White page(前編) ◆gry038wOvE



 二日目、昼。
 ゲーム終了まで、残り二時間。






 過程の一部を省く事になるが、既に冴島邸には、既に沖一也左翔太郎血祭ドウコク、外道シンケンレッドらが揃っていた。彼らの道中では、高町ヴィヴィオの死の連絡もあり、翔太郎と一也がやや浮かない表情をしている事であった。
 ドウコクは酔いこそ覚めている様子だが、人間の目からは彼が酔っているやら酔っていないやら判別がつかない。顔色は酔っ払いより赤く、その素行も酒の力を借りずとも十分に乱暴な怪物なのだ。外道シンケンレッドの方は、戦い以外に関しては無関心といった様子で、戦いのない時は置物の一つと変じる事ができた。所詮は魂なき従者である。

『本当によくできていやがるな……』

 家の中を観察してそう呟いたのは翔太郎の左中指にはめ込まれたザルバである。
 この家の中を一番よく知っているのは彼であった。ザルバ専用の寝床もある。確かに、鋼牙たちが住まったあの家と何一つ変わらないようだった。──『Sleeping elderly woman』というあの絵に至るまで。
 ただ、これはザルバの勘だが、参加者や支給品こそ現物そのものだが、建造物は実物が持つリアリティとはどこか気色が異なっていた。

「あ、ああ……そうだな」

 翔太郎が知りもしないのに適当な返事をした。園咲家ほどではないが、やはり豪邸と言っていいランクの家である。緊張もある。
 彼らは他チームに連絡を行った後、他のチームがやって来るまで、次の行動を冴島邸で待っていたのだった。冴島邸の周囲には戦闘痕があったが、冴島邸の中身はほとんど無傷と言っていいほどに内装は手がかかっていない。志葉屋敷という和の豪邸を離れてみれば、今度は冴島邸という洋の豪邸にいるのだから、凡人の翔太郎としては気が気でない様子でもあった。家具一つ壊してしまえば、依頼何度こなせば元が取れるのかわからないほどである。
 ただ、既にその心配の原因となるはずの、この邸宅の主がいないのが切ない限りだった。

(……まずい。非常にまずい)

 と、こう思考するのは翔太郎だけではない。実際、翔太郎も確かに家具に座るだけで少したどたどしいが、これほど緊迫した内心ではない。
 焦燥感に鼓動を速めているのは沖一也であった。
 先ほどから少しずつ、スタッグフォンを通してバットショットの観察を行っているが、到底そこにある映像はドウコクに見せられる物ではなかった。ほんの二時間半ほど前に映ったバットショットの映像だが、これが一也にとって極めて問題になる映像だったのである。


 ──あの時だ。






 翔太郎に右腕の移植手術を終え、電話連絡も終えて、バットショットの映像を確認した時。
 その映像の中で、うっすらと見えたのは、妙な黒い実線だった。実線は地上から空のかなたまで続いていた。大気圏内に終わりがあるとは思えなかった。「軌道エレベーター」というものを彼は思い出した。しかし、最初は、ただ画面が荒れて、実際にはない物が映っているだけなのだろうと思った。
 荒れた画面からは想像もつかない物であったが、時間を経るにつれ、それが確固として地上から生えている物だと気づいた。線ではなく、塔と呼ぶべき代物──。
 何か嫌な予感が始まる。
 バットショットも、それを察知し、反応し、意識し、やがてそれを目指して飛行しているように見えた。
 バットショットが進んでいく。
 目的なき旅が悪の根城を探る正義感の旅へと、──そう変わった事で、少し使命感を固めたようである。バットショットは心なしか、スピードまで速まっていた。

 あれが何キロ先にあるのかはわからない。
 しかし、バットショットはその一メートルでも近くに接近し、画面の中の塔を一層巨大に映してやろうと目論んでいたはずだった。
 まっすぐに、
 まっすぐに、
 まっすぐに、

 そして、────次の一瞬、バットショットの映像は途絶えた。

 一也が肝を冷やした。
 今一度、一也はその瞬間の事を思い返した。
 画面の端に黒い影が映ったかと思いきや、コンマ一秒でその黒は画面全てを覆い尽くした。それが何とは一也も考えなかったが、次の一瞬にはバットショットも既に、音も立てぬ間にスクラップである。
 心臓の肝が温まる前に、映像は砂嵐へと変わった。見知らぬ世界を見せてくれるスコープは二度とその視線を見せてはくれなかった。それから先はどれだけあがいても雑音だけが聞こえ、白と黒の不快なモザイクがかかるだけであった。
 驚いたとしても、もう既に手遅れだったのだ。

 おそらく物理攻撃を可能とする巨大な「闇」がバットショットを潰し、海に廃棄したようだ。己の根城に向かってくる不審な物体を破壊し、己の場所を守ったらしい。

 ……あったはずの手がかりは、今はもう、どこにもない。
 一機、優秀な機械がその使命を終え、機能を停止した。最後にバットショットが送った映像がこちらに届いたのは不幸中の幸いだが、今となっては、一也だけが見たあの地上から伸びている謎の物体の「記憶」だけが手がかりであった。






 あれを誰かが隠しているのだ。それこそ、地平の反対側にでも行かなければあの物体には近寄れないだろう。
 ……主催の基地とはおそらく違う。あんな巨大で歪なものを基地にする必要はどこにもない。

(……手がかりとして翔太郎くんにも伝えたいが、口にしたところでどうにもならない。バットショットが破壊されたと知れば、ドウコクはおそらく──)

 一也はしばらく悩んでいたが、悩みながらも前に進もうと考察していた。バットショットの主である翔太郎にその最後を伝えられないのは心苦しい話だが、やむを得ない。
 今に至るまで、翔太郎に伝える機会は一切なかった。
 ともあれ、こうなれば一也の方針は一つで、ひとまずゲーム終了を待つ事であった。元の世界への帰還方法をあの黒い実線に賭けるくらいしか手立てはない。

「……おい、落ち込むなよ、沖さん……」

 ふと、翔太郎が一也に対して、申し訳なさそうに声をかけた。
 ヴィヴィオの事を気にかけていると思ったのだろう。──それもまた、事実である。
 いくら経験しても、人の死は慣れないものだ。あの少女も死んだと聞くと、頭を抱えて唸りたくなる。そんな衝動も今は抑えなければならないのだ。
 仮にも、仮面ライダーである。如何なる悲しみも見せてはならない。一筋の涙や叫びが人を救えた事は、一也の人生では一度もなかった。
 そして、今、悲しみと同時に強く感じている怒りを向ける矛先は主催陣営にある。彼らを倒す為には、申し訳ないがヴィヴィオの死に追悼する時間さえ惜しいのだ。それができるのは全てを終えてからである。
 翔太郎も同じく、フェイトやアインハルトと関わりのあるヴィヴィオの死を悲しんでいないはずはないが、その想いを噛みつぶしていた。

