お父様(鋼の錬金術師)

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お父様(鋼の錬金術師) - (2020/11/09 (月) 16:51:20) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2011/10/12(水) 01:04:07
更新日:2024/04/28 Sun 07:57:32
所要時間:約 9 分で読めます




鋼の錬金術師』の登場人物。
CV:家弓家正

ホムンクルスらの創造主、いわば悪の親玉。
基本的に「お父様」と呼ばれるが、ホムンクルスからの呼称は「お父様(グラトニー、エンヴィー、ラスト)」、「父上(ラース、プライド)」、「親父殿(グリード)」等、様々。スロウスは不明。

以下物語中盤のネタバレ




その容姿はなぜかエドアルの父親であるヴァン・ホーエンハイムそっくり。
(二人を比べると、お父様の方が若干老けているが)

人間を虫けら程度に認識し、自己の利益にならない者、不要となった者は仲間だろうと即座に切り捨てる。
モラル的なものが感じられず、無感情にして冷静、そして冷酷。

能力としては、ノーモーション且つノーコストでの錬成、さらに自分以外の錬金術の発動を封印したりとやりたい放題である。




以下重大なネタバレ










本作の黒幕にしてラスボス

■概要

元々はクセルクセス王国のとある錬金術師が、人間の血液を用いて偶然に生み出した存在。
この時はまだフラスコから出る事の出来ない存在であり、自らのことを「フラスコの中の小人(ホムンクルス)」と呼称していた。
そしてその血液の提供者こそが、当時奴隷だったホーエンハイムだったわけである。
彼を「血を分けた家族」と呼んで特別視し、礼として名前や知識を与えたり、軽口を叩き合ったりと上手くやっていた。

全人間世界に対する脅威となりうる莫大な知識を持つ割には人を小馬鹿にする程度でこれといった悪さもせず、当初は外も楽しいと現状に満足していた。
ただ、フラスコの中でしか生きられないことには窮屈さを感じていた。
そしてクセルクセス国王が彼の知識を頼って不老不死の法を求めた時に野心が芽生え、
国王を利用して各地に血の紋を刻ませ、クセルクセス国民全員を賢者の石にするという非道な行為をやってのけたのである。

この錬成陣は後世、アメストリスで発動したものと同じで、発動すると範囲内の人間の魂を全て賢者の石へと変換し、陣の中心にいる人物に付与するものである*1

国王は自らのいる場所が錬成陣の中心だと思っていたが、実際にはその場に「お父様」を入れたフラスコを持って立ち会っていたホーエンハイムのいる場所が中心だった。


「錬成陣の真の中心は、君が立っているこの場所だ。私の中の君の血を使って扉を開けさせてもらったよ」

「血を分けた家族、ヴァン・ホーエンハイムよ。今や、君と私が全ての中心だ!」


そしてこの時、「お父様」は自身の中にあったホーエンハイムの血(=魂の情報)を使って、ホーエンハイムの肉体を賢者の石を付加しつつ錬成する*2
これにより、ホーエンハイムとホムンクルスは賢者の石を内包した朽ちぬ体を(ホーエンハイムは望んでいたわけではないが)手に入れた。
また、人体錬成が行われたことで真理の扉も開いており、ホーエンハイムは真理を見て(「通行料」は賢者の石の一部で支払ったと思われる)「人柱」となった。

こうしてクセルクセス王国は一晩にして消滅し、代わりに100万人分を超える賢者の石が錬成され、半分は彼に、もう半分は「家族」であるホーエンハイムに付与された。

「どうだ? その体、調子は悪くないか?」
「血をくれた代償に、知識を与えた。名を与えた。そして、朽ちぬ体を与えた」
「聞こえるだろう? お前が不死身になるための引き換えとなった、この国の全ての人々の声が」


このクセルクセス王国の崩壊後はホーエンハイムと決別し、今度は「地球の真理の扉を開けたらどれだけの力が手に入るのか」と考える。
そしてその為にアメストリス国を一から建国し、国土錬成陣の作成と人柱の探索を行っていた。

目的達成の為に軍上層部を掌握して少しずつ軍事国家に移行、さらにホムンクルスらを生み出してアメストリスを裏から操り、
全国要所で戦争を勃発させ、「血の紋」を刻んでいた。

