最終更新 : 2023-11-24
「ファルコムミレニアムシリーズ」のBGM別作曲者推測
目次
ファルコムミレニアムシリーズについて
ファルコムレーベルの設立10周年記念として1999年に「ファルコムミレニアムシリーズ(略称:FMS)」というブランドが発足された。その中で2001年~2002年に掛けて発売、もしくはゲームに付属したアレンジアルバムに以下の5タイトルがある。

(以下アルバムリンクや曲名リンクはSpotifyへの外部リンクになります。)
- 交響曲イース21stセンチュリー
- 交響曲「ガガーブトリロジー」(FMS第4弾)
- イース・ヒーリング(FMS第5弾)
- 交響幻想曲「白き魔女」(FMS第6弾)
- ツヴァイ!!スーパーアレンジバージョン
厳密には交響曲イース21stセンチュリーとツヴァイ!!スーパーアレンジバージョンはFMSではないが今回は分かりやすく区分するためにこのページに含めている。
これらは非常に優れたセンスを持つアレンジアルバムである。過去に発売されたオーケストラ系アレンジアルバムと比べても決して遜色ないクオリティだろう。さてこのページではこれらアレンジアルバムを称賛することが目的ではない。このページで解き明かすのは具体的に一体誰が編曲を担当しているかだ。
謎のアレンジアルバム
まずそれぞれのブックレットを見てみるとクレジット表記には交響曲「ガガーブトリロジー」では"all aranged by jdk electric symphony orchestra"、交響幻想曲「白き魔女」ではただ単に"jdk electric symphony orchestra"としか記されていない。そして他の3タイトルに至ってはこれらのクレジットすらなく、どのアレンジアルバムにもサントラにも表記されているいつもの"all music by falcom sound team jdk"が記されているに過ぎない。ここでもまた伝統という名のファルコムの秘密主義が出てしまっている。
まずjdk electric symphony orchestraについてだが実在しない架空の団体である。オーケストラ団体を想像してしまうが聴けば分かる通り完全に打ち込みのオーケストラサウンドだ。electricとはそうゆうこと。過去にjdk electric symphony orchestraは寺嶋民哉氏がアレンジを担当した「交響詩 英雄伝説 III 寺嶋民哉eオーケストラ」や「イース天空の神殿~寺嶋民哉eオーケストラ編」などで顔を見せているが単に名前を継いだものだろう。
ならそうなるとこれらのアレンジアルバムも寺嶋氏ではないかと思いがちだがそれならクレジットしていないのはおかしい。外部の編曲者ならこれまでファルコム曲のアレンジを担ってきた米光亮氏などといった方々と同様クレジットするはずだ。現にFMSで復刻されている過去のアレンジアルバムも寺嶋民哉氏や米光亮氏のクレジットは外されていない。ファルコムとの関係が拗れたからというわけもないはずでいきなりここへきてクレジットしないってのも早々ないだろう。そうなるとこれらは内部の人間によるもの、すなわち社内サウンドチームによるものと考えるのが道理だ。実際に当時のサウンドスタッフにはオーケストラ曲を書くことが出来る白川氏が在籍しておりまた白川氏のサウンドと似ている部分も多々あったために自然とそうゆう推測に行き着いた。
最初の推測