 この先、短時間でどう生還の術を得るのか、という策を練らねばならない。
 悩めば悩むほどにその術が見つからなくなっていく。

「……いや。大丈夫だ。考え事をしていただけだ。すまないがしばらく話しかけないでくれ……」

 思案の表情を感じ取ったのか、翔太郎は声にならない声を漏らして、倒れるように椅子に坐した。
 まずはドウコクの対処である。
 味方にはなったものの、タイムリミットから後、ドウコクとの離反はほぼ確定する。あの口約束はおそらくこれ以上撤回できない。島の外に行くのに、主催撤退後が最も良いタイミングであるのは一也とて承知の上である。
 しかし、その悠長な作戦をドウコクは許さない。長たる者の宿命として、ドウコクは結局効率的な脱出方法を選ぶ。──。



 ヴィヴィオが減るも、驚くべき事に“代わりに巴マミが仲間に加わり”、残りは十四人。






 こちらは孤門一輝一行である。
 残すは、冴島邸に向けて車を走らせるのみの彼らであった。
 先ほど通った道と同じ道を引き返しているが、乗車定員と速度は随分異なっている。今は時速100kmで走行していた。眠気が視界と判断能力の邪魔をするが、それでも辛うじて何時間かの睡眠はとっていたので、頭がぼうっとする以上の弊害はない。
 普段ならば勿論、運転ができる状態ではないので控えるべきだが、今この時は違った。
 あらゆる違法や無理も通して、前に進まなければならない。

「……というわけなんだよ」
「なるほどね……だいたい状況は理解したわ」

 全ての話を聞き終えた時点で、とにかくマミが顔を顰めた。既に彼女は魔法少女という存在ではなくなっている。だが、それでも、彼女の持つ正義感は衰えず、いまだ敵を救おうという気持ちは変わらない。
 彼女にとっては、殺し合いはまだ、六十六人の参加者を巻き込み、最後の一人を決めるゲームだった。しかし、既に大半の参加者が死亡し、生存者は僅か十四人。──あるいは、さやかが助かれば十五人。それでも五十余名もの人間が、死亡している事になる。その大半が他殺というのだから、普段の常識が通用しそうにない状況だ。
 鹿目まどか、暁美ほむら、山吹祈里、東せつな、ノーザ、来海えりか明堂院いつき月影ゆり、それからマミたちを襲ったモロトフなどといった面々の死に関しても情報を得て、少し落ち込みつつも、まずは自分がどんな状況にいるのかを理解する事にした。

「みんな……疲れているだろうけど、頑張って。私も出来る限りの事はするわ。もし、残り時間が少なくなって、人数が十一人以上いたら──」

 と、そこまで言ったところで、そんなマミの言葉に舌打ちを被せる杏子であった。
 鋭い眼光がマミを横目で睨む。彼女は些か気が立っていた。

「……おい。折角、こっちが命がけで助けた命、無駄にしようなんて話はやめろよ」

 その不快の根源には、確実に高町ヴィヴィオの死という現実があった。
 涼村暁石堀光彦の二名は、一体何をしていたというのか。──大の大人二名が揃いも揃って、主催に油断をして仲間の少女を殺されたという。この車の空気も、その事実が原因で少し重たい。孤門の右足も、強くアクセルを踏み込む事で内心のわだかまりを散らせているようにさえ思えた。勿論、状況を見ていない以上、安易に二人を責めたてる気はないが……。
 そして、孤門や杏子は、ヴィヴィオの死を悲しみながらも、この場にとって利となるであろう行動を優先し、今も杏子はマミへの状況説明を行っていたが、一言、命を投げ捨てるなどという余計な覚悟──あるいは諦観──が杏子の堪忍袋の緒を引きちぎった。
 命の軽視が、この瞬間には何よりも気に入らなかったのだろう。

「こっちはな、お前の為にあんな所まで行って、お前の為に戦って、お前の為に傷を作り、──そして、お前の為に隊を分散させてヴィヴィオを死なせちまった! だが、その事を責めてるんじゃない。それを軽く捨てようっていうのが気に入らねえ」
「────」
「なんで、全部お前の為だったのか、少しは考えろ」

 マミは、ふとラブの方を見た。それでようやく、なるほど、と思った。
 こうまで言った杏子も少し前まで、マミと同じく、最終的には自死する事を考えていた事など誰も知る由もない。だが、この期に及んでまだ生きたい、という生理本能を沸かす者がいた。
 杏子とて死にたがりではない。ただ、生の先にある絶望を回避するのに最も効果的な手段が「死」であっただけである。全く別の手段があるならば、生理的本能が勝るのも無理はない。
 その術が見つかった事は嬉しかったはずなのだが、今はまた違った意気であった。

「……そうね。ごめんなさい。でも、私が力になれる事なんて、今はありそうになくて」

 マミをどこか気重にさせるのは、劣等感だ。
 確かに彼女は魔女でなくなり、魔法少女という柵からは解放されている。だが、それは同時に戦力としての巴マミの有用性がなくなった事でもある。
 今のマミは無性にそれが耐えられなかった。

 彼女が常に守る側として生きてきたからだろう。守られる側の立場になる事で、──最近の例で挙げるなら左翔太郎のように──自分の居場所を失ったような錯覚をするのだった。誰かを守る事が誇りだった人間は、守られる側に回るのが苦手なのである。
 戦力を失ったマミは、是が非でも何かの役に立とうと必死な様子でもあった。

 周囲の目が恐ろしくもある。
 戦場で棒立ちする少女を、周りは疎ましくは思わないだろうか──。声援くらいしかできず、命がけで戦っている間にもあたふたするだけのマミを。
 役に立つ事ができない不甲斐なさは、今そんな強迫観念にも繋がっていた。
 何をしてでも役に立たなければならない。戦いの役に──。
 しかし──。

「マミさん。もう、誰かが死ぬのは嫌です……何もできなくても、何もしなくても、それでもいいから、ずっと生きていてださい……」

 ラブが、俯いて言った。潤んだ瞳を容易に想像させる震えた声だった。
 山吹祈里や東せつなを喪った事実は、まだ何度でもラブを苦しめる。まだ色鮮やかな友人の死の記憶──その思い出と遺体のフラッシュバック。
 役に立つ人など全く欲しくない。生きていて暖かい人が近くにいれば、それだけで十分なのだった。

「……」

 孤門がルームミラー越しに彼女たちの様子を見て、それから口を開いた。

「……マミちゃん、僕だって力はないよ。役に立とうと必死になる気持ちはわかる」

 孤門が半ば自嘲するような落ち込んだ口調だった。
 しかし、一言でも何か、マミを元気づけるような言葉が出れば、せめて口を挟む価値もあるだろうと思った。

「僕なんてこれまでずっと、人間以上の力は出せないんだから。戦いなんて全然できないし、……多分、ここに来てからみんなほど命を張った事だってない。だけど、力がないならないなりにできる事はあるし、ここにいるのはみんなそれを受け入れてくれる仲間たちだ。だから、自分がやれる事だけに全力を尽くせばいいと思う。……君は前にラブちゃんを助けたんだろう。それで今の僕たちがあるんだから、落ち込む必要はない」

