ダーリス・フレイヴァンディスター(マーカス語:
DIRIZ FRAIVENDISTIR)は
マーカス連邦のアンドロイド開発者、アンドロイド工学研究者。
ゼラエ・ストラメウトが開発したエゴイズム思考AIへの協力、その後は
リヴァダー社の開発チームに所属し、
戦闘思考AIを開発したことでも知られる。
生い立ち
マーカス連邦の首都である惑星マーカス4のアルアック・メルダーにある中産階級の家に生まれる。
父親は医師であり、幼少期から厳しく育てられた。
当時のメディアに影響されてアンドロイド技術者になりたいという夢を持つようになるが、父親に「
才能がないから普通にやめておいた方がいい」と反対される。しかしダーリスは諦めず勉強を続けた。
学生時代
父に「
スモラク大学の医学部に合格できたらお前の夢を認めてやらんでもない」と言われ、最上位ランクのスモラク大学の試験に2浪して挑むが不合格。
ブチギレたダーリスは滑り止めで合格したテルティック大学工学部で
アンドロイド工学を窮めるため家出した。
エントロピー思考AI
1714年にエントロピー思考AIを開発。元々はゼラエとの共同開発であったが発表直前のトラブルで共同開発チームを脱退したため、ゼラエ単独の功績となる。
アイローム社は問題を起こしたダーリスに厳しい制裁を下し、左遷を命じた。その頃ちょうど
リヴァダー社CEO
ヤラック・ティラルドーの誘いで
リヴァダー社の研究員になった。
戦闘思考AI
1726年にゼラエがエゴイズム思考AIを開発すると不眠不休の研究を続け翌1727年に戦闘思考AIを開発する。
リヴァダー社の新型高性能戦闘アンドロイドに搭載され、以降もリヴァダー社製アンドロイドの根幹として活用されたものの、国際社会ではアンドロイド人権問題が提唱されるようになってこの戦闘思考AIが問題視されるようになったため、リヴァダー社は話題を逸らすためにダーリスに自主退社勧告を発し、辞職させた。ちょうどこの頃、研究の反動で身体はボロボロになっており、とても研究を続けられるような状態ではなかったことも彼に辞職表を提出させる動機になった。
死去
その後、ダーリスは
アンドロイド開発の舞台から去り、1751年に自宅で病死。死因は大動脈瘤の破裂であった。
評価
ダーリスはしばしば
ゼラエ・ストラメウトの手柄を横取りしようとして失敗した挙げ句、
戦闘思考AIを開発したためアンドロイド人権を侵害し、キャリアを台無しにしたアンドロイド開発者」と言われた。
…………と思われていたが、後年の研究で定説が覆された。
実はダーリスがゼラエに反発したのではなく、ゼラエがダーリスを裏切ってのけ者にしたのではないかと言われている。
エゴイズム思考AIと遠隔操作チップ
エゴイズム思考AIを共同開発した1726年、ダーリスはアンドロイドにウイルスの感染等に備えるため、緊急時の集団遠隔操作チップを埋め込むことを提案した。共同開発社のゼラエはその提案を受け入れ、遠隔操作チップは導入された。
しかし、エゴイズム思考AIを発表した直後、遠隔操作チップ自体のセキュリティに脆弱性があることにダーリスは気づいた。ダーリスはゼラエにこのことを伝え、「最悪の場合、エゴイズム思考AIを搭載している全てのアンドロイドが第三者に乗っ取られる可能性がある」、「今すぐ発表を取り消してエゴイズム思考AIのシステムを修正すべき」と訴えたが、発表してしまった手前、ゼラエはその提案を拒絶した。
ゼラエがリリースに踏み切った理由は、長年の夢であったエゴイズム思考AIの成果をどうしても急いでしまっていたと考えられる。
しかし、ダーリスは開発者倫理と自身の正義感から「何としても回収して修正しなくてはならない」と主張し、ゼラエに対して「自分が全ての責任を負い、仮にこれまでのキャリアを棒に振ってでもこれを行う」と宣言。
だが、ゼラエはダーリスのこだわりで自分のキャリアすら棒に振る可能性を恐れていた。それゆえに、ダーリスから共同開発者の地位を剥奪し、エゴイズム思考AIのリリースに向けて準備を始めたのであった。
関係の破綻
何度忠告しても修正を拒絶したゼラエは、ダーリスを自分のキャリアを脅かす危険な男だと思うようになり、ゼラエがエゴイズム思考AIの成果で
