。
イナゴに関しても当項目では扱う事とする。


【変異について】

種類によっては餌の不足や個体数密度が高くなるなどの環境変化を感じ取ると次の世代から個体群レベルで通常の個体とは違った姿に変異する生態を持っている事でも有名。
そうした変異のことを相変異と、その変異が生じた個体群の事を群生相と呼ぶ。

具体的に言えば従来の個体よりもシャープな体型になり、後ろ脚が短くなる代わりに翅がさらに大きく発達し、飛ぶことに特化する変化が生じるのだ。
通常の個体より悪食になる傾向にあるようで、普段は食べないような植物や紙を齧ろうとすることまである模様。
地域によっては稲などの作物を根こそぎ食い荒らしてしまい、人間の生活にも少なからず影響を与える。
特に砂漠のような食べ物も限られる地域ではそれが人間の生死にも繋がる死活問題であり、
古の時代に大発生し作物を食い荒らす様が聖書における悪魔・アバドンのモチーフになったと言われているのだ。

この群生相の大量発生によって起こる災害を蝗害と呼び、昔から今に至るまで多くの人々を苦しめてきた。

たびたび「大発生した個体を鳥や人は食べるとかで数は減らせないのか」と言われているが、群生相に変異したバッタは普段は食べない有毒植物も食べてしまい、その毒が蓄積されるので危険。
鳥もその事を知っているようで変異したものは食べない。
実際に大発生した地域では鳥は居なくなっている。

変異する条件から、相変異するのは「より餌の豊富な場所を求めて長距離を移動できるようになるため」、その道中も適当な食べ物でも食い繋げるようにと悪食になるという説が有力。
早い話が大がかりな引っ越しの準備で、簡素な食事にも慣れておこうとする訳だ。

ちなみに群生相となったバッタを「イナゴ」と呼ぶこともあるが、種としてのイナゴとは別物である。
なのでイナゴとは言うが実際はバッタなのである。

本当のイナゴはこういう群生相を起こさない。つまり蝗害はイナゴによるものではないのだ。


【主な種類】

・トノサマバッタ

殿様飛蝗。
ご存じ日本を代表するバッタにして、ザ・バッタな代表種
緑色っぽい体色を持っている事で知られるが、茶色っぽい個体もそれなりにいる。
後述するサバクトビバッタほど知られていないがこの種も群生相になる。
実際に日本でも北海道沖縄県関西国際空港でこの群生相が大量発生したことがある。
もっとも、日本は平地がすくないためにバッタの群生相が起きにくい土地柄らしい。
最近ではウェブ配信作品『仮面ライダーBLACK SUN』の黒殿様飛蝗怪人態/仮面ライダーBLACK SUNと銀殿様飛蝗怪人態/仮面ライダーSHADOW MOONのモデルにもなっている。

・クルマバッタ

車飛蝗。
上記のトノサマバッタにかなりそっくりな外見な大型のバッタ。
しかし比較するとこちらは大きさがやや小さく、翅に黒いラインが入っている事で識別可能。

・ショウリョウバッタ

精霊飛蝗。
メスの全長が最大14センチにもなる、日本最大のバッタ。
まず他種と見間違えることはない細長い体型が特徴。
後ろ足を掴んだ時の独特の動きから機織りバッタと呼んだり、オスは飛ぶ際にキチキチと音を出す為キチキチバッタと呼んだりもする。
仮面ライダーカブトに登場した仮面ライダーキックホッパーパンチホッパーもこのバッタがモデルとなっている。

・オンブバッタ

負んぶ飛蝗。
ショウリョウバッタを二回りくらい小さくしたような姿のバッタ。
交尾時以外にも小さなオスが大きなメスの背中に乗っていることが多いのが名前の由来。
近年はアカハネオンブバッタという酷似した外来種が日本に定着しているという。