 孤門は言わば、ただの人間だ。
 巨悪に立ち向かえるだけの力もなく、何かをなしえるだけの知恵もない。全て誰かが貸してくれた力と知恵で、孤門は人間としてそれをサポートするだけでしかない。今も車を動かすしかできず、他人の役に立っている感覚を実感するのは難しい。誰かを助ける為にレスキュー隊に入った彼が、今もまだ助けられる事の方が多いというのは因果な話である。
 しかし、そんな孤門だからこそ、ガイアセイバーズはリーダーとして彼を迎えたのかもしれない。人間の常識から外れた存在である周囲からしてみれば、孤門は羨望の対象でもありえるのだ。人の身でここまで誰かを救っている彼だからこそ、周囲は彼を適任と判断したのだろう。
 彼の懸命な救助がなければ、ヴィヴィオだって息を吹き返さなかったのだ。それが今の生をつなげている。

「……そう、ですね」

 さっと周りを見て、マミは言った。それは決して、脊髄反射で出された空っぽの返事ではなかった。意味を解し、納得した返事だった。
 マミも、この車の中を見て、孤門という男の役割がわかった気がした。いくら孤門とは別の経験をしているからといって、ラブや杏子は精神的に未熟で不安定だ。ラブや美希や杏子ほど人生経験があるわけではない。
 孤門もまだ若いが、それでも中学生に比べれば十分につらい経験を乗り超えているはずの年齢である。
 しかし、孤門には唯一決定的に、年下のマミにも適わぬ点があった。それは、マミが「ラブや杏子や美希より一年だけ年上の『女』である事だった。それは意外にも十分な取り柄であるともいえた。その視点から彼女たちの支えとなればいい。
 というところで、大まかには纏めである。

 ところで、全く言い忘れていたが、この後部座席には空席がなく、明らかに最大乗車人数をオーバーしている。シートベルトの数も合っていない。右に揺れたり左に揺れたりするとふらふらと横にシェイクされて危険である。

「おぶっ!」

 たまに、全魔法少女中最も大きなマミの胸が横にいる杏子やラブの顔に当たる。女性としての飽くなきコンプレックスと、ひと肌の暖かさが各々の胸を焦がす。ラブも、“つぼみなどに比べれば”全く胸が小さい方ではないが、マミに比べればどうしても劣るのだった。
 まあ、わざわざ強引に描写したこの瞬間は、実にどうでも良い一幕なのだが。
 またすぐ場面を強引に切り替え、今度はルームミラー越し、孤門が時計を見つめた。

 タイムリミットは二時間を切っていた。
 ────その時である。

「ん!?」

 カスッ……しゅるしゅるしゅるしゅる……。

 シトロエン2CVが嫌な音を立てた。エンジンの音が弱まり、ゆっくりと減速して完全に路上に止まった。これはかなり悪い予感がする。
 ガソリンのメーターを見てみたが、これはまだちょっと残っていた。だというのに、エンジンキーに手を伸ばし、捻って見たが、これは全く動く様子を見せなかった。

「……あれ!? どうしたんだ!?」

 孤門がかつてないほどの焦りを見せながら、エンジンキーを何度も回すが反応がない。
 急いでいる時だというのに、何という事だろう。自分が役立てる場所に限って、こういう不幸は起きるのだ。突然のハプニングに慌てる孤門であった。何より、女性陣の前で運転に関する失態である──この気恥ずかしさはしばらく、運転席に座るたびに孤門の中に残りそうだ。
 幸いなのは、これが帰りである事。行き途中ならば洒落にならない話である。

「……どうした?」

 後部座席で、杏子が前に乗り出た。当然、異常には誰もが気づいたのだが、杏子は少し異常に対する素養があった。機械は詳しくないが、時折ながら「叩いて直す事ができる」ような人間でもある。ふとこうしてトラブルがあると、思わず前に出てしまう。

「車が動かないんだ」
「エンストか?」
「違うらしい。もしかして、この車、もうガタが来てるんじゃ……」

 そう孤門が言っている真っ最中に、他の三名も取り乱し始める。
 こんな辺鄙な場所で置き去りにされ、気づいたら十二時──などという最悪な事態が待っている可能性も否めない。

「……」

 涼村暁のシトロエン2CVは本来、こういう車であった。
 この一台の車は、持ち主のお気に入りではあるのだが、既に機械としての限界を迎えている。車検通っているのかも謎だ。
 辛うじてE-2エリアに帰ってくるまでは保ったようだが、あとの3エリア、何とか急行しなければならない。
 とはいえ、やはりエンジンは音を立てる事を許さず、車体の振動もみるみるうちになくなり、平衡になっていった。この車はもう、移動手段ではなく、金属やアルミで出来た芸術品である。鑑賞くらいしか役目はなく、刻一刻と迫りくる時間を縮めてはくれない。

「……仕方がない。この車は乗り捨てよう」
「それでどうやって移動するんだ……?」

 孤門には、一応、対処方法としては考えが一つあった。杏子の疑問に、孤門は躊躇いながらも、その唯一の方法を教える事にした。
 さて──そうなると一層プライドが剥げ落ちてしまうが、それでもこの状況下、方法は一つだ。

「……ごめん。みんな、変身して連れて行ってくれないか!」

 孤門が両手を合わせて頼んだ。変身した魔法少女やプリキュアの力ならば、車並の速さで冴島邸まで駆けられるはずである。ただ、少し情けないのがネックだ。
 言っている傍からこうなるものだから、マミも思わず呆然とする。
 杏子とラブが顔を見合わせ、やれやれと笑った。






 D-4エリア。
 その場所を何とか見つけ出したつぼみと良牙であった。
 そこにあるのは、五代雄介という男の眠る墓である。かの男は、美樹さやかのサーベルに体を貫かれ、今は人間として土の下に眠っている。そこだけが唯一、柔らかい土に埋もれており、たとえ彼の友人であっても鼻をつまみたくなるような異臭の根源となっていた。
 そういえば、埋めた村雨良も、看取った一条薫や冴島鋼牙も、考えてみればもういないのだった。誰よりもそこに来るべき者は、一日以上の時を経て、ようやくこの墓前に立つ事ができたのだ。

「……」

 美樹さやかは、案内されるなり、その場所で口を閉ざした。
 勿論、この墓を作る原因となった事に、悪意はなかった。しかし、突発的に五代雄介という人間を殺害して、物言わぬ死体にしてしまった事を決して忘れてはならない。
 しかし、悪意の有無と、人殺しの事実は無関係である。正真正銘、そこに悪意が微塵もないならば、深く気に病み続けるわけにもいくまいが、平和に過ごした人間ならば、悪意の有無で自分の行いを正当化できないのだった。

(五代さん、ごめんなさい────)

 一人の人間の死に関わり、更にその周囲の人間の心を痛めつけた事実は決して揺るがない。さやかの握った刃が一つの命を奪い、またこの殺し合いの運命をいくつも変えていったのだろう。
 何か言葉をかける事もなく、少女はただそこで祈った。真っ白な頭の中で、必死で五代雄介の事を思い出そうとした。申し訳ない事だとは思うが、殺人という非現実の中で、目の前にない物は全て幻のように靄がかかるのだ。自分が殺人を行った事と結びついてしまう、五代の記憶が、まるで夢の中の存在のように曖昧だった。
 さやかは、必死で考えた。その名前だけを何度も唱え、ほくろの位置や少し長めの髪型といった身体的特徴を反復した。やがて、五代雄介の顔はふとさやかの脳裏で思い浮かんだ。

