仮面ライダーZO

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仮面ライダーZO - (2014/03/07 (金) 10:52:20) の編集履歴(バックアップ)



「みんな一生懸命生きてる…愛し合いながら。」

「これを壊しちゃいけない。」

1993年に「東映スーパーヒーローフェア」で公開された映画『仮面ライダーZO』の主人公。『ZX』ではない。
昭和から数えて14号にあたる仮面ライダーで(BLACKとRXを同一とカウントすれば13号)、
『RX』から平成ライダーシリーズまでの間に発表された、平成ライダーの始祖ともいえる仮面ライダーの一人(公式では昭和ライダーに分類)。
名前はシリーズ20周年記念作品である*1ことから「20」に見立てた「ZO」で、「Z」は究極、「O」は原点と言う意味も込めており、
仮面ライダーBLACK』や前作『真・仮面ライダー 序章』と別の意味で原点回帰を目指したライダーである。

変身するのは麻生勝(あそう まさる)
ただし劇場版の劇中では尺の都合で、一度も名前で呼ばれていない(カットされたシーンでは望月博士の父・清吉に名を呼ばれている)。
演じたのは翌年に東映のメタルヒーローシリーズ『ブルースワット』で主役の一人であるシグを演じた土門廣氏。
スーツアクターは『仮面ライダーBLACK』以降、本作の次作『仮面ライダーJ』まで主役ライダーを演じた岡元次郎氏。

勝はかつて、臨床遺伝子工学の権威である望月博士の助手を務めていたが、博士は完全な生命体『ネオ生命体』を生み出すことに固執。
徐々に狂気に駆られていった博士により、勝はネオ生命体第1号被験者として強引にバッタの遺伝子を組み込む改造手術を施されてしまった。
手術後、異形の肉体と化してしまったショックにより失踪した勝は、山奥で落雷に遭いそのまま昏睡状態に陥る。

それから4年後、勝はオルゴールの音と、「ネオ生命体から望月博士の子を守れ」という謎の声によって目を覚ます。
そのころ博士が作りだしたネオ生命体・ドラスが街に現れ、博士の息子である望月宏(もちづき ひろし)を狙って暴れまわっていた。
勝はドラスを撃退し、さらに幾度とドラスが送り込んでくる怪物を退け宏を助けるが、宏はこれが父の作り出した生命体の仕業だと知りショックを受けてしまう。

宏の持つ父からのプレゼントだったオルゴール時計を修復し、励ます勝だが、宏はドラスの送るコウモリ怪人によって誘拐される。
その先は廃工場で、そこにはドラスによって機械と融合され囚われた望月博士がいた。
ドラスはその力を脅威に感じた博士によって、定期的に生体プールに浸からないと肉体を維持できないように調整されており、
博士を捕らえて完全にするよう脅していたが、それでも承諾しないため宏を狙ったのである。
昏睡していた勝を呼び起こしたのは博士のテレパシーだったのだ。
宏を追いかけて廃工場にやってきた勝はドラスと激しい死闘を繰り広げる。


前述したように、本作は原点回帰という意味がこもった作品であり、そのため主役である仮面ライダーも非常にシンプルなデザイン。
『BLACK』と同様マフラーがない、外骨格的・生物的なスーツで、全身に金色のラインが入った緑色のボディ、
また仮面ライダーのトレードマークともいうべきベルトもなく、ベルトにあたる部分に宝石が輝いているという姿をしている。
特徴的なギミックは、感情が高ぶると口の周りに三つの牙型の器官「ブレイク・トゥーサー」が現れ、
眼を光らせ頭から蒸気状の「気」を放出するというものぐらいである。
戦闘スタイルも非常にシンプルで、劇中ではテレパシーや時計の修復など戦闘以外で超能力の類を使う描写もあるが、
基本的にパンチとキックのみ、ライドルやリボルケインのような武器も有していない。
加えて変身ポーズも非常に簡素で、構えた右手をゆっくりおろしていく、という動きだけ。
それでも改良が加えられた強敵・ドラスと互角以上の戦闘を繰り広げることができたのは、
腹部の宝石「レッドコア」が昏睡中に自然のエネルギーを吸収していたことと、何より熱い「人間の魂」を有していたからに他ならない。
その能力は、厚さ20cmの特殊合金を粉々に砕き自動車50台を瞬時にスクラップにできる打撃、その3倍以上の力のキック、
鉄柱をへし折れるチョップ、ジャンプ力130メートルなどといったスペックにも表れている。

