「重機兵 グ・レイル」

[ショートストーリー]
「何てもんを造った!これじゃあ、上に対するわしの顔が丸つぶれじゃ!」
「そ、そんな事を言われましても!こちらはご命令通りに作っただけで……。」
「いいわけはいい!なんとかコンペで勝つ方法を見つけるんじゃ!」
「そ、そんな事を言われましても!こちらはご命令通りに作っただけで……。」
「いいわけはいい!なんとかコンペで勝つ方法を見つけるんじゃ!」
主任鍛冶師/開発技師は、頭をかかえた。今まで散々仕様や作業に口出しをしてきたこの工廠長は、言いたいことだけ言って自室へ戻った。たぶん酒でも飲むんだろう。主任は自分の方が、酒でも飲みたい気分だった。無論、やけ酒を。
「ったく。こいつが失敗作だなんて、最初からわかってる。重装甲重パワーで多少の鈍重さは多目に見る。そう言うコンセプトだったんだが。
やれもっとパワーを上げろだの、もっと重装甲にしろだの、そうしたら削るべきところは運動性能とか機体の平衡性しかないだろ。ああ、あと整備性と生産性。
その上、開発資金けちった、いや上から金が下りて来てるはずだから、それを中抜きしたのは奴だろうに。その少ない金で、どうやって勝てる機体を造れと?」
やれもっとパワーを上げろだの、もっと重装甲にしろだの、そうしたら削るべきところは運動性能とか機体の平衡性しかないだろ。ああ、あと整備性と生産性。
その上、開発資金けちった、いや上から金が下りて来てるはずだから、それを中抜きしたのは奴だろうに。その少ない金で、どうやって勝てる機体を造れと?」
そして主任は、知り合いの傭兵に手紙を出すことにした。
コンペ終了後、工廠長は満面の微笑みを浮かべていた。それはそうだろう。彼らの出した実験機は、仮想敵として出されたサングリーダル・ロドを一蹴した。そのタイムは、コンペ相手の重機兵試作機をはるかに上回るタイムだった。包み隠さず言えば、ただ1合で。
「よくやった!これでわしの顔が潰れずにすんだわい!これで報奨金も……ぐふ、ぐふふ……。」
(……さて、今回の結果が、操手が化け物じみて強かったせいだって知られる前に、逃げないとな。)
「まずは少数生産して、性能を確かめてから本格量産じゃな!はあっはっはっは。そうなれば、わしの名前は全帝国に鳴り響くわい!」
(……さて、今回の結果が、操手が化け物じみて強かったせいだって知られる前に、逃げないとな。)
「まずは少数生産して、性能を確かめてから本格量産じゃな!はあっはっはっは。そうなれば、わしの名前は全帝国に鳴り響くわい!」
たしかに鳴り響いた……悪名が。主任は夜逃げする前に、信頼のおける、伝手のある貴族に、工廠長の悪事を証拠付きで全部ぶちまけて行ったのだ。主任の行方は、杳として知れなかった。工廠長?首から上の行方がわからなくなったけど?
[解説]
聖華暦300年にアルカディア帝国の工廠で、重機兵というカテゴリーを検証するための実験機として試作されたうちの1種類。ただ、試作機であるため色々と調整を加えたものの、工廠長の横やりや口出しによりコンセプトを絞り切れなかったため、成功作とは言い難い機体になった。主任に全部任せておけば、まだ多少は良い物になっていたと思われるのだが……。
こうして運動性能が低すぎて攻撃があたらない、躱せない、そしてバランス性能が壊滅的と三重苦そろった迷機は、少数生産されただけで封印処置を受けた。
こうして運動性能が低すぎて攻撃があたらない、躱せない、そしてバランス性能が壊滅的と三重苦そろった迷機は、少数生産されただけで封印処置を受けた。
[武装]
この機体は、回避性能をせめても微かにでも上げようと、左手に受け流し用の小剣と、右手に普通に長剣を装備している。コンペでは射撃性能は試されないはずだったので、魔導砲は搭載していない。
添付ファイル