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世界終末時計

登録日:2012/01/13 Fri 21:08:51
更新日:2026/07/04 Sat 23:03:02
所要時間:約 5 分で読めます






世界終末時計とは、その名の通り「世界の終末」を測る時計。単に「終末時計」とも呼ばれる。
英語では「ドゥームズデイ・クロック」(Doomsday Clock)。なんとも不穏当な名前である。

概要

1947年、広島長崎の原爆投下から2年後の冷戦直下のアメリカで発行された雑誌「原子力科学者会報」(Bulletin of the Atomic Scientists)で発案された。
現実に「終末時計」が存在するわけではないが、シカゴ大学には終末時計のオブジェが設置されている。

ご覧のように時計の左上4分の1の部分を切り取った形をしており、時刻は9時から0時までしか存在しない。
時計の秒針が0時ちょうどを差した時、
即ち『深夜(Midnight)』がめでたく人類滅亡、すなわち世界の終わりとなるわけである。

秒針が進むのは、この時計が作られるきっかけとなった「核戦争」の脅威が迫った時や、
地球温暖化などの異常気象が起こった時に、同雑誌が設立した委員会の役員が自らの手で進める。

しかし、核も地球温暖化も全ては人間のエゴが生み出した問題である。
にもかかわらず終末の時を人類自らの手で刻んでいくとは、なんとも傲慢というか皮肉というのか…

2025年現在針が指しているのは、今までで最も進んだ89秒前
ロシアとウクライナの戦争が勃発した2023年に90秒となってからはイスラエルとハマースの戦闘が勃発した2024年になっても針は進まなかった。その後、2025年になって両戦争の継続や気候変動などを総合的に鑑みて1秒進めるという判断になったようである。


終末時計の推移

1947年に7分前で始まったが、二年後の1949年にはソ連の核実験成功により3分前となり、
朝鮮戦争最中の1953年にはアメリカとソ連の水爆実験成功により2分前とと並ぶ終末まで差し迫った時間帯となる*1

…だがどういう訳かあわや全面核戦争一歩手前という情勢だった1962年キューバ危機時点では針は7分前を示していた
その上ケネディ大統領暗殺まで起きた1963年には針が12分前まで戻っているどういうことなの…

その後核軍縮や米ソ間の雪解けもあり、1972年には12分前とかなり時計の針は戻るものの、'74年の米ソ間SALT I(第一次戦略兵器制限交渉)の難航や両国のMIRV(多弾頭弾道核ミサイル)配備により9分前まで進み、
'80年にはテロリズムの増大やイラン・イラク戦争などもあり7分前まで、'81-'84年には世界の軍拡競争激化が原因となり3分前まで進んだ。
しかしその後は米ソの中距離核戦力全廃条約の締結、それに伴う冷戦終結、そしてソ連・ユーゴスラビア連邦の崩壊もあり'91年には17分前まで戻った*2

しかし1998年、インドとパキスタンの核保有宣言が行われ、時計の針は14分前から9分前へと進む。

そして2002年のアメリカの弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)脱退(事実上の無効)やアメリカ同時多発テロ事件に端を発するテロリストによる大量破壊兵器使用の懸念などで7分前まで、5年後の2007年には北朝鮮やイランの核実験、地球温暖化の進行によって針は5分前まで迫ってしまう。

2010年にはアメリカ合衆国バラク・オバマ大統領の核廃絶運動宣言で6分前まで戻されたが、それも空しく2012年には前年の福島第一原子力発電所事故を初めとする原子力の安全性低下などを理由に再び5分前に進められた。
…が、実際には原発事故よりもイランの核実験の方が原因で針が戻っていたらしい。

実際に1986年にチェルノブイリ原子力発電所事故が起こり、その影響が懸念されていた80年代後半から90年頃にかけては、1984年→3分前 1988年→6分前 1990年→10分前 1991年→17分前と終末時計の針は戻っている。

2015年には気候変動や核軍備増大により3分前へ、そして2017年2月、アメリカ合衆国大統領にドナルド・トランプが就任し、その過激な発言、核廃絶や気候変動対策に消極的な姿勢で時計が2分半前まで進んだ。
さらに2018年、北朝鮮の連続核実験など不穏な情勢が続く中、時計は過去最高の2分前にまで進む。

