概要
ランニック・バルザトールは、
セトルラーム共立連邦の陸軍士官である。
階級は少尉であり、遊撃部隊
三馬鹿野郎Fチームの一員として活動している。
自己紹介
やあ、僕がランニック。堅苦しい名乗りに見えるらしいけれど、休みの日の僕は盤とコマを抱えて、誰かの部屋へ押しかけてる。盤上の勝負が好きでね、相手の手を三手先まで読んで、その読みが当たったときの気持ちよさときたら、ちょっと言葉にしづらいくらいだ。仕事のほうは、走り回る係と宥める係を兼ねてるようなものかな。うちにはすぐ頭に血が上る大男がいるから、僕が肩を叩いて座らせる役をやる。交渉ごとの間に入るのも僕の担当で、たいていは相手が何を欲しがってるかを先に聞き出すところから始める。欲しいものが分かれば、殴り合わずに済む道筋はだいたい引けるものだよ。困ってる人を見かけると足が止まってしまう質でね、それで手を出して後から面倒を背負い込むこともあるけれど、そこは僕が選んだ結果だから、文句を言う筋合いはないと思ってる。ああ、そうだ、盤の前でだけは僕、かなり性格が悪いよ。負けたら三回は再戦を申し込むから、覚えておいてくれると助かる。
来歴
ランニックが軍務へ就いた経緯は、成年の一時期を保安職か軍務へ充てる出身地の慣行に沿っている。志願先として彼が選んだのは地上の防衛部隊で、初期の配属は後方の補給線を見張る警備班だった。任地は連邦の外縁にあたる採掘拠点であり、そこでの勤務を通じて彼は、暗所で索敵する手順を身体へ入れた。転機となったのは拠点の一角が武装集団に押さえられた事件で、通信の途絶した区画へ潜入して人員の所在を割り出す役目が、彼へ回ってきた。彼は三日をかけて内部の配置図を作り上げ、突入班の手へ渡した。この働きが上層へ届き、少尉への任官と探索任務を主とする部署への異動が、同じ時期に決まった。拘束された容疑者の亡命へ手を貸した一件は、この異動から間もない時期にあたる。当時の彼は移送班の護衛へ就いており、対象は政権中枢と対立していた人物だった。移送の途中で彼が掴んだのは手続きの瑕疵で、書面の日付と実際の身柄確保の日付が、一日ぶん食い違っていた。上申を試みた彼は、それが握り潰された段階で対象を国外へ逃がす側へ回った。処分は下されたものの軍籍は保たれ、事情を聞き取った
ヴァンス・フリートン大統領が、彼を手元へ引き上げる形で決着している。以後は
ケラン・ヴィ・トナデールと組む配置が続いている。
人物
多趣味という言葉がランニックにはよく当てはまり、盤上遊戯への傾倒がその中心にある。彼が集めているのは駒の初期配置が毎回変わる型の盤で、対局のたびに初手から考え直す条件を好むためである。読み物のほうは兵法書と地誌へ偏っており、彼は行軍記録の余白へ、自分なりの代案を書き込む癖を持っている。台所に立つ時間も長く、仲間を招いた食事の場では、献立から仕込みまで彼が引き受ける。新しい手順を試したくなると休暇を丸一日そこへ充ててしまうため、同居人からは食材の消費量について苦情が出ている。休日の過ごし方には、体力を保ちながら気を抜ける時間を作る工夫が組み込まれている。彼は郊外の丘陵地帯を歩くことを習慣にしており、荷を背負った状態で、高低差のある道を選ぶ。屋内での鍛錬も並行して続けているが、こちらは一定の景色のもとで集中を保つ訓練を兼ねている。家族との連絡は続いており、妹とは短い便りを頻繁にやり取りする間柄で、返信の速さでは彼のほうが勝る。両親と顔を合わせる機会は年に数えるほどで、その分だけ書面での近況報告が長くなる傾向がある。勤務先での彼の立ち位置は調整役に落ち着いており、意見の割れた場面では、双方の言い分を紙へ書き出して並べる手法を取る。
戦闘能力
交戦へ入ったランニックが最初に手をつけるのは、地形の把握と退路の確保であり、この手順は小競り合いの場面でも同じ順で踏まれる。彼の得物は長距離型のレーザーライフルで、遮蔽物の陰から静止目標を抜く精度に強みがあり、狙点を定めるまでの時間も短く抑えられている。接近を許した局面で彼が抜くのは柄の短い片手斧であり、腰の後ろへ横向きに差している。斧の扱いは、肩の回転を柄へ乗せて刃の重みごと落とす型で、装甲の継ぎ目へ角を当てる打ち方を身につけている。相手の重心が移った瞬間へ合わせて崩す組み手を併せ、刃の腹で押し込んでから足を払う手順が、彼の近接戦の骨格をなしている。