こうして数百年を掛けて準備を整え、最後の鍵である日食の瞬間、すなわち「約束の日」を待っていた……。


そして、来たる「約束の日」。
「お父様」は国土錬成陣を発動させ、アメストリス人5000万人を全員賢者の石に錬成。
同時に紆余曲折あったものの集めた人柱5人を利用して地球の真理の扉を開き、莫大な力(本人曰く「神」)を手に入れる。
しかし、手の内を知っていたホーエンハイムのカウンター錬金術が発動し、「神」を抑える目的で賢者の石に錬成したアメストリス人の魂を引き剥がされてしまう。

かつてのクセルクセス人たちの魂分の賢者の石の力しか使えなくなりつつ、それでも一時はノーモーション錬成と絶対防壁をもってエド達を圧倒した「お父様」だったが、
エド達の猛攻の防御や諦めない彼らへの攻撃で賢者の石を消耗させられた結果、ついに「神」を抑えるだけの賢者の石がなくなってしまう。

「神」を抑えきれなくなった「お父様」は、近場にいて、暴走した「神」の力による衝撃で行動不能になったエドを賢者の石に錬成しようとするも、アルの捨て身の援護で失敗。
次に攻撃してきたグリードの賢者の石を奪い返そうとしたが、賢者の石と共に敢えて吸収された彼の反逆で身体の一部をボロ炭に変えられてしまう。
グリードの魂を消滅させたものの、最後はエドの一撃で胸に大穴を空けられ、そこから生じた黒い手に飲み込まれて消滅した。*3


消滅後、真理の扉の前にかつてのホムンクルスの姿となった「お父様」は佇んでいた。
「何故自分のものにならなかったのか」と「神」たる真理の扉に恨み言をぶつける彼の前に、彼と同じ姿をした「真理」が現れる。

「真理」は「お父様」を「己を信じず、他人の力を利用して「神とやら」にしがみついていただけの薄汚い盗人」と揶揄し、
「お前のようなものは分相応にフラスコの中にいれば良かった」と痛烈な批難をぶつけた後、
真理の扉は「正しき絶望」を与える存在だとかつて「お父様」が他人に語った話を引用した上で、「お前にも「正しき絶望」を与える」と宣告。
果たしてその言葉通り、「お父様」は開いた真理の扉から伸びてきた無数の黒い手に捕縛され、抵抗も虚しく再び扉の中に戻される結末を迎えた。まさに自業自得

アニメ版では「戻りたくない、縛られ続けるのは嫌だ」と涙を流し、「私はどうすればよかったのだ」と悲鳴をあげながら最期は真理の扉に引きずり込まれた。
扉が閉じた後、「真理」は「お前はその答えを見ていただろうに」と哀れみとも呆れとも取れる一言を返している。

ちなみに真理の扉には各人ごとにセフィロト・ツリーなどのような、それぞれ違った図柄が刻まれている。
…のだが、彼の『扉』は空白。それには何も刻まれていなかった。
これは果たして何を意味していたのだろうか。

考察の域を出ないが、エドやアル、マスタングらが長い人生の中で経験から価値観を独自に変化させていった(=それが真理の扉の柄として現れた)のに対し、お父様はそれ以上の年月過ごしながらも何一つ学ばず成長もしなかったため、という説がある、


■補足

  • ホーエンハイムと容姿が似ている件
肉体を作る際に彼の体内に含まれるホーエンハイムの血の情報 (DNA) を利用した為。
当時はあくまで外に出ると死んでしまう存在であった為、フラスコから出るにしても二足歩行ができる「入れ物」が必要だった。
そこで人間の形をした「入れ物」として、ホーエンハイムと同じ外見を持つ「皮袋」を用意した。


  • 錬金術封印について
本来のアメストリスの錬金術は、地殻変動のエネルギーを用いるもの。
しかしお父様は自分の賢者の石をアメストリス地下に流しておき、賢者の石による術式を地殻変動のエネルギーと術者の間に挟む事によって、錬金術の力を恣意的に制限していた。
よってやろうと思えばアメストリス国内で錬金術を完全に使えなくする事も可能。
通称「すごい屁」。
なお傷の男(スカー)メイの錬金術が封印されなかったのは、
メイのそれはシン国で主要とされる、龍脈を使用する錬丹術であるためで、傷の男の右腕の陣は彼の兄が錬丹術をベースに刻んだものだからである。


