剣崎は暇だった。
レンゲルの件以来特にアンデッドポケモンも出てこない。
かといって遠くの地方に行くのも気が引けた。
始の言葉が確かならば、あまり遠くに行っても
アンデッドポケモンに遭遇できるとは限らない。
そういう訳で適当に特訓しながら過ごしていた。
一応気になっている事はあった。
橘の事だ。しかし、アレばかりはもう本人がどうにかするしかない。
ふと、手元のアンデッドサーチャーを見る。
「そういや、コレ作動した事無いな……」
アンデッドキレイハナに騙された時に作動していれば活躍していたはずだ。
しかし、反応を見せたことが無い。
剣崎はよく調べ始めた。
「電源が……オフ?」
答えは簡単だった。電源スイッチがオフになっている。
「所長もこんな物付けなくていいのに……」
物々いいながら電源をつける。
すると早速反応を始めた。
それもかなり近く、目と鼻の先だ。
「こんにちは、剣崎さん」
みゆき――キレイハナアンデッドだった。
「おまえ、性懲りも無く!」
身構える剣崎。
「あら、今日はお使いに来たのよ。
伝言よ。明日の正午、東の山で待つ」
「伝言? 誰の物だ!」
剣崎の言葉に、みゆきは意地悪く口を開いた。
「それは言えないわ~。ともかく、伝えたわよ」
みゆきはそのまま帰っていった。
「東の山、か」
剣崎は特訓を再開した。
翌日。
剣崎は朝早くにポケモンセンターを出た。
東山に着いたのは正午10分前だった。
すでに先客がいるようだ。剣崎が話しかける。
「お前は誰だ?」
剣崎の問いかけに、聞き覚えのある声が返ってくる。
「私? 私は矢沢。おや、いつかのポケモントレーナーじゃあないか」
矢沢。アンデッドモココの人間体だ。
以前の戦闘では剣崎は敗北に近い結果を出している。
「剣崎だ! 何で俺を呼び出したりした!?」
剣崎が叫ぶ。それに対して矢沢の反応は予想外のモノだった。
「あ? 呼び出したのはそっちでしょ。
……ま、いいや。遊んであげる。おいで、オンドゥル男」
矢沢の挑発に怒りを燃やす剣崎。
「言ったな? 一撃で倒してやる!」
剣崎がライボルトを繰り出す。
矢沢も姿をアンデッドモココへと変えていく。
アンデッドモココが先手を取った。
「喰らいな、スパーク!」
強烈な突進攻撃。跳躍してから放たれるそれはとても派手だった。
「見切れ、ライボルト!」
ライボルトが紙一重で攻撃をかわす。
相手の攻撃を"みきり"で避けたのだ。
「へぇえ、やるじゃなぁい。前より強くなった?」
「ふん、今度はこっちからだ! かみくだく!」
ライボルトがアンデッドモココに接近、牙をむいた。
モココは攻撃を避けない。左腕に噛み付くライボルト。
その瞬間、ライボルトが激しく吹っ飛んだ。
右腕からの"ほのおのパンチ"を喰らったのだ。
「ライボルト! くっ、お前もやるな!」
ライボルトをボールに戻す剣崎。
新たにケンタロスを繰り出す。
「ケンタロス、でんげきは!」
飛び出したケンタロスが角から放電する。
電撃はアンデッドモココ目掛け一直線に伸びていく。
「はっ、ムダムダァ!」
電撃を破りケンタロスに向かってくるアンデッドモココ。
「アイアンテェル!」
振り下ろされる鋼鉄の尻尾。
しかし剣崎はその瞬間を待っていた。
「弾き返せ!」
ケンタロスの磁力の角が唸りを上げる。
モココは磁場に耐え切れずに吹き飛んだ。
「久々に面白くなってキタァ!」
再び立ち上がるアンデッドモココ。
ズドォン
突然、剣崎を高エネルギーが襲った。
「な、何だ!?」
いきなりの出来事に驚く剣崎。
アンデッドモココも同じようだ。
さらに飛んでくるエネルギー弾。
剣崎はカブトを繰り出し防御する。