・イナゴ

蝗。
トノサマバッタと形は似てるがかなり小型のバッタ。
前述の通りバッタの1種・・・というか1グループで、コバネイナゴ・ハネナガイナゴなど数種類いるがどれもよく似ているため専門家でないと正確な同定は難しい。
ちなみにイナゴ類をほかのバッタと見分けるポイントは前脚の付け根の間にある突起。分かるかそんなもん
秋にかけて稲などの穀物を食害する。
薬用や食用などに利用され昔から日本人の生活に馴染んでいた。
蝗害の代表みたいに言われ、稲を荒らす害虫には違いないがこのバッタ自体は群生相になる能力を持たない。

・サバクトビバッタ

砂漠飛び飛蝗。
主にアフリカ地域に生息しているバッタ。
上述した相変異による群生相に変異する種の一つでもあり、尚且つその中ではもっとも知られた種でもある。
普段は黄色っぽい色なのだがその変異が生じると色が灰色っぽくなり、翼が発達した姿に変化する。
聖書にもそう書いてあるので勘違いされやすいがアバドンのモチーフになったのは実はイナゴではなくこの種であると言われている。
また、はっきりと明言されたわけではないがその体色からファンの間では仮面ライダーゼロワンのモチーフも
この種ではないかと言われている。

ロッキートビバッタ

ロッキー飛び飛蝗。
19世紀まで北米大陸でごく普通に見られたが、今では絶滅種。
だがその絶滅の経緯の謎や蝗害の規模の巨大さなど、現在もなお解明されていないミステリーを抱えた種。
詳しくは項目参照。

・シタベニオオバッタ

下紅大飛蝗。
中南米からメキシコにかけて生息する世界最大のバッタ。
体長は最大14.5センチ、翅を広げると22センチにも達する。

・ノミバッタ

蚤飛蝗。
世界最小のバッタ。
成虫でも4~6ミリ程度にしかならず、まさにノミぐらいの大きさである。
小さすぎて調査しきれていないきらいがあり、実際2020年には本州でも新種"マミジロノミバッタ"が記載された。
身体に比して巨大な後足を持ち体長の100倍以上のジャンプが可能。
この小ささになると表面張力の影響を強く受けるため水面を跳ねることもあるなど機動力は極めて高い。


【バッタに関するあれこれ】

中東においては上で述べた大発生した群生相のバッタによる作物の食害(蝗害)に苦しめられた歴史からあまりいい扱いをされることはなく、寧ろ悪魔の象徴や滅びの象徴として扱われてきた。
いわゆる黙示録の獣における“飢餓”の内に含まれているともされ、キリスト教など欧州から中東にかけての宗教•神話などでは終末、魔王と称されることも。

中国でも猛威を振るっており、広範囲で食料を食らい尽くすのに加えて、一度起きると数年に一回という頻度でまた再発するため、飢餓が長期間広範囲にわたって広がり、国が滅びかけることもしばしば。
715年の唐の時代には宰相姚崇の提言により「広い地域に壕を掘っておき、夜中になって火を付ける。そうして夜の闇に浮かぶ炎の海にバッタを飛び込ませる」と言う方策が取られ、大成功。当時山東一帯にはびこっていた蝗害を鎮静した。

一方で地域によっては貴重なたんぱく源としてイナゴが捕獲され、佃煮などに加工されて、御馳走となってきたところもある。
その見た目から敬遠されがちだが、いざ食べてみるとエビに似た触感と味で意外なほど美味しい。
このあたりは昆虫食共通の特徴か。ハチとかも美味しいらしいし。

しかし、サバクトビバッタの群生相は味が悪いんだとか。
これは、群生相が「周囲に食べ物がないので、兎にも角にも遠くへ行ってそこで卵を産む」だけのフォームであり、体内に栄養を溜めることなく成長と移動に費やしてしまうので、体が大きさの割にスッカスカになるからである。
普段なら敬遠する毒草なども一秒でも長く生き延びるためにためらわず口にするので、有害物質が体内に溜まってることも多く、食べるのは危険ですらある。


