ライトセーバーの剣術フォーム

登録日:2024/10/02 Wed 18:30:00
更新日:2025/04/19 Sat 11:23:29
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STAR WARS』シリーズに登場する、光の刃を発する刀剣、ライトセーバー
このライトセーバーを用いた剣術について記述する。



【概要】

もともとライトセーバーという武器は、一般の刀剣とは多くの点が異なっている。
そのため、この光の剣を用いた剣術も、実体剣を用いた剣術とは異なる独自の発展を遂げた。

さらに、ライトセーバーの使い手は実質的にジェダイ騎士とその離反者、そしてシスの暗黒卿などに限られていた。
彼らはいずれもフォースの使い手であり、彼らの剣術はただライトセーバーを使うだけではなく、ライトセーバーとフォースの併用を前提としていた。
そのため、一般の剣術ならば無視される要素、あるいは排除する要素についても、ライトセーバー剣術に限っては織り込まれていることがある。


なお、スターウォーズ・シリーズにおいては2014年にいちど設定の大部分がパラレル設定として分割あるいはリセットされたことがある。
その後、設定資料集などを通して過去の設定の回収やリメイクが施されているが、一部は現行のカノン設定とは異なる設定も含まれていることに留意されたい。

「反乱者たち」にてフォームⅢとフォームⅣの存在に言及されるなど、部分的ながら設定は残留*1していると思われる。


また、元が英語媒体の作品であることから、翻訳の都合で多少の表記揺れが起きていることがある(例えばシャイ=チョーをシィ=チョーとしていたり、ソレスをソーレスと伸ばしたりなど)。
これは訳者の指向などによるもので、意味の違いはない。
下記の主要7種(+ジャーカイ)以外に、ル=スマという型の存在も判明しているが、これに関してはソレスに対して相性が良いということ以外、何も分かっていない。


ライトセーバー剣術は主にジェダイ騎士団内部で研究が始まった。
これは、一つにはジェダイ騎士団が2万年以上の歴史を持ち、ライトセーバー使いの組織としては最も歴史が長く、所属人数も多かったことが背景にある。
一方でシスの暗黒卿の場合、ドゥークーなどジェダイとしての経歴が非常に長い者や、ジェダイから転向して日の浅いシス卿はジェダイの型をそのまま使い、シディアス卿などの生粋のシスは(特に本領を発揮する際には)たいてい下記の型に近いシス独自のものを使用している。
以下で型を扱う者の名にシスが挙げられている場合、その型のシス版、といった方が正しい。

設定が作られた時期や撮影技術、登場人物の都合上、旧三部作では型の概念は見られなかったものの、EP2では多数のジェダイが入り乱れて戦うシーンがあり、妙にグルグル回したり、色違いの二刀流だったり、逆手持ちの二刀流だったりと、メインキャラクターの背景でも多種多様な戦闘が繰り広げられている。
クライマックスの一戦でもよく見ると四者の太刀筋や動きに差別化が図られているのが分かる。


各型の間にはある程度の相性があるが、優劣はないと考えて良い。
結局の所ライトセーバー戦での勝敗は双方の身体能力と剣術の技量、そしてフォース取り扱いの熟練度に基づく「場の支配」の優劣が大きく、相性は勝敗を決める要素のほんの一部に過ぎない。
例えば、フォーム1~6の基本フォームを使う者が、究極のフォームと言われるジュヨー使いを圧倒することも珍しくはなく、メイスが用いるジュヨーの発展形にして最強型とされるヴァーパッドでさえ、シディアスが基本フォーム・アタルを用いて長時間渡り合っている。
その一方で使い手が自分自身に合った型を見つけることは極めて重要で、とある型に転向した途端に才能が開花する、という事例もある。
例としては、
  • ヨーダはあらゆるフォームを極めたが、小柄な体躯のデメリットを無くせるフォーム4のアタルが最も実力を発揮出来る
  • オビ=ワンははじめ動き回る型のアタルを使用していたが、どうにも伸び悩んでいた。そこで防御とカウンターに長けたソレスに切り替えると、自分の冷静で慎重な性格と合っていたため剣才が開花した
というのが分かり易いだろう。