「おまえ、汚いぞ! こんな事して勝つつもりか!」
エネルギー弾は剣崎だけを狙っている。
剣崎は完全にモココが仕組んでいると思ったようだ。
「違う! 俺じゃない!」
否定するアンデッドモココ。
しかし剣崎には理解されない。
「やはりアンデッドポケモンはアンデッドポケモンだったな!」
三度エネルギー弾が剣崎を襲う。
だが、その攻撃は剣崎にもカブトにも当たらなかった。
アンデッドモココ……矢沢が受け止めたのだ。
「なっ……!?」
予想外の出来事にさらに驚く剣崎。
更なる予想外の事が起きた。
「ちょっと、邪魔しないでくれる?」
草むらから現れた上級アンデッド。アンデッドキレイハナだった。
「折角同士討ちを狙っておいしい所を持って行こうと思ったのに……」
そう言うとアンデッドキレイハナは標的を再び剣崎に定めた。
放たれる草系最強の攻撃"ソーラービーム"。
カブトでも防ぎようが無い。
「邪魔してんのは、どっちだ……?」
剣崎とキレイハナの間に割って入る矢沢。
当然ソーラービームの直撃を受けている。
「おまえ……」
矢沢の行動が信じられないといった表情の剣崎。
「俺はコイツと一対一で戦ってんだ。邪魔モンは失せな!」
矢沢の電撃がキレイハナに当たる。
「……馬鹿みたい。つまらないから帰るわ」
そそくさと退却するアンデッドキレイハナ。
「サァ……バトルを続けようか?」
剣崎の方を向き戦闘体勢を取る矢沢。
剣崎が躊躇っていると草むらから再び何かが飛び出した。
ペルシアン。剣崎がレンゲルに解放されたアンデッドポケモンの一匹だった。
「まぁたお邪魔虫か、はん」
敵意をペルシアンに向ける矢沢。
それより速く剣崎が飛び出した。
「コイツは俺がやる。それで貸し借り無しだ」
その言葉に矢沢は少し笑みをこぼした。
「勝手にしな」
「リザード、かえんほうしゃ!」
リザードの焔がペルシアンを捉える。
さらに接近戦に持ち込み、急所目掛け爪で切り裂く。
「トドメだ、フレアドライブ!」
火炎を全身に纏ったリザード。
ペルシアンに飛びつくとその炎は勢いを増した。
強烈な攻撃のラッシュにペルシアンは戦闘不能となった。
一方で、リザードの方もかなりの体力を消費したようだ。
「ペルシアン、再捕獲完了っと」
ペルシアンをボールへとしまう剣崎。
「じゃあ、行くぜ?」
再び向かい合う剣崎と矢沢。
お互いに遠慮は無し。リトライ無しの真剣勝負だ。
先に動いたのは矢沢だった。
「最強技ぁ! ヴォルテッカァー!!」
脅威のスピード、そしてパワーを持って突っ込んでくる。
「ねじ伏せろ!ヘラクロス、インファイト!」
剣崎もヘラクロスを繰り出す。
ボールから飛び出す際のスピードを利用して突撃するヘラクロス。
両者が激しくぶつかり合い、そして吹き飛ぶ。
剣崎はヘラクロスを戻すと間髪いれずに3匹のポケモンを繰り出した。
矢沢が体勢を立て直している間にその3匹は既にフォーメーションを組んでいた。
「ライトニングソニック!!」
音速の壁を破り、電撃を纏った必殺の蹴り。
矢沢にはそれを防ぐ術が無かった。
地にめり込む矢沢。大きな衝撃波が起きる。
「俺の……負けだ。捕獲……しな」
息絶え絶えに喋る矢沢。
剣崎は躊躇いを見せる。
「あいつの攻撃を受けて無くても……負けてたさ。
ほら、とっとと……しな」
うなずく剣崎。
ベルトから「Q」の紋章を刻んだモンスターボールを取り出す。
矢沢はボールへと吸い込まれていった。
「アンデッドポケモンにも……いい奴はいるのかもしれないな」
ポケモンセンターに帰る途中、一人剣崎は呟いた。
最終更新:2007年03月09日 17:40