傷の男(鋼の錬金術師)

登録日:2009/12/31 Thu 20:17:40
更新日:2025/03/11 Tue 18:29:46
所要時間:約 8 分で読めます






神の道に背きし錬金術師 滅ぶべし!!




傷の男(スカー)とは、漫画鋼の錬金術師』の登場人物。
CV:置鮎龍太郎(03年版)、三宅健太(FA)
演:新田真剣佑(実写映画版)


◆概要


貴様ら「創る者」がいれば「壊す者」もいるという事だ

我は神の代行者として 裁きをくだす者なり!

少数民族である「イシュヴァール人」の青年。
イシュヴァール人特有の外見(褐色の肌赤い瞳)に加え、十字の傷がある額と白髪のツーブロックショートヘア、錬成陣の刺青が彫られた右腕を持つ強面の男。
普段はサングラスを着用し、瞳を隠している。

かつてアメストリス軍が行ったイシュヴァール殲滅戦の生き残りで、兄や同胞を殺した国家と錬金術を恨み、
その殲滅戦で前線に立ち、同胞を殺戮していた国家錬金術師を殺害して回っていた。
同胞や故郷を奪われたことなどからかなり荒んでおり、強い復讐心に囚われているが、
義理堅い性分でもあり、他者を騙したり、裏切る等の卑怯な行動や手段を取ることはない他、
自分が命を奪った医師夫婦のに銃を向けられた際には、その行為を「お前には復讐する権利がある」と静かに受け止めている*1

また、元々イシュヴァラ教を信仰する教徒であったことから、他者への慈悲の心は今でも残っており、
錬金術によって犬との合成獣にされた少女と遭遇した際には、「もう人間に戻れない」境遇を哀れんで殺した他、
錬金術を非道な手段に使ったショウ・タッカーに激昂したこともある等、良心も忘れていない。

傷の男(スカー)という名前は軍部が付けた通称で、本名は不明。
本人は復讐の為に名を捨ててきたと発言している。
単行本の巻末おまけコーナーにて、読者から「スカーの本名はなんだ」と問われた際、それに対する作者・荒川弘氏の回答は「きめてあるけど秘密」。
曰く本名を出さないことに意味があるとのこと。
と、同時に「それは追い追い本編で語られる」とも書かれていたが、連載が終了し物語が完結しても、いよいよ彼の本名が語られる事は無かった。


戦闘能力は、「単身でアメストリス兵十人分の戦力に匹敵する」イシュヴァラ教の元武僧であることから非常に高く、
好戦的な国家錬金術師と戦闘になっても問題なく渡り合えるほどの体術を修めている。

さらに、右腕には錬成陣が刻まれており、錬金術の三大工程「理解・分解・再構築」のうち、分解までを行う事ができる。
これにより右手で触った物体を「分解」によって破壊できるため、体術も合わせて作中屈指の強さを誇る。
なお、使用の際は(発動条件なのか、彼自身の癖なのかは不明だが)必ず指を「ゴキン」と鳴らしている。

ただし、三大工程のうち必要が無い「再構築」の部分は省いているが、前段階である「理解」の工程を省く事はできない。
要するに、破壊する対象がどんな物質なのかを傷の男自身が理解していなければ分解もできない。
構成する元素のうち何か一つ選んで分解するだけでも物質においては致命的なダメージである為か、
組成物質を原子レベルで把握していないとダメ…というほどではないようだが。
作中ではエドワード・エルリックと交戦した際に「人体だと思って」右腕に破壊を仕掛けたところ、
服の下が機械鎧だったために不発に終わっているが、2度目は機械鎧だと知った上で仕掛けたためにあっさり破壊した。
一方、ブリッグズでエドと交戦した際はエドが寒冷地仕様の炭素を多く含んだ機械鎧に換装していたため、「鉄分解」が効かなかった。

なお、彼の腕に刻まれた錬成陣は正確には錬丹術に属しており、「お父さま」によって錬金術を封印された際も使用可能。

ちなみに、この錬成陣は彼自身が刻んだものではなく、かつて彼の兄が自らの腕に刻んでいたもの。
傷の男自身は、イシュヴァラの教義から錬金術を嫌っており、かつては錬金術を研究する兄に怒鳴ってまでやめるよう説得していたが、
一方で兄の研究や商人との取引を妨害などはせず、むしろ兄の研究をアメストリス兵への攻撃に転用しようと企む同志に困惑し、半ば失望したような反応を示していた。