『さやかちゃんはゾンビなんかじゃない!』

 そうして苦労して絞り出した記憶の中の言葉が、嬉しかった一言であるのは、乙女の必然であった。
 思い出すと、頬に自然と涙が伝った。
 自分の罪は嫌というほど自覚しているから、そこから逃避する感情はいくらでも湧きあがる。そして良心の全てが、この一瞬を忘れまいと頭に全てをインプットする。
 彼女は、自分の罪ではなく、五代雄介がもうこの世にいない事を嘆いて、泣いていたのだった。自分の罪を自覚する涙では、こうも感情は揺れ動かなかった。
 あんな一言をかけてくれた五代という男が、人間として、どこか好きだったのだろう。
 まるで、大切な身内を喪ったような、そんな涙だった。後悔よりも、彼の死そのものに捧げられた涙だった。

「ッ……────」

 できる事はなかった。
 いずれそこで五代雄介に会う、その時まで──ここにいる仲間を守る。
 せめて、これからは運命を良い方向に変えていきたいと、そう願い、誓った。
 目にも、鼻にも、唇にまで涙や液体を留めた。その嗚咽をつぼみはよく聞き、しばらくさやかの肩を抱いて慰めた。
 さやかからは、言葉らしい言葉はなく、ただ、泣き声だけがせわしなく漏れていた。
 良牙と零は一歩離れた場所で、その様子を俯瞰で見ていた。

「──おい、良牙」

 第一声を投じたのは零であった。生前の五代雄介という人物に一切関係のない彼は腕を組んで木に凭れていたのである。彼は、良牙にだけそっと近づき、話しかけた。
 彼も関心がないというわけではないが、全くの他人の死に深く悲しめば、それこそ却って本当に悲しんでいる人間には失礼だと思えた。こういう時は、なんでもない振りをするのが一番の優しさなのだ。困った振りをするのも、同調して悲しんだ振りをするのも、何もかもが無礼そのものである。
 人間の成長を見届けた後は、彼も冷徹にそう言い払うしかない。
 人の死の悲しみを彼が知らないはずがないのである。──その時に最も失礼の態度を選んだつもりだ。

「なんだ?」
「先に俺だけで目的地に向かう。連絡が取れないままだと向こうも心配するだろ」

 零は、こうして無関係な自分がここで全て眺めている事に居心地の悪さも感じていたのだろう。気を使わなければならない人間がいる──という事に、気を使わせてしまうかもしれない。
 彼女たちはここですぐに泣きやむ必要はない。泣き止むのを待って、それから行けばいい。
 しかし、零はそれを待つきはなかった。連絡が取れない現状、冴島邸の面々は心配しているかもしれない。幸いにも冴島邸はここからそう遠くないので、零の単独行動時間も短く済むだろう。

「あ、ああ……だが」
「二人は頼んだ。俺は一人の方が慣れてるし、何とかなる」

 良牙は出かかった言葉を仕舞い込み、「わかった」と返事をした。
 零は、何の気なしに、背中を向けたまま片腕挙げて、気障に去った。
 彼とて、急ぐのだろう。
 いや、急いでもらわなければ困る。

 良牙がいる場所に残されたのは、泣きすすぐ少女と、それをあやす少女。──良牙は物憂げに彼女たちを見つめていた。

(償おうとすれば、何度だってやり直せる……そう信じたいよな)

 たとえ、ここまであかねがどんな罪を重ねていたとしても。
 良牙は、あかねにこの少女の如く償おうという意思があるならば、ここにいる全員さえも敵に回してあかねを守ろうという気持ちがある。それはあかねを一人の女性として恋し、友人としても十二分に好きな相手だったからだ。
 乱馬への恩義でもある。


 しかし────。


 運命は、良牙が思っている以上の残酷を強いる時もある。






 涼村暁たち一行が冴島邸辿り着くまで、さほど時間はかからなかった。
 道中、苦難や障害は無く、ただエンジンを蒸してそこまで車両を走らせただけであった。
 リクシンキ、そして仮面ライダーアクセルの二機は、それぞれ涼村暁とレイジングハート・エクセリオンを載せて到着する。
 おおよそ、残り二時間が差し迫ったほどだった。
 あの後、あそこで少しでもヴィヴィオに関する何かが残されていないかと探っていたものの、それらしい物は一切見当たらなかった。

「────さて」

 仮面ライダーアクセルは装甲を解除し、再度、石堀光彦に姿を変えた。
 一行が辿り着いた冴島邸。
 連絡の通りならば、既にこの場には沖一也、左翔太郎、血祭ドウコク、外道シンケンレッドの四名がいるはずである。
 石堀という男は、この瞬間も胸を躍らせていた。引きつった笑みが思わず漏れる。
 携帯電話を通した連絡ではなく、石堀自身が持つ超常的な力のお蔭で飛び込んだビッグニュース。

「遂に来たか……」

 ああ、思ったよりも短かった。
 光が一人の女性の元に渡ったのである。



『────蒼乃美希



 いかにも、多人数のパーティの中で目立たない、ごくごく普通の少女であるが、その実態はプリキュアの一人であり、新たなる光の継承者である。よもや、石堀がこの瞬間、裏切りのシナリオを組み立てたとは知らず、新たな光の継承を希望的にとらえている事だろう。

 姫矢准、千樹憐、佐倉杏子──そんなデュナミストたちでは駄目だった。彼らは絶望を知りすぎている。
 表沙汰されない日本社会の闇を知り、その故国から離れた激動と狂気の紛争地帯を知り、その中で一筋の幸せを奪われた経験のある姫矢では駄目だった。
 危機を察知する為に悪戯に生み出された無数の命の一つであり、その中で唯一、確実な死期を待ちながら、絶望のカウントダウンを生きる憐では駄目だった。
 願いの代償に家族に疎まれ、やがて自分の宿命さえ賭けて守った家族が自壊していった絶望を知る杏子では駄目だった。
 石堀は、光を奪う時には、例に挙げた彼らよりも、数段「普通」の暮らしを生きる人間から得なければならなかった。その為、光を得る素養がある人の中でも、西条凪や孤門一輝のような普通の幸せを噛みしめていた人間を襲った。彼らが貯め続けた「アンノウンハンド」への憎しみを利用する為に。
 蒼乃美希は、彼らと同じであった。

 石堀の目的はその希望を一瞬にして絶望へと叩き落とし、確実にダークザギの力を得る事である。姫矢や憐の如く、耐性のある人間ではいけない。
 希望が絶望へと変わる時、光は闇に還元され、レーテを介して、ダークザギの力となる。────その時が、ようやく目前に控えているのだ。
 凪や孤門のように綿密を張るより、即席の行動に出なければならないが、彼女の場合は「プリキュア」の光も同時に有している。かつてキュアピーチを見た時に感じた、あの光の性質──ウルトラマンの光と同様、闇に返ればより一層の強さを引き出せる。即席でも十分だ。

