登録日:2010/02/25(木) 18:43:47
更新日:2024/07/20 Sat 08:56:38
所要時間:約 6 分で読めます
ふと気が付いた時には、何も覚えていなかった。
ここが何処なのか、ここで何をしているのか、そして…自分が誰なのか。
右手には懐中電灯、左手にはジェラルミンケース。
全身を包み込む防護服は重く、
視界を遮るマスクはカビ臭い
そして、ここはとても薄暗い。
2002年に発表された
フリーゲーム。
CopyrightSANETOMO KIKUTI
概要
記憶を無くした主人公が施設を徘徊して、真相に近付くホラーアドベンチャー。
謎解きがあったり、Keyアイテムが見つかりにくかったり、パスワード入力あったり等、難易度がやや高い。
回収されない伏線や、難解で
説明不足なストーリーなど、少々とっつきにくい部分が散見されるが、
ネタに富んだ選択肢等製作者の遊び要素などが入っており、なかなか良く作り込まれている。
登場人物
可愛い見た目(防護服)の主人公。気が付くと何処かの施設の休憩所にいた
記憶喪失者。
異常事態の施設の中という事で防護服を脱ぐことができないため、素顔は不明。
ジュラルミンケースを所持しているが、鍵の開け方を覚えていないのでただの荷物。
血まみれの施設内を
武器無しで徘徊する。
一人でいると冷静だが、人に出会い選択肢が現れた途端にへたれる。
彼の正体、およびジュラルミンケースの中身はエンディング分岐によって変わる。
主人公と同じ防護服を着た謎の男性。
施設が大変な事になってるのにかなり余裕のある態度でフカしているあたり、相当の実力者。
中盤、培養室に現れ、主人公に地下2階へ行くよう促してくるが…。
主人公と同じ防護服を着た女性。
終盤で登場するが、それまでの行動にもよるが既に意識不明または死亡した状態で登場する。
彼女と共に脱出するエンディングでは素顔を見る事ができる。美人。
マウステクノロジー社の研究員。
恋人と地下倉庫で密会中に会社の機密を目撃してしまい、人体実験の被験体に回されてしまう。
マウステクノロジー社の研究員。
恋人のサブロー同様に人体実験されてしまい、開発で得られた副産物「ES.E.G.F」を投与され、強靭な生命力と怪力を得る。
首を吊られたまま放置されていたがそれでも生き延びており、生前の恋人を探して徘徊を始める。
彼女を無事にやり過ごすには問答を正しく答える必要があり、間違えると殺されて
ゲームオーバーになってしまう。
「…サブロー……わたしのサブロー……彼は…どこ……?」
主人公が初めて出会う兵士。黒ずくめの戦闘服を着ている。
彼と同じ戦闘服を着た兵士は多数いるが、いずれも悲惨な死を遂げており、彼が唯一の生存者である。
(それも分岐次第で死亡してしまうが)
ラストホープ財団の保有する非合法武装組織、『ラスト・バタリオン』のガブリエル隊C班の隊長。
「クソッ…!!オマエは早く逃げろ!!」
徘徊する怪物
開発コードは「
赤ゴリラ」。施設内の至る所に出没する謎の怪物。
全裸どころではなく皮膚すらなく、全身の筋組織がむき出しのため真っ赤に見えることから名がついた。
人間のような形をしているが、会話できるほどの知能は無い。
追跡相手の進路を予測して先回りする程度の知能はあるようで、思わぬ所で出くわす。
最初は2本腕だったが、移動経路に天井裏やエレベーターのシャフトなどを使う事が多かったせいか、途中で自己進化を遂げて腕を2本増やし、
4本腕となる。
戦闘能力は非常に高く、バスターキャノンを持っていても全く相手にできない。
出会ったらほぼ即死、猶予がある場合でも
逃げる以外の選択をするとやはり即死。
開発コードは「
ピノキオ」。地下一階の第一飼育室で飼育されており、ゴム人形のような見た目をした謎の男。
頭頂部には大きな手術痕があり、普段は眠って過ごしている。
変幻自在な体細胞を持ち、所持品を含めてあらゆる姿に擬態する能力を持つが、
その代償として猛烈な飢餓感と睡眠欲に苛まされており、主人公を捕食しようとしてくる。
開発コードは「眠り姫」。地下一階の第二飼育室で飼育されていたが、強化ガラスを破って施設内部を徘徊している。
死斑の浮き出た女性の股から胎児の顔が生えており、ブリッジの体勢で歩き回る。
複数の個体がいるのか、それとも再生能力が異様に高いのかは不明だが、幾度となく施設内で遭遇することとなる。
時間の経過とともに進化を遂げ、逆立ちの格好での二足歩行やカギヅメなどを習得し、襲い掛かってくる。
ブリッジ体勢かつ死斑が消えていない初期段階ならばマシンガンの弾で殺傷できる(または行動停止に追い込む)が、
進化して二足歩行できるようになってくるとマシンガンの弾では足止めにすらならない。