勃発したイシュヴァール殲滅戦では、親族と共にゾルフ・J・キンブリーの攻撃を受けてしまい、
傷の男は兄が盾となった為に即死は免れたものの、右腕を失う重傷を負い、意識を失ってしまう。
一方、彼の兄は瀕死の重傷を負いつつもまだ意識を保っており、弟が右手を失って失血死の危険性があることを察すると、
弟を生かすため、自らの研究成果でもある「分解」の錬成陣が彫られた自身の右腕を錬金術で弟に移植し、力尽きた。
その後、傷の男は意識を失ったまま、ユーリとサラ・ロックベル夫妻が駐在する診療所に運ばれて治療を受けて一命を取り留めるも、
意識が戻った傷の男は、まず兄の右腕が目に入ったことで一時安堵した後、それが自身に移植された兄の腕であることを理解して錯乱。
やがて、兄が死んだことを理解してアメストリス人への憎悪が爆発した傷の男は、衝動的に目の前にいた「アメストリス人」である医師夫妻をその場にあったナイフで刺殺し、脱走。

そして、殲滅戦で廃墟と化した故郷を目の当たりにした傷の男は、国家と錬金術に強い憎しみを抱き、国家錬金術師や殲滅戦の関係者を襲って回る凶行を開始したのであった。


◆劇中の活躍

エルリック兄弟とはタッカー殺害の後にエドを狙ったところから関係が始まる。

当初は国家錬金術師と復讐を図るイシュヴァール人という関係でしかなかったが、
後にウィンリィの両親を殺害した犯人であると判明してからは、兄弟の方も積極的に関わり出す。

そして中央で両者が対面した際、兄弟を案じて戦場にやってきたウィンリとも対面を果たす。
しかし、その際ウィンリィに対して謝罪はせず、彼女が落ちていた銃を拾い、銃口を向けると

お前には己れを撃つ権利がある

ただし撃てばその瞬間に己れはお前を敵とみなす!!!

と、開き直って彼女を殺そうとするという自身が忌み嫌っていたはずの国家錬金術師と変わらぬ逆ギレ同然の行為をしてしまうが、
ウィンリィをかばったエドの姿にキンブリーから自分を庇った兄の姿が重なり、手を止める。
この時のウィンリィの姿に「復讐者としての自分」を見せつけられることとなり、己を顧みたのか、それ以降暴走じみた言動は鳴りを潜めていった。

その悩みを抱えた中、ブリッグズ行きの列車の中で、直接の敵であったキンブリーと再会。
互いに一歩も譲らぬ激闘を繰り広げ、本人から聞かされた兄の死に様通りにキンブリーの左脇腹に鉄パイプを突き刺す事に成功するも、
あと一歩のところで取り逃し、自身も重傷を負う痛み分けとなる。
そして皮肉にも、この2人がこれ以降対峙することは結局なかった。

その後、エドたちと再戦したが、キンブリー戦での怪我が響いていた事や、エドが「分解の錬金術」対策をしっかりしていた事、そして何より彼自身の心境の変化もあり、完敗。
再びウィンリィと対面した際、「何を言っても言い訳にしかならない」と前回の無礼を詫び、無抵抗の状態でその去就を彼女の手に委ねるが、
傷を負った腕を止血され「父さんと母さんが生かした命だからきっと何かある」と言われたことで「己れを許すのか」と問うと、
「勘違いしないで 理不尽は許してはいないのよ」と返答されたことで、師の「理不尽には怒らねばならないが、憎悪には耐え、いずれどこかで断たねばならない」という言葉が脳裏をよぎる。
そしてウィンリィがホムンクルスに狙われている身である事を知ると、自身が誘拐した事に偽装することで、一時的に離れる事になったエドに代わりウィンリィを護衛した。

一連のウィンリィとの出会いや再会した師に復讐の無意味さを説かれたことから、当初の復讐こそが絶対で、己れの全てという考えは改め始めている。

その後は、ホムンクルスに対抗するためエド達と一時的に協力関係を築いた。



見かけによらず可愛いもの好きで、メイ・チャンが連れている子パンダのシャオメイを見たときはその可愛さに衝撃を受けていた。
ちなみに猫派。アルフォンス・エルリックが開設した猫ブログに田代砲を打ち込んでランキングトップにしようとするぐらいの猫好き。



某動画の「ガチホモが選ぶ恋人にしたいアニメキャラクターランキング」にて、2回ほど1位に輝いた。



※以下ネタバレ















ブリッグズのスラムでアルフォンス達と別れた後、ドクター・マルコーと共に各地のイシュヴァール人に協力を求め、最終決戦に臨む。

エンヴィーと相対した際には、マース・ヒューズを殺された事に対する復讐心に捕らわれ、自分を見失いそうになっていたロイ・マスタングを諭し、
後にそのことで元は敵であったリザ・ホークアイに礼を言われ、困惑していた。

