沿革
クレプサイドは大陸の北西部に位置する国で、山、森、湖、海に囲まれた風光明媚な景勝地です。
古来からエルフたちが暮らしており、他の種族の数は少ない地域です。
魔動機文明の発達とともに人族が居住する地域は開拓・開発が進められていましたが、クレプサイドは自然が豊かなまま、
逆に言えば文明の恩恵を強く受けていない未開発の田舎で、大陸の人口の多くを占める人間からはあまり注目されない地域です。
古来からの伝統が色濃く残る、先進文明にあまり毒されていない地域同士、
魔法使いの町フィレーンとは互いに親近感を抱いていますが
なんとなく感覚で判断することが多いクレプサイドの住民と、論理的に考えるフィレーンの人では、意識のずれに戸惑うこともあります。
特に、決められた時間から前後3時間の幅を取る「エルフ時間」の感覚は他国の人には理解できないものです。
蛮族が攻めてきた南方から最も遠く離れた場所にあり、蛮族戦争の間ものどかに暮らしていました。
人族が戦争に勝利した後も、領土拡張を目指して辺境の地に踏み込む事も無く、蛮族との戦争にはほとんど関わらずに過ごしています。
こうした姿勢は、蛮族と死闘を続けている
騎士の国リルヴァンからの心証は良くないのですが、
魔動機文明時代を通して、さらにはそれ以前から、「人里離れた森の向こうの妖精集落」という意識での関係が続いていたため
もともと有力な戦力とは思われておらず、リルヴァンからの視線も敵愾心とまで悪化してはいません。
大真面目な蛮族との戦いから距離を置いた結果、クレプサイドで起きる事件は劇場型犯罪が主流になりました。
(物好きにも)この国の権力を握ろうと画策したり、偶然発見したり自ら発明した奇抜な魔剣の効果を世に示したり、ライバル関係になった者を倒すため、
派手な仮面や装束に身を包んだり、犯行の前に予告状を送りつけたりと世間の耳目を集める方法で犯罪を行う「ヴィラン」と呼ばれる者が現れ、
彼らを倒すために立ち上がった者たちもなぜか同様の格好で正体を隠し、コードネームで呼び合って戦っています。
国も対ヴィラン特別チームを組む事もありますが、強力なヴィランに立ち向かうことができる精鋭の確保は難しく、
やはり5人程度の実働部隊と、彼らを率いる司令1名といった編成になり、それも予算の都合か一年ほどで活動を停止してしまいます。
そして別のヴィランが現れたら別の防衛チームを立ち上げるといった事を繰り返しており、はなはだ不効率ではあるものの、
国民はこの警備体制に疑問を抱かずに観客のような立場を楽しんでいます。
ヴィランたちは基本的には悪人ですが、
退廃の町ナルドールから本格的な──そして、真面目で現実的な悪の手が及びそうになった時、
警備隊や冒険者たちが動くよりも前に察知し、異国の悪人を(彼らの得意な方法で)排除する事があります。
彼らに言わせれば、それは「道楽の深みを理解しない奴らに自分たちの遊び場を汚されてはたまらない」とのことで、彼らもまたこのような現状を深く愛しているのです。
地図
地図の1マスは5km四方で、一般的なキャラクターは徒歩で1時間に1マス移動できるものとします。
(徒歩で時速5km。移動速度14=通常移動60分で5040m。より詳しくは
基本ルール-巡行移動を参照してください)
騎獣や乗り物で移動する場合、1時間に、馬車で3マス(馬車の護衛を徒歩でしているのなら1マス)、馬で6マス、
魔動バイクで10マス進めます。
A.クレプサイド城
大陸の東西を繋ぐヴァン街道から大きく外れ、ノルムの森の奥深くにあるエルフたちの国。公用語はもちろんエルフ語です。
蛮族戦争が起きる前は人里離れた秘境とも言える場所にあり、大陸の大部分を占める人間たちからはあまり縁の無い場所として関心を持たれることも無く、
現在でも街道にまでの道路が整備されていない状態です。
国土の大部分を占めるノルムの森は、(地元のエルフたちにとっては特に問題はないので)道の整備や案内の看板などは存在せず、
また(地元のエルフたちにとっては特に問題はないので)森の全域に渡っての大規模な調査が行われたことがありません。
そのため、他の国からやってくる冒険者たちにとっては非常に迷いやすく、突然危険な幻獣が現れたり、魔法文明時代の魔剣の迷宮が未調査の状態で見つかったり、