兵士死亡ルートで登場する第三形態になるとバスターキャノンでも歯が立たなくなる。
壁や床に突如として現れる。
初期段階ではただ口のみが現れ、そこに接していたものを捕食する。
薄い壁など、向こう側が開けた空間になっている壁にも出現するが、喰われたものがどこへ行くのかは不明。
喰っている最中に捕食行動を中断してどこかへ行く事があり、その時は喰われていたものが壁に融合し、
喰われていた部分が壁から生えたような奇妙な状態になって取り残される。
終盤になると口だけではなく顔および手も増え、立体的な動きができるまでになる。
手と顔の方は主人公と直接対峙することとなるのだが、その正体は教祖様である。
開発コードは『アリス』。実験の失敗作の一つ。
焼却処分中に事故が発生したため、完全に死亡せずに休眠していた。
見た目は全身炭化しているように見えるが、再生を続け歩き回れる程度にはなっている。
マシンガンが効果が無い耐久力を誇るが、眼球が焼け落ちたままなので、横を通り抜けても気づかれないこともある。
信者の成れの果て。
上記の「基本逃げる」化け物と比べれば脅威ではなく、出会ったら倒していくものだが、
マシンガンの弾での殺傷は難しく、バスターキャノンの弾を当てないと倒せない。
バスターキャノンの扱いは難しいため、弾切れに注意しよう。
また、エラーを起こしたバスターキャノンを修理しないまま先に進んでガーゴイルに遭遇して死亡するというパターンもある。
そのまんま。
結構すばしっこいが、基本的に地面を走り回るだけである上、マシンガンの弾でも簡単に殺せる。
本作の
ラスボス。
全ルートで必ず闘うが、
倒さなくてもクリア出来る。
武器
ガブリエル隊が所持していた物。
弾が無いことが多く、弾があっても怪物に対してあまり効果がない。
かなりの威力を誇る兵器だが、
試作機のため、すぐに故障したり、連射すると使用者が感電死するなど、実戦向きではない。
後半でスコープ装置とエネルギーカートリッジの交換を行えば使いやすくなる。
ゲームオーバー
初プレイで死にまくるほどパターンが多い。
ある意味では本作の代名詞である。
例
「おっ、ダクトに入れるじゃん♪」
「ここから先IDが必要?どうせ中にあるんだろw」
「自販機使えねぇじゃねぇか」ガンッガンッ
「うほっ良い男!」
「コイツ、後ろから見たらどうなってんだろ?」マップ切り替え
「うほっ良いケツ!」
「来るなぁ!」マシンガン連射
「やばい、奴が来た。逃げ……後ろからも…!まあ、もう一回行ってみるといないんだろw」
「一緒にサブローを捜そう!」
「今、薬をやるからな!」
「指が疲れた。もう、クリックすんの止めてもいいだろw」
「元の場所に帰ってみるか♪」
ネタバレ
本作に登場するバケモノには3種類がある。
人の命を奪うもの、狼男やガーゴイルに変異させるもの、そして人の脳を支配して新たな人格を形成するものなど、様々な種類がある。
過去にイタリアから、この胞子を封じた棺が発見され、これに魅入られた当時の陸軍中将ロナルド・ホッジスによって教団が立ち上げられた。
- マジカルテクノロジー社の開発した薬品「ES.E.G.F」を投与されたもの
この薬品には服用者に怪力と強靭な生命力を持たせる作用の他、理性の崩壊のような副作用も確認される。
七番倉庫で絞首刑にされていたステファニーはこの薬品で無理やり生かされ、ハングドマンエキスの母体にされていた。
他、ジャックや主人公も服用することがあるが、ジャックが使う場合はどうやっても死んでしまう。
先述の胞子に対する耐性は、ホモ・サピエンスが当初持っていたものであるが、進化の過程で失われてしまった。
聖書ではこれを「原罪」と呼んでおり、これに対する耐性を持った人間を一から作るための計画がメサイアである。
見た目は胎児のような醜悪な生物であり、ラストホープ財団のお抱え企業マジカルテクロノジー社において人工的に培養液の中で生成したり、生身の女性に出産させたりと様々な方法で生産・実験が行われていた。
結果的に、これを人間に着床させる実験の過程でリバースウォーカーをはじめとするクリーチャーが生まれてしまう。
これを疎んじた財団は、胞子の入った棺ごとメサイアを処分するべく、ジャックを初めとするラストバタリオンを投入することとなった。
本作はマルチエンディングである。
主人公の正体はもちろん、ゲーム中で登場する人物の正体もルートによって変化し、伏線の真意もルートによって別々のものとして解釈することとなる。
- ジャックが生存しており、最終局面でジャックにワクチンを使った場合
VERY GOODエンディング。続編に繋がるストーリーはこちら。
主人公はメサイア計画の完成体。母体から出産された後、一人で立ち上がり、母体を喰らって栄養を得、およそ10時間で完成となった。
