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剣崎は橘、睦月と一緒に食料調達に出かけた。
早い話が買出しである。
「おーい、剣崎! 寿司だ、ウニもあるぞ!」
橘が嬉しそうに声をあげる。
「ダメですよ、そんな高いもの」
剣崎は橘をスルーしていくつかの野菜やらをカゴに入れた。
そんな中、睦月が頭を押えながら話しかける。
「すいません、俺ちょっと調子悪いみたいで……先帰ります」
「ああ、気をつけろよ」
剣崎は心配そうに見送った。
橘はと言うと、まだ寿司を見て動こうとしなかった。
「な、剣崎、一番安い奴でいいから」
「ダメですよ、この前もそう言って買わされましたよ」
「頼むよ、お前にも分けてやるから」

結局、一番安い4点盛りを買わされた剣崎だった。



二人が小夜子の家に帰った時、そこにいたのは嶋だけだった。
「やぁ、おかえり」
「あれ、睦月来てませんか?」
「睦月君? いや、見てないよ」
首をかしげる剣崎。
「自宅に帰ったんじゃないか? あいつの家、この町にあるし」
橘が寿司のパックを開けながら答える。
忘れがちだが、睦月の家はこの町にある。
「そうかもしれないですね、最近ここに入りびたり気味だったし」
剣崎も食事の準備を始めた。
「そうだといいんだけどね」
嶋だけは一人気がかりな様子だった。

「ああ、そういえば烏丸所長からこんなものが届いたよ」
小包を取り出す嶋。
「橘君用のラウズアブゾーバーだそうだ」
「本当ですか!?」
食べかけの寿司をほっぽり出して駆け寄る橘。
小包を開けるとそこには確かにラウズアブゾーバーがあった。
満面の笑みを浮かべる橘。
「そういえば、俺この前ダイヤのカテゴリーQ捕獲しましたよ」
ベルトを漁り、カテゴリーQを取り出す剣崎。
「はい、これ。これでジャックフォームになれますね」
剣崎はアンデッドハブネークを橘に手渡した。
「剣崎……。ありがとう、これからもよろしくな」
そういうと橘も食事の支度を始めた。



睦月は家には帰っていなかった。
「はぁ、はぁ、この感覚……奴が、そんな」
人気のない通りで倒れる睦月。
時間だけが過ぎ去っていく。
突然、むっくりと立ち上がる睦月。
「……やっと手に入れた。さてと、どうするかな?」

「私と話し合いでもしないかい、カテゴリーA」
睦月が振り向くと、嶋が立っていた。
「風がキミの居場所を教えてくれたよ。往生際が悪いねぇ」
「うるさい、貴様など、この俺が倒してやる!」
睦月、いやレンゲルは棒状の武器を振りかざし、カテゴリーKに攻撃を仕掛ける。
「……フン!」
嶋は右腕だけをアンデッドポケモンのモノに変化させ、受け止めた。
「少し、眠っていてもらおうか」
意識を完全に封じる"さいみんじゅつ"。
カテゴリーKの強力な技にレンゲルは気を失った。
そのまま嶋は睦月の身体を抱えて、家へと帰還した。


玄関で剣崎が嶋を迎える。
「嶋さん、どこ行ってんですか!……って睦月!?」
睦月を抱えた嶋に驚く剣崎。と橘。
「道端で倒れていてね、今日はここで休ませよう」
いつもと様子の違う事に違和感を感じる二人。
しかし問い詰めても答えてはくれないだろうから何も言わなかった。
「面倒な事にならないといいんだが」



朝を迎えた。
剣崎が目を覚ます。
2つあるソファには橘、剣崎がそれぞれ寝ていた。
そしてベッドには睦月が寝ているはずだった。
しかしその姿はない。嶋もだ。
二人の姿がどこにもない。
「これって……もしかして!」
橘をおこしにかかる剣崎。
「橘さん、起きてください!」
「ん、どうしたんだ剣崎」
事態を説明する剣崎。

「やはりそういうことか、きっと睦月は嶋さんを倒す気だ!」
そういうと素早く着替え、アンデッドサーチャーを作動させる。
近くの河川敷にアンデッド反応が二つ。
カテゴリーAとカテゴリーKのものだった。
「どういうことです、橘さん!」
「説明は後だ、急ぐぞ!」
家を飛び出す二人。