遭難者を発見したり、学会から追放された魔動機師の秘密研究所を見つけたりと、森を歩く回るだけでも冒険そのものです。
この森が、外敵を防ぐ天然の防壁にもなっているのです。
陸路で赴くには大変な難所をいくつも越えていかなければならない場所にありますが、
海に面した港湾都市でもあり、リルヴァン領土
アルカネックの町を経て、
アルテルまでの物流が確立しています。
特に果物が多く取れる町で、一年を通してイチゴ、ブドウ、スイカ、桃、梨、みかん等を楽しむ事ができます。
これらの果物が船に載せられ、他の人族の住んでいる国へと出荷されていきます。
エルフたちが暮らす穏和で穏やか、かつ賑やかで騒がしい町並みの中央にそびえる城は、人間たちの建築様式とは違った装いを見せ、
この国を訪れた冒険者や商人たちの目を引きます。
また、クレプサイドのライダーギルドはヘブンズフォール山脈(地図上Dの山々)に住まう幻獣たちが登録されることがあり、
ペガサスやワイバーン、ドラゴネットなどを購入することができます。
しかし、さすがに幻獣たちは個体数が少なく、操ることができる騎手も簡単に現れるわけではないので、国家が竜騎士団を作るという予定はありません。
そのため、冒険者たちは「国家が優先して買い上げていくため、目当ての幻獣が売り切れていた」という事態を心配する必要はありません。
B.エルキューンの町
都市の規模は「
小さな町」にあたります。
ヴァン街道からクレプサイド城までの道程が秘境すぎるということで、森の中で消息を絶つ人族が多くなり、
道案内のために森の入り口に町ができました。それがエルキューンの町です。
「街道が二手に分かれている場所から北に行くとエルキューンの町、町から森の中をまっすぐ北に行くとクレプサイド城」と町では説明されますが、
それだけの説明で森の中を簡単に進む事ができるなら苦労はありません。
実際に、この町は「遭難者救出の町」でもあるのです。
森の警備や遭難者救出にあたる森林警備隊は、他の国での騎士団に該当するレベルを持っており、弓とショートソードで武装し、身軽なレザーアーマーで身を守っています。
また、全員がスカウト技能を持ち、奇襲・狙撃を得意とします。妖精魔法の心得がある者も少なくありません。
エルフ語を公用語とする国ですが、行商人や観光客や冒険者を迎える町であるため、道案内の担当者や警備の責任者など、
町の住人のある程度は魔動機文明語が通じます。
C.ウェストビーチの町
都市の規模は「
小さな町」にあたります。
この町もエルフたちが森の外に作った町で、街道を通って到達できるため安全に行き来ができると人気の高いリゾート地です。
毎年夏になると保養地を求めた冒険者たちで賑わいを見せます。
沖合に見える島には海賊たちが住み着いていますが、以前にこの町が襲撃を受けた時、水中行動が得意なエルフの警備兵たちが
水中から接近して船底に穴を開けて水没させるという手段で撃退したため、それ以来町には近づかなくなっています。
海からの襲撃は警備隊によって守られていますが、冒険者で賑わう夏になると毎年謎の怪物が出現します。
それは大海蛇や大蛸などの巨大生物から、幽霊船や海龍といった凄まじいものが現れたり、真夏に突然巨大な氷塊に覆われた巨人が流れ着いたり、
移動する島に居住する謎の原住民が数日居着いて再び海へと漂流していくといった怪現象が毎年のように発生します。
そうした謎の騒動は毎回原因が異なり、定期的に町を襲撃する黒幕がいるというわけでは無いのですが、なぜか騒動が起きない年はありません。
また、その場に偶然居合わせた冒険者たちがみんなで力を合わせればなんとか解決できる事件ばかりであることから、
これらの騒ぎは
冒険の神ネイアが起こしている悪戯なのではないかと噂され、事件が解決した後には冒険成功を祝福してネイアを祀る夏祭りが開催されます。
今では町の住民も「何か起こってくれないと今年の夏祭りが始まらない」と、冒険の始まりを楽しみにしています。
D.ヘブンズフォール山脈
リアクレイス大陸の最北にある高山地帯で、山頂は雲の上にまで達して地上からはなかなか姿を見ることはできず、