アイローム社内で昇進し、瞬く間に権力を手にすると、ダーリスの身柄を拘束するよう働きかけ、彼は
リヴァダー社所有の施設に軟禁されることになる。
ダーリスの倫理
この間、ダーリスはエゴイズム思考AIの特許権を放棄し、
大宇宙連合会議に現状を訴え修正を求めたが、ゼラエの仕掛けた政治的陰謀によりことごとく揉み潰された。
ゼラエが差し向けた
エルミア共和国特殊部隊「
エルラー・プリモント」所属のエージェントの監視をかいくぐって何度も何度も脱出や通信を試みるも全て失敗。
ゼラエが内戦の惨状に絶望して集団遠隔操作チップを起動しようとして射殺される時もただ失意の中で、ただ死ぬこともできずに見届けることしかできなかった。
しかし、彼は知っていた。人権が認められようとしている機械仕掛けの生命体が不当に、彼の知っている人の手によって、いかようにも操作されうることを……。
後世の評価
- 周囲から無理だ無理だと言われながらも努力でアンドロイド研究者になり、同じ志を持つゼラエと二人三脚で開発に没頭していたが、目先の欲にくらんだゼラエの目を覚まさせるようあの手この手で説得するも失敗し、自分の引き起こした過ち(チップの搭載)の責任をとることもできず、しかし自分の生い立ちゆえに人並み外れた根性と意志を持つゆえに絶望的な状況でも諦めきることもできず、必死にもがきもがいたが結局何もできずに歴史の闇に葬られた悲劇のヒーロー。
- ダーリスは正義の男だった。しかし、彼が自分の運命をここまで苦しめたのは、少しばかり他人よりも忍耐力が強すぎたからだった。
ゼラエに対する評価
一方のゼラエは現在のエルミアでこう評されている。
- 悲劇のヒーローでありながらダーリスを苦しめた悪党でもある。
- ゼラエは家族を養うための発明でもあったから成果を急いでしまったのだろう。
- それに、技術者は誰でも長年の夢の一歩手前に来ていたら正しい判断ができなくなるものではないか。
…………そして、もう一つの噂が存在する。
ヘスロン・スロンコ首謀者説
ヘスロン・スロンコ首謀者説とは、ゼラエとダーリスの共同開発チームにいたもう一人の人物「
ヘスロン・スロンコ」が二人を騙し、国際世論を意のままに操ろうとしたのではないか、という説である。
この説はあくまでも陰謀論の一つであり、証明されていない。
ヘスロン・スロンコとは
ヘスロン・スロンコは前述の通りアイローム社時代にゼラエとダーリスと一緒にアンドロイド開発に携わっていた人物。エルミア人である。
また、ゼラエ博士が
アンドロイド人権活動家として各メディアで発言している時期には、ヘスロンはダーリス博士に同情して反ゼラエ派の評論家・活動家として活動していた。ゼラエとも何度か対談や討論で論戦を繰り広げた人物であり、当時はリヴァダー派の支持層の厚い思想家としても活動していた。
ヘスロンの本性
そんなヘスロンであるが、彼は「ダーリスを罠に嵌めた人物」であると噂されている。
ヘスロンはダーリスに同情しているフリをしているだけだったと考えられており、反ゼラエ派は確かに当時のメディアには非常にウケが良い。
実はヘスロンは裏でゼラエ博士とズブズブにつながっており、二人はエゴイズム思考AIの不祥事を隠蔽するためにマッチポンプを行い、
アンドロイド人権活動家を演じることで世間の話題を逸らそうとしていた。
裏切り
しかし、ヘスロンはゼラエより一枚上手だった。
ゼラエはヘスロンに出し抜かれたことに気がついて発狂し、
アンドロイドを乗っ取って反乱を起こそうとしたが殺害されてしまったのである。
ゼラエ博士を暗殺したのは
ファルトクノア共和国の
619部隊であることは広く知られた事実だが、実際のところ619部隊はゼラエ博士が時間稼ぎのために放った護衛
アンドロイドとの戦闘に手こずり、暗殺はしていない。
ゼラエ博士を実際に暗殺したのは
エルミア共和国の特殊エージェント部隊
エルラー・プリモントである。エルラー・プリモントはその後619部隊の戦闘に加わり、共同で護衛アンドロイドを撃破した。
ヘスロンの正体
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最終更新:2022年03月23日 23:09