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橘が再び目覚めた時、彼は自分の体に異変を感じていた。
「体が、軽い?」
体だけではない。心も軽やかだった。
「それがシュルトケスナーの力だ。……近くにアンデッドポケモンがいるな」
伊阪が唐突に喋った。上級ともなると同属をサーチできるようになるのだろう。
「俺が行く。生まれ変わった体で試してみたい」
橘が立ち上がる。既に扉に手をかけている。
「待て。お前にこれを渡しておこう」
そういうと伊阪がモンスターボールを差し出した。
「ニョロトノか。おもしろい」
ボールの中にはアンデッドポケモンの1匹、ニョロトノが入っていた。
「今のお前なら使いこなせるだろう」
その言葉を背に受けて橘は研究所を飛び出した。



伊阪が感じたアンデッドポケモンはギャロップだった。
「この前の奴か。今度は逃がさん」
橘はニョロトノを繰り出した。
「ニョロトノ、バブルこうせん!」
ニョロトノの口から無数の泡が放出される。
しかしギャロップは"かげぶんしん"でバブルを避けていった。
「まだだ、サイコキネシス!」
ニョロトノが激しい念力を起こす。
衝撃でギャロップは体勢を崩した。さらに滞空していた泡がギャロップを襲う。
「よし、いける、いけるぞ!」
橘は確信していた。自分自身の変化を。
恐怖心などもうどこにも無い。彼にあるのは闘争心だけだった。

ニョロトノの猛攻にギャロップはたまらず上空に逃げた。"とびはねる"だ。
「逃がすか!こっちもとびはねろ!」
ニョロトノも負けじと"とびはねる"。2匹が上空でぶつかり合う。
ニョロトノの方が優勢だった。落下していくギャロップ。
「トドメだ、きあいパンチ!」
ターゲットに近寄るとニョロトノは必殺拳を繰り出した。
大地に叩きつけられるギャロップ。勝敗は明白だった。
橘はモンスターボールを投げる。
ポケモンを捕獲したのはクロバット以来だった。
「ギャロップ、ゲットだ」


橘は報告を兼ねて伊阪の研究所に帰っていた。
「ギャロップは捕まえた。もう俺は大丈夫だ」
ギャロップの入ったボールを見せると自信を持って発言した。
「そのようだな。だがしばらくは定期的に訪れた方がいい」
伊阪が話すには、1回だけでは一時的な回復しか見込めないだろうとの事だった。
「あぁ、また世話になる」
それだけ言い残すと橘は町へおりていった。



その後は行く当てもなく町をぶらぶら歩いていた。
大通りでは若者達が話し合ったりじゃれあったりしている。
(俺にもあんな時期があったな……)
「あれ?橘君?」
突然名前を呼ばれた。声は女性のものだった。
「やっぱり橘君だぁ。私分かる?小夜子だけど」
「……小夜子?」
橘は必死に記憶の中を辿っていった。
やがて一つの答えを見つけた。
「ポケモントレーナーズスクールの小夜子、深沢 小夜子か!」

ポケモントレーナーズスクールで橘と同期だった女性――小夜子は笑顔で答えた。
「覚えててくれたんだ。まさかこんな所で会うとは思わなかったわ。
 今は何しているの?やっぱりポケモントレーナー?」
橘が言葉を詰まらす。アンデッドポケモンのことを話すわけにもいかない。
「……まぁそんなところかな。今はポケモンゲットの旅をしてるんだ」
橘の話に小夜子が食いついた。
「旅?泊まる所とかあるの?」
旅している人間にとって寝床はもっと大事なモノの一つである。
「……いや。でもポケモンセンターにでも泊まるよ」
一応ポケモントレーナーの為に、ポケモンセンターは宿泊施設としても機能している。
しかし無料ということで最低限度の設備しか置いていない。
カプセルホテル以下といったレベルである。
「よかったら……家来る?」
小夜子が誘ってきた。突然の発言に橘も驚いた。
「え、いや、しかし……」
実際問題橘も寝床には困っていた。毎回野宿やポケセン通いという訳にもいかない。
「……わかった。しばらく世話になる」
食と住に釣られた橘だった。