 蒼乃美希の人間関係を頭の中でもう一度思い出す。──その周囲全てを殺し、後はその瞬間に美希が抱く憎しみの力をレーテに捧げよう。
 時はまだだ。残り二時間とはいえ、ダークザギにさえなれば時空など容易く破断できる。
 いわば、それこそが真なる「脱出」の時である。

 何ていう事のない三人の人間の内の一人として、石堀はその邸宅に足を運んだ。






 ゲーム終了まで、残り一時間四十分。






 冴島邸という豪邸の中で、涼村暁はぼけーっと周囲を観察していた。一体、どの家具が一番高く売れそうか、どれを借金のカタに貰っていけそうか、などといろいろ考えつつも、暁は楽しそうに歩いている。
 広い邸宅だが、まあ集まる場所といえば一つだろう。当然、机や椅子が揃ったリビング。それらしきドアを開けてみると、やはりそこには翔太郎と一也がいた。それから、どう見てもバケモノとしか思えない人相が二つあったが気にしない。

「うっす」
「おいっす。……ってなんだ、あんたかよ」

 暁の軽い挨拶に返事をした翔太郎の失望っぷりである。挨拶は意思疎通ではなく、あくまで友好関係の確認にしかならないので、実際のところ、こんなのでも十分だった。

 無事のご帰還と言いたいところだが、一也の視線は険しかった。
 それは、ヴィヴィオを守れなかった彼らを責める物ではないが、傍から見れば鬼の形相にさえ見えた。
 残り一時間四十分に達したが、ドウコクとは無言の戦闘が続いていると言っていい。残り四十分でドウコクは一也を攻撃するのである。とにかく、残りの仲間が来なければ、ドウコクと交戦する為に他を逃がすしかあるまい。現状の生存人数と照らし合わせて考えると、ドウコクが襲うのは一也だけではないだろう。
 この場所を集合地点に設定し、同時につぼみチームからの連絡が途絶えている以上は、とにかく急がねばならなかった。

「すまない……ヴィヴィオちゃんは──」

 石堀がさも申し訳なさそうに言うが、実のところ、彼にとってヴィヴィオの命など至極どうでもいい物であったが、顔付きだけはそれらしくしなければならない。

「……」

 暁も少し黙った。いや、暁としては、全く、ヴィヴィオが生きていると知っているので、「ヴィヴィオの死」という悲しみは心のどこを探してもないのだが、彼ら全員がそれを知らずに心配している事実に、少し心を痛めたのだった。
 何も言えない自分の不甲斐ない事。流石に、勘違いで重たい気持ちを抱える彼らを小ばかにできなかった。

「……気に病まないでくれ」

 震えた声で言う一也。
 しかし、そんな彼の後ろから、坐するドウコクが野太く冷たい言葉を投げる。それは怪物らしく、人情とは無縁の言葉であった。

「いいじゃねえか、一人くらい死んだ方がこっちもやりやすいだろォ」
「何だと!?」

 激昂して立ち上がったのは翔太郎であった。誰もが不意に、テーブルを叩きつけた翔太郎の右腕に着目した。テーブルの木がめきめきと音を立てるほどの剛腕。──それがまさに、アタッチメントの力。
 二人が睨み、いがみ合う中で、一也がすぐに怒号のような一言で制止する。

「やめろ、二人とも! ……ドウコク、頼むからあと三十分は大人しくしてくれ。わざわざ火種を作る物じゃない」
『翔太郎、あんたももう少し冷静になれ。安い挑発に乗るな!』

 一也とザルバの両名に制されて、何とか翔太郎は再び坐した。
 ドウコクは、自らに命令する一也に悪態の一つでも付きたい様子だったが、一也の言う通り、今は抑えた。やはり、それなりの利口さはあった。
 しかし、結局、一也は残るタイムリミットが三十分近いという事に気づいて、拳を震わせた。

「………………あ、そうだ」

 気まずいので、暁は話題をそらす事にした。
 視線の先にドウコクの目線があったので一層気まずくなったが、またすぐさま真下を向いてポケットをまさぐる暁。情報開示である。石堀の電話連絡中の話だったので、おそらくこちらにはあのカードに関する情報が行き届いていないのだろう。
 ヴィヴィオの実際の生死については何も言えないが、これくらいの情報ならば何とか教えられる。

「あのゴハットの奴がこんなカードを俺に」

 ゴバットカード。……の裏面に記載されていたヒントである。
 ゴハットは主催者の側でも随一の変わり者で、参加者に対して時折協力的な態度を示す男だった。しかし、それはあくまでヒーローの勝利シナリオを演出する為のもので、あまりにも直接的なやり方はしない。
 ヒントを与えたり、表向きは悪魔の所業を行うようにして参加者を助けたり……といった有様である。それもその一貫であった。

「おい、俺は聞いてないぞ」
「悪い、ちょっとタイミングなくてさ、言い忘れてた」

 やれやれ、と石堀が肩を竦める。内心では暁に苛立っていたが、実のところ、暁は石堀に情報を伝える事に些か抵抗していたのだった。
 まあ、主催とはあまり直接関係がないだろうから、それ自体はどうでも良いのだが。
 翔太郎がそれをさっと横取りして、内容を読み上げた。

桃園ラブ花咲つぼみなら、花咲つぼみ。巴マミと暁美ほむらなら、暁美ほむら。島の中で彼女たちの胸に飛び込みなさい……?」
「わけわかんないだろ? まあ、とにかくつぼみちゃんが来たらその胸に飛び込めって事だったら喜んで……」

 レイジングハートがつい手が滑って暁の高等部を殴る。ごつん、という鈍い音が立つとともに、暁は高等部を抑えた。暁が振り向くが、レイジングハートは表情一つ変えていない。

「いてて……冗談だっつうの」
「冗談に聞こえません」
「だいたい、俺はね。中学生のまだ小さい胸には────」

 ふと、その瞬間、暁と翔太郎の中でひと時、時間が止まった。
 一也や石堀にはほぼ、彼らがいま何を考えたのかは理解不能であった。ドウコクや外道シンケンレッド、レイジングハートは論外である。

「なあ、今、何か頭の中で引っかからなかったか?」
「ああ。……お前も感じたか」

 翔太郎の言葉に、暁は共感した。きょとんとしながら暁と翔太郎を見守る他の数名。視線は何故か、不思議と心地よかった。
 翔太郎と暁。この二人だけが今、謎のシンパシーを感じたのである。
 なるほど、翔太郎と暁は、最近忘れかけていた自分たちの共通点を思い出した。

「「……わかったぜ。俺の中の探偵魂が、今、俺に何かを告げたんだ!」」

 探偵。──そう、二人は探偵であった。浮気を調査し、犬や猫や亀を探し、ある時はコーヒー牛乳を飲みながら張り込み、時折殺人事件や怪盗事件に巻き込まれるあの「探偵」である。
 この二人の探偵が出会ってしまったからには、どんな名推理が飛んできてもおかしくない。
 ホームズとルパン、金田一耕助と明智小五郎、コ○ンくんと金○一くん、レイ○ン教授となる○どくん、お○やさんと京都○検の女……あらゆる探偵は、いつも夢の共演を果たしながら難事件を解決していったのである。
 探偵と探偵が手を組めば、もう怖い物などどこにもない。

