「アンデッドポケモンは人の体を蝕むんだよ。」
「!? ドユウコトデスクァ、ソレ!」
意味は伝わる、だが剣崎は聞き返せずにいられなかった。
「そのままの意味だよ!あいつらを使っていけばいずれは俺は……。」
橘は頭を抱えている。何かにおびえるように。
「俺は……俺の体はボロボロだぁ!!」
剣崎は衝撃を受けた。体が…ボロボロ…。
橘がそうなるのなら、剣崎もそうなってしまうのだろう。

「……それだけじゃない。アンデッドポケモンを逃がしたのは烏丸達だ。」
(!? 今なんて言った!?)
剣崎の顔は誰がどう見ても驚いてるとしか思えない、そんな表情だった。
「烏丸所長が……アンデッドポケモンを?」
「そうだ……。あいつらは自分達の尻拭いを俺たちにオスィツクェッタンダッ!」
「そんなこと、信じれるわけ無いじゃないですか、大体ナンヲメリットガアルッテンディスカ!!」
二人とも興奮して何を言っているのか分からなくなってきている。
「そんなこと俺が知るか!とにかく、あいつらが、アンデットポケモンを逃がしたのは事実なんだよ」
橘はそれだけ言うと剣崎に背を向けた。
「! 待ってください!どこ行くっていうんです!!」
「……烏丸のところだ。今アイツは俺が確保している。ゴホッゴホッ」
橘がまた咳き込んだ。本当に体がボロボロなのだろう。
「……お前は来るな。どうせアイツはまだ目が覚めちゃいないんだ。」



橘に言われて町に戻った剣崎は再びポケモンセンターへと向かった。
「……オドシシやモジャンボと戦った時、俺一人じゃ目の前が真っ暗になってたかもしれない。」
「もっと強くならなくちゃ。……でも。」
剣崎は橘の話のことが気になっていた。
(体がボロボロになる……。もし本当なら俺は……。)
「……いや、考えていても仕方が無い。今はもっと強くならなきゃ。」
剣崎はポケモンセンターから出ると近くの森へと行くことにした。
森には虫ポケモンがわんさかいる。LVアップには最適だろう。


「ヘラクロス!つのでつく!」
ヘラクロスの攻撃を受けてコクーンが倒れた。
「これで150匹っと。次はイノムーの番だな。」
所謂武者修行という奴だ。手当たり次第にポケモンを倒していく。
……森のポケモン達にとってはいい迷惑だろう。
ガサゴソッ
「!? なんだ!?」
振り返るとモルフォンが浮いていた。
虫ポケモンが森にいてもなんらおかしくない。
だが相手はただのモルフォンではない―アンデッドポケモンだった。
「アンデッドポケモン!?ヘラクロス、つばめがえし!」
剣崎はヘラクロスに命令を下した。ヘラクロスも以前よりガタイがよくなって見える。
ブンッ
鈍い音が空しくこだました。攻撃を回避されたのだ。
「アルェ!? 何で!? つばめがえしがぁ!?」



「みきりを使われんたんだ、馬鹿が。」
声の主はいつかのコートの男だった。ストライクをつれている、間違いない。
剣崎は何か喋ろうとしたがコートの男にさえぎられた。
「……だが、これでトドメをさせる。モジャンボ、サメハダー」
男はモジャンボとサメハダーを繰り出した。
「モジャンボ、しめつける。」
モジャンボの蔓がモルフォンを襲う。モルフォンは回避しようとしたが失敗した。
「……みきりはそう連続で成功しない。サメハダー、つじぎり。」
動きの封じられたモルフォンにサメハダーが突っ込む。
"つじぎり"を急所にくらったモルフォンは力なく地面に落ちた。
「モンスターボール。」
8と書かれたボールを投げるとモルフォンは吸い込まれていった。
そのまま男は立ち去る気でいるようだ。
「ちょっと待てよ、礼ぐらいイッタルァドゥオナンダロ!」
「俺の獲物にお前がちょっかいをかけただけだ。礼など言う必要も無い。」
男の言葉に剣崎も言葉を詰まらせる。しばしの沈黙。
「……じゃあせめて名前を教えてくれ。あんたの名前。」
コートの男はしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。
「……相川 始。」
「相川、相川始、始。……始ね。よし覚えた!」
ぼそぼそ何回か名前をつぶやくと剣崎は笑顔で答えた。
「あ、俺は剣崎 一真ね。」
「……覚えておこう。」
始はそのまま立ち去った。



根城に帰った橘を待っていたものは想像を絶するものだった。
「な……ナンドゥワコリャゥ!」
烏丸が燃えている。当然橘は火をつけた覚えなど無い。
あまりのことに橘が呆然としていると、烏丸の体が消失した。
「……いったい何が?」
恐る恐る調べ始める。そこであるものを見つけた。
「……やはりそうゆうことか。……マグネシウムだ。」
橘はマグネシウムの欠片を見つけたようだ。
マグネシウムがどう関係しているのかは橘にしかわからないだろう。
「ん?」
また何かを見つけたようだ。
「書置きか……。」

―橘へ
お前は私を恨んでいるだろう。
確かにアンデッドポケモンたちを逃がしたのはBOARDだ。
だが私ではない。職員の一人、広瀬という男だ。
言い訳にしか聞こえないだろう。だがこれが事実なのだ。
私はアンデッドポケモンたちを再び捕獲するためにお前達を選んだ。
これが彼の行ったことへの償いとなる。私はそう信じている。
剣崎と共にこれからも戦って欲しい。
               ―烏丸

「……ふざけやがって。俺の体のことも考えずに!」
思わず書置きを床に叩きつける橘。
「……追いかけて問い詰めてやる。待っていろ、烏丸!」
橘は根城を後にした。



剣崎はポケモンセンターに帰ると、手持ちの確認を始めた。
ヘラクロス 
リザード
イノムー
サワムラー
オドシシ

「5匹か。大分賑やかになったな。これなら次の町にいけるかな。」
(この町には始や橘さんがいる。俺は他の町に行った方がいいな。)
剣崎の考えはそういったものだった。
「次の町に行くには……呼子の洞窟、ここを突っ切るしかないか。」


「ここが、呼子の洞窟……ねぇ。」
いかにもボロボロな入り口。今にも崩れてきそうである。
「……オバケとか出てきそうだな。」
ゴーストポケモンの一匹や二匹いてもおかしくない、不気味な場所だった。
「ここを進まないことには次の町にいけないし……。いくか。」
剣崎は重い足を一歩前に出した。

「リザード、シャドークロー!」
リザードのツメの周りに黒いオーラが纏わり、ジュペッタを切り裂いた。
「ふう、BOARDにいた頃にタイプ相性はみっちり教えられたからな。楽勝だぜ。」
「きゃぁぁぁぁ!!」
突然洞窟内に悲鳴が響き渡る。少女の声だ。
「!? 何だ!?」
駆けつけた剣崎の目に映ったのはアンデッドポケモンに襲われる少女の姿だった。

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最終更新:2007年01月07日 23:38