MoMa(MtG)

登録日:2010/06/05 (土) 19:38:20
更新日:2020/10/31 Sat 10:49:30
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当時のマジックは3つのステップに分かれていた……

序盤がコイントス

中盤がマリガンチェック

終盤が――

先手第一ターンだ


MoMaはMagic the Gatheringのコンボ・コントロールデッキである。

マジックにおける黒歴史とも呼べる最悪のデッキで、キーカードのほとんどが禁止カードに指定された。


Tolarian Academy / トレイリアのアカデミー
伝説の土地
(T):あなたがコントロールするアーティファクト1つにつき、あなたのマナ・プールに(青)を加える。

Windfall / 意外な授かり物 (2)(青)
ソーサリー
各プレイヤーは自分の手札を捨てる。その後、これによりプレイヤーが捨てたカードの枚数のうち最も大きい枚数に等しいだけのカードを引く。

Mind Over Matter / 精神力 (2)(青)(青)(青)(青)
エンチャント
カードを1枚捨てる:アーティファクト1つかクリーチャー1体か土地1つを対象とする。あなたはそれをタップまたはアンタップしてもよい。

Lotus Petal / 水蓮の花びら (0)
アーティファクト
(T),水蓮の花びらを生け贄に捧げる:あなたのマナ・プールに、好きな色のマナ1点を加える。

Time Spiral / 時のらせん (4)(青)(青)
ソーサリー
時のらせんを追放する。各プレイヤーは、自分の墓地と手札を自分のライブラリーに加えて切り直し、その後カードを7枚引く。あなたは土地を最大6つまでアンタップする。


Stroke of genius / 天才のひらめき (X)(2)(青)
インスタント
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはカードをX枚引く。



水蓮の花びらや魔力の櫃を始めとする軽量アーティファクトを大量に展開すると、トレイリアのアカデミーからは青マナの3つや4つは平気で出せるようになる。それに前者から生み出したマナを加えて精神力を設置。

すると、何が起こるかお分かりだろうか。

1.精神力の能力で手札を複数枚消費し、トレイリアのアカデミーを複数回起動。
2.大量に出たマナの一部を消費し、意外な授かり物や時のらせんで手札を補充。
3.その手札で精神力を使い、トレイリアのアカデミーを……あれ?無限ループって恐くね?

このチェイン・コンボで産み出されるマナは20点はおろか60点以上*1
最後に、先述の天才のひらめきや、Xマナの分だけダメージを放つ《火の玉》を相手に向けてゲーム終了である*2
そしてこのデッキ、一度動き出すと相手を仕留めるまで動き続け、その上止めるのが困難。おまけに早いターンから始動でき、1ターンキルも不可能ではない。
というか、カードプールが狭く凶悪なコンボデッキができにくいスタンダードのレギュレーション*3で組んだバージョンでさえ、5%前後の確率で1ターンキルが発生するのだというからとんでもない。
記事冒頭はMoMa大流行の時期に作られたジョークだが、あんなとんでもないジョークでも荒唐無稽というほどではなかったのが現実だった。

また、ライブラリーアウトで勝つという性質上対策が取りにくいのも特徴で、青マナもアーティファクトも使わないデッキが、当時の伝説ルール*4を利用して「MoMa側がトレイリアのアカデミーを置く事を邪魔するためだけ」に、使いもしないアカデミーを投入する事すらあった。当時のルールでは後出しでも墓地に送られる前に何故かマナを出せてしまうためそこからひっくり返されたりもするのだが。
しかもライブラリーアウトだけに勝ち筋を絞ったわけではないため、よく巷で言われている「MoMAの勝ち筋を殺すためだけのタワーデッキで投了に追い込んだ」というのも、優れたプレイヤーは「そうですか、じゃあ《火の玉》使います」と勝利手段をシフトするプランをちゃんととっていたため、実際はまったく対策になってなかった*5
MoMaに勝つためにMoMaを使うか、徹底したアンチMoMaデッキにするか。当時の環境は完全に二極化してしまった。

