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巡りゆく星たちの中で > 探査

イズモ「共立側からは“こっちの日程で他の恒星系も巡らないか”って打診が来てるけどさ。」
ブリッジ中央でホログラムを操作しながら、イズモは前方スクリーンに映るシナリス星系を見据えた。
青緑の惑星が静かに自転し、その重力井戸に艦が引き寄せられていく。

イズモ「でも、まずはここだよ。」
イズモ「最低でも一年は探査と開拓を最優先でやっていこう。」

KAEDE「りょーかい。」
即答だった。
その声には任務を任された者の責任感と、未知の星に踏み込む高揚が混じっていた。

KAEDE「まあ、当然かぁ。」
どこかほっとしたように笑い、端末を構える。

イズモ「とりあえず、採掘と第二本部の建設だね。」
イズモ「インフラがなきゃ話にならない。」

KAEDE「了解。」
指先が走り、地形スキャンと周辺宙域の索敵が同時に展開される。
彼女の処理速度は常人離れしており、複数のデータを並列で把握していく。

この恒星系の長期運用を見据え、ネットワーク用衛星群は主砲エルニウスの砲弾に格納された。
射出申請は共立機構から即時承認され、次の瞬間、光跡を引いて宙へ散っていく。

数時間後――。

集約された初期データは、二人の想定を大きく上回るものだった。

主成分は石英と長石。
地殻深部には微量ながら鉄が分布し、大気は窒素と炭素を主体として安定している。
だが、ケイ素含有量が異様に高く、核種解析ではアクチノイド系元素が大量に検出されていた。

中でも異常だったのは、ダイヤモンドを人工生成するのに理想的すぎる元素比率だった。
自然環境としては、あり得ないほど整っている。

さらに、惑星各地には精製済みの鉄構造物が点在していた。
明らかに人工物だが、すでに管理は放棄され、周囲は荒れ地と化している。

イズモ「なんていうか……。」
資料をめくりながら、イズモは眉をひそめる。

イズモ「やる気はあったけど、後始末は投げたって感じだなぁ……。」

KAEDE「領土問題も“球面がどうだ”とかで揉めてた記録、ありましたしね。」
苦笑しながら肩をすくめる。

その直後、新たなサンプルが表示された。

イズモ「……なにこれ。」
採取アームに映るのは、青みを帯びた薄紫色の光を宿す鉛色の金属塊。
黒玉模様が不規則に走り、見る角度で表情を変える。

KAEDE「未知金属。」
即座にスキャンを開始する。

解析結果は常識を裏切っていた。
鉄に近い結晶構造を持ちながら、強度は桁違い。
内部には高密度のエネルギー反応層が確認され、この星固有の元素で構成されている。

イズモ「エネルギー鉱石……っぽいな。」

KAEDE「うん。」
KAEDE「兵装にも、動力炉にも、たぶん使える。」

さらに調査を進めると、別種の鉱物反応が検出された。
性質はポータル生成材と酷似し、ワープ時のエネルギー効率を飛躍的に高める。
しかも励起加工によって、膨大なエネルギーを任意変換できることが判明した。

決定的だったのは、その物質が――直接ポータルへと変換可能だという事実。

イズモ「……やば。」
イズモ「この星、完全に宝庫じゃん。」

KAEDE「でも。」
KAEDEの声が低くなる。

KAEDE「都合が良すぎます。」
KAEDE「ここまで揃ってる星、普通はない。」

追い打ちをかけるように、磁場解析が警告を発した。
惑星全域で、クェーサー級に近い磁場形成反応が断続的に発生している。

さらに北半球。
低標高の三角形状大陸一帯には、淡く燐光を放つクリスタル構造が広範囲に埋め込まれていた。
配置は規則的で、自然生成とは考えにくい。

それは明確に、“誰かが何かをした痕跡”だった。

だが――。

その意味を、二人はまだ知らない。

イズモとKAEDEは、共立機構へ調査報告を送信した。
資源情報、磁場異常、人工構造物の存在。
そして、シナリス星系内での恒久駐屯地建設の正式打診。

未知と可能性、そして不穏な影を抱えながら。
二人は、新たな時代の開拓者として、この星に確かな第一歩を刻み始めたのだった。

最終更新:2025年12月16日 20:32