クワイ=ガン・ジン

登録日:2012/07/18 Wed 20:36:35
更新日:2024/03/12 Tue 14:54:56
所要時間:約 9 分で読めます




いいか、今に集中しろ。頭で考えるな。ただ感じるんだ

演:リーアム・ニーソン(実写映画,クローンウォーズほかアニメスピンオフ多数)
  マイケル・リチャードソン(若年期)
吹替:津嘉山正種

クワイ=ガン・ジン(Qui-Gon Jinn)とは、映画『スター・ウォーズ』シリーズに登場する人物。
名前の由来は日本語の「開眼人」からきていると当初噂されていたが(本家wikiにも未だそう記載されているが)、正しくは中国語の「気功神」からきている模様。
ジェダイマスターであり、オビ=ワン・ケノービの師
スター・ウォーズサーガの序章たる「エピソードⅠ ファントム・メナス」は彼の視点で物語が進んでいく。


【人物】

長身、長髪で、逞しい、ライオンのような風貌で、鋭くも穏やかな青い瞳を宿した男。

ライトセーバーの光刃の色は緑。

幼い頃から才能あるジェダイとして育てられ、ジェダイマスター・ドゥークーのパダワン(弟子)となる。
なお、ドゥークーはクワイ=ガンとは十歳ちょっとしか年齢が離れていない。
ジェダイマスターで最高評議会メンバーも務めたプロ・クーンとは親友である。

冷静で思慮深く、かつ穏やかで寛容な人物ではあるが、その裏では激しい情熱と信念を燃やしており、実際のところは激情家
年端のいかない子供だったアナキンや、騒がしい性格から軽薄と見られ軽蔑されやすいジャー・ジャー・ビンクスなどにも分け隔てなく接し、慕われる一方、
自らの信念に反すると思えばジェダイ評議会はおろか、絶対的な権威者であるヨーダにさえも猛然と反発し、掟や法律さえあっさり破ろうとする、割と破天荒なタイプである。

表向きの穏やかさと、その裏で貫徹する激しいほどの信念は、明らかに師であるドゥークーの強い影響を受けたものである。
また、銀河共和国の深刻な腐敗と堕落や、ジェダイ騎士団の旧態依然とした固陋さに、不満や危惧を抱いている点でも共通していた。
実際かなり仲が良かったらしく、年齢がそんなに離れていないこともあって、ふたりは師弟というより友人に近かったという。


ジェダイ哲学の探求を行っており、未来にではなく現在に主眼を置くリヴィング・フォースの概念に着目。
このリヴィング・フォースという言葉はレジェンズとカノンで意味が異なり、前者はフォースを捉える考え方の一つを指す言葉で、後者はフォースの状態を指す言葉であるが、どにらでもクワイ=ガンの思想に大きな変更は無い。
レジェンズでは、純粋に今を生きるフォースと直感を信じ、本能のままフォースと関係を結んだ。
カノンでは、リヴィング・フォースの対となるコズミック・フォースを通した未来予知に頼りすぎる事を避けていた。
これは当時の評議会が推奨していた教義と相容れなかったため、評議会としばしば対立することに。

他の生物の持つフォースを感じ取る力に長けているが、弟子のオビ=ワンですらこのことだけは最後まで納得できずにいた。

のちのちになって、暗黒面が銀河のフォースの流れ全体(コズミック・フォース)を覆い始めたことでジェダイたちは未来を見通せなくなり、そこで初めてリヴィング・フォースの重要性は発揮され出したが、
それ以前のジェダイは極めて容易に未来の出来事の多くを見通すことができた。
それゆえ、クワイ=ガンのその場の感性に合わせて臨機応変に動こうとする様は、いわゆる模範的ジェダイから見れば、非効率的かつエキセントリックな奇行にしか映らなかった。

ジェダイとしての彼は騎士団の中でも最も優れた剣士のひとりであり、多くの困難なオーダーにも敢然と立ち向かっていった。
実際かなり、というか物凄く強かったらしく、ジェダイ最強の剣士と名高いメイス・ウィンドゥとの模擬戦においても引き分けることがあったとか。

勇敢かつ、善良な優しい人柄故か、何度も評議会の指示を無視し、取るに足らないと判断された人々も擁護してきた。
そのため、厄介事をもたらす「異端児」として扱われるが、常に揺るがぬ信念を持ち続け、彼なりの「ジェダイの大義」を果たしてきた。
そんな彼を反体制的で尊大だと非難する者もいたが、それにもかかわらず彼は最も影響力のあるジェダイであり続けた。
前述の異端児的な行動がなければ評議会で指揮する立場であったらしい。