「おい、探偵」
「なんだ? 探偵」
「俺たちがこの暗号──」
「解決しようぜ、だろ? わかってるぜ」

 ガシッ。と手と手を握り合う、いまこの瞬間、二人の探偵が手を組んだのだった。
 このカードに示されている物が暗号であり、主催者に関する情報を漏洩したのだと、翔太郎も暁も直感したのだ。
 自分たちの中のいがみ合い精神は既にどこへやら。

 数時間前の事さえ鶏のように忘れながら、めぐりあった二人の探偵は、今作った決め台詞を颯爽と叫んだ。

「「この暗号……俺が絶対に解いてやる」」

 二人は同じ一点を見つめて言った。



「「────仮面ライダーW/超光戦士シャンゼリオンの名にかけて!」」






 ……ああ、まったく、なんという事だろう。

 杏子とマミは、内心でそう思っていた。マップに指示された「教会」という施設──今は脆くも崩れ去っているが、あれがまさか、あの教会だったなど。
 一帯はかつて杏子がいた教会の光景とは違い、それが、一瞬だけ別の教会とも錯覚させた。しかし、随所の特徴はほぼ確実に杏子の実家のあの教会と同じなのであった。風見野から、あの廃教会を持ってきたのだろうか。
 風都タワーや左探偵事務所、志葉屋敷に冴島邸と、実際に参加者ゆかりの場所が取り揃えられているのはよく知っていたが、まさか自分のよく知る場所もあったとは。

 あれの破壊が悪い運命を案じしていなければ良いのだが……。

 ────とはいえ。

「うりゃっ!」

 孤門を抱きかかえながら一歩十メートルというペースで疾走している杏子には、横目でそれを見るくらいしかできなかったが。
 突き出た地面を蹴り飛ばし、より一層の速度で彼女たちは進んでいく。
 彼女たちはその脚を速く動かすのではなく、立ち幅跳びで砂場の向こうまで跳べるような驚異的脚力を活かして、「歩幅」で高いスピードの走りを見せていた。

「ねえ、ちょっとどういう事よ!」

 後ろから声をかけるのはキュアベリーである。流石に二人で三人抱えるのは不可能と判断して、お休みの彼女を何とか起こしたのだ。
 キュアベリー、キュアピーチ、佐倉杏子の三人が森の中を、一歩一歩に力を込めて走っていく。

「車がブッ壊れたんだよ! 仕方ないだろ!」
「いや、それじゃなくて──」

 ベリーが訊こうとしているのは、無論、ウルトラマンの力の事であった。
 エボルトラスターにブラストショット。いずれも、キュアベリーの手の中にある。この力が姫矢から杏子へと受け継がれたメカニズムを考えれば、次に美希に来ても全くおかしな話ではなかった。──しかし。どうして、このタイミングで。果たして、光がどのようにして回っていくのか、美希も知らない。

「──ウルトラマンの事か?」
「そうよ! それがなくなったら、あなたが困るはずでしょ!」

 魔法少女として戦闘する事に常にリスクが伴う杏子にとって、ノーリスクで変身できるウルトラマンの力は必要な物のはずである。美希はキュアベリーに変身できるが、杏子は別にキュアパッションに変身できるわけではない。ノーリスクのキュアベリーに変身できる美希ならば、わざわざウルトラマンに変身する必要はないのである。

「杏子ちゃん、美希ちゃん、一体どうしたんだい!? ウルトラマンって……」

 孤門が、困惑して口をはさんだ。ウルトラマンの話となれば、孤門が最も専門に近い。
 実際に姫矢や憐を見守っていた隊員は彼に他ならないのである。

「ウルトラマンの力、私に移り変わってしまったみたいなんです!」
「ええええええええええーーーーっ!!」

 孤門は動けないながらも驚いていた。
 新たに杏子に移ったデュナミストの力。──それが、まさかここに来て美希に移り変わるとは。
 例によって、またも女子中学生にウルトラマンの力が渡るのか。

「美希たんがウルトラマン!? ええっ!?」

 キュアピーチも驚いて声をあげた。
 彼女の腕の中でも、マミは果たしてウルトラマンがどんな物なのか現物を見ておらず、一切知らないので、ここでは口を噤んでいる。

「姫矢さんがセカンド、憐がサード、杏子ちゃんがフォースなら、美希ちゃんはフィフス……」

 セカンドデュナミスト、サードデュナミストに加えて、孤門の経験では杏子がここで新たなフォース(実質はサードだが)、美希はフィフスとナンバリングできる。孤門は抱えられながら指を折る。
 ……が、ここでこんな事を考えてしまった意図は本人さえ不明だった。案外、驚いた時はどうでもいい事が頭を支配してしまうようである。

「何数えてんだよ! いいから黙ってろ。舌噛むぞ!」
「……ほうはね(そうだね)」
「……なんだ、手遅れか」

 ガチンと舌を噛んで呂律が回らなくなった孤門を、杏子が嘆息しながら見下ろした。
 もう随分と進んだが、なるべく話しながら走るのはよくないのかもしれない。
 ……が、ベリーは疑問を投げかけ、構わず話しかけてくる。

「で、どうして私なの!?」
「知るかっ! 勝手に渡っていくんだ。別にこっちで決めたつもりはねえよ。質問があるなら、ウルトラマンに訊け! あたしはその事は何も────」

 と、まあそれを言った瞬間、杏子の体に痛覚が駆け巡った。

 やはり、というべきか。
 杏子は思いっきりベロを噛んだのだった。ただその先は、フンと顔を背け、誰も何も言わず、何かを口にする物理的リスクを察して黙々と走り進んでいくだけであった。






 しばらく、泣き止まなかったが、さやかも泣き止もうという努力はしたので、十分かそこらで、何とか落ち着いた。心臓が震える感覚はまださやかにある。
 内臓が生きている──機能している証、そのものだった。

「……良牙さん────零さんは?」

 つぼみが訊く。零の姿が消えていたので、疑問を抱いたのだろう。
 どうやらつぼみとさやかは零の姿が消えた事に気づいていなかったようである。
 まあ、無理もないが、身の回りの事に気づかないほど何かに没頭するというのはこの場においてはまだ危険な事なのである。──いや、それほど良牙たち二人を信頼しての事なのだろうか。

「ああ、あいつなら先に冴島邸に行くってよ。……俺のせいで連絡もできてねえし」
「そういえば、そうでしたね……」

 他の数名と通信ができなかったので、周囲にかけた心配も大きいだろう。彼はここにいても仕方ないだろうし、それならばいち早く向かって報告をしてもらった方がいい。
 なるほど、それならば仕方がない。

「おれたちも、そろそろ行くか────っと、その前に」

 良牙が珍しく、冴島邸の方に自力で体を向けた時であった。
 折角、天文学的な確率で目的地の方に体が向いた瞬間であったが、さやかに伝えるべき事があるのを忘れてまた振り向いてしまった。結局、このような天性の不運もあって彼は道に迷うのだろう。
 良牙が思い出したのは、先ほど、さやかの居た奇妙な空間内ではバイオリンの音が絶えず響いていた事だった。芸術の素養が皆無皆無アンド皆無の良牙もあの弦楽器の音を聞いて、それを連想する事ができたのは不幸中の幸いか──。
 それが、良牙にとある支給品を連想させた。