マスタングの強制人体錬成発動後、左腕の再構築の錬成陣を解禁してキング・ブラッドレイ / ラースとの死闘を繰り広げる。
相手の疲労・バッカニア達が与えていた致命傷・日蝕の光と様々な要因が重なり辛くも勝利したが、捨て身の一撃でスカー自身も腹に深い傷を負う。

イシュヴァール人達がセントラル各地に配置した錬成陣を用い、制限無しに地殻のエネルギーを使えるようにする“逆転の錬成陣”を発動させ、間一髪エドワード達の危機を救う。
アメストリスの成り立ちと錬金術のカラクリをランファンに説明し、オリヴィエ・ミラ・アームストロング達が合流したところで意識を失った。


決戦後はオリヴィエによって密かに助け出され、マスタングのイシュヴァール政策に尽力するよう、マイルズから説得を受ける。


生かされている…意味…もう少し生きて探せという事か…兄者…

…己れは二度死んだ。この世にはいない人間だ

そう言い残し、「名無し」としてマイルズと共にイシュヴァール復興へと向かった。

最終話の最終ページ付近での各生存キャラのその後の顛末を切り取った写真群の中では彼と共に立つ姿が映され、国を変え守って行く為に奔走している事が示されている。

なおあくまでも結果論であるが、彼が『人柱候補』である国家錬金術師たちを殺害して回った結果、エルリック兄弟の『人柱』としての価値が跳ね上がった一面もある。



2003年アニメ版

微妙に設定が違い、特徴的な額の十字傷がキンブリーの攻撃によって出来たものであるという事は同じだが、
名前がないのは復讐のために捨てたのではなく、イシュヴァラの神に背いて錬金術を使う自分には名乗る資格がないという理由*2

右腕の錬成陣は、亡き兄が研究していた未完成の「賢者の石」。
弟という共通点からアルにシンパシーを持たれ、「スカーさん」と敬語で気さくに話しかけられていた。
…エドの命を狙い、少佐が助けに入らなければあわや自分も兄も共に殺されていたかもしれず、
しかも次に会った時も同じ目に遭わないという保証すらないと考えると、中々にアルも暢気である。

リオールでアルと共にキンブリーと対決した際には左腕を爆弾に錬成されるが、即座に自ら分解して難を逃れ、動揺したキンブリーに致命傷を与える。
そして、死に際の悪あがきで爆弾に錬成されたアルを救うべく、リオール全域に敷かれた錬成陣を使用し、
両腕を失った自分自身と突入してきた7000人の国軍兵士を代価に、アルの全身を賢者の石へと再錬成して消滅、死亡した。

今作では明確にエドに対するライバルキャラとして設定された為、原作より年齢が若く、やたらイケメンになっていた。

実は兄の恋人に淡い思いを寄せていた。リオールでも兄の恋人と同じ顔をしたラストを両腕のない状態で庇って致命傷を受けてしまう。

ゲーム「ドリームカーニバル」ではヒューズ中佐の見せたグレイシアの写真にも食いついていた。
この時のヒューズの嫁バカ親バカな勢いにタジタジなスカーの姿は必見である。

置鮎氏は最初期は「何故、国家錬金術師を殺して回っているのか」がわからないままで、
「部族を滅ぼされた」「錬金術に対する怒り」「自分の腕の悩み」を頼りに演じていた。
そして徐々に「スカーは台詞が無い時も、要所で印象的な行動を起こしている」ことを察知し、
スカーの台詞・行動に疑問を感じながら、「スカーが出てこない時に、他のキャラクターに何が起きたか」の確認作業をいつも以上に徹底して行った。



◆名言集


「もう後戻りはできぬのです」

「戻れぬ道なら、神より賜りし物全て…捨て行く!」

「家族も仲間も神の地も…守るものなどなにひとつ無くなった…
 ……だが、この歩みを進める力はなんだ?……復讐だ!!
 この身ひとつ、ただ復讐のために…生き延びてやる!」

「左脇腹…だったな」

「自分に何ができるかをずっと考えていた。そして“これ”に辿り着いた。
 我が兄の研究所から得た 再構築の錬成陣だ!」

「兄者…正直己れの中の憎しみの感情は消えていない。なのにその憎しみの相手を…アメストリスを助けようとしている。
 兄者は正の流れ負の流れと言ったが、
 矛盾したそれらを両方抱えている己れは…どこへ流れて行くのだろうか…」


「名前はない 好きに呼べ」

「今日から己れが!\(にくまん)(あんまん)/お前のお父さんで、お母さんになろう!お母さんの胸に飛び込ん…」





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最終更新:2025年03月11日 18:29

*1 ただし、実際に銃撃して来たら反撃するつもりではあった。

*2 第一期では「イシュヴァールの民の名は神に与えられるもの」と設定されているため