また、型と言っても熟練すると各自の好みや経験によって多少なりアレンジを加えることが多く、基本の型から派生した亜種の様な物もいくつか存在するほか、自分の得意とするフォームに他のフォームの要素を加味することもある。
例えば、マカシ使いがブラスター対策を考えてソレスの動きを組み込む、アナキンが得意のド=ジェムソに持ち込む前に機動性の補佐としてアタルを初太刀として斬り込む、というようなパターンが該当する。
複数のフォームをマスターして、状況によって使い分ける人物も多い。


【剣術フォーム】

◇フォーム1:シャイ=チョー

英語表記は「Shii-Cho」。「シィ=チョー」とも表記される。
別名サルラック戦法または決意の型。
最も基本的で、ジェダイ候補生が一番最初に習うフォームで、基点の構えは正眼。
ジェダイがライトセーバーを使い始めた頃から本編開始時点まで、驚くべきことに2万5千年もの間受け継がれ、練磨されてきた。
古のジェダイが当時の剣術から編み出したため、一般的な金属製の刀剣(実体剣)を扱う剣術と共通点が多い。
基本なだけあって、攻撃、防御、受け流しといった動作、攻撃すべき体位、果ては練習方法まで、ライトセーバーを扱う上で必要な技術はすべて盛り込まれている。
ジェダイ候補生は1~2年程掛けてこのフォームを体に叩き込み、そこから以下の各種フォームを選び、修練を積んでいく。

単純にして荒々しい剥き出しのフォームとされており、ジェダイの哲学に基づき、敵の殺傷よりも武装解除を目的としている。
極めれば最も無駄が少ないため、熟練したジェダイにもこのフォームをそのまま実戦投入し、愛用する者は多い。
また、他のフォームが機能しづらい局面における代替としての役割を持つ。

弱点としてはシンプルさゆえに後述した特化型のフォームと比べると、場合によってはどうしても見劣りしてしまう事である。
特にダークジェダイとシスの暗黒卿が出現する以前に開発されたフォームであるため、ライトセーバー同士の戦闘を想定されていない点は大きい。

なお、実体剣の操法に近いため、非フォースユーザーがライトセーバーを使う場合、このフォームに動きが近くなるらしい。

主な使用者:キット・フィストー、ター・ヴィズラ、エズラ・ブリッジャー
サビーヌ・レンは正規のジェダイではないが、ライトセーバーの扱いは慣れており、戦闘スタイルはこのフォームに近い。

◇フォーム2:マカシ

英語表記は「Makashi」。
別名イサラミリ戦法または競争の型。
初動は、片手で握ったセーバーを下段または突き出すように構える。
ライトセーバー同士の戦い(セーバーコンバット)に特化したフォームであり、セーバーコンバットが常態化するにつれて、不適格と判断されたシャイ=チョーに代わるフォームとして開発された。
シャイ=チョーの次に考案された非常に古い型であるが、決闘中心に特化しただけあって、ほぼ全ての型に対して有利に戦えるとされる。

狙いの焦点を絞り、効率的なバランスと滑らかなフットワークで戦うのが特徴。
手首のスナップを利かせたスムーズかつ変幻自在な斬撃、相手の防御をすり抜けて急所や弱点を突く、フェイントや牽制を織り交ぜて相手の技を塞ぐ、などの技術が集約されており、速さと精度を旨とする。

洗練された型なので体力の消耗が少なく、冷静さと精密さを求めるために暗黒面に引き込まれることもないため、長期戦にも向く。
手首が重要なので片手で振るう場合が多く、二刀流に派生する使い手もいる(もちろん両手を使う場面も多いから、二刀流専用のフォームではないが)。

弱点としては強力な運動エネルギーを生成しづらい事と敵のフォースの流れの急変に弱い事。
シエン(ドジェム=ソ)がベタ足から繰り出す高速かつ力強い斬撃で力任せに突破されたり、ジュヨーの急変する不規則な技には太刀筋を狂わされやすい傾向がある。
またブラスター全盛以前の時代に編み出された事からブラスターからの攻撃を想定しておらず、対処が本人の資質任せになるのも問題点*2
加えて基本的にタイマン想定のフォームなので集団戦があまり得意でないところも弱点と言える。
もちろんいずれも使い手の力量次第で、マカシ最高の達人であるドゥークーにはパイク・シンジケートの一斉射撃をもってしてもかすり傷一つつけられなかった。

