剣崎は何をすればいいか考えていた。
「始が……アンデッドポケモン、か。」
アンデッドポケモン、人類の敵。
それも人の姿を取っている。上級以上の存在だろう。
「なんか、実感わかないなぁ」
始は何度も剣崎を助けてきてくれた。
剣崎のためだけという訳ではないようだが。
天音の件もそうだ。始は彼女の命を救ってくれた。
「人類の敵、か」
矢沢のような上級アンデッドもいた。
始もそうなのだろうか。
ボーっとしている剣崎。
突如アンデッドサーチャーに反応が起きる。
「……いかなきゃ」
剣崎は駆け出した。
睦月はまだ例の特訓をしていた。
「まだ成功率が30%を切っているぞ」
橘の厳しい指導。それに必死でついていく睦月。
「は、はい! ……2!」
数字は「3」だった。
(動体視力……どうすれば)
睦月は今までの経験をフルに生かして取り組んだ。
神経を研ぎ澄ませ、動きを見極め、最後は直観力!
「5!」
「5」と書かれた数字。続けて的中していく。
そして10連続成功。神が降りたかのようだった。
「やったな、睦月!」
橘と二人で喜んでいると、アンデッドサーチャーに反応。
二人は急いで現場に急行した。
「酷い状況だな」
現場に駆けつけた二人は驚いていた。
地下のショッピングモール。何かが暴れたようにボロボロだった。
「橘さん、アレ!」
睦月が何かを見つける。
アンデッドポケモン、今回の犯人だ。
「ダグトリオか、いけニョロトノ!」
橘はニョロトノを繰り出した。
「オクタン、いけ!」
飛び出すオクタン。
「「バブルこうせん!!」」
両者が一斉に泡を放つ。
ダグトリオにはかなりのダメージだった。
「ん? 睦月、あっちに誰か倒れている!」
橘が逃げ遅れた人を見つけたようだ。
被害者を救助する橘。
「俺は他にも倒れている人がいないか調べてくる。
アンデッドポケモンはお前に任せた」
そう言うと橘は奥へと行ってしまった。
「た、橘さん!? 俺一人で倒せるのか……?」
不安げな睦月をダグトリオの攻撃が襲う。
「うわぁ、オクタン、タネマシンガン!」
隙のない多段攻撃に怯むダグトリオ。
しかしすぐに攻撃を再開する。
「無理だよぉ、できっこないよ」
睦月はどんどん弱気になっていった。
ダグトリオの"すなかけ"が容赦なくかかる。
「くそ、オクタン!えんまく!」
防御に徹する睦月。
素早い動きのダグトリオと鈍足のオクタン。
どうしても後手に回ってしまい、ついにはダウンしてしまう。
「オクタンッ! どうすれば……」
睦月は混乱し始めた。
剣崎が駆けつけた場所ではオニドリルと始が戦っていた。
「カリスの仇!」
ストライクを失い、ポケモンを操れなくなった始に襲い掛かる。
「やめろ!」
剣崎はライボルトで始を援護する。
「邪魔をするな!」
羽根手裏剣が飛び交う。剣崎もなかなか近づけない。
「始!」
剣崎は始に呼びかける。
「……なんだ」
「俺、お前の事、信じて見る。
だから、一緒に戦おう!」
剣崎の呼びかけに始の心が動かされたのかもしれない。
「……いいだろう」
始は剣崎を守るように羽根手裏剣を弾き飛ばした。
「ふん、お前達が群れたところで!」
空中へと舞い上がるアンデッドオニドリル。
さらに降り注ぐ羽根手裏剣の雨。
「くそ、俺飛行ポケモン持ってない!」
「電撃攻撃で何とかならないのか」
「上に向けて撃つのと前に向けて撃つのじゃ勝手が違って……」
万事休すといった所の二人。
「……一つ方法がある。一回限りの手段だが」
剣崎はうなずいた。
「それにかけるしかない。言ったろ、お前を信じるって」
始は剣崎に作戦を伝えた。
「よっしゃ、いくぜっ!」
睦月は悪戦苦闘していた。
グラエナ戦での恐怖。それだけではない。
心の闇が彼を襲っていく。
「どうすればいいんだよ……!」
彼の中に焦りが生まれる。
その時、誰かの声がした。
「ガンバレ!」
睦月が辺りを見回して見る。
声の主は橘が助けた少女だった。
「ガンバレ、お兄ちゃん!」
大切な人を守りたい。その気持ちが再び沸きあがっていく。
立ち上がる睦月。
「俺は、上城 睦月だ!」
意を決してアリアドスを繰り出す睦月。
「シグナルビーム!」
七色の光線がダグトリオを直撃する。
さらに"おいうち"をしかけるアリアドス。
「クモのす!」
逃走経路を完全に阻まれ八方塞のダグトリオ。
やけになって睦月に突撃を始めた。
「アーボック、リングマ!
ブリザードクラッシュだっ!」
"れいとうビーム"と"こおりのキバ"。
二つの冷気がダグトリオの活動を凍りつかせた。
モンスターボールを投げる睦月。
「やった、やったぞ……!」
少女に感謝を告げていると橘も帰ってきた。
「っと、やったな、睦月」
「はい! 橘さん!」
「な、何ぃ!?」
驚きを隠せないアンデッドオニドリル。
「な、何故貴様が!?」
「借りたのさ、アンデッドの力をな!」
剣崎が空に浮いている。
空中でオドシシを繰り出すと、最大パワーの"10まんボルト"が炸裂した。
「ぐわぁ!!」
落下するアンデッドオニドリル。懐からモンスターボールがこぼれ落ちる。
「カリス!」
ボールは始の手に渡った。
「メガヤンマ!」
ストライクの影響下に再びおかれたメガヤンマが剣崎を静かに地に下ろした。
筋書きはこうだ。
始がアンデッドの力を使い、数十秒間だけメガヤンマを従わせた。
これにより剣崎を宙へ浮上させる。
しかし、それは上級としての力でも時間には限りがあった。
そこでストライクを回収、メガヤンマの支配時間を無期限にする。
作戦は成功、完全勝利だった。
「ええい、カリスを返せ!
彼と私は一万年前の友情で結ばれた戦士!」
襲い掛かるアンデッドオニドリル。
「始、行くぞ!」
「ああ!」
二人の息がぴたりと重なる。
「モジャンボ、奴の動きを封じろ!」
オニドリルの翼が蔦でがんじがらめにされる。
「こんなモノ! な、何!」
オニドリルの目に映ったもの。
それは高速で接近する電撃を帯びたサワムラーだった。
「ライトニングソニック!」
直撃。吹き飛ぶオニドリル。
「カ、リ、ス……」
剣崎は「J」の紋章が刻まれたプロパーブランクを投げつけた。
「ゲット、完了!」
笑みを浮かべる剣崎に釣られて始も笑う。
「よかったな、剣崎」
「ああ!」
二人の信頼はより強固なものとなった。
災厄にも負けぬ友情。これが運命を切り開く切札。
最終更新:2007年06月14日 19:19