久延毘古(くえびこ)
[解説]
その構造は、既存の機兵と比較して非常に特異なものであり、驚くべきことに機体のほとんどが木製である。
久延毘古に使われる木材は、クウシュ族の集落付近でのみ生育が確認されている神代杉と呼ばれる樹木から削り出された木材を、同じく神代杉から採取される神血(しんけつ)と呼ばれる特殊な樹血に漬け込み特殊な技法を用いて定着させたもので、非常に高いエーテル伝導性を持ち、エーテルに込められた人の意識に反応して柔軟にも強固にもその性質を変化させるという特性を持っている。
この木材の加工法ならびに久延毘古の調整法はクウシュ族の中でも棚守と呼ばれる職人の家系にのみ伝わっており、久延毘古の整備、調整は棚守でなければ行うことができない。
しかしながら、久延毘古の内部構造は木製でありながら幻装兵や精霊機などの構造に近く、非常に高度な旧時代の科学技術を駆使した「絡繰り」と呼べるような代物であり、聖華暦800年代の時点では棚守の家系においても久延毘古の製造技術に関する知識は残されていない。
久延毘古は、聖華暦200〜300年頃にクウシュ族(当時はヒムカ族、カシワラ族の共同体であったと考えられている)に合流した精霊機技師が考案し製造したものであると考えられており、記録に残る限り11機が製造されたようである。
なお。聖華暦800年代にはすでに精霊:天照大神(あまてらすのおおみかみ)が宿るとされるアマテラス、精霊:国之常立神(くにのとこたちのかみ)が宿るとされるクニノトコタチの2機は失われており、精霊:常世思金神(とこよのおもいかねのかみ)の宿るとされる精霊船トコヨノオモイカネも人魔大戦期にクウシュ族のもとを離れて以降、消息不明となっているため以下に記した8機のみが現存している。
- ククリヒメ 精霊:菊理媛神(くくりひめのかみ)
- クラミツハ 精霊:闇御津羽神(くらみつはのかみ)
- ウワツツノオ 精霊:上筒之男命(うわつつのおみこと)
- タケミカヅチ 精霊:建御雷命(たけみかづちのみこと)
- マガツヒ 精霊:禍津日神(まがつひのかみ)
- カモタケツノミ 精霊:賀茂建角身命(かもたけつのみのみこと)
- ヒノカグツチ 精霊:火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)
- ミクマリ 精霊:水分神(みくまりのかみ)
いずれの久延毘古も旧時代、日本と呼ばれた国において信仰された神の名を持つ精霊を宿すとされているが、その正体は神格化された人霊である。
クウシュ族がヒムカ族、カシワラ族の共同体であった時代、この地には神道から変化したと思われる独自の信仰が根付いていた。
生まれつき聖痕を体に宿す者、あるいは魔眼を発症したながらも生き残った者は、神憑きと呼ばれ、異能を使い部族を守護する人の形を取った神、現人神だと信じられていたのだ。
生まれつき聖痕を体に宿す者、あるいは魔眼を発症したながらも生き残った者は、神憑きと呼ばれ、異能を使い部族を守護する人の形を取った神、現人神だと信じられていたのだ。
聖華暦200〜300年頃に精霊機技師が部族に合流し、精霊機、久延毘古が作られることになるが、久延毘古に宿らせる精霊として選ばれたのが、現人神であった。
こうして、ヒムカ族、カシワラ族から選ばれた11柱の現人神に合わせて建造された11機の久延毘古に、自らその身を捧げた現人神が宿ることで11機の久延毘古が完成することとなった。
こうして、ヒムカ族、カシワラ族から選ばれた11柱の現人神に合わせて建造された11機の久延毘古に、自らその身を捧げた現人神が宿ることで11機の久延毘古が完成することとなった。
しかし、聖華暦800年代において、この経緯を知る者は既におらず「久延毘古は神の宿る器である」とだけ伝わっている。