シスが滅んだとされる状況ではライトセーバー同士の決闘というのが想定し辛かった(ダークジェダイ戦しかなかった)ことと、ブラスターが普及し過ぎたことから、旧共和国時代には実戦では無用な型とされ、ごく一部を除き、ほとんど訓練・演舞用にしか習得・研究されなかった。
シャアク・ティが剣舞で使用していたり、『反乱者たち』のケイナン・ジャラスが訓練時に仮想敵として振る舞う際のみに披露していたというのがその一例である。
また、技量に特化した性質上、格上が格下を一方的に下すワンサイドゲームになりがちでもあり、そういった性質もジェダイから使用を忌避された原因の一つ。
逆にシス側は対ジェダイ戦を想定して、マカシを独自に発展させて徹底的に習得しており、両者の剣術観・仮想敵の相違が垣間見える。

ただ、ダークジェダイが増加したこと、シス復活が確認されたこと、シスがダークジェダイを率いたことなどを受けて、EP1の翌年にはジェダイの剣術指南役シン・ドローリグも、マカシを重視・教育する声明を出すに至った。


◇フォーム3:ソレス

英語表記は「Soresu」。「ソーレス」とも表記される。
別名マイノック戦法または立ち直りの型。まるで大弓を引き絞るような構えが特徴的。*3
これまでのフォームのブラスター反射技術を発展させた、防御に特化した非常に手堅いフォーム。シスも既になく、武器の主流がブラスターに移り変わる中で、実用性を失ったマカシに代わり考案された。


確かな勝利よりも生存を優先したフォームであり、あえて戦闘を長引かせることを目的としている。
タイトなセーバー操作と、微妙な回避によって最大限の防御範囲を得つつ、マカシと同様にエネルギー効率を重視。
そうして相手がフラストレーションや疲労によって、精彩を欠いた隙をついて攻撃に転じるのである。
熟達すれば四方八方からの包囲攻撃さえ防ぎ切り、もし真に極める者があれば負傷させることは理論上は不可能、とまで言われる。

弱点は、攻撃能力の欠如。防御を攻撃に転じての、巻技の様な動作やカウンター攻撃はあるが、どうしても受け身にならざるを得ない。
更に受け身である事と対飛び道具・対集団戦特化である事から、近接戦闘に特化し、かつ変幻自在の斬撃で防御をすり抜けてくるマカシとは極めて相性が悪い。
もちろんこれも使い手の力量次第で、ソレスの達人であるオビ=ワンの防御は、優れたマカシ使いのグリーヴァスやヴェントレスでも突破困難。
彼が勝てなかったのは、マカシを極め「達人」と称されたドゥークーぐらいである。
「防御によって耐え凌ぎ、必要な瞬間が来たならば速やかに最小限の攻撃を行う」という性質から、「ジェダイの在り方を体現するフォーム」と考えるジェダイも少なくないらしい。

オビ=ワンは上述の通り、慎重な気質であったために師父直伝のアタルに馴染めず、ソレスに転向したところ剣才が開花した経緯を持つ。
その腕前は、メイス・ウィンドゥが「ザ・マスター」の称号を贈り、オビ=ワンがライトセーバー戦で生涯勝てなかったドゥークーも極めて熟達した達人だと素直に認めるほど。
そのオビ=ワンのソレスは、共に戦うアナキンの扱うシエン/ドジェム=ソの影響を強く受けたもので、攻め手に欠けるという弱点を克服している

主な使用者:オビ=ワン・ケノービ、ケイナン・ジャラス、デパ・ピラバ、バリス・オフィー、ルミナーラ・アンドゥリサーム・セルリアンダース・ザナー
ダース・モールもこの型を扱い慣れている描写がある。

◇フォーム4:アタル

英語表記は「Ataru」。アタール、アタロとも表記される。
別名ホーク=バット戦法または侵略の型。
ヨーダやクワイ=ガン、EP1におけるオビ=ワンのようにフォースで肉体を強化しての跳躍・回転・宙返りなどを多用する最もアクロバティックなフォームで、
顔の横でライトセーバーを立てるようないわゆる「八相の構え」を起点とする。
「さすがにソレスはヘタレにも程があるだろ……」と考えた過去のマスター達によって考案された攻撃的なフォーム。