ランニックの異能は〈次手〉で、視線を向けた対象の次の動作が、像となって彼の頭へ先に流れ込む。像は動作の起こりを先取りして映し、踏み出す足の向きから腕の伸びる筋まで含むため、彼は相手の挙動が起きる前へ自分の刃を置ける。深く踏み込んだ使い方を彼は備えており、像を掴んだ瞬間へ意識を差し込むと、対象の動き出しが一拍だけ遅れる。この一拍は、斧の間合いへ踏み込む時間を彼へ与え、装甲を備えた相手であっても継ぎ目へ刃を通せる。複数の対象へ同時に向けた場合、像は重なった状態で届くため、彼は音の反響を手掛かりに抑える相手を選び出し、斧を振る順序を頭の中で並べ替える。連続して用いた後の彼の視界は中心へ寄り、周辺の像が遅れて届くため、退いて呼吸を整える間合いを取る運びになる。暗所での行動は、ランニックの技能のうちで実戦の出番が最も多い部分にあたり、異能を伏せたまま戦う局面では、この技能が前面へ出る。彼は光量の落ちた通路を移動しながら、足音の反響から通路の幅と天井の高さを推し量り、斧を振り抜く余地の有無を先に測る。補給の絶えた状況では、携行量を切り詰めたうえで現地の水源を探す手順を組み立て、行動できる日数を先に計算しておく。日々の鍛錬では射撃へ長く時間を割き、組み手をその後へ続けて、斧の素振りは握りを変えながら朝夕へ分けて行う。模擬戦の記録を書き起こして自分の判断が遅れた地点を洗い出す作業を続けており、同じ遅れが二度現れた項目から、鍛錬の配分を組み替える。
語録
「引き金を引く前に、退路の確認を済ませておく。走って戻れる距離を測っておくと、指の震えが止まるんだ」
「僕が交渉の席へ出る目的は、双方が席へ残る条件を見つけることだよ」
「書類の日付が二つに割れていたら、僕はその紙を信じる作業をそこで止める」
「盤をひっくり返したい気持ちは、よく分かるよ。ただし一度やると、次から相手は僕の席の前を素通りしていく」
「暗い通路は好きだね、あそこでは慌てた奴から順に、自分の居場所を教えてくれる」
「勝ち筋は、一本あれば足りる。ただしその一本へ届く道は、五本ほど用意しておく」
「約束は口で交わした後に、必ず紙へ書いて渡す。そうしておけば、僕が忘れた日にも約束のほうが残るからね」
「怒鳴り合いが始まったら、僕はまず椅子を二脚、離して置く。座る場所が決まると、声の高さはたいてい下がるものだよ」
「助けた相手が後日こちらを撃ったなら、それは僕の見立てが甘かった証拠として、手帳へ残しておく」
「規則は盤の枠と同じでね、枠の内側でどう指すかは、こちらの裁量だ」
「持ち帰るのは、負けた対局のほうだ。勝った対局から拾える手は、たいてい一つきりだからね」
「腹が満ちていると、判断が二割ほど速くなる。だから遠征の前夜は、僕が台所を占領する」
「一人で抱えた問題は、翌朝には二倍の重さになっているよ。だから僕は、その日のうちに誰かへ話す」
エピソード
- 移送任務の前夜に隊舎の食堂で盤を広げていたところ、通りかかった補給係と勝負になり、負けた側が一週間ぶんの食器洗いを引き受ける取り決めが成立した。ランニックは三連敗し、任務から戻った翌日から、律儀に流し場へ立ち続けた。以後、補給係が回してくる物資の到着は、以前の半分の日数で済むようになった。
- トナデールが酒場で喧嘩を始めた際、ランニックは相手方の連れを店の外へ誘い出し、看板の意匠について長々と質問を重ねた。話し込んでいる間に店主が仲裁へ入り、殴り合いは店の備品を無傷のまま終わった。連れの男は後日、看板を作った職人を紹介する手紙を寄越している。
- 新兵向けの索敵講習を任された折、ランニックは受講者全員へ目隠しを配り、講堂の中を音だけで一周させた。壁へ額をぶつける者が続出したものの、最後まで無傷で戻った一名が、翌年の助教へ選ばれた。講習の手順は現在も、初回のまま引き継がれている。
- 盤上遊戯の同好会を隊内へ立ち上げた当初、参加者は本人を含めて二名だけだった。ランニックは会則へ敗者が茶を淹れる一条を加え、翌月には十名を超える所帯になった。茶葉の補充も、今なお敗者の負担で回っている。
- 大統領府での打ち合わせに呼ばれた席で、提示された作戦案の配置が自分の負けた棋譜と重なることに気づき、ランニックはその場で代案を紙へ書いて提出した。上席からは苦い顔で受け取られたものの、翌週の会合では代案の骨子が採用されていた。彼は帰宅した晩、借りを返した相手として棋譜のほうへ礼を言っている。
- 休暇で妹を隊舎へ招いた日、ランニックは三時間かけた料理を並べたところ、妹は皿より先に盤のほうを指さした。結局その日の夕食は冷めたまま片づけられ、対局は深夜まで続いた。翌朝、妹は冷めた料理を弁当へ詰めて持ち帰っている。
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最終更新:2024年12月09日 05:40