【来歴】

EP1以前

コルサントに生まれ、マスター・ドゥークーの弟子としてジェダイの訓練を受ける。
『Tales Of The Jedi』では若い頃の姿も描かれ、師ドゥークーと共に、共和国議員の息子が誘拐された事件の解決にあたった。
実はその議員は圧政を敷いており、それを知ったドゥークーは議員を制裁しようとしたが、クワイ=ガンは誘拐犯である民衆から圧政による惨状を聞き認識を改めた議員の息子を解放してドゥークーと議員の両方を説得させることでその場を収めてみせた。
この功績からドゥークーに「自分より賢い証」だと賞賛されるなど、若くして高い素質を示していた。

カノンではそこからオビ=ワンを弟子に取るまでの経歴がまだ描かれていないが、レジェンズでは複数のエピソードが存在し、
初めての弟子としてフィーモア(Feemor)というパダワンを育てたとき、彼はマスターとしても優れていることを証明した。
しかし2人目のパダワンを育てたとき、彼は大きな過ちを犯す。
高い家柄に生まれたザナトスという素質ある子を見出した彼はコルサントで修行を受けさせるも、この時彼はザナトスの心の奥に潜む陰を見誤っていた。
ザナトスの故郷の惑星テロスへ派遣された折、動乱の中でザナトスは自身の父に手を貸してジェダイの試験を失敗した上、
任務の過程でクワイ=ガンがザナトスの父を殺さざるを得なかったことでダークサイドへ堕ちてしまう。
暴徒がなだれ込んできたこともあって、ダークジェダイとなってしまった弟子を殺すことはできず、取り逃がす。
その後、ザナトスは姿を隠してしまう。


ザナトスの一件により、師としての自信を完全に失った彼は、何年も弟子をとらずにいた。ヨーダにオビ=ワンの教育を薦められるも断ったほど。
しかしオビ=ワンの活躍によりザナトスが恐ろしい計画を進めていると知り、これを阻止することに成功。オビ=ワンのことを認め彼を正式なパダワンとする。

これ以後、2人の師弟は銀河のあらゆる所に飛び、政治的な紛争を解決していく。
この十数年に渡る旅の中で2人の絆は深まっていった。
もっとも、オビ=ワンはクワイ=ガンが旅のあちこちで現地の民と絆を深めて責任ある使命を託したり、評議会の決定にさえ異を唱えることの真意を未だ掴みかねていたが……

そして……


ファントム・メナス


彼がオビ=ワンとともに小国惑星ナブーが通商連合の部隊に封鎖された実態を把握するために銀河共和国から派遣されるところから物語は始まる。

いくら破天荒な彼でもさすがに通商連合総督ヌート・ガンレイ背後関係までは見抜けず、査察に訪れたルクレハルク級母船「サカック」では思いがけない攻撃を受ける。
その場でのガンレイ逮捕はドロイディカの迎撃により失敗するが、追っ手を振り切りナブーへと脱出することには成功。

そこでジャー・ジャー・ビンクスという奇妙なグンガンを救出することになる。
この時、彼はジャー・ジャーを同行させるが、オビ=ワンからは当たり前のように反対(事実、案内役としてもあまり役に立たなかった)。
だが彼の直感通り、このジャー・ジャーこそが後々ナブーを救う鍵となる。

その後、彼らはシードの街を訪れ、アミダラ女王を解放し、安全なコルサントへと送り届けることになる。

ナブーから脱出する際、敵から攻撃を受けた宇宙船を修理するために、砂漠の惑星タトゥイーンでの足止めを余儀なくされた一行。
彼はそこでアナキン・スカイウォーカーという奴隷の少年と出会う。
アナキンは彼が今まで会った者のなかで最もフォースとの強力な繋がりを感じる少年だった。
クワイ=ガンはこの少年こそジェダイに伝わる予言の「選ばれし者」であると確信。

船の修理とアナキンの解放。この二つの問題を解決するために彼は、アナキンの奴隷主のワトーとアナキンが出場するポッドレースで賭けをする。

結果、見事アナキンは優勝。賭けは彼の思い通りとなった。
(ちなみにこの時、アナキンが解放されるようにダイスをフォースでイカサマした。
 さらに、映画では描写されてないが、実はアナキンのポッドのパワー・パックはクワイ=ガンがワトーの店から盗んだ高級パックである。
 クワイさんマジアウトロー)