精巧にして俊敏な動きと大胆な機動、威嚇や牽制を織り込むことで、相手を翻弄しながら四方八方から攻める。
また、他の型をメインにしている使い手でもこのフォームの技法を取り入れて戦闘の一助とすることがある。
フォースと肉体の技量に熟達すればするほどスピードも上がり、攻撃力も上がる。
実写において使用者の動きが凄まじいため、最も映像栄えするフォームと言える。
壁といわず天井と言わずゴムボールのごとくバウンドするEP2クライマックスのヨーダ、大柄な壮年男性がすごい勢いで宙を舞うEP3のシディアスの姿は良い例である。

欠点としては、使い手のフォース能力への依存度が高く、体力の消耗が激しいことと、機動力を制御出来なければ却って自分の方が隙を曝してしまうこと。
狭すぎたり、逆に広すぎたりして周囲を囲むような動きが取れない空間では活かせないこと。
複数の敵からのブラスター射撃を防ぐのにはあまり向かないこと。
そして何より、一番の持ち味である威嚇と牽制が通じない達人を相手にする場合、隙だらけで非常に危険である事。
EP1でクワイ=ガンがダース・モールに敗れたのも、長期戦による体力の消耗と、狭い空間に誘導されてしまったことが大きな一因である。
なお『反乱者たち』でのオビ=ワンとモールの最後の対決においては、オビ=ワンは構えをEP3でお馴染みのソレスの構えからEP1で師弟で使っていたアタルの構えに変えており、クワイ=ガンがモールに敗れた立ち合いを再現しつつも今度はモールが敗れるという胸熱な演出を披露している。

「ソレスだと惰弱だが、シエンはやり過ぎ」という意見もあり、歳を食っていてもこの型を敢えて使うジェダイは多い。
特に有名な使い手はマスター・ヨーダだが、彼の場合、自身の最大の弱点である体躯の小ささ由来のリーチの短さを解消する意図でこれを使用している。
同時に自身に向けてフォースを使用し老齢の衰えをカバーするという離れ業も並行している。

主な使用者:ルーク・スカイウォーカーヨーダダース・シディアスクワイ=ガン・ジンアソーカ・タノエージェン・コーラーザナトスキ=アディ=ムンディイース・コス
この他明言はされてないが描写的にヴェン・ザロウやシン・ハティも使用者と思われる。

◇フォーム5:シエン

英語表記は「Shien」。
別名クレイト・ドラゴン戦法または忍耐の型。
両手でセーバーを握り、前傾姿勢で斜めに構える構え方が主な構え方だが、非伝統的な構えとして逆手持ちして体の前に突き出す、または体の後ろに隠すように構える構えもある。
ソレスとは対照的に最も攻撃的なフォームで、「平和はより優れた火力によってもたらされる」というジェダイの格言を示す。
ソレスは戦闘に費やす時間を長引かせ、かえって危険であると考えたソレスの達人によってアタルと同時期に開発された。

対ブラスター特化のシエンと、対ライトセーバー特化の発展系であるドジェム=ソの二系統から成る。

シエンは、パワーを発揮して相手の防御や牽制の太刀筋を切り崩す、跳ね返したブラスターを相手に命中させることを重視するなど、攻防一体のスタイルが持ち味。
その為、主に集団戦において前衛を務めるジェダイに採用者が多かったとされている。
他のフォームに比べて振りや残身がやや大きく、一撃の威力を重視するような力強い動作が特徴的。
欠点としては、パワーを出すために足を強く踏み込み踏ん張る*4ため機動力が低いこと、リーチの長い敵に足元を狙われたり不安定な足場での戦いになったりで「立ち居」を崩されると脆いこと、攻撃的なので暗黒面に引き寄せられやすいこと、そして全ての型の中で、最も使い手の物理的な筋力と体格・体幹に左右される点である。
ブラスターを構えた複数の敵を相手取る場合には真価を発揮するが、単独の敵に対してはやや不得手とされている。

