01式軽対戦車誘導弾

まるひとしきけいたいせんしゃゆうどうだん

日本国陸上自衛隊の個人携行型対戦車ミサイル。実在する。


※出典:陸上自衛隊ホームページ (https://www.mod.go.jp/gsdf/equipment/fire/index.html
全長 約970mm
直径 約140mm
重量 11.4kg(誘導弾のみ)/17.5kg(照準器・発射装置を含む総重量)
射程距離 約3,000m(推定)
誘導方式 赤外線画像誘導
開発 防衛省技術研究本部
製作 川崎重工

01式軽対戦車誘導弾は84mm無反動砲の後継として防衛庁技術研究本部と川崎重工により開発された個人携帯型対戦車ミサイル。
XATM-5の名称で1993年に開発着手し、2001年に制式採用された。開発経費は約105億円。
「LMAT」、「ラット」と言う正式な略称や愛称があるが、例によって使う人は少なく、「軽MAT」の方が通りが良い。

特徴


軽MATはウクライナでの活躍で一躍有名になったFGM-148ジャベリンよりも遅れて開発されているため、より新しい技術が採用されている。

最大の特徴は、対戦車ミサイルでは世界初となる非冷却型赤外線画像誘導が採用されていること。
これによって発射前のシーカー冷却が不要*1になり、敵戦車と不意に遭遇した場合でも直ちに攻撃を行う事が可能になっている。
完全な撃ち放し能力(Fire&Forget)も有しているため、射手は発射後直ちに退避することが可能だが、目標と周辺の温度差を利用して認識するシステムであるため、陣地や建物等の熱を発しない目標を攻撃するのには不向きである*2
このため射程や威力、命中率では劣るものの、84mm無反動砲の調達価格の安さや汎用性の高さが見直され、軽MATと併用する方針に変更されている。

また、推進装置はロケットブースターとメインロケットモーターの二段式とし、更にメインロケットモーターに後方爆風の小さいサイドスラスター方式を採用することで、掩体の中や軽装甲機動車の上面ハッチからの発射を可能にしている。
飛翔モードは装甲の薄い戦車上面を狙うトップアタックモードと、エンジンや履帯等を狙うダイレクトヒットモードのどちらかを選択できる。
メインロケットモーターに国産誘導弾初となる推力偏向装置が搭載されているため、操舵翼では制御できない発射直後の低速域であっても誘導弾を急上昇させることが可能であり、トップアタックモードに適した飛翔コースを取ることができる。
公表されていないが、射程距離はジャベリンと同程度の2km前後と推測されている。

弾頭も、国産誘導弾としては初めて爆発反応装甲に対応したタンデム式成形炸薬弾を採用している。
ちなみにジャベリンもタンデム式成形炸薬弾を採用しているが、F型以降は装甲貫徹力の向上を図ると同時にソフトターゲットにも対応した多目的弾頭(MPWH)に更新されている。

これらの技術は、後年開発された中距離多目的誘導弾に引き継がれている。

軽MATの総重量はジャベリン(22.3kg。ミサイル本体は11.8kgなので軽MATとほぼ差はない)より5kg近く軽いため、小柄な日本人にも扱いやすくなってる*3
しかし、ジャベリンが射手と弾薬手の2名で運用されるのに対し、陸自では軽MATを射手1名だけで運用している。
このため、ジャベリンであれば弾薬手が予備弾を運んでくれるが、軽MATでは射手が1人で全て運ばなければならず、特に徒歩移動時の負担が大きいとされている。

同時期に開発された誘導弾と同様、民生品の電子部品の多用等で低コスト化が図られており、2001年からの10年間だけで1,073セットが調達されている*4
平均調達価格は1セット約3,700万円。
200セット前後調達していた導入初期は1セット2,600万円前後だったが、導入が進んで調達数が40セット前後に減少すると1セット7,500万円前後まで高騰している。
但し、2021年度におけるジャベリンの米軍調達価格は1セット約6,800万円、ミサイル本体が1発約2,000万円で、輸入すると更に高額になるのが常*5なので、調達数や性能の差を考慮すると上手く価格を抑制していると言える。
またウクライナ戦争で明らかな様に、この手の対戦車兵器は有事の射耗が激しく、輸入に頼っていると補給に支障を来す場合があり、ある程度国産で賄える体制を整えておく意義は極めて高い。


作中の活躍

Web版の閑話:忘れられた世界にて初使用。
戦車クラスの戦力と目されたゴウルアスに対して、がバイクからの走行間射撃を敢行している。
発射されたミサイルはゴウルアスの迎撃を潜り抜けて直撃、粉々に吹き飛ばして撃破する。

5巻特典ファルタス提督でも登場。
バルーン平野の戦いにおいて、ゴーレムに偽装したMGZ型魔導アーマーに対して城島が使用。
ミサイルは直撃したものの、纏っていた岩が空間装甲の役割を果たしたため、撃破までは至らなかった。
しかし、装甲強度を18%まで低下させる事に成功、これに危機感を持ったリョノスは魔光砲の使用を決断する。

関連項目
兵器自衛隊84mm無反動砲

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〔最終更新日:2024年08月16日〕

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最終更新:2024年08月16日 16:07
添付ファイル

*1 ジャベリンはシーカーの冷却に約10秒必要。更に冷却用のガスとバッテリーは約4分しか保たないので、冷却開始から4分以上発射しなかった場合、ガスとバッテリーを交換する必要がある。2024年現在開発中のG型では非冷却型のシーカーに更新される。この新型シーカーは目標識別能力の向上により、有効射程距離も4.5kmに延伸される

*2 誘導装置や安全装置を切れば可能だが、凄く面倒くさいらしい。なお最近の改善によって、この欠点は改善されたとのこと

*3 尤もジャベリンの新型発射ユニットであるLWCLUは、旧型のCLUより約2kg軽量化されており、軽MATとの重量差は小さくなっている。ちなみにLWCLUはスティンガーも発射可能になっている

*4 その後も調達は続いているが、調達数が非公表になっている

*5 訓練支援等の費用も含まれるので参考程度だが、2021年12月のリトアニアへのFMS輸出の報告では発射ユニット30基、ミサイル341発で1億2,500万ドル(当時のレートで約142億円。単純計算で発射ユニット1基とミサイル約11発の組み合わせが約4.7億円)、2022年8月のブラジルへのFMS輸出の報告では発射ユニット33基、ミサイル222発で7,400万ドル(当時のレートで約100億円。単純計算で発射ユニット1基とミサイル約7発余りの組み合わせが約3億円)