「橘さん、説明してくださいよ」
二人でペルシアン、ギャロップに乗ってアンデッド反応のある場所を目指す。
その間に剣崎は先ほどの疑問を橘にぶつけた。
「恐らく、睦月の中でカテゴリーAが再発したんだ。
 同一種族であるカテゴリーKと接触した事でな」
「それじゃあ、睦月はまたレンゲルに!?」
剣崎の驚きにうなずく橘。
「ああ。そしてカテゴリーKを封印して完全に睦月を取り込む気なんだ」
そこまで話し終えたところで新たにアンデッド反応が起きる。
目の前にコータスが現れた。まるで道を塞ぐかのようだ。
「くっ、こんな所で! 剣崎、お前は先に行け!」
橘はギャロップを引っ込めるとコータスの注意をひきつけた。
「わかりました、橘さん! 睦月は俺が止めます!」


「おい、貴様の言うとおりここまで来てやったんだぞ?」
河川敷で二人のアンデッドポケモンが対峙していた。
一人は人を取り込み、操るカテゴリーA。
もう一人は上級でも最高位に位置するカテゴリーK。
「あそこで戦うと剣崎君たちに迷惑だからね」
飄々とした態度でレンゲルに臨む嶋。
「人間の事など知るか! フン!」
睦月の身体はほぼアンデッドポケモン化していた。
右腕が強靭なカギ爪を持ったものへと変化する。
嶋はひょいと攻撃をかわすと、竜巻で反撃する。
「効かぬわ、そんなもの」
レンゲルはロッドを取り出すと、鋭い突きを何発も浴びせた。
いずれも直撃すればかなりのダメージとなる。
嶋は紙一重の動きで回避し続ける。



「ええい、ちょこまかと……うぉ!?」
レンゲルが頭を抱え、膝をつける。
「やはりな、おまえは完全に乗っ取ったわけじゃなかったようだ」
嶋は睦月に語りかけ始めた。

「聞こえるか、睦月君! そいつを抑える方法が一つある。
 私を捕獲する事だ。私がそいつを完全に抑えることが出来れば君は元に戻れるだろう」
レンゲルはもがきながら頭をグラグラと揺らす。
「黙れ黙れ、喋るな! ええい、貴様は出てくるな!」
嶋はひたすら話し続ける。
「元はといえば私のせいでこうなってしまったんだ、心配しなくていい。
 だが、君の気持ちの持ち方が弱ければ奴に付け入る隙が出来てしまう。
 心を強く持て! 心の主はキミだ!」
睦月が起き上がる。
「ぐぉ……でも、し……ぬぐ……を捕まえる……て」
レンゲルの意識と本人の意識がぶつかりあっている。
「正義のために戦いたいんだろう!?」
嶋の一言に睦月がハッとする。
「俺は……俺は!」
アーボック、リングマが繰り出される。
「捕獲するんだ、私を」



「ニョロトノ、ハイドロポンプ!」
コータスに強烈な一撃が浴びせられる。
しかし強固な甲羅に阻まれ、ダメージを与えられない。
コータスの"こうそくスピン"がニョロトノを弾き飛ばした。
「ニョロトノ! 戻れ!」
既に橘は2匹のポケモンを倒されていた。
橘のポケモンは耐久力の高いポケモンが少ない。
持久戦に持ち込まれると不利なのだ。
「こんなところでモタモタしている暇はない!」
意を決し、ラウズアブゾーバーを左腕に取り付ける。
剣崎より渡されたカテゴリーQをセット。
「アブゾーブクイーン」
そして、伊阪――カテゴリーJをセットする。
「フュージョンジャック」
「伊阪、貴様の力……使わせてもらうぞ」
橘のポケモンたちに翼の力が授けられた。

「いけ、ドードリオ!」
ドードリオが宙を舞う。
リザードのように進化したわけではないが、地を走るドードリオの飛翔。
それは普通に考えれば異常だった。
「みだれづき!」
甲羅ではない本体を高速でつつきまわるドードリオ。
「決めてみせる、バーニングショット!」
サンドパン、バルビートが新たに繰り出された。
ドードリオの背にサンドパンが飛び移る。
"どくばり" "はかいこうせん" "かえんほうしゃ"。
三位一体の超射撃がコータスの甲羅を撃ち抜いた。
ダウンしたコータスにプロバーブランクを投げる橘。
橘はコータスを回収するとギャロップに再び飛び移った。
「間に合えばいいが……!」



剣崎が河川敷に辿り着いた時、全てが終決していた。
ブリザードクラッシュが嶋を直撃する。
叫び声とともにボールを投げる睦月。
睦月の中に二つのアリアドスが入り込んだ。
剣崎はただそれを見ていることしか出来なかった。





戦いに勝ったのは……カテゴリーK。
嶋 昇だった。
剣崎は睦月に近づく。
「睦月……お前!」
なんてことを、そう言おうとしたが何かおかしい。
睦月を見つめる剣崎。
「嶋さん……ありがとう、ございます」
涙を流す睦月。
「俺、戦います。最後まで、正義のために」
最終更新:2007年06月14日 19:23