若い頃のアナキンが使用しているのは、ドジェム=ソ(Djem So)の方である。
ドゥークーは「この型をこれ程巧みに扱う者は未だ嘗て見たことがなかった」と舌を巻いた(他の使い手にはサシー・ティンやエージェン・コーラー、ダース・ベインがいる)。
シエンが攻性のブラスター反射と剣戟による体幹崩しを十八番とするのに対し、ドジェム=ソは相手のセーバーを受け流し、即座の反撃を行うことで決闘の主導権を握ることに秀でる。
関節の可動を駆使して腕からライトセーバーにかけてを撓らせるような軌道を描かせ、より強力かつ予測し辛い連続攻撃を行う。
しかし、足元には鞭を振り回す「軸」の役割も求められるため、機動力の低さがベースのシエンに輪をかけて悪化している。

特に相手に背を向けた状態からライトセーバーを背後に回してそのまま斬り付ける動きはアナキンの十八番。アナキン役のヘイデン・クリステンセン氏がスタントマンから教わり練習して身に付けたというエピソードも語られており、ファンの間でもしばしば特別視されている。
だが、肉体が機械化してしまったヴェイダーは、関節の可動域や柔軟性に大きな制約が課され、このドジェム=ソも使用不可能になってしまった。
そこに折り合いをつけたヴェイダーは本来のシエンに近い、より重い一撃を念頭に置いた所作へと戦法を変更している*5

ルークもヴェイダーとの戦いを経て、自然にフォームがシエンへと近づいている*6
EP6終盤に強打の連撃でヴェイダーを圧倒する姿は、奇しくもシエンの本領に通ずるといえる。

ソレスとは対照的な剣技であるためか長所を潰し合うため、それぞれを高く同レベルで極めた使い手が戦うとお互いに決め手を欠いた泥沼の長期戦となりやすい。
そして若き日のアナキンは、オビ=ワンと同様に彼のソレスの影響を強く受けており、攻撃的な型でありながら手堅い防御も行うようになっており、攻防一体の型へと変容している。
EP3でのアナキン対オビ=ワンが長引いた理由の一つがこれ。

主な使用者:アナキン・スカイウォーカープロ・クーン、アディ・ガリア、サシー・ティンエージェン・コーラーアソーカ・タノ*7、エズラ・ブリッジャー、ダース・ベイン
また、明言されていないがカル・ケスティス、ベイラン・スコールもこのフォームがメインであると推察されている。

◇フォーム6:ニマーン

英語表記は「Niman」。
別名ランコア戦法または中庸の型。
顔の横にセーバーを持ってきて剣尖を突き出すように構える、いわゆる「霞の構え」が基点。
発展型の7以外の全ての型の要素をバランス良く取り込んでおり、戦闘において大きな利点こそないが欠点もない、汎用性に長けたフォーム。二刀流の型ジャーカイのエッセンスを濃く取り入れたとも言われる。

各フォームに通じることから、周囲のサポートや連携にも巧みで、集団戦向き。
また、プッシュやプルなどフォースの念動力を利用して、敵を打倒することを奨励している。
つまりは、戦闘に最低限必要な事項を広く浅く手っ取り早く身に着けて、そうして入門段階を経た後にはあらゆるフォームを極めることも出来た。

共和国時代、ジェダイは外交任務を請け負って銀河中を飛び回っていたため、修行に割ける時間には限りがあった。そのためニマーンは「習得し易い型」として重宝された。
ジェダイ評議会メンバーでも習得者は多く、更には歴代最強のシスと名高いエグザ・キューンさえも、この型の達人だった。
極める事さえ出来れば強い。
……本当に極められるのであれば

この型の問題点は二つ。

第一の問題は、この型はあれもこれもと詰め込んだせいで、実質的に5つのフォームを同時に少しずつ修行している状態に近かったこと。
初期段階までは覚える負担は低いが、それより上の極める段階に持って行くには逆に高い負担が掛かる。才能があっても最低十年は稽古に費やさなければならないという。
第二の問題は、前述の通り、旧共和国時代のジェダイが「外交任務の片手間に」このフォームを選択した事。
忙しいから基礎習得ができた時点で満足して極めようとせず、かといって他の自分の性格などに合ったフォームへと転向して熱心に学ぶこともしない。
なまじ「使うことは使える」レベルまで行けるのも惰性を産む。