「おい、さやか、だよな? あんた、バイオリンが好きなのか?」
「えっ? いや──別にあたし自身はそんな事はないけど……」

 バイオリンという単語で、やはり誰かを思い出したようである。
 良牙が何故、突然にそんな事を訊いたのかわからない。ただ、一応、良牙が少し年上らしき事を察して、口調を改めた。

「……でも、バイオリンが大好きな男の子がいました。その人の事が、私はずっと好きだったかな……」

 少し照れながら、素直に述べた。

 上條恭介。
 さやかの幼馴染であり、天才バイオリニストとして期待されていた男性だった。さやか自身は、別にとりわけクラシック音楽が好きなわけではない。ただ、恭介が好きな音楽だからと、何度も耳にして、心の奥底で何度も繰り返し流していた。
 しかし、今となっては、さやかはその人の事を思い出すだけで切ない気持ちになる。
 今流したよりも、もっとエゴに満ちた涙が流れそうになる。

「なーんて、片想い……だったんですけどね。あははははははは」

 甘酸っぱく、切ない気分になったのが一層、照れ臭かったのだろう。とにかく自嘲気味に笑う事で、なんとかそれを打開しようとしたのだろうか。

 恭介と仁美がくっついて、さやかはその間に入り込めなくなってしまったのが発端だ。
 さやかが恭介をしている程、恭介はさやかを必要としていなかったという事である。さやかの献身も、結局、恋するには繋がらなかった。見返りとして、少しでも親密になれればと思っていたさやかの少し卑しかった心も、予期せず裏切られたのだった。
 恭介も仁美も悪くないからこそ、さやかはこのどうにもできない気持ちを発散すべく、魔法少女として周囲の敵を刈り取り続けた。その日々がまた辛くさやかの心を締め付けていった。

「……」

 良牙もつぼみも押し黙った。恋にはこの二人も、苦い思い出がある。
 いや、良牙などは今も間違いなく、その恋という感情に誰よりも苦しめられているのだ。
 しかし、良牙が、さやかの気持ちをくみ取りつつも、あくまで無表情で、とある支給品をデイパックから取り出そうとする。

「……誰かの支給品の中に紛れ込んでいたんだ、こいつが」

 彼の瞳は、さやかの顔を真っ直ぐに見つめてはいなかった。ただ、事務的にそれをさやかに手渡そうという気持ちでいっぱいであった。感情を含ませると、爆発してしまいそうな想いが内心秘められていたのだ。
 恋。
 その一言が、今の良牙には重すぎる。どんな巨大な岩でも持ち上げてボールのように投げられるあの良牙でさえ、その重みに潰されそうなのだ。

 さやかは、デイパックの口からそれが少し出てきただけでは、特に何も思わなかったのだが、実際にそれが全て晒されると、その物体が何なのかようやく理解したようだった。

「バイオリン……それ、恭介の……!」
「……やっぱりそうか」

 良牙は、只のバイオリンというつもりで差し出したが、これも参加者ゆかりの品の一つであったらしい。園咲冴子にハズレ武器として支給されていたが、どうやらこのさやかの友人・恭介の物で間違いない。
 さやかも、記憶はあやふやで、バイオリン一つ一つを区別できるほど観察眼に優れているわけではないが、ただそのバイオリンだけは忘れようはずもなかった。それはずっと、恭介の未練だった物である。しかし、このバイオリンが今は恭介の夢なのだ。

「おらよ」

 良牙は、それがさやかの知り合いの物だとわかった瞬間、押し付けるようにさやかにそれを渡した。
 少し戸惑ったが、さやかは、自分の両手が無理やり欠かせさせられたそのバイオリンの重さを突き返そうとした。

「……い、いらない! だって、あたしに恭介の大事な物に、触る資格はないし……」

 この楽器に込められた想いは、さやかにはもう重すぎる。
 本来なら、さやかにはもう触れる機会があってはならぬ物だ。血染めの腕が恋する人の夢に触れていいはずがない。もう自分がいた世界に帰れないような、そんな気持ちさえどこかにあるのだ。純粋に生きている人の前に姿を現したくなかった。
 元の世界に繋がる事物を全て忌避したくなるような感情があった。
 それに、さやか自身もこのバイオリンを見れば恭介を思い出して辛くなる。

「悪いが、こいつは絶対にあんたに受け取ってもらう。好きな人だか何だか知らねえが、そいつの物が受け取れるだけマシだ。あんたの手で元の世界の恭介とかいう野郎に渡さなきゃならねえ」
「でも……!」
「おれは!!!」

 良牙の怒号に、二人の少女はびくついた。
 一度心の根が震えたような感覚がして、そのまま言葉一つ返せなくなった。
 良牙は、ばつが悪そうに声を抑えながらも、後ろ髪を掻いて、心を曝け出した。

「おれが大好きだった人は、好きな人の為に殺し合いに乗って、今もどこかでエモノを求めているんだ……。それに比べれば、何かあるだけいいじゃねえか……」

 思い返せば思い返すほどに、胃液が吐き出されそうになるほど切なく胸を締め付ける全て。──あかねも、乱馬も、何もかもが遠い思い出となって、良牙を苦しめていく。
 良牙にとってかけがえのないはずだった物が崩れていく恐怖が良牙自身の拳を、これまでの人生のどんな時よりも強く握らせた。

「それに、そいつが……あかねさんが正気に戻って、償う気になって、それで乱馬の何かに触れようとした時に、おれはそれを止めたいとは思えねえんだ。いや、むしろ触れさせてやりたい。────あんただって同じだ。あんたがこいつに触れちゃいけない理由なんて、どこにもない」

 あかねを救いたいと願えばこそ、それよりも先にさやかという一人の少女に同じ事をしなければならないのである。この少女を許し、生きていく道を手助けしていきたい。
 それは、あかねを許そうという気持ちあればこそのやさしさであった。

「さやか。私からもお願いします。受け取ってください」

 つぼみがそれに乗るようにして言った。
 譲渡する側が頭を下げるのも変な話だが、つぼみはそれが良牙からさやかへのお願いなのだと理解していた。
 良牙はただの善意でバイオリンをさやかに渡したいのではない。いずれあるべきあかねの姿としてさやかを重ね、少しでも自分の中であかねの未来に対する安心を得たいと思っただけなのだ。
 だからこそ、今はせめて、このバイオリンを──。

「……うん」

 さやかが頷いた。このバイオリンを受け取ると決めたのだ。
 これを恭介に返すのは、さやかにしかできない事だ。せめて、ここから脱出してからさやかができるのは、それくらいの事だ。

「ありがとう、二人とも」

 さやかが良牙に押し返そうとしたバイオリンを受け入れるように、それを抱こうとした。
 さやかの腕が、バイオリンを絡める。冷たいバイオリンの絃がさやかの腕に押し付けられる。音が鳴っているようだった。
 楽器とは不思議な物で、弾いていなくても、時折その楽器が声を発する時がある。
 あらゆる音楽がこの中に封じ込められ、この楽器の中で響いている。