そしてタトゥイーンから離れる際、謎の襲撃者と出くわす。
なんとかこれを退けたクワイ=ガンは、先の襲撃者の正体が既に滅んだと思われていたシスの暗黒卿だと思い至る。

コルサントにて、アナキンをジェダイ評議会に紹介。しかし、評議会は、アナキンを訓練することを認めなかった。
少年の未来が曇っており、はっきりと見えなかったのだ。
それでも、と自らアナキンの師になると志願するも、ハッキリと認められぬまま、次の指令が出されることとなった。
(この時オビ=ワンは「覚悟はできています!」と一見マスターを支持するようなことを言っていたが内心メッチャ怒っており、
 「あっさりポイする師匠なんか、こっちから願い下げだーい!」といった感じで言ったらしい。
 一応、クワイ=ガンのオビ=ワンはもう一人前という気持ちも本心なのだが)

クワイ=ガンはそれでもアナキンを側におき、彼にとって最後となる、ナブーでの運命の闘いへと連れて行ったのである。
(あ、オビとは決戦の前に和解できました)

ナブーにて、女王の護衛を務める最中、再びシス卿ダース・モールと対峙する。
オビ=ワンと2人でシス卿と接戦を繰り広げるが、やがて師弟は分断。クワイ=ガンvs.モールの一騎討ちとなる。
執念・力強さ・速さにおいてモールはクワイ=ガンを上回っていたが、それを経験と直感で補い、短期決戦においては2人の実力は互角と言えた。
しかし、彼のフォームであるアタルは広い空間でこそ最大限に発揮できるもので、狭い通路ではその剣術を十分に生かせないのだが、
このモールは追い込まれたと見せかけて巧みに2人のジェダイを自身が有利な地形へ誘導していたのだとすぐに気付く。
特に若さの差ゆえにこの戦士を相手に自分には勝ち目が無いと悟り、なんとか短期決戦に賭けて猛烈に攻勢を仕掛けたが、持久力の差から来る疲労でどんどん追い込まれ出す。
ここで一瞬の隙を突かれ致命傷を負ってしまう。
(小説版ではこの戦闘でやたら「彼はもう若くない」と書かれていた。ちなみにこの時60歳間近。パルパティーン(EPⅠ時52歳)よりも年上なのだ)

そして死の瀬戸際、モールを倒したオビ=ワンにアナキンを託すと弟子の腕の中で息を引き取った。

3日後、アナキン、オビ=ワン、ジャー・ジャー、そしてジェダイ評議員たちの見守るなか、丁重に荼毘に付された。



【死後】

彼は生前に出会ったホイルスのシャーマン(『クローン・ウォーズ』ではフォースの惑星に住まうフォースの女官)から、リヴィング・フォースに依存する、死後も意識を持続させるための方法を学んでおり、修行していた。
これがEPⅤでオビ=ワンやヨーダが見せた霊体化の秘術であるとされる。
死亡時はまだ修行半ばであったため、肉体は残り、霊体化も不完全であった*1が、死後にこの秘術を完成させ、フォースとともに意識を永遠のものとすることに成功した。

EPⅡではアナキンが母を殺された怒りに任せサンド・ピープルを皆殺しにする場面で「よせ! アナキン!」と叫ぶ声をヨーダが聞いていた。
この時既にジェダイの長であるヨーダとの交信を図っていたのである。ヨーダもまたクローン戦争の後期には霊体化したクワイ=ガンの存在を認め、交信に努めた。

EPⅢではヨーダの口からついに交信に成功したと語られる。
既に銀河共和国も崩壊していたが、次代の新たなる希望へ託すために、オビ=ワンとともにクワイ=ガンのパダワンとなり、霊体化の秘術を学ぶ。
(未公開シーンにヨーダと交信を行うシーンが存在する)

新三部作では未来に重点を置いていたヨーダだったが、EPⅤでは「未来に囚われてはならぬ。今に集中するのじゃ」と考えを改めている。
これはクワイ=ガンが信奉していたリヴィング・フォースの考えが正しかった証明でもある。

うなだれるヨーダに対してクワイ=ガンは、
「シスの目標たる永遠の命は己を高めることでなく、手放すことで手に出来る。貪欲でなく思いやり、愛こそが闇に対する答え」
と諭している。
彼の言葉は一人の父親に戻った男によって実現された。

IIとIIIの間にあたる『クローン・ウォーズ』にもシーズン3とシーズン6に登場。
シーズン3では、フォースの起源とも云われる聖域モーティスに引き込まれたオビ=ワンとアナキンの前に姿を現し*2EPIから大きく成長した彼らと言葉を交わし道を示した。
ただ、オビ=ワンもアナキンもこの時の体験は記憶が見せた幻覚だと思っておりクワイ=ガン本人だとは思っていなかった模様。