それ以前に読者も承知のとおり2017年後半には北朝鮮から中距離弾道ミサイルが実験と称して日本へ向けてワンサと飛んでくる異常事態であったにもかかわらず、原子力科学者会報はなんの反応も示していない。
「やっぱりアメリカに被害がなけりゃいいのか」と言いたくなるが、日本は在日米軍や日米安全保障条約などアメリカにとっても割と無視できない領域(のはず)であり、さらには前述したキューバ危機も、当時はまさしく一歩間違えれば米ソの全面戦争で世界が終わる一触即発状態であった。にもかかわらず終末時計は微塵も針が動いていない
そのくせ大統領の発言ひとつで1分戻ったり30秒進んだりするし、気候変動と言うどちらかと言えば政治に利用される学問で進んだりするし。


…お分かりいただけただろうか。
この終末時計、ことの壮大さの割になかなか胡散臭い代物なのである。
まず「人類への警告」を謳っている割には針の動かし方がかなり恣意的なものとなっている。

そして当然この時計に関する批判は多いのだが、実は識者の間ではこうした批判的な意見に対して「これは単なる内輪ネタのひとつであり権威でも何でもない」という反論を行い、
批判に対する批判を後出しじゃんけん的に行うことが慣例化している。つまり「普段は権威のように掲げ、批判されたら権威じゃないですと引っ込める」「批判しないのが知識人の間での当然のマナー」のようになっており、割と聖域化の著しい時計である。
また、事が動いてから針の動きを審議する後手後手っぷりも批判されがち。ただしこれは先手を打つことが不可能なので仕方ないが。

しかし科学者がある程度の議論の末に進めるかどうかを決めているものであり、針が進むということは世界情勢がかなり不穏当であることの表れでもある。
決して「適当なことをほざいているだけの壊れた時計」「滅びますよー!世界が滅びますよー!と叫んでいるだけのオオカミ少年みたいな時計」と切り捨てられるものではない。
そもそも残り100秒の状態が続いている現在がかなり差し迫った時代にあるということは、この時代に暮らしている我々も肌で感じていることだろう。
まぁそもそも第一次世界大戦時から100年以上、差し迫ってない時代のほうが少ない気もするが


実は元々この世界終末時計は、広島の原爆投下の「効果」を目の当たりにした科学者たちが「自分たちが積極的な社会的責任を負わなければならない」という危機感を抱き、
世界を破滅に追いやらないための核エネルギーの管理や軍拡への歯止めといった議論を科学者が積極的に論じあった*3
そういった科学者基準の危機感や見解をうまいこと視覚化するための「自戒」、悪い言い方をすれば「一般人へのパフォーマンス」がこの世界終末時計であり、元々は核戦争の危機を訴えるもので原子力以外に評価基準を持たないこともあって割かし合理的な見解に基づくものであった。
つまり人類への警鐘というよりも「科学者が考えた核による破滅の瀬戸際までの距離の発表」のようなものだったのだ。
が、これが視覚的に分かりやすすぎたこともあって新聞や教科書などで取り上げられるようになってくると、次第に「権威のある代物」のように誤解されるようになっていったのである。

しかし2015年に気候変動で針を進め、さらに2017年にトランプ大統領の発言で針を進め……とやっているうちに、2019年末以降一気に世界情勢が不穏当なものになってしまう。
戻すきっかけがないしこれ以上大きく進めるわけにもいかないというわけで100秒前をキープしながら一秒動かして世界の破滅を訴えるという状況であり、もはや北朝鮮のチャーハンコピペの様相を呈する羽目になっている。
そう言う意味ではそもそも終末という上限を決めて近づけていくシステム自体に無理があったとも言えるが……
諸問題をごっちゃにしたのが陳腐化の始まりと言うべきか。

そのため「胡散臭い代物」「政治の道具扱い*4」という批判が高まる要因になってしまったのである。
各国の匿名掲示板などではすっかりパフォーマンス扱いとして物笑いの種にするのが流行しており、そのたびに「いやこれは単なる内輪ネタでブラックジョークなんだ」と、擁護なんだか批判なんだかわからない指摘をする人が出てくるなど、様々な意味で終末、いや混沌と化している。

上述のようにキューバ危機を反映する前にデタントが進んだせいで進むタイミングを逃したり、北朝鮮からミサイルが同盟国に降り注いだりしても動かなかったりと、個別の事象に対する精度も低いと言わざるを得ない。
結局のところ、終末時計も人類のエゴの一部であり、後世からは皮肉のひとつとして扱われる程度のものなのかもしれない。
いろんな意味でファミ通のクロスレビューのようなものなので、参考として程度の気軽な目で見ると良いだろう。