  • ホムンクルス
自らの「傲慢」「色欲」「強欲」「怠惰」「嫉妬」「暴食」「憤怒」の感情を分離し、賢者の石を核にして生み出した人造人間(ホムンクルス)
感情を捨てたのは「完全な存在になりたかった」為とのことで、こうして冷酷な性格が完成した。
何故か彼らに自身を「父」と呼ばせており、その点についてホーエンハイムにも「人並みに家族が欲しかったのではないか」と指摘されたが、答えることは無かった。
抽出した感情そのものである「傲慢」は心の奥底では暖かい家族に惹かれ、「嫉妬」は人間に憧れ、
「強欲」が本当に求め続けていたものが魂で繋がっている仲間だったが…今となっては確かめる術はないだろう。


  • 国土錬成陣と人柱の目的
「お父様」は地球を一つの生命体、システムと考え、その真理の扉を開くことで、人間一人の真理とは桁違いの莫大な情報を手にしようとしていた。
地球の扉は太陽と月が一致する日食の時にしか開けず、さらにその為のエネルギーとして、真理の扉を通り帰還できた者、通称「人柱」5人によるエネルギーの反発が必須とされていた。

しかし、「約束の日」時点で「人柱」はエドとイズミ、アル、ホーエンハイムの四人しか確保されていなかったため、
当日、「人柱」足り得る力量を持つマスタングに強引に扉を開けさせることで確保した。

また、首尾よくその地球の扉を開き、その力を入手した後は、その莫大な力を維持する為に数千万人の魂単位の大量の賢者の石を確保する必要があり、
「お父様」は国土錬成陣によって、かつてのクセルクセスの時のようにアメストリス国の人間すべてを賢者の石に錬成した…が、
その目的を察していたホーエンハイムは発動前に「布石」としてカウンター用の錬成陣を描き、その発動のための賢者の石を予め設置していたため、錬成は失敗に終わった。


  • 東の賢者
アメストリスに錬金術を伝えた「東の賢者」とはお父様のことで、
「西の賢者」はシンに錬丹術を伝えたホーエンハイムであることが示唆されている*4


■形態

  • 第一形態
黒い球体のような、生物とも非生物とも言えない存在。フラスコの中から出ると死んでしまう。
作者公認のあだ名はマリモ。

  • 第二形態
ホーエンハイムそっくりの姿。しかし感情を切り離したり色々やったためかホーエンハイムより老けている。
作中で最も多く見せる姿であり、お父様と言えばこの姿を連想する人も多い。
この時点でチートに片足を突っ込んでる。
上述通り、ホーエンハイムのDNA情報を用いて作った「入れ物」である。

  • 第三形態
ホーエンハイムによって「入れ物」が壊された際の「中身」。
ホーエンハイムは、「ホムンクルスは昔同様『入れ物』さえ壊せば死ぬ」と考えていたが、
実際は数百年間掛けて「入れ物」の中にさらに巨大な黒い入れ物を用意することで克服していた。
人影に目が沢山ついたようなグロいビジュアルだが、戦闘能力は高い。
飛び道具を吸収したり、ホーエンハイムを収納したり、身体は堅いうえに伸縮自在だったりと、第二形態以上にチート。
感情が再び豊かになっている様子。

  • 第四形態
最終決戦時、地球の真理を取り込んだ姿。
青年期のホーエンハイムやエルリック兄弟に似た筋肉質で若々しい姿になっている。でも声は第二形態の渋い声のまま。
疑似太陽を用いた核融合、天候操作、破壊光線、錬成陣無しに直接人間を賢者の石に精製、更には全ての攻撃を反射するバリアー等、
その能力は名実ともにハガレン最強。チートを超えている。
上半身は裸で下半身は腰巻(と便所サンダル)のみとセクシー。どれだけ激しい戦いを繰り広げようと腰巻がズレることはない。
アニメ版ではサンダルを履いておらず露出度が上がっている。



■正体について

作中では言及されなかったが、真理の一部(分体)とされるのが一般的解釈。
断末魔の台詞や、生まれながらに広範な知識を持っている点等、様々な面で合点がいく。




追記 修正 加筆 訂正 よこせ

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