この二つの要素が重なった結果、極める事は非常に困難なこの型を半端に齧った器用貧乏な剣士が旧共和国時代には量産された、という負の側面が存在していた。
ある意味自身の適性を見極め、剣の道を究めることを怠ったツケとも言えるだろう。
当世の剣士達よりも先述の歴代最強シスがかつて用いていたことを殊更強調されるという状況にしても、歴代最強と謳われるような卓越した能力の持ち主でなければ極められないという実情を窺わせる。
そのこともあって個々人の素質を重視するシス側、特に映像作品で描かれている時代のシス界隈では「器用貧乏な型、個々人の可能性を潰すフォーム」として習い使用する者はほぼいなかった*8
そして怠惰の証であるかのように、EP2のジオノーシスの戦いでは、このフォームを使うジェダイはほぼ全滅し、実戦での脆さが露呈してしまった。
外交面で多大な貢献を果たしたが故にジェダイ最高評議員に上り詰めたコールマン・トレバーは象徴的かつ典型的ニマーンの使い手として扱われているが、そんな彼がドゥークー伯爵及びジャンゴ・フェットと対峙した際の顛末は……*9

ルーカス以下制作陣のメッセージとしては「全部乗せをパーフェクトだと思い込んで安易に選択するとこうなる」といった所だろう。
とはいえ、ジオノーシスの対ドロイド軍戦は他のフォーム使いも含めて参戦したジェダイの九割が戦死したので、ニマーンだけに問題があったとも言い難いが……。

しっかり鍛錬した上にジェダイでも指折りの剣士であるシャアク・ティやサシー・ティンは生存しており、実戦において全くの役立たずと言う訳ではない。
五つのフォーム全ての要素をバランス良く含みある程度の段階までは修得が容易という点について器用貧乏になりがちなのは確かだが、長所に目を向ければ基礎技術の底上げが比較的短時間で出来るという事でもある。アナキンがアソーカにニマーンを教えていたのもこの目的による所が大きいと思われる。

主な使用者:シャアク・ティサシー・ティン、コールマン・トレバー大先生ダース・モール、エグザ・キューン

◆ジャーカイ

英語表記は「Jar'Kai」。
二刀流の型。
ニマーンの派生とされる場合もあるがこちらがオリジナルである。こちらは極め難いというわけでもないようだ。
元来は、ヨヴシン(Yovshin)の剣士によって開発されたデュアルブレードスタイルの剣術。
ジャーカイという語は、二本の剣を同時使用する剣術の包括的な名称でもある。

片方を攻撃、片方を防御に使うのが基本だが、両方で一気に連撃を叩き込むことも。
大半の相手を手数で圧倒できるとされ、継続的な波状攻撃を可能とする。
さらにアサージ・ヴェントレスは一度に3人以上のジェダイと戦えるなど、複数の敵と同時に戦う際は防御面の強さが否応にも発揮される。
また、他のフォームへの応用はそう難しくないとされ、普段は一刀流でも咄嗟に切り替えて使う場面が多い。

ライトセーバーの性質を活かしたメリットだらけに思えるが、もちろん弱点もある。
第一に、片手で扱う性質上、シエン使いのようなパワーアタックによって防御が崩される危険。
第二に、ライトセーバーの固有のジャイロ効果のために制御が困難な点。
第三に、使い手は過度にライトセーバーに依存することが多く、フォースなどの他の分野の能力向上が疎かになってしまう点である。
片方を失うと途端に不利になってしまうのである。
しかし、今のところ映像で登場した使い手達はこれらの弱点を克服している者ばかりである。

EP2で負傷したオビ=ワンからアナキンが二本目を受け取って使ったりと、二刀流の登場シーンは意外と多いが、それら全てがジャーカイの動作なのかは不明。
強いて言うなら『クローンウォーズ』でキット・フィストーがグリーヴァス将軍に対して使ったのはジャーカイらしい。

日本における刀剣の二刀流は長短一本ずつで行うのが一般的だが、ライトセーバー剣術であるこちらは中国のように両方とも同一の長さの刀身で行う剣術なのも特色の一つ。
稀に、『クローンウォーズ』シーズン3以降のアソーカや、レジェンズキャラのソーラ・バルクなど、ノーマルとショートーを用いた長短一本ずつの二刀流を披露しているものもいる。