ここまで胡散臭いだのパフォーマンスだのと批判的に取り上げたが、一応これでも科学者たちが真面目に議論を行い、一般人にも直感的に分かりやすい形で世界の緊張を可視化している。
針がその数字を指すに至る理由はそれぞれ明示されているため、世界で何が起きているかということを知るにはちょうどいい代物である。
特に温暖化の進行や気候変動について軽視されがちだという科学者の見解は案外参考になるものだろう。

その針が適切に動かされているかどうか、信頼性を伴っているか、単なるイデオロギーによるポジショントークではないか?という点は疑問の余地があるのだが…。
過去の科学者たちの当初抱いていた理念が、現在の運営者達にきちんと残っていることを祈るばかりである。







この時計の信頼性に関してはもはやこれ以上語るまでもないので置いておくとして、
そもそもの話、実際のところは15分でも1分でも無く、この世界は、そしてそこに住まう我々は刻一刻と……


終焉に向かっているのではないだろうか?




モチーフとする作品

色々な思惑と賛否両論のある背景故にこの記事でも少し否定的に語ったが、「世界の終わりまでを刻む時計」「物々しい名前」という要素は創作のネタとしては結構美味しかったりする。
ということで、やはりというか世界終末時計をモチーフにした作品やキャラクターもちょくちょく出てたりする。

+ モチーフ作品一覧
世界最高峰のアメリカン・コミックと名高いヒーロー作品にして、物語のヒーローに対するアンチや皮肉を込めた、ある意味でのヘイト作品
人を超えたが故に人らしさを失った本当の意味での超人、妥協しないことを突き詰めた結果後に退けなくなった精神的な超人、世界を救う為なら世界を滅ぼすことも必要コストと割り切る合理主義者と、この作品に出てくるヒーローはどれも正義感こそは本物だが、同時にどこかズレているという特徴がある。
作者のアラン・ムーアが「ヒーローとしては凄いけど人としてはダメな奴ら」と公式で語っており、ファンが登場人物に憧れてる旨を伝えたら「あんな奴らに憧れる奴とか確実に危険人物だから、今すぐ僕から数メートル離れてくれ」と吐き捨てたなんてエピソードもある。

表紙を始めとした様々な所で世界終末時計を象ったモチーフが描かれており、登場人物の一人であるロールシャッハも日頃から「終末は近い」と書かれた看板を手に、民衆に何かを訴えかけている。
そんな彼らが「世界を救う」為に奔走した果ての結末は、大きな喪失と12時を指す終末時計であった。
それが「世界が救われたから時計は止まった」という意味なのか、はたまた「ついに世界の終わりが訪れた」という意味なのかは、まだわからない。

そして、こちらはその『ウォッチメン』の実質的な続編にして、文字通り「世界終末時計」をタイトルに冠する作品。
一人の男により強制的にもたらされた平和。その中でかつて奮戦したヒーロー達は燻っていたり、あるいは絶望していた。
そんな最中、「隣り合うもう一つのユニバース」と『ウォッチメン』の世界に繋がりが生じ、連なる二つの時空に新たな危機が迫る。
ヒーローたちが足を踏み入れたその世界で見たものは、悪を追う夜闇の騎士や、鋼の如し文字通りの「超人」が戦う姿であった…。

存知2000年代のオタク達には思い出深いエr…美少女ノベルゲーム「ToHeart2」。
そのファンディスクである「愛佳でいくの!!」に収録された「Final Dragon Chronicle ~ Guilty Requiem ~」というミニゲーム(?)のコンシューマー移植版で、いわゆるハクスラRPG。
オマケでありながらもその凄まじい高難度と歯応えのあるゲーム内容がファンからかなり好評だったため、大幅ボリュームアップして全年齢コンシューマー作品になったという経緯がある。
さらにはToHeartの作中作ではなく、完全新規のストーリーとなった「ダンジョントラベラーズ2 王立図書館とマモノの封印」なんて続編も出ている。もうToHeartですらないじゃん

ゲーム後半のダンジョン深部にて、立ちはだかるボスモンスターに「世界終末時計」というものがいる。
こいつは「アリス」というモンスターのカラバリで、見た目はセピアカラーになった不思議の国のアリスといった感じの存在。ただし性格面は若干ヒス気味でどちらかといえばハートの女王。
時計を携えた少女のモチーフなので、それの最上位種としては相応しい名前だろう。