なお、デッキ名の直接の由来はキーカードの「Mind Over Matter / 精神力」の頭文字だが、同時に「The Museum of Modern Art, New York / ニューヨーク近代美術館」の略称にもかけられている。
曰く、 (一人プレイ時の)美術館の如き美しさを鑑賞するデッキ 誰がうまいこと言えと

事態を重く見たDCIは、トレイリアのアカデミーと意外な授かり物を禁止カードに指定。これらのカードは発売から2ヶ月足らずという異例の早さだった。

デッキの強さという面だけで見れば、後の時代も含めればロング・デックとかメグリムジャーとか、MoMaよりも酷い物は歴史上存在したのだが、
これらのデッキにはMoMaと比べて決定的に足りないものが1つある。公式大会で暴れた実績があるかないかだ。
素早い禁止カード発効により公式大会で使う機会が1度も無いまま消滅したこれらのデッキと違い、
MoMaは最初の禁止カード発効までの間に、プロツアー・ローマ98とThe Finals98という、1つのみならず2つも大きな公式大会で完全版が暴れる機会を得ている。
ちなみにTheFinals98のベスト8の内訳は、8人中6人が殆ど全く同じ内容のMoMaで、残りの2人のうち1人は『相手より先にアカデミーを置く』事を主軸にした茶単X火力デッキで、
残る1人はアンチMoMaとしてよくある黒や赤のアーティファクト系デッキをさらにメタった3色デッキといういびつな偏り方だった。
もちろん、ベスト4に残ったのは全員MoMa。
事前にアンチMoMaとして有力視されていた青単フィッシュデッキはアンチするはずのMoMaに残らず駆逐されてしまっていた。


ともあれ、多くの教訓と混乱をもたらしたMoMaの嵐は去ったのだ。めでたしめでたし。
















MoMaは生きていた。


Dream Halls / ドリーム・ホール(3)(青)(青)
エンチャント
呪文のマナ・コストを支払うのではなく、その呪文のコントローラーは、その呪文と共通の色を1色持つカードを1枚捨ててもよい。

Meditate / 瞑想 (2)(青)
インスタント
カードを4枚引く。あなたの次のターンを飛ばす。


失ったパーツを補う形で上記のカードが投入された。ドリーム・ホールから精神力を戦場に出し、マナは魔力の櫃で生む。ドローカードはやはりドリーム・ホールで踏み倒す。時のらせんを踏み倒せばマナも生み出せる。そしてMoMaは再び暴れ始めたのだ。

実はドリーム・ホール自体はトレイリアのアカデミーらが禁止される前からMoMaと相性が良い事が発見されていた。ただトレイリアのアカデミーがあるなら無理に投入しなくても良いと判断され、姿を見せなかっただけだったのだ。


結局その後ドリーム・ホールと時のらせん、水蓮の花びらが新たに禁止される。マナ加速要員であった魔力の櫃も、その頃発売された第6版から外れスタンダード落ち。さらに「ライフが0以下になると即座に敗北する」ルールに変更され*6MoMaは一気に弱体化、再び眠りに就いた。














MoMaはまだ生きていた。


Show and Tell / 実物提示教育 (2)(青)
ソーサリー
各プレイヤーは、自分の手札にあるアーティファクト・カードかクリーチャー・カードかエンチャント・カードか土地カードを1枚、戦場に出してもよい。

Diminishing Returns / 先細りの収益 (2)(青)(青)
ソーサリー
各プレイヤーは、自分の手札と墓地を自分のライブラリーに加えて切り直す。あなたはあなたのライブラリーのカードを上から10枚、追放する。その後各プレイヤーはカードを最大7枚まで引く。

Grim Monolith / 厳かなモノリス (2)
アーティファクト
厳かなモノリスは、あなたのアンタップ・ステップにアンタップしない。
(T):(◇)(◇)(◇)を加える。
(4):厳かなモノリスをアンタップする。