とにかく「シンプルイズザベスト」を地で行くようなライダーだが、
前作と次作を含めて「ネオライダー」と呼称される20周年記念作品群では最も個性に乏しいと言われ
(なんせ前作はモロにグロテスクバッタ怪人のライダー、次作は巨大化だから仕方ない)
肝心の必殺キックがその軌道から「ブランコ」「ダサい」などと揶揄され、
加えて敵対組織も存在せず、博士が作りだした二人の人造生物同士の対決と言う小さなスケールもあって、ファンからは地味という扱いを受けることが多い。
ちょ、誰だよZOさんを「巨大化しない方」とか言った奴は!確かにJと似ているけど全然違うよ!*2

しかし作品自体は、雨宮慶太監督による「シンプルなZO」に対して「不気味で禍々しい怪人やドラス」というデザインの秀逸さ、
大量の火薬と東映のこれまでのノウハウを生かした美しい光学合成による演出、
岡元次郎氏のZOに高岩成二氏のドラスというライダーおよび東映特撮を代表するスーツアクター二人によるアクションシーン、
ZOの攻撃が当たると緑の閃光が走る」という演出やストップモーションと操演によるクモ怪人の動きなどの斬新な試み、
川村栄二氏による劇伴およびINFIXによる主題歌『愛が止まらない』と挿入歌『微笑みの行方』という良質な楽曲、
『仮面ライダーBLACK』『機動刑事ジバン』の杉村升氏による家族愛をメインテーマに据えた脚本……
と、すべての要素が高い質で48分という非常に短い尺の中*3ぎっしりと詰め込まれており、物語全般に渡って見ごたえのある作品である。
このためファンからの評価は非常に高く、ネオライダーのみならずシリーズ全体で本作を仮面ライダー最高傑作と推す声も多く、
本作コミカライズを手がけた島本和彦氏は「漫画版とTV版の1号ライダーを見事融合させたライダー」「見終わったら拍手するしかない」と絶賛している。

+ 島本和彦氏による漫画版
「おれには……消すことの出来ねえ"これまで"があった」
「そしてな…思いえがいていた未来もあったんだよ それをよ」
「そのなんもかんもを この異形の体がぶち壊しちまったんだよ」

「おれの人生をぶち壊した体を…未完成体というひとことでかたづけられちまったらなあ」

「おれの立場がねえんだよーっ!!」

前述したように石ノ森章太郎ファンとしても知られる島本和彦氏が本作の漫画版を描いているが、
その内容は「宏を狙うドラスと、博士によって無理矢理改造された勝が戦う」ぐらいしか共通点がないと言っていいほど映画と異なる
映画だとクールなイメージだった勝は、感情をはっきり表現する熱血漢へと変貌(顔には石ノ森氏の漫画版1号みたいに傷跡が走っている)、
映画でのキーアイテムとなるオルゴール時計は登場せず、話の主軸は「家族愛」よりも「魂の力で『完全な生物』を乗り越える」ということに移されており、
そのためのオリジナルキャラ・ナオミ(原型となった人物は映画にも登場)の指導による特訓描写や、ところどころに見られるコミカルなシーンなど、
島本氏の作風が遺憾なく発揮された作品と化している。
現在はREXコミックスから完全版が発売中。同氏による仮面ライダーBLACKの読み切り漫画も収録されているので、気になる方は是非。

これら作風の違いは島本氏によると「映画で満足してしまったため、違う印象の話にしたいと担当と打ち合わせして決めた」ことによるもので、
後に発売された完全版で描き下ろされたあとがきでは、何故全然違う内容にしたのか答えられず「すみませんでした!!」と土下座している。