成長に伴う飢餓感で職員を喰らい、気密服を奪い、そして自我が目覚めた。生まれた瞬間から喋れるのは、言語機能が本能化されていたため。
冒頭で見られる血塗れの分娩台は、実は主人公が生まれた場所である。
マジカルテクロノジー社の生み出したメサイアの中では唯一の成功例であったが、研究主任のシャマランですらその姿を見ることなく生体になったため、
その存在が所内に知れ渡ることはなかった。
教団の主を倒し、ジャックと共に脱出。脱出ポッドの中で「自身の生まれ」に苦悩するが、ジャックに諭されたことで改めて社会で生きてゆくことにする。
防護服とジュラルミンケースは食った死体から奪い取ったもので、本来ならば防護服を着ていなくても感染の恐れはない。
ジュラルミンケースの開け方も、覚えていないのではなく知らないので、最後まで開けられない。
- ジャックが生存しており、最終局面で自分にワクチンを使った場合
BADエンディング。
教団の秘密に辿り着くが、ジャックが教祖に襲われてしまう。
ジャックを後に逃げるがそこには防護服の男、ハインリヒ・ベルガーが待ち構えていた。
ハインリヒによると、主人公の正体は教団外部からのスパイ「マックス・フロスト」。
研究員になりすまして情報収集をし、ジェシカ達を殺しまわっていたが、ワクチンの副作用で気を失っていた。
絶体絶命のピンチだったが、ギガハンドの乱入によりなんとか切り抜け、脱出に成功。
脱出ポッドの中でジュラルミンケースを開ける事ができる。中身は本来のフロストの所属組織との通信機などの機材であった。
なおジュラルミンケースから呼び出し音が鳴った時、
「風景画像の中のジュラルミンケース」か「アイテム欄のジュラルミンケース」のどちらかをクリックする事になるが、
画像の中のジュラルミンケースだと上記のエンディングになる。
しかしアイテム欄の方をクリックすると、更に違うオチになる。
それは、主人公はたまたま補充に来ていた自販機会社「メタルバーガー」の社員で、防護服に見えていたのはただの制服だった、というもの。
つまりハインリヒの指摘も全て的外れ、完全にいらない苦労をしたことになる。
制服と、本物の研究員が着ていた新型防護服がそっくりだったのは、単なる偶然。
ジュラルミンケースの中身は補充用の冷凍バーガーが入っていたが、あまりに遅いためにお怒りの電話がかかってきてクビを言い渡される。
- ジャックが死亡しており、最終局面でジェシカにワクチンを使った場合
GOODエンディング。
ジャックが生きている場合は死体として出てくる女性「ジェシカ」は、ジャックがいないと気を失っているだけになる。
この場合、主人公の正体は研究員のひとり「ハインリヒ・ベルガー」になる。
当初は恋人ジェシカと共に真実の眠る12番倉庫まで辿り着いたが、外部からの工作員マックス・フロストを追うため、単身で研究所内へと舞い戻っていた。
その後はフロストにワクチンを奪われた後、殴られて意識を失い、冒頭へと繋がる。
教祖を退け、ジェシカから真実を聞くと同時に工作員フロストが立ちはだかる。
早撃ちを挑むも叶わず、絶体絶命の窮地にいちかばちか「ES.E.G.F」を自分に投与。するとギガハンドが現れ、フロストを連れ去ってしまう。
ジェシカと二人で脱出するが、胞子に汚染されているのに死ぬ気配も変異する気配もない。
とりあえずは助かったが、治療法が見つかるまでは冷凍休眠する羽目に。
- ジャックが死亡しており、最終局面で自分にワクチンを使った場合
ジャックを助けられず、ジェシカも見捨てた場合は、主人公の正体が最悪なものとなる。
主人公の肉体は研究員「ハインリヒ・ベルガー」であるが、既に彼の人格は死んでおり、主人公の意志は脳を乗っ取った胞子そのもの。
その事実を封じるため、彼は同じ研究員を殺して回っていたのである。
自分の脅威となりうるジャックはバケモノに殺させ、かつての恋人であるジェシカも偽装のために利用しつくしたうえで使い捨てるなど、
殆ど直感的に残忍な行動を繰り返していた。
唯一の生き残りであり、親友であったマックス・フロストに追い詰められるが、主人公の危機に呼応したギガハンドの乱入により脱出に成功する。
しかし、ポッドの中で変異が始まり、やがて教祖と同じ化け物となってポッドを破り、どこかへ飛び立ってゆく。
余談
あるEDから続く「12Doors vol 1.5 MissingLink」と「M.F.D」があるが、「M.F.D」は序盤以降が課金制(現在は中止)であり、
しかも制作者の諸事情により途中で更新が止まってしまっている。
追記・修正は自販機を蹴り飛ばしながらお願いします。
最終更新:2024年07月20日 08:56