二度目の禁止改定とローテーション落ちによって失った大きなパーツは、「精神力を素早く着地させる手段」・「精神力で大量のマナを生み出せるマナソース」・「精神力で失った手札を補充出来る強力なドロースペル」の三種類。
しかしこれらは決して代わりがない唯一無二の存在という訳ではなかったため、MoMaは失ったパーツに近いパーツへ換装することで三度環境に帰ってきた。
MoMa使い達の執念を受けて蘇ったMoMa第三形態、実物提示MoMaの誕生であった。

とはいうものの、最初期のMoMaを完全体、中期のMoMaを強力なデッキと称するならば、こちらはどうにか環境に残ろうとした悪あがきに等しく、かつての凄まじいパワーは失われていた。
なにせ実物提示教育ではドローカードを使えず、先細りの収益は土地がアンタップしない上にリスクが高く、厳かなモノリスは魔力の櫃より1マナ重いのだ*7
おまけに上記のルール変更である。相当なパワーダウンを否むことはできなかった。

が、腐っても鯛の格言通り決して看過できるデッキではなく、弱体化しながらも注意すべきだと当時のメタの一角として存在し続けた。しぶとさだけ見てもかなりのものであった。

だがそれも、最終的に精神力そのものが禁止された事でついにMoMaは永遠に環境から姿を消した…。



ちなみに。
これらのカードをデザインした連中は、トレイリアのアカデミーと精神力のコンボに気付いていたらしい。


なのに何故、スルーしてしまったのか?




「相手を倒す前に手札がまず無くなるから大丈夫さ!HAHAHAHAHA!」



お前ら、なんでそこでリストを見直さなかった。



時のらせんとか意外な授かり物をデザインした当人が気付かなかったという、嘘のような本当の話。
(なお、実際に上記の二枚を使わなかったら結構な確率でカードが足りなくなり止まることは確かではある。実際には容赦なく使われたのだが。)

余談ながら。

このデッキは動かしている際、一人でずっとプレイして相手はほとんど何もしない事になる(なんせ対MoMaの最大の対策は時間を潰すための大量の漫画本*8とまで言われたぐらいである)。なので、ソリティアと呼ばれ、更にマナをせっせと一人で出し続ける様が自己満足な自慰行為でヌいてる姿に似ている事から、マスターベーション、もしくはオナニーデッキと囁かれたりしていた。うっ…ふぅ。

しかし実際のデュエルになると対戦相手はMoMaのコンボ中に何もしないということはない。
MoMaの手札補充の手段として使われる時のらせんと意外な授かり物の効果は対戦相手にも及ぶため、意外な授かり物のときには手札交換、時のらせんのときにはシャッフルまでしないといけない。
これは言わば対戦相手に無理矢理手コキをさせているようなものであり(しかもこの時点で対戦相手の負けがほぼ確定している一方、自爆する可能性も0ではないのでサレンダーもできない)、このあたりのソリティアコンボに相手を巻き込むという動きもMoMaがTCG史上最大のクソデッキと言われる所以である。




更に余談ながら。

このエキスパンションのカードをデザインした者たちは、後に頭蓋骨絞めを頭に禁止カード最多のブロックとなるミラディンでまたやらかす事になる。学習しろよ、お前ら。

今現在は
MoMaのキーカードのである精神力が2007/6/20に、厳かなモノリスが2010/7/1に、時のらせんが2011/1/1にレガシーの禁止解除となり、
ドリームホールモマのキーカードがほとんどが揃った。レガシー環境で組んでみるのも一興だろう。
ただし、当時絶妙にスタン落ちしていた《意思の力》や、この1年後に登場した《誤った指図》などが飛んでくるかもしれない。
逆に言えば、そういったピッチスペルが無い「穴の期間」だったために、ここまで暴れたとも言える。