なお強さについても端的に言えばイカれている。その名前に偽りはなく、こちらに圧倒的な絶望を与える凶悪ボス。
凍結以外の状態異常を受け付けず、常時リジェネで回復しながら高火力の全体攻撃を高頻度で放ってくる。
おまけに体力が一定値を切ると全体即死攻撃の「終末の時」が解禁され、数ターンの猶予内に止められないと全滅確定。対策無しでは絶対に勝てないボスとしてプレイヤーを怯えさせている。
それでも撃破できればご褒美にちょっとしたいいものを見れるので、頑張って倒してみよう。

集英社&コナミより展開されている、25年以上も続く老舗TCG。
2025年に登場したサイクル(テーマ)の一つに「ドゥームズ」というものがあり、こちらが世界終末時計を由来とする。
彼らは機械の神Doom-Zを信奉するドラゴニュートの軍事国家と、その国が誇るパワードスーツ姿の強襲部隊という設定で、装備魔法カードを駆使して展開と強化を行う。

根幹となる獄神機Doom-Zは羽のジョイント部分に世界終末時計をモチーフにしたエンブレムが描かれており、部隊メンバーも設定上は時間にちなんで12人存在しているという形。
部隊長であるドラスティアの対応する番号が12時にあたり、その上でルビでは「ゼロ」と0時にもかけているなかなか凝ったネーミング。
更には彼の強化形態は同じ12の数字を持ちながらルビが「エンド」に変わり、より世界終末時計のイメージに近い名前となる。

mixiが運営する「おはじき×弾幕シューティング」なソーシャルゲーム。日本のソシャゲでも特に有名で、かなり長い期間運営が続いている御長寿作品。
高難易度ボスシリーズである「爆絶級」の一つ、「終末の理」の一体として世界終末時計モチーフの「ドゥームズデイ」がいる。

このシリーズのボスは全て世界滅亡や破滅を由来とし、設定も「世界に裁きを下すため天界より送り込まれた天使で、単独で世界を滅ぼせる『終末兵器』という魔獣を使い魔として使役している」という形。
ドゥームズデイの場合は黒猫のトゥエルブを連れた銀髪の女性という姿をしているが、このトゥエルブこそが世界を滅ぼせる魔獣で、本気を出すと世界中に大量のブラックホールを生じさせて星ごと削り取るというヤバい存在。
デザインにも懐中時計や時計盤のモチーフが多く、撃破時は「90秒だけ猶予をあげる*5」と言い残して去るなど、各所に世界終末時計のモチーフが取り入れられている。

韓国のゲームスタジオProject Moonによるソーシャルゲーム。
人の命が簡単に失われるような「都市」を舞台悲劇的な展開に翻弄されつつも、主人公たちは所属する企業の為、そして自らの明日に向けて足掻くという物語。

主人公であるダンテは「時計の頭を持つ怪人」という奇怪な風貌をしているのだが、この時計のデザインは全体的に世界終末時計に似た形だったりする。
秒針の位置は11時45分を指すが、これは世界終末時計の形と同様であり、ストーリーが進む中で彼の顔面にある秒針も少しずつ進んでいる。
ゲームのOPアニメでは「あるタイムラインで都市にて数億人の死者が出るとてつもない事件が起こる」という事を示唆されており、彼の顔面の秒針の進行度は時間はその残り時間ではないのかという考察がなされている。



余談

広島県広島市、原爆ドームにも似たような意味合いを持つオブジェが存在する。その名も『地球平和監視時計』。
同市出身の彫刻家・岡本敦生による作品であり、高さ3.1mの花崗岩(御影石)の上部に現在の時刻を示すアナログ時計、そしてその下の2段の日数カウンターで構成される。

一段目は広島への原爆投下からの日数、二段目は最後の核実験からの日数を表しており、最後の核実験からの日数は新たな核実験が行われる度にリセットされる。
最新のリセットは、2024年5月14日のアメリカによる臨界前核実験によるものである。





追記・修正は世界の終焉を見届けてからお願いします。

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最終更新:2026年07月04日 23:03
添付ファイル

*1 ちなみにこの頃は「午前0時=全面核戦争勃発」ということになっていた。

*2 ただし4年後の'95年には「ソ連は終わったけど後継のロシアが核を持ったままだ」と言う理由で14分前まで進んだ。

*3 当時はまだ「核の平和利用」という概念すら存在せず、原子力発電なんて言葉がまだ夢物語だった時期である。

*4 大統領の発言だけで戻ったり進んだりということではなく、核開発への懸念や気候変動への政策不備などというところを論拠に針を進めることを批判したもの。

*5 実装時の世界終末時計の残り秒数