【バッタをモチーフとしたキャラクターなど】

本来バッタはその脚力を逃げることにしか使わない、被捕食者の草食昆虫である。
身近な虫取りの対象として定番でこそあったものの、勇ましい姿と高い戦闘力を持つカブトムシやクワガタ、カマキリほどの人気はなかった。
そんなバッタの脚力を蹴り技に利用するというアイデアで印象を一変させたのが日本を代表する我らがヒーロー・仮面ライダーである。
バッタの改造人間である彼がその脚力を最大限に生かした必殺技ライダーキックで悪を粉砕する姿は子どもたちの心をわしづかみにした。
以後、バッタをモチーフとするキャラはほぼ例外なく仮面ライダーの影響を受けており、蹴り技を得意としていることがほとんど。
というか単にバッタモチーフと書いてありながらも外見や設定が明らかに仮面ライダーを意識しているケースも少なくないほどである。
また近年では蝗害と群生相の知識も広く知られるようになり、ヒーロー然とした印象とは対照的な、天災をもたらす害虫としての側面をクローズアップされることもある。

他にも急加速と急停止を繰り返すMSも、対峙したパイロットによって「なんだありゃ、バッタか?」と称された。宇宙コロニーにバッタっているんですね。

ファイアーエムブレム 烈火の剣』の最初のボスはバッタという山賊だが、いわゆるGBAにおける山賊の戦闘モーションはを手にジャンプして頭をカチ割ろうとするもの…
だが命名の真相は不明。


★神話・伝承

★特撮

★漫画、アニメ

★映画


★バラエティー番組
  • バッタモン(『笑う犬の情熱』内のコーナー「森っ子カブタン」)
  • 藤原マーケット、田崎マーケット(『はねるのトびら』内のコーナー「ギリギリッス」)

★楽曲
  • グラスホッパー物語(みんなのうた)

★玩具

【余談】

  • 上述する大発生して作物を食い荒らす伝承からか、ハゲワシと同じく利益になりそうなものに寄って集って食い物にしようとする輩への蔑称としてイナゴと呼ぶことがある(例:ネットイナゴ)。
    しかし実際に大発生するのは何度も述べている様にイナゴではなくサバクトビバッタの方なので、これは厳密には間違いである。

  • 「正規の流通ルートで仕入れたものではない(正規)品」もしくは「偽物の商品」を意味する俗語『バッタもん』。この由来も一説によればバッタである。
    • まず、「バッタもん」とは「バッタ屋が扱う商品」のことであり、バッタ屋とはバッタの様にあちこちに店を移転する、もしくは商品を他の店へ次々と移動させる様からそう呼ばれるようになったという説がある。
    • ただし、「バッタ屋」自体の名称の由来は昆虫のバッタ以外であるという説もあるため、実際のところは不明。

  • 総菜の揚げ物の原料に「バッタ粉」の記載があり、折しも昆虫食―コオロギ粉末が話題になっていた時期でもあり、『バッタの粉を使用しているのか!?』と話題になったことがある。
    • 当然そのような事実はなく、バッタ粉とは「バッターミックス粉」つまりはバッター液(衣にするための生地)を作るための粉のことである。

  • ジャンプを繰り返して移動する事にちなみ、格闘ゲームなどにおいてはジャンプを多用するプレイスタイルを「バッタ」と呼んだりもする。特にジャンプが高性能で空中攻撃が強いキャラはバッタが強い戦法になりやすい。
    ただしお手軽ワンパターン戦法を揶揄するネガティブなニュアンスを多く含むため、使い所には注意したい。


追記・修正お願いします

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • アニヲタ昆虫図鑑
  • バッタ
  • 飛蝗
  • イナゴ
  • グラスホッパー
  • 仮面ライダー
  • 蝗害
  • グラスホッパー
  • ホッパー1
  • ジャンプ
  • Grasshopper
  • 直翅目
  • 害虫の皇
  • ウヴァ
  • 仮面ライダーシリーズ御用達
最終更新:2025年05月23日 22:09