具体的に白川氏のオーケストラ曲のサンプルを挙げると近い制作年だとツヴァイ!!「ムービー1~5」、イース完全版「Ys1 COMPLETE -Opening- (another version)」、朱紅い雫「異端者の襲撃」「邪神官ベリアス -襲撃-」「避けられぬ戦い」などがある。そしてイース・ヒーリングに近いテイストの曲はVM JAPAN「時雨の刻」「慕情」などが挙げられるだろう。またWin版新白き魔女「小さな英雄 -オルゴール-」とイース・ヒーリング「永遠の眠り ~A still time~」、交響幻想曲「白き魔女」「エピローグ : デュルゼルの手紙 / 「デュルゼルの手紙」「小さな英雄-オルゴール」」のオルゴールが同じに聴こえるのも白川氏を結び付けられた材料のひとつだ。聴き比べてみてどうだろうか。確かにオーケストラサウンドなどところどころ似ている部分がある。実際当時はそれらを元に推測をおこなっていてある程度正解しているだろうという手応えはあるにはあった。
またこれらのアレンジアルバムはイース・ヒーリングを除くと楽章形式もしくは組曲形式になっていて統一感を出すのならひとりの人間が全て受け持つのが普通。実際それらは統一感のあるサウンドになっていてその考えを裏付けるものだ。さらにそれぞれのアルバムはマスタリングの違いによる聴感の差こそあるものの少なくともオーケストラアレンジの交響曲イース21stセンチュリー、交響曲「ガガーブトリロジー」、交響的幻想曲「白き魔女」の3枚は全て同じサウンド感となっていて間違いなく同一人物によるものになるはず。
反証
ただ氏のオーケストラ曲の朱紅い雫「異端者の襲撃 -邪神オクトゥムの陰-」から交響曲イース21stセンチュリー、交響曲「ガガーブトリロジー」、交響的幻想曲「白き魔女」まで通して聴いてみると正直技術レベルや音源のクオリティに差があり過ぎるのではないか、数ヶ月でここまでオーケストレーションが上手くなるものだろうか、という疑問があった。白川氏のオーケストレーションは平易であくまでも打ち込みの範疇に収まる等身大のスケール感だ。一方、交響曲イース21stセンチュリーは他と比べ一段とマスタリングクオリティに難があるとはいえオーケストラのリアリティやオーケストレーションの巧みさは群を抜いている。アレンジアルバムだからゲームに適したミックスにせずに済むとはいえあまりに違いが大きい。
一方室内楽規模の編成となっているイース・ヒーリングだがやたらリバーブが豊かに掛けられておりこれまでの白川氏の曲でもここまでリバーブが掛けられた曲はあまりないはず。またヴァイオリンやチェロはビブラートをたっぶりと掛けられているがツヴァイ「最後の闘い -魔王ヴェスパー-」、VM JAPAN「幻魔街道さすらい二人旅」「熱砂」では殆ど掛けてなくて直線的に強く鳴らしているに過ぎない。ボーカルはVM JAPANにも入っていて声を取り入れたアレンジは白川氏が得意とするスタイルだがこうもオペラティックに歌わせるというのは白川氏のスタイルとしては疑問。そもそもイース・ヒーリングのアレンジテイストはいくら白川氏がニューエイジ系が得意とするにしてもセンスがかけ離れているのではないか。
オーケストラアルバムとイース・ヒーリングには共通する点があってそれは交響幻想曲「白き魔女」の「エピローグ : デュルゼルの手紙 / 「デュルゼルの手紙」「小さな英雄-オルゴール」」のピアノ、交響曲ガガーブトリロジー「それ見よ我が元気」のアコースティックギター、上でも書いたリバーブが掛けられたサウンドの雰囲気はどちらも同じだ。そして楽器を鳴らすこと、アレンジのセンスはこの時代の打ち込みとしてはかなりのハイレベルさ。白川氏ももちろん上手い人だが当時ここまでの域には達していないと思う。
発売間隔
ここで各アレンジアルバムが発売された前後の発売スケジュールを見てもらいたい。白川氏が制作に関係したゲームタイトルと氏がアレンジを担当したと推測するアレンジアルバムを時系列順に一覧にしてみたがこれらを果たして全て一人の人間が制作可能だろうか?
