栗城の掲げていた「共有」の一環である、登山の際のインターネット生中継。そのための費用としてクラウドファンディングで莫大な額の支援を受けていたこともあった。しかしながら、実際には「登りながらの生中継」は全く行われず、晩年には約束していたはずの生中継すら行わなかった。
インターネット生中継の実態
登山の生中継といえば、普通はハァハァと息を切らせながら登っていく姿を想像するが、栗城はそのような中継を日本でも海外でも全く行わなかった。これまで行われた生中継は、すべてキャンプ地などに留まりながらトークをするというものである。
なお、YouTubeなどで公開されている動画はほとんどが編集された映像である。まるで登りながら中継をしているような動画ばかりであるが、生中継で流した映像ではない。
生中継トーク実績
その立ち止まりながらの生中継トーク実績を下の表にまとめた。
ベースキャンプより上での生中継実績
年 |
山名 |
備考 |
2009年 春 |
ダウラギリ |
6500mから生中継 |
2009年 秋 |
エベレスト |
7500mから生中継 |
2010年 春 |
アンナプルナ |
C1(5100m)から生中継 |
2010年 秋 |
エベレスト |
登頂断念後、C3(7000m)から生中継 |
2011年 秋 |
エベレスト |
登頂断念後、C1(6100m)から生中継 |
2012年 秋 |
エベレスト |
失敗 |
2015年 秋 |
エベレスト |
失敗 (アタック失敗後にC4(7550m)から音声のみ) |
2016年 秋 |
エベレスト |
失敗 |
2017年 春 |
エベレスト |
失敗 (登頂断念後にC2(6400m)から音声のみ) |
2018年 春 |
エベレスト |
失敗 |
2009年の
自身初となるエベレスト挑戦では、順応のときに7500mで中継したものの、その後
「中国政府に止められた」との理由で
中継機材を持たずにアタックした。
2010年の
アンナプルナと
エベレストでは、
「中継機材が重い」との理由で
機材を持たずにアタックした。エベレストでは下山中にC3(7000m)で生中継をしたが、ここでなんと
酸素ボンベを吸いながらシェルパと一緒に出演している。
それ以降はほとんどの遠征で中継に失敗している。
3度目のエベレストのときにC1(6000m)で中継したのが最後で、4回目以降のエベレストではベースキャンプより上での生中継は完全に失敗している。
▼2回目のエベレスト、生中継での酸素ボンベ使用シーン(C3(7000m)にて)
▼2回目のエベレスト、生中継でのiPhone使用シーン(C3(7000m)にて)
特に5,6回目のエベレストでは生中継のためにクラウドファンディングでそれぞれ約2000万円を集めたにも関わらず、BCより上で生中継を全くしなかったことで批判を集めた。
晩年はまともな中継をしておらず、「機材が重いから」という理由で中継機材を持たずに登った前科もあり、それゆえ、生中継をするつもりがないから機材を持たずに登っているという疑惑が絶えなかった。
※機材はそれなりに重いので、持っていると体力を消耗し、到達高度を稼げなくなる
登りながらの中継を行わなかった理由
頂上付近まで行けなくても、最高到達点の付近で中継したり、下の方で登りながら中継したりするなどの方法もあるが、何故かそれを行ったことがない。
登りながら中継をしないのは、「単独」を主張する際に不都合なもの(シェルパや固定ロープ、トレースなど)を映さないためとも言われているが、そもそも行動しながら中継する技術を持っていない、とも言われている。
※一旦映像をベースキャンプに送信し、そこから衛星通信で映像を送るという不安定なシステムを採用しているため、行動しながらだと映像がまともに送れなくなるとの指摘がある
(参考)エベレストでの過去の生中継記録
- 1988年 日本テレビ隊 山頂からの世界初生中継
- 2013年 イギリス人のダニエル・ヒューズが山頂からスマホで生中継 (スマホはHTC Oneで、Skypeビデオ通話を使用、通信にはBGANを使用した)
- その他、山頂からツイッター投稿の記録がある
最終更新:2022年10月02日 02:19