移動工廠艦モックルカールヴィ
[解説]
モックルカールヴィ
世界全体が例外的に平和だった聖華暦700年代中盤に、アルカディア帝国で超巨大戦艦の開発計画が持ち上がった。
コンセプトは単純至極、「ほかのどの国の船よりも大きく、強力な主砲を数多く持ち、単艦よく戦場を支配する船」である。
少し考えれば無理だとわかりそうなものであるが、時の勢いに乗ってこの船は起工されてしまった。
さて、艦体が出来上がったところで、幸いにも関係者は正気に戻った。
正気に戻った彼らは思った。
「この船どうしよう……」
この時代にはまだ存在していた門閥貴族でさえ、使い道と維持コストを考えると顔を青くする船。
かといって単純に建造計画が失敗だったから解体します、では、関係者全員が何らかの処分を免れないであろう。
すっかり厄ネタとなり果てたその船を引き取ったのは、クロケット家であった。
当時のクロケット家当主が招聘した設計チームは、まず全体の設計を見直すと、主砲の搭載を中止した。
そして艦上に、機兵はおろか陸上艦のパーツまで作れる巨大工場を建造した。
また、最大1000人分の食事を同時に提供できる厨房設備も整えられた。
ただし、魔導障壁発生装置は船を守るため、そのまま残された。
こうして世にもまれなる巨大工廠艦モックルカールヴィは完成した。
なお、名前に関しては帝国伝統の北欧神話系のネーミングであるが、「最強の兵器として作られた巨人だが、臆病すぎて戦うことができなかった」とされるモックルカールヴィの名を冠することで、「最強の戦艦として建造されたが、戦闘用でない艦船として完成した」存在であることをアピールしている。
この船は、3か月を1単位として、ルートを変えて帝国国内を巡っている。
出張工場兼交易拠点として、自らの維持費を自らで稼いでいるのだ。
特に艦内ドックは民間の貨物船などの重整備や大規模修理にも活用できるため、キャラバン相手になかなかいい利益を出している。
平和利用目的の船かとも思わせる使われ方であるが、帝国軍における役割は、有事の際に最前線の後方に進出して、帝国軍の機兵や艦船、兵士に補給を行うことを目的としている。
[秘密]
帝国の裏の戦力を担うクロケット家が運用するこの船には当然裏の顔がある。
各地に散って任務を行う隠密部隊ヤークシャの人員を目的地まで輸送し、任務を終えた人員や機兵などの装備を回収する。
また、ヤークシャの使用する機兵などの兵器も製造・整備・修理を行っている。
全長 500m
巡航速度 40km/h
最大速度 55km/h
巡航速度 40km/h
最大速度 55km/h
武装
8.8cm対空砲10門
魔導障壁(全方位型)
8.8cm対空砲10門
魔導障壁(全方位型)