2000年7月6日 | イースII エターナル | 7曲 |
2000年12月7日 | 英雄伝説IV 朱紅い雫 (Windows版) | 25曲 |
2001年6月28日 | イースI 完全版 | 20曲 |
2001年6月28日 | 交響曲イース21stセンチュリー(イースI 完全版付属) | 4曲 (39分53秒) |
2001年9月13日 | 交響曲「ガガーブトリロジー」 | 18曲 (70分) |
2001年12月20日 | ツヴァイ!! | 7曲 |
2001年12月20日 | イース・ヒーリング | 10曲 (47分56秒) |
2002年6月27日 | VM JAPAN | 20曲 |
2002年6月27日 | 交響幻想曲「白き魔女」 | 10曲 (57分34秒) |
特にゲーム音楽制作とアレンジアルバム制作が重なった2001年6月と2002年6月がかなりタイトだ。もちろん実際の発売日より一ヶ月ぐらいは前に作り終えていないといけないだろうし制作順も前後している場合もあるだろう。とはいえファルコムのサウンドスタッフはチーム制。一人に対してここまで負担を掛ける必要もない。
子供の声
ところで以前おこなった推測のときから引っ掛かっていた点があった。それは交響幻想曲「白き魔女」に子供の男の子による英語のナレーションボイスが入っているのだ。内製による楽曲でこのような起用はこれまでもそして今までもなく例外は一切ないと言っても過言ではない。内製だとするなら音源の使用が考えられるがこれが発売されたのは2002年である。初音ミクのVOCALOIDが発売される2007年より5年も前の制作なのだ。そもそも合成音声以前にこれはどう聴いても明らかに生きている人間の声。今の時代でもこんな流暢に喋ることが出来るネイティブ英語の合成音声はちょっと考えられないだろう。そしてやはり誰がナレーションをしたかのクレジットもない。
ナピシュテムの匣
このことから交響幻想曲「白き魔女」は外部の編曲者による制作なのではないかという考えに至った。そして上で挙げた理由からそうなると自動的に他のアレンジアルバムもこの人物によるものになるはず。そしてこの雄弁なオーケストラサウンドには聴き覚えがある。そう、イースVIのイベントムービーで流れるオーケストラ曲だ。
イースVIにはイースシリーズのタイトル名法則から外れる以下の4曲がある。
これらは全てクラシカルなアレンジのオーケストラ曲だ。マスタリングの差異があり聴感は異なるもののこのストリングス、ブラス、パーカッションなどは完全にアレンジアルバムのオーケストラと一致しているといっていい。このままアレンジアルバムの各曲へ以降しても何も違和感はない。例えばホルンの割れるような咆哮、トランペットのつんざくようなアタック、トロンボーンやチューバ、ティンパニの轟き、シンバルの鋭い炸裂音、厚いストリングスなど当時ファルコム界隈でここまでリアリスティックに鳴らせる人を知らない。前年発売の交響幻想曲「白き魔女」からだと「第2楽想 : ボルト大決戦」や「第4楽想 : 災いの波」がその最たる例だ。同じようなサウンドがイースVIのこれらイベントムービー曲からも聴かれるだろう。
スーパーアレンジ=外注
そしてここにツヴァイ!! スーパーアレンジバージョンも加わる。つまりSAVである。これまでこの手のSAVアルバムを任せられてきたのは全て外注の方々だ。またブックレット内のクレジットはこれまでの「all music by falcom sound team jdk」ではなく「all music composed by sound team jdk」と社内サウンドチームがまるで作曲のみしか関わっていないとばかり区別してある。ちなみにこの名義名は交響幻想曲「白き魔女」にも登場しており恐らく2002年からこの名義名に切り替えたのだろう。さらにこのアルバムの帯には「ギター、サックス、ヴァイオリンなど生演奏をフィーチャーした」「ファルコムアレンジ新境地」とあり生演奏をそこはかとなく匂わせている。確かによく聴けばヴァイオリンやギター、サックスは打ち込みの範疇を超えてリアルな息遣いと実在感を感じさせられる。生楽器抜きにしても「ケノーピ火山」や「幻の大地セルペンティナ」「花と風のうた」のライブ感溢れるサウンドなどは内製ではとても不可能だろう。
結論
これらのアレンジアルバム5枚は全て外注のサウンドクリエイター神藤由東大氏と推測する。氏が初めてファルコム内で正式にクレジットされたのはイースVIだがそれもSpecialThanksという特別扱いだった。実はそれ以前にクレジットすらされない内緒のお仕事もあったのだろう。ファルコムのクレジット表記が当てにならないというのはこのWikiの読者の皆さんならご承知の通り。ならこうゆうことが起こっていても何ら不思議ではないはずだ。残念なことだが企業にはそれぞれ暗黙のルールがある。これも大人の事情ということでやむを得ないのだろう。ただもし今後これらのアレンジアルバムが再販されるようなことがあったら今度こそ正式に神藤氏がクレジットされることを願いたい。それが長年ファルコムサウンドを支え続けてきた方への誠意というものだろう(*1)。
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