「そうだよね……これはあたしの手で恭介に届けなきゃ」

 ────ただ、次の瞬間であった。

 さやかは、ふと目を見開いた。
 良牙とつぼみはその時、気づいていなかったが、森の闇の中に人影が隠れていたのが見えた。
 ……いや、それは人影というのではなかった。人のシルエットをしておらず、真っ黒で刺々しい体躯をしていた。空の向こうから黒い雲まで近づいており、間もなくここも光が雲に隠されそうになった時であった。
 まるで猛獣に対峙した時のような感覚。

「────!?」

 怪物。

 それをさやかは今、目にしていたのだ。
 さやかはその外形にも、どこか既視感があった。

「ウッ……」

 その猛獣は、よく目を凝らしてみれば五代雄介と同じく、仮面ライダークウガに酷似していた。金の角、黒い複眼、ありとあらゆる要素がそれに似ていたが、印象だけは全く違っていた。
 ──さやかは、声もあがらぬほど、そこから発される悪意に怯えたのだ。

「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」

 吠えた瞬間、残るつぼみと良牙もそれに気づいたようだった。
 ふと感じたその野生の闘気──まるで猛獣と対峙した時のような気分だ。良牙は、あまりにも突然の出来事にその闘気を感じるのが遅れた。いや、あかねの事を考えてしまったがゆえだろうか。
 反射的に良牙は、背後の敵に隙の無い構えを見せた。
 ……が。

「……ウソだろッ! このタイミングで──」

 その外形を見た瞬間、良牙の両足から地面へと力が抜け落ちていくのを感じた。足が震え、まともな体制を取れない。反撃さえできそうにないようだ。
 なぜなら……そこにいたのは。
 そこにいたのは、天道あかねが変身した仮面ライダークウガに他ならなかった。

「あかねさん……ッ!!」
「!?」

 良牙の言葉につぼみが驚愕して、思わず良牙の方に顔を向けた。
 冷徹非情のクウガは、容赦なくその隙を狙った。──つぼみが気を抜いている隙に、クウガの手から紫の剣が投擲された。
 それは、物質変換能力によってクウガ自身の剣となった「裏正」である。
 つぼみが不意の攻撃に恐怖し、顔を歪めたのは一瞬の出来事。

「ひっ……!」

 変身さえできない一瞬の間に、こちらへ放たれた一撃につぼみは涙さえ浮かべた。
 つぼみの脳裏には、いわゆる走馬灯まで浮かんだのだった。高速で接近するソードが、つぼみに到達するまではおそらく一秒の間もない。
 しかし、その一秒の間に、つぼみは、父、母、祖母、友、あらゆる物の顔を思い出し、プリキュアとして巡り合った出来事や、これから生まれ来るはずの妹の事さえも考えた。
 あまりの恐ろしさに、つぼみは腕を顔の前に被せ、目を瞑った。

「……!」

 ソードが、ぐちゅ、と音を立てて体に突き刺さる。
 良牙が驚き、また同時に後悔してそちらを見た時には、そこには血しぶきを放つ人間が居た。

「────」

 その体から花弁が散り、ゆっくりと舞い、土に零れていく。
 まるで、ひと時美しく咲いて、また散っていく花々のようだった。
 ……ああ、なんという事だ。
 また……また、悲劇が起きてしまったのか。

「痛ッ…………ッッッ」

 美樹さやかの胸に。深々と。それが突き刺さっていた。彼女の抱えていたバイオリンを貫き、彼女が胸に指していたアマリリスの花を散らせ、彼女の安らぎは奪われた。
 彼女が、咄嗟につぼみを庇い、生かそうとした結果だった。

「あ……ああっ……」

 つぼみの体の前には、さやかが影を作っていた。つぼみの体から数センチだけ離れたところに、血の滴る剣の刃先が突き出ていた。──無論、恐ろしかった。
 もし、さやかがつぼみを庇ったとしても、彼女がバイオリンを肌身離さず抱えていなければ、つぼみの体ごと串刺しにしていたかもしれないという事だった。
 つぼみも、思わず何が起こったのかわからずに絶句した。

「みん…………ごめ…………やっぱ…………」

 血を吐き出しながら、さやかは謝罪の言葉もこの世に残そうとした。しかし、それも力を失った喉の奥から、とぎれとぎれに出てくるだけだった。
 この時、さやかが思い出したのは、五代雄介という男の死に様だ。
 クウガ──それが、さやかにとって、死神と呼べる相手だったのかもしれない。
 五代自身がさやかを恨んでいるわけではないのはよく知っている。──だが、神はもしかすれば、さやかを許さなかったのかもしれない。
 報い。
 それは、そんな言葉で形容できた。
 罪は時折、数奇な形で裁かれる。クウガを殺してしまったさやかの命が、クウガによって絶たれる──という事。

(……あっ……)

 さやかの体が真後ろに倒れそうになる。力の法則に従って、真後ろへ、真後ろへ。
 なんとか力を振り絞ろうとしたが、駄目だった。
 命に対する諦観と、全てに対する申し訳なさがあふれてくる。

(……あー……、折角、助けてもらったのに。やっぱり、こうなっちゃうんだ……)

 さやかの体は、結局真後ろに崩れた。
 真後ろでさやかを支えようとしたつぼみの右足の側面を、刃が切り裂いた。
 抉る、と言ってもいい。血が跳ねて、さやかとつぼみの血液が足元で混ざり合う。

「っっっ……!!」

 痛みをこらえながら、つぼみはさやかの首を支えた。
 頭を片腕で包み、彼女は必死で呼びかける。体の痛みか、心の痛みか、またつぼみは泣いた。これは反射的に流れてしまうものだった。

「さやか! さやか!」

 今、こうして誰かを庇って死ぬという死に方が、まるでさやかが一時目指した正義の味方に全く相応しい物である事を、さやかは自覚できなかった。さやかはつぼみが泣いているのと同じく、反射的につぼみの前に出て、その結果、死んでいくのだから──。
 そこに、「義」はなかったが、ただ、さやかという人間の本質的な性格だけは反映されていた。
 二人の友情は変わらない。

「あり、がと…………ごめ………」

 つぼみはさやかを傷つける。
 さやかはつぼみを傷つける。
 だが、それでも、二人は深く支え合う。
 彼女たちはずっと知らなかったが、それが友情の本質だ。

(ごめん。でも、せめて、さ────)

 せめて。
 さやかは願った。
 傷つけた分だけ、このふたりを、癒す願いを────。
 願いを。

(いいでしょ、神様。奇跡とか魔法とか、もう一回くらいさ)

 どうしようもないと思える時ほど、それこそ神に願うしかない。
 罪を犯した物には罰が下るように、彼女たちの行く末に幸がある事を祈りたい。
 奇跡と、魔法を、さやかは、長い人生の中で、もう一度だけ託しながら──そして、もう一度息を引き取ったのだった。
 つぼみが泣きついた時には、それはもう遺体だった。
 かつてよりも暖かく、まだ少しだけ内臓が動いた形跡のある、人間らしい死にざまだった。



【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ 死亡】





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最終更新:2014年08月29日 21:37