山頂付近から湧き出す滝が地上まで一気に降り注ぐという幻想的な光景が印象的です。
この山脈には様々な幻獣が住んでおり、クレプサイド城のライダーギルドに登録される個体もいます。
(ただし、幻獣たちの全てが人族に友好的というわけではありません。ほとんどの場合、腹具合によるでしょう)
この山の頂には神の住まう地「シャングリラ」が存在し、この大陸で誕生した神々が暮らしていると噂されています。
というのも、史上唯一登頂に成功したのが、まだ冒険者であった時代のネイアであるからです。
地上に戻ったネイアは天の頂から地上を見下ろす光景の素晴らしさを幾度も語っており、
一度山頂まで到達したために自由にテレポートで行き来できるようになったネイアはたびたび絶景を堪能するようになったと言われています。
そのため“始まりの剣”ルミエルを手にして神となったネイアが人としての姿を見せなくなったとき、居場所を定めるならここに違いないと想像されているのです。
ごく近年になって、ネイアの足跡を追ってこの山々に足を踏み入れた冒険者が、伝説にも語られていなかった発見をもたらしました。
それがスカイレイクの村です。
D.スカイレイクの村
ヘブンズフォール山脈の山中、標高1kmを越える高地にエルフの村が存在しました。都市の規模は「
辺鄙な村」にあたります。
スカイレイク──天の湖と称する村のエルフたちは
エンハンサー技能によって翼を生やして空を飛び、高地での生活にも全く不便な様子を見せません。
驚くべき事に、この村の住人たちは古代魔法文明の生活様式のまま数千年間暮らしており、
その間に地上では魔法文明が失われ、魔動機文明が興り、蛮族戦争が勃発していた事など全く知らない様子だったのです。
(なお、古来から村の公用語はエルフ語でした。魔法文明語を話せるエルフもいます)
この村の発見により、様々な者たちが色めき立ちました。
ヘブンズフォール山脈を国境線としていたリルヴァンとクレプサイドのどちらに帰属するのか……
魔法文明の技術を残したまま生きてきた長命なエルフたちからどれほどの技術や秘奥が得られるのか……
彼らが伝え続けている偉大なる魔法の品々はどれほどの価値があるのか……
村からさらに上へと山を登っていけば、いったい何が待っているのか……
冒険の神が愛した天からの光景とはどんな眺めなのか……
はたして神々の地シャングリラは存在するのか……
全ては、これから冒険に向かう者たちが体験する事であり、その冒険譚を人族の誰もが待っているのです。
そして、逆にスカイレイクの村から地上に降り立ってみようという好奇心旺盛なエルフたちも現れ始めました。
彼らは魔動機文明の一切を知らず、目にするもの全てを珍しがるため、普通のエルフからは明らかに浮いた行動を取ることもあるでしょう。
しかし地上での暮らしを経て礼儀や社会常識を身に着けることは難しくなく、一般社会において反社会的な存在と見なされることはありません。
E.ゾルド峠
人族の領域の東側(
リルヴァン、
アルテル)と西側(クレプサイド、
デライラ、
ナルドール)を繋ぐヴァン街道で最も危険な場所と言われ、山賊が多発する地域です。
街道を通る荷馬車や商隊は数多く、険しい山を越えるために速度が低下し、また蛮族が出没しない内陸であるため警備の目が行き届かないという
山賊にとっては格好の拠点であり、山中には「以前討伐された山賊が立てこもっていた砦の跡地」という場所がいくつも残されているため、
討伐しても討伐してもこの地から山賊が絶滅することはなく、また絶滅させても別の山賊が現れるという事態に陥っています。
峠の西側にあるデライラの町は鉱山の町で、産出された鉄を加工しての武器・防具・銃弾を東に運ぶ馬車は軍事の生命線と言える存在であり、
東側からはアルテルからの農産物や、フィレーンからの魔法の品が届けられます。
これらの荷馬車を警護する依頼は冒険者たちの格好の飯の種となっており、リルヴァン南の
辺境伯領での蛮族との戦い、フィレーンでの魔剣の迷宮探索と並んで
ゾルド峠の山賊討伐は非常にポピュラーな──そして初心者冒険者に優しい──戦いの舞台となっています。
最終更新:2014年08月16日 17:52