しばらく経ってシーズン6では、瞑想するヨーダに声を送り接触。EPIIIで語られたヨーダとクワイ=ガンの霊体の最初の交信が具体的に描かれた。
ヨーダを惑星ダゴバおよびフォースの惑星へと導き、霊体化の修行へと進ませた。

なお、どちらのエピソードでも曾孫弟子アソーカとは接触せず。


EP3の10年後にあたるドラマ『オビ=ワン・ケノービ』においても、オビ=ワンの口から頻繁にその名が言及される。
オビ=ワンはヨーダに言われた通りに何度もクワイ=ガンとの交信を試みていたが、アナキンを導けなかった自責で摩耗しきった精神では気の所為と区別が付かないレベルの微かな気配を時折感じ取るのが精々であったが……?


【If】

ファンの間でよく「もしモール戦で死なず、彼がアナキンの師となっていたら……」と議論される。
そうなっていたらアナキンは悪の道に堕ちずにすんだのか?と。
これに対するはっきりした解答はないが、例え未熟なオビ=ワンの代わりにヨーダやメイス・ウィンドゥが師となってもアナキンの悪堕ち化は避けられないらしいため、かなり厳しいかもしれない。

しかし、理想的な人格者として描かれている彼が父親的存在としてあり続けるのはかなり大きいだろう。
生来、父というものを知らなかったアナキンは父の愛に飢えており、母と離れてからはよりその存在が大きくなっていった。
パルパティーンはクワイ=ガン亡き後、その父親的存在になり代わり、アナキンを父という立場で操ることに成功した。
それが防げるだけでもアナキンの将来に大きな影響を与えるだろう。
その証拠であるかのように、オビ=ワンには平気で反論するアナキンもモーティスでクワイ=ガンの霊体を見るや否や、幼少期の僅かな付き合いしか無かったにもかかわらずマスターと呼んで敬意を払い助言を求めている。
(ちなみに、アナキンはオビ=ワンに対しても父親的愛情を求めていたが、オビ=ワンは一貫して兄弟としての情を向けていた。このすれ違いも後の運命に繋がってしまったといえる)
もっともアナキンにそんな影響力を持つ人間をパルパティーンが放置し続けるかという問題点があるが…

ちなみにダース・プレイガスは「クワイ=ガンがあの少年を弟子にすれば滅びるのは間違いなくシス」と震撼している。


また、ドゥークーがジェダイに絶望したのはクワイ=ガンの死が決定打であった(それ以前から限界を感じていたとはいえ)。
『Tales Of The Jedi』劇中でもドゥークーはいずれクワイ=ガンは心強い味方になると考えてもいたようで、モールに彼を殺させたシディアスを非難するほどだった。
シスに転向してからもクワイ=ガンが遺したオビ=ワンのことを気にかけており、協力してシディアスを倒そうと訴えたこともある。
もしクワイ=ガンが生きていれば、ドゥークーの行動にも何かしら影響があったと思われる。



【余談】

映画で彼を演じたのは実際に女王から大英帝国勲章を授かったほどの名優リーアム・ニーソン。
彼はVFXのために演技が後回しにされる撮影現場にほとほと嫌気がさし、霊体としての後続エピソードへの出演をルーカスから要請されても断り続けたため、
結局EPⅠのみの出演となった。残念。
(EPⅡでの声もEPⅠの時の録音を編集したものである)

ただ、作品およびキャラクターへの思い入れは強いようで、今なおライトセーバーのプロップを保管してある他、『クローン・ウォーズ』や『Tales Of The Jedi』などのアニメスピンオフの大半で声優としてクワイ=ガンを演じている。
また『Tales Of The Jedi』における若き日のクワイ=ガンはリーアム・ニーソンの息子であるマイケル・ニーソンが演じている。


追記・修正はフォースとともにあらんことを

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • スター・ウォーズ
  • STAR_WARS
  • ジェダイ
  • マスター
  • リーアム・ニーソン
  • 師匠
  • 人格者
  • 一匹狼
  • 津嘉山正種
  • 開眼人
  • 気功神
  • クワイ=ガン・ジン
  • アタロ
  • アウトロー
  • 異端児
  • ドゥークーの系譜
  • 改革派

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年03月12日 14:54

*1 基本的に声のみが聴こえる形だが、周囲のフォースや観測する側の技量によっては無数の光の煌めきに見えたり、生前と同じ姿の霊体が観測できることもある

*2 モーティスのフォースの流れがあまりにも強いため、クワイ=ガンの不完全な霊体も生前の姿を取ることができた。