剣崎はポケモンセンター内で考え事をしていた。
カブトやケンタロスも捕まえて最近は順調だ。
だけど慢心してはいけない。
伊阪の研究所のポケモン全てを相手にできる自信は無かった。
(前にも同じようなこと考えたな……)
根が単純なのでやることは毎回同じようなことである。
「まあいっか。初志貫徹忘れるべからずだ!」
いろいろ混ざった造語を叫ぶと、修行の為に外に出た。


「いけ、イノムー!」
伊阪の研究所の近くで修行を続ける剣崎。
もしかしたらアンデッドポケモンが出るかもという希望も持っていた。
大きな理由としてはここが森だったからだろうが。
吹き飛ぶカラサリス。ついでにケムッソも。
「いいぞ、こおりのつぶて!」
"こおりのつぶて"が高速で射出される。近くを飛んでいたバタフリーに命中した。
「グギャ!」
何かの悲鳴が聞こえた。草むらの方からだ。
ザッ、とペルシアンが飛び出してきた。
「ペルシ……アンデッドポケモンか!」
アンデッドベルトをつけている。"こおりのつぶて"に当たって激怒しているようだ。



「イノムー、とっしん!」
イノムーが唸りを上げて突っ込む。
しかし素早い動きでかわされてしまった。さらにペルシアンが攻撃を仕掛ける。
「させるか、カブト!」
ペルシアンの攻撃はカブトに阻まれた。
カブトは"かたくなる"のおかげでほとんどダメージを受けていない。
「よし、戻れ!頼むぞ、ケンタロス!」
最近捕まえたばかりのケンタロスを投入する。
ペルシアンは距離を取りながらヒット&アウェイ戦法で応戦してくる。
「磁力全開だ!」
ケンタロスの角が光る。アンデッドポケモンのみに与えられた力だ。
ペルシアンがケンタロスに引き寄せられてゆく。動きも鈍っている。
「イァミャダ、つのでつく!」
ケンタロスの角が相手に襲い掛かる。ペルシアンは吹き飛ばされた。
追撃を仕掛けようとするケンタロス。しかしペルシアンは逃亡した。
むしろ、逃亡できたと言った方が正しいかもしれない。
吹き飛ばされたことで磁力の影響が弱ったためだった。
「逃がしたか」
ケンタロスをボールにしまうと剣崎は修行を再開した。



小夜子に家に一泊した橘は、伊阪の研究所に向かっていた。
定期的に溶液に浸ったほうがいい、伊阪の忠告を実行するためだった。
「ん……?あれは……」
見慣れた人影。ヘラクロス。間違いない。
「剣崎!」
剣崎だった。橘はこんなところ再開するとは思っていなかったため驚きの声を上げた。

「橘さん!?どうしてここに?」
剣崎も驚いているようだ。彼も同じ心境なのだろう。
「ちょっと訳有りでな。ん、アレは……」
橘の視線にもう一つ人影あった。黒ずくめの男。
「待っていたぞ、橘」
伊阪が橘に話しかける。一方剣崎は橘に食って掛かった。
「どういうことです!?ヌワンデゥナヤツド!!」
「待て、剣崎。彼は敵じゃない。確かにアンデッドポケモンだが、いいやつだ」
橘の説明が剣崎の怒りに油を注いだ。
「アンデッドポケモン!?ますます許せません!」
剣崎は橘と戦う体勢を取った。ヘラクロスの角が橘に向けられる。
「ナズェワガッテクデナィ!?……仕方ない、今の俺は強いぞ」
橘も戦うつもりのようだ。カイロスを繰り出す。
「いつまでも新人だと思わないでください、俺だって強くなった!」
ヘラクロスが地面を蹴り上げ突進する。
だが火球が突撃の邪魔をした。伊阪が放ったものだった。
「邪魔をするな、これは俺と剣崎の問題だ!」
橘が伊阪を制する。すると伊阪は研究所に引っ込んだ。
「これで本気でぶつかれる。こい、剣崎!」
橘と剣崎の戦いが始まった。
最終更新:2007年01月21日 19:16