+ 主題歌に関する余談
本作の主題歌はINFIXの『愛が止まらない』であることはすでに述べたが、
実は本作の主題歌は同じくINFIXの『RIDERS FOREVER』という曲が採用される予定であった(INFIXのラジオ番組で公開されたこともある)。
しかし直前になって没となり、主題歌は『愛が止まらない』に変更、『RIDERS FOREVER』はそのまま埋もれていくことになった…

と、思われたのだが、この曲に『機動戦士ガンダム』シリーズの富野由悠季監督が目をつけ、
「歌詞がガンダムのテーマに合致している」という理由で、当時のTVシリーズであった『機動戦士Vガンダム』のEDに採用。
その際に歌詞の「RIDERS」を「WINNERS」に変更、『WINNERS FOREVER〜勝利者よ〜』と改題して発表され、再び日の目を見ることになったという逸話がある。
歌詞は「自由と平和を求めて戦う戦士」を歌ったもので、確かにライダー・ガンダム双方に共通するテーマかもしれない。

こちらが『愛が止まらない』
こちら『WINNERS FOREVER〜勝利者よ〜』

特撮ファンの間では有名な話で、ZOのMADに『WINNERS FOREVER〜勝利者よ〜』が使われることも多々ある。



mugenにおける仮面ライダーZO

仮面ライダーBLACKを製作したway-oh氏によるものが公開されている。スプライトは手描き。声は入っていない。
使うボタンは弱・強・投げの3種類だけ、レバー入力と組み合わせることで技が変化するという、いたってシンプルな仕様。
動きは全体的に素早く、また後ろ弱攻撃での打ち上げや前強攻撃のチョップによるバウンドなど、
お手軽にエリアルコンボを決められるような技が搭載されており、非常にコンボ難易度は易しく仕上がっている。火力もそこそこ。
必殺技はゲージ消費によるもののみで、壁バウンドを誘発するライダーパンチやバイク「Zブリンガー」によるひき逃げアタック、
一定時間火力を上げる強化技や、その時のみ発動可能な原作の軌道をきっちり再現したZOキックを使用可能。
AIは搭載されていない。






*1
実際は仮面ライダー20周年は1991年であり、本作の公開は厳密には22周年にあたる。
なぜこのようなズレが生じているのかと言うと、本作の前作『真・仮面ライダー序章』および次作『仮面ライダーJ』がすべて含めて20周年記念作品であること、
またウルトラシリーズと記念周年が重なってしまう(ライダー20周年はウルトラマン25周年でもある)ことから、
スポンサーであるバンダイの商業的な都合で仮面ライダーの方を1年遅らせたことによる。
本作が実は20周年ではないという話は、後に劇場版『レッツゴー仮面ライダー』の公式ネットムービーでもネタにされてしまっている。

なお、本作の前後はウルトラシリーズの方も『ウルトラマングレート』などで新たな展開を見せていた時期でもあった。
そのような背景もあって企画されたのが『ウルトラマンVS仮面ライダー』である。

*2
とはいえ、『J』はもともと本作の続編として考えられた企画であり、デザインや監督も同じ雨宮氏なので似通うのも仕方ない。
『ZO』も好評だった『真』の続編企画をつぶして生まれたライダーなので、ネオライダーたちは妙な業を背負っているようだ。
『J』が正式に本作の続編となった場合、ZOはベルトを装着しグローブとマフラーをつけるという昭和初期のライダースタイルになる予定だったようで、
『J』のDVDにて映像特典として設定資料を確認できる。

*3
この48分という非常に短く中途半端な尺だが、もともと本作は単品での上映を予定して撮影されていた。
しかし興行のリスクを考え、冒頭で述べたように「東映スーパーヒーローフェア」で他の作品と共に公開することが決定。
視聴者へのストレスを減らすため「約50分のオリジナル映画+約25分のTV放映中の番組の劇場版2本」という形で公開されることになり、
本作の尺も減らされることになった。主人公の名前が呼ばれないのもその影響である。
結果シナリオもやや駆け足気味な展開になっているが、「尺が短いからこそ幕ノ内弁当のようにギッシリ詰め込みたかった」と雨宮氏は語っている。
本作と共に公開されたのは『特捜ロボ ジャンパーソン』と『五星戦隊ダイレンジャー』の劇場版。両方ともニコニコで有料で視聴可能。