「ぃやめろぉっ!」
アンデッドポケモンに飛び掛る剣崎。リザードも続く。
不意打ちを受けたアンデッドポケモンは退散した。
「イガシタクァ。君、大丈夫!?」
見れば少女の顔は真っ青になっていた。
「……う」
意識はあるようだ。が、早く手当てをしなくてはならないようだ。
「どうすりゃいいんだ!とりあえず病院か!?」
「アンデッドポケモンの毒は奴らの持つ抗体でしか治せない」
剣崎が来た道を振り返ると始がいた。
「始、なんでお前ここに……」
「アンデッドポケモンは全て俺の獲物だ。奴も俺が倒す」
始は剣崎と少女を置いて出口へと向かおうとする。
「ちょっと待てよ!さっき抗体って言ったな?」
「そうだ。アイツの持つ毒の抗体が無きゃそいつは助からん」
出口に立ったまま始が返事をする。
「わかった。あいつはお前にやる。捕獲の手伝いもする。
だから捕まえたらこの子の為にその抗体を分けてくれないか!?」
剣崎は必死だった。もう罪の無い人が死ぬのは見ていられない。
「……おまえじゃ足手まといだ」
「頼む、イッソノオニガイダッ!この通り!」
土下座をする剣崎。始はそれを不思議そうに見ていた。
「……いいだろう。ただし邪魔はするな。」
「本当かッ!よし、今すぐ奴を追おう!」
剣崎は全速力で駆け出した。
(他人の為に何故ここまでやれる?人間とは変な生き物だな。)
始も剣崎を追いかけた。
「見つけたぞ、アンデッドポケモンッ!」
アンデッドポケモンを見つけたのは海岸だった。
洞窟内では暗くてよく見えなかったが、どうやらドラピオンのようだ。
「いけ、イノムー!」
「サメハダー、出ろ」
イノムーとサメハダーがそれぞれ飛び出す。
「とっしん!」「アクアジェット。」
2体が勢いよくドラピオンに向かっていく。
イノムーは外したがサメハダーは一撃を浴びせる。
「この調子で行けば捕獲できるな!」
その時だった。
ドラピオンが自分の体を針で刺し始めたのだ。
「お、おい何のマネだ?ズィバッカ?」
「違う、"ツボをつく"だ。能力を大きく上げる効果……。仕掛けてくるぞ!」
ドラピオンはさっきとは比べ物にならないスピードで動き始めた。
「戻れ、サメハダー!」
右腕でイノムーを、左腕でサメハダーを襲う。
間一髪サメハダーはボールに戻ったが、イノムーは気絶してしまった。
「イノムー!うぇー、ならサワムラーだ!」
イノムーをしまうと剣崎はサワムラーを繰り出した。
始もモルフォンにポケモンを換えた。
「サワムラー、とびげり!」
サワムラーの必殺の蹴りがドラピオンを襲う。ドラピオンも腕で迎撃する。
それだけでなくまた"ツボをつき"はじめた。
互角だったパワーバランスが崩壊する。サワムラーは弾き飛ばされてしまった。
「サワムラーッ!くそぉ、あいつ強いぞ!」
流石に2匹続けてやられては剣崎もそういいたくなるだろう。
「モルフォン、迎え撃て。ぎんいろのかぜ!」
迫るドラピオンに向かって羽ばたき攻撃を仕掛けるモルフォン。
ドラピオンも進軍スピードが落ちたようだ。
「向こうがステータスを上げるならこちらもそうするまでだ」
モルフォンの羽ばたきが一層強くなる。
「これで終わりじゃないぞ……? モルフォン、むしのさざめき」
今度はモルフォンが不思議な羽音を響かせる。
顔を苦痛に歪ませるドラピオン。かなり聞いているのだろう。
「す、すごい!後少しだ! なら後は俺が!」
始の反撃で活気づいた剣崎がオドシシを繰り出す。
「オドシシ、でんじは!」
2本の角から放たれる"でんじは"を受け、ドラピオンの動きが麻痺する。
「とどめは任せたぞ、始ッ!」
「……サメハダー、ムクホーク」
先ほどのサメハダーとムクホークを取り出す始。
「スピニングウェーブ!」
ムクホークの起こす突風を受けてサメハダーが突撃した。
ドラピオンの体がゆっくりと倒れる。
始は10と書かれたモンスターボールを投げつけた。
捕獲を終えた2人は洞窟の出口まで引き返してきた。
「始、頼むぜ」
「……出て来いドラピオン」
ドラピオンが現れる。さっき捕獲されたばかりなので弱っているが。
始はドラピオンに近づくと何かゴソゴソやっている。
「これが抗体だ。飲ませれば治るだろう。」
始が抗体を差し出す。意外なほど小さいものだった。
「サンキュ、始」
少女に抗体を飲ませると、意識を取り戻したようだ。
「……ここは……ドコ?」
まだはっきりとは快復してないのだろう。
「ここは、呼子の洞窟。キミ、ズィブンノニャマエワカル?」
少女はゆっくり、だがはっきりと名前をいった。
「……天音。お兄さん達は?」
「俺は剣崎 一真。こっちは相川 始。始が君の事助けてくれたんだ。」
少女―天音もだんだんはっきりしてきたのだろう、反応が早くなる。
「じゃあ相川さんが怖い奴を追っ払ってくれたの?」
天音は始に近づくと、頭を下げた。
「相川さん、どうもありがとう」
対する始は無表情で、
「別に礼を言われるほどのことをしたわけじゃない。」
と答えた。
「天音ちゃんはどこから来たの?」
剣崎が尋ねる。このまま放置というわけにはいかない。家まで送り届ける必要がある。
「ハカランシティ。洞窟にはちょっと遊びに来ただけだったんだけど……」
剣崎の目的地と一緒だった。
「ホント? いや、俺もそこに行こうと思ってたんだよね。送っていくよ。
……始も一緒に行くよな?乗りかかった船って言うしさ」
始は小難しい顔をしたがすぐに良い返事を返した。
「……いいだろう」
(このまま観察を続けてみるのもありか。)
「やった!」
喜んだのは、剣崎ではなく天音だった。
橘は烏丸を追って随分遠くまで来ていた。
「見つけたぞ、烏丸ッ!!」
橘の声が響き渡る。烏丸も気づいたようだ。
「橘か。伝えるべきことは全て伝えたはずだ」
烏丸はそのまま去ろうとする。
「オレガシリタクァノワァアンニャコトジナイ! アンデッドポケモンは本当に人間に扱える物なのか!?」
橘の怒りが頂点に達した。烏丸も流石に驚いたようだ。
「アンデッドポケモンに不備は無い。しかしポケモンへ恐怖心がある場合、
破滅や恐怖のイメージを作ることもある」
烏丸は淡々と話していった。一方橘の表情は暗くなっていく。
「だが私は謝らない。おまえならきっとアンデッドポケモンを使いこなせると信じているからだ」
それだけ言うと烏丸はふらりと姿を消した。
「恐怖心……。俺の心に 恐怖心……」
一人残された橘は何度もその言葉を繰り返した。
最終更新:2007年01月10日 23:56