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橘は案外早く見つかった。
彼は伊阪の研究所の近くで立ち尽くしていた。
「橘さん!」
剣崎が駆け寄る。
ふと橘の足元に目がいった。
墓だ。それも二つ。
「橘さん、それ……」
剣崎が恐る恐る声をかける。
墓参りを邪魔した事に対して負い目を感じているようだ。
「俺が……殺した人たちだ」
橘がつぶやく。

「二人ともいい人だった。俺にもっと力があれば、二人は死ななかった!」
自分への怒りを抑えきれない橘。
剣崎はただ見ている事しかできない。
「俺はトレーナー失格だ! 大切な人すら守れない奴に、人類なんて守れない!」
とめどなく溢れてくる橘の気持ち。
「俺には……無理なんだよ」

バシン

綺麗な打撃音が響く。
剣崎が橘を殴ったを殴ったのだ。
当の橘は何が起こったのか理解できていない。



「アンタ、それでいいのかよ!」
剣崎が叫ぶ。先輩と後輩という立場を忘れて。
「その二人は何のために死んだんだよ、アンタを腑抜けにする為か!?」
橘は黙ったままだ。
「二人の分まで人類守って見せろよ、それが仕事だろ!」
静まりかえる場。それを破ったのは剣崎だった。


「……今のは言い過ぎました。スイマセン。
 でも、貴方を必要としている人がまだいるって事、わかって欲しいです」
橘はうつむきながら返事をした。
「……そうか」
心がここにあらず、そんな一言だった。

「これ、橘さんに返します。後、コレも」
預かっていたベルト、そしてアンデッドサーチャーを差し出す。
「いつか役に立つ時がくると思います」
烏丸が言っていたことと同じ事を言う剣崎。
それだけ言うと剣崎はその場から立ち去った。
残された橘は何かを思い、空を見上げていた。



レンゲルは再び町に現れていた。
破壊と殺戮。それがレンゲルの好物だった。
壊して壊して壊す。少年の姿で暴れるレンゲルは恐怖を振り撒いた。
レンゲルの動きが突如止まる。
「……誰だ? オレを呼ぶのは……」
レンゲルは彼を呼ぶ声の方へと足を進め始めた。

反対方向から一つの影が近づく。相川 始だった。
「カリスか。今お前と遊んでいる暇は無い」
レンゲルがボールを投げる。前回捕獲したドラピオンだ。
投げられたボールが壊れる。コモンブランクで捕獲したようだ。

アンデッド用のモンスターボールには2種類ある。
一つは専用のモンスターボールである、プロパーブランク。
もう一つは全種に対応しているコモンブランク。
ただし、コモンブランクは一度出すとボールマーカーの機能を失ってしまう。

ドラピオンが始を襲う。始はストライクで応戦し始めた。
ストライクの鎌がドラピオンの甲羅に傷を付けていく。
「つばめがえし!」
さらに"つばめがえし"が直撃する。吹き飛ぶドラピオン。
ストライクの追撃が続く。ドラピオンは尻尾から"どくばり"を飛ばし迎撃した。
ストライクが毒を浴びる。さらに"ほのおのキバ"が命中する。
始はストライクを戻すと新たにメガヤンマを繰り出した。
「畳み掛けろ!」
メガヤンマの高速攻撃に追いつく事のできないドラピオン。
そこに"さいみんじゅつ"を打ち込んだ。
トドメとばかりにヤドラン、ムクホークを繰り出す始。
「スピニングダンス!」
メガヤンマの浮遊力を受け、上昇していくヤドラン。
ムクホークの起こす竜巻の援護を受け、ドラピオンに尻尾を叩き込む。
疾風怒濤の一撃にドラピオンは気絶した。



始をドラピオンに押し付けるとレンゲルはある方向に目指し始めた。
伊阪の研究所だ。そこでばったり剣崎と遭遇した。
「お前は、この前の!」
咄嗟にサワムラーを繰り出す剣崎。それに対してレンゲルが糸を放つ。
「邪魔だ、どけ」
レンゲルとサワムラーの激しいぶつかり合い。
レンゲルの方は人間とは思えない動きでサワムラーを翻弄する。
確実にサワムラーにダメージが蓄積されていく。
「サワムラー、足を狙え!」
剣崎の指示を受け、低姿勢からサワムラーが"まわしげり"を繰り出した。
足をやられ体勢を崩すレンゲル。そこに追い討ちをかける。
「ライトニングソニック!」
新たにオドシシ、ペルシアンが飛び出す。
コンビネーションを決めようとした瞬間、レンゲルがスリープを繰り出した。
「やれ、リモート」
スリープがいつかの技をかける。気づいた時にはもう遅い。
三体同時に野生に帰ってしまった。



好き勝手に行動するポケモンたち。
サワムラーは森へ、ペルシアンは路地裏へ。オドシシは留まり剣崎を襲う。

「ちょ、ちょ、そりゃ無いでしょ!?」
オドシシの電撃が降り注ぐ。
たまらず剣崎はライボルトを繰り出した。電撃がライボルトに吸収されていく。
特性"ひらいしん"のおかげだ。
「よ、よし、コレならいける!」
ライボルトへのダメージはあまり無いようだ。ピンピンしている。
オドシシも"ひらいしん"に気づいたようで、攻撃を切り替えてきた。
角を振りかざしながら突進してくる。
「スパーク!」
剣崎の指示でライボルトが駆け出す。
オドシシに殴りこむ様な"スパーク"が命中した。
よろけて倒れるオドシシ。剣崎はさらにヘラクロスを繰り出す。
動けなくなっている所にヘラクロスの突進が直撃する。
連続攻撃を受け、完全にダウンするオドシシ。
剣崎がすかさずモンスターボールを投げる。

オドシシを再捕獲した時にはレンゲルはいなくなっていた。
「アイツ……ドコいったんだ」



レンゲルが研究所に到着した。
研究所の様子は、橘がぶち壊した時のままだった。
「誰だ、俺を呼んだのは」
レンゲルが叫ぶ。周りの木々が揺れる。
しばらくすると研究所から人影が現れた。
女性のようだ。長い髪、白い服と典型的なお嬢様ルックだ。
「おまえか。なんの用だ?」
女性が微笑みながら口を開いた。
「人間の身体を乗っ取らないといけないなんて不便なモノね」
レンゲルの眉間に皺が寄る。
「冗談よ、冗談。それより、いい話があるんだけど?」
女性はレンゲルをからかう様に扱う。
「まずは名前を聞こうか?」
レンゲルはそれなりに乗り気の様だ。眉間も元に戻っている。
「そうね……吉永みゆきと言うのはどうかしら?」
レンゲルの表情が再び強張る。
オレが聞いたのはそういう意味じゃない、とでも言いたそうだ。
「あら、呼べれば何でもいいじゃない。みゆきでいいわよ。
 本題に移るわよ、ちょっと手を組まないかしら?」
「貴様とか?」
「貴方の力と私の作戦があれば楽に雑魚を片付けられるわ」
その一言を聞いてレンゲルはやる気になったようだ。
「いいだろう、その作戦というのは何だ?」
吉永が不気味に微笑む。
「まずは――」
最終更新:2007年03月04日 03:57