ただ、デッキの構造上キーカードに頼る【MoMA】よりは、キーカードがバラけてカウンターを打ちづらい【ANT】の方が圧倒的に優勢。
同じように《天才のひらめき》をエンドカードにするタイプでも、MoMA抜きの【ハイタイド】が主流である。まあ今は事実上の上位互換みたいな《青の太陽の頂点》が使われているが*9
《実物提示教育》型の場合、その後は《全知》経由で《精神力》となるだろうけど、それ出してコンボが繋がらないリスクを背負うなら《引き裂かれし永劫、エムラクール》で殴った方が速いよねってなるので、《精神力》を出す手段としては《High Tide》か《ドリームホール》になるか。
ただ《ドリームホール》の場合相手からピッチでカウンターがすっ飛んで来るのが避けられないので《High Tide》経由、なら別に《精神力》が無くても回るので、結局レガシーでは成立しないに等しいのかもしれない。

アカデミーと意外な授かり物が制限カードのヴィンテージでも一応構築可能だが、1枚差しとなるアカデミーをどう引くかが一番の問題か。まあ持ってくる手段はたくさんあるが。
Moxとかのサポートを考えると、タッチ赤黒として、《苦悩火》、《苦悶の触手》、《青の太陽の頂点》の3枚どれかでフィニッシュというパターンになるか。1ターンキルを考慮しないのならタッチメンターという手段もある。
しかしそちらでも《逆説ストーム》辺りのほうが優勢なのだが。ってかこっちは現在のメタの一角を占めてるし。
構造上チェインコンボ自体ストームがゴリゴリ稼げるので、態々他のカードを使ってまでマナを稼ぐよりは、ストーム呪文でそのままフィニッシュしてしまった方が正解なのかもしれない。



基本セット2011にて

Temple Bell / 寺院の鐘 (3)
アーティファクト
(T):各プレイヤーはカードを1枚引く。

といういかにもMoMaに使ってくれと言わんがばかりのカードが加わり、
代わりに禁止となった適者生存のような活躍を見せるか期待がかかる。



かつてその秘密は、歴代知られる中でも最高の技術を生み出した。
いまでは蟹が瓦礫をほじくり返して殻を飾るばかりだ。

《アカデミーの廃墟》



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最終更新:2020年10月31日 10:49

*1 時のらせん/Time Spiralの使用回数が有限なので無限マナは不可能。だが、デッキを使い切るつもりで回せば300マナくらいは十分生産できる。もちろん、そんな要らぬ火力のために対戦相手をソリティアに付き合わせればリアルファイト案件。

*2 赤マナは上記の水蓮の花びらやモックス・ダイアモンドから生み出す。

*3 最新の方から数えて2つのブロックのセットのみを使うルール。ポケモンで例えるなら剣盾とSMのポケモンのみ、みたいなもの

*4 同名の伝説のカードが同時に戦場に存在した場合、後出しの方が速やかに墓地に置かれ、先に出した方のみが残る

*5 一応MOのヴィンテージキューブドラフトでは疑似MoMAが組めるのだが、この場合はサイドボードから土地を500枚入れて投了に追い込むという力業があった。特殊なルールを最大限に利用したプレイングである。

*6 ライブラリーアウト負けが「ライブラリーに必要な枚数のカードがない時に『カードを引く』と言う行動が発生した時即座に」であったのに対し、ライフ負けが「ライフが0以下の時にフェイズ終了時など特定のライフチェックのタイミングを通過した時」という違いがあった。そのため、《古えの墳墓》や《魔力の櫃》で大量にライフロスをしても、自分の敗北チェックの前に相手をライブラリーアウトに追い込んでしまえば大丈夫だったのだ。

*7 たった1マナ?と思うなかれ。高速チェインコンボの1マナは想像以上にキツイ。

*8 言った本人曰く、ガラスの仮面

*9 色拘束こそ青頂点の方が厳しいが、そもそも青マナしか出さないので色拘束が弱点にならない上、青頂点は使用後にデッキに戻るので再使用のチャンスがある。