◆ダブル=ブレード・ライトセーバーの型

柄の両端からブレードを放出することが可能なライトセーバーの型。
正式な名はない。
厳密にはニマーンに含まれているか不明だが、これの著名な使い手のエグザ・キューンとダース・モールはニマーンの達人とされているため、内包されているものとして扱われることが多い。

より速い攻撃速度を可能にし、最小限の動きで素早い攻撃を繰り出し、「一振りあたりの殺戮を増やす」ことが出来る。
視覚に与える心理的効果も大きく、尋問官は回転機構を組み込んでよりその効果を高めている。

弱点は明らかで、専用の訓練を要することと、長大な柄を狙われて破壊されやすいこと。

◇フォーム7:ジュヨー

英語表記は「Juyo」。
別名ヴォーンスクルー戦法または残忍の型。
6つのフォームを極めた者だけが使える、究極のフォームと言われているが、実際は後述のリスク故のジェダイ内のみでの習得規則だろう。
確立された経緯は不明だが、古来より厳選された少数のジェダイの間で受け継がれてきたらしい。

全てのフォームの中で最も悪質とされ、「怒り」と「悪意ある優雅さ」を体現するという。
「一見繋がりのない途切れた動き」と語られる静と動の相反する特性を同時に併せ持ち、極めて予測が難しい変則的な動きで相手を圧倒、しかも興奮や憤怒といった激情まで織り交ぜ、内面の感情を制御して攻撃性を全開にする。
これに熟練した達人は、「単独の敵を骨抜きに出来る」とされる。
つまり、敵の動きを自在に誘導出来るということである。
シエンよりも動的であるが、アタルのような洗練された連続性は見られず、むしろ「下品」「狂暴」とまで言われる。

欠点としては、ニマーン以上に習得が難しいことと、シエン以上に使用者の内面に暗黒面に繋がる重大な影響を及ぼすこと。
そのため、このフォームを学ぶことはジェダイの中でも特に精神面が練れた者だけが許される。
アナキンは実際にシン・ドローリグから伝授を拒まれた。
また暗黒面に落ちかけているジェダイ(典型的なのはアナキンか)は自然とこちらに型が近づくとも言われている。
逆に、元々暗黒面に居るシスの暗黒卿はノーリスクで使える。
他のフォームにも通ずる高い技術が必要な点は変わりないが、シス側ではおそらくもう少し習得条件は緩和されていると思われる。

レジェンズの設定ではあるが、古共和国時代のシスでは実際にダース・マルガスを始めとした高位のシス卿の多くがこのフォームを使用していた。

主な使い手であるダース・モールは武器が武器であるため分かり難いが、このフォームは両腕を横に広げた、一見、隙だらけな構えを取るのが特徴と言える。
またはセーバーをゆっくりと大上段に構えるのも構えの一つとされる。
「反乱者たち」のモールは長らくこの構えを取らなかったが、オビ=ワンとの決戦の際に披露した。

主な使用者:ダース・モール、ダース・マルガス、イーヴン・ピールシン・ドローリグ
ダース・モールはダース・シディアスに型を習ったため、シディアスも修得していると思われる。

◆ヴァーパッド

英語表記は「Vaapad」。
メイス・ウィンドゥとソーラ・バルクが共同考案した、ジュヨーの発展派生型。
名称は惑星サラピンの月に生息する獰猛な猛獣からつけられた。
猛獣ヴァーパッドは7〜23本の触手を超高速で振り回して獲物を叩きのめす。
それにあやかり、不規則な太刀筋と腕が視認できないほどの高速斬撃で攻める苛烈な型とされている が、実写においては役者の身体能力などの影響で別段そうは見えない
アナキンは、ウィンドゥによるあらゆる角度からの連続攻撃を「紫炎の偏球」と評した。

ジュヨーよりもさらに攻撃的な性質に寄っており、あろうことかこのフォーム、防御姿勢をほとんど取らない
基本的に脇構え、または下段に構え、戦闘における生死のスリルからもたらされる高揚に身を置くことで最大限に力を発揮させている。
ジュヨーと同じく両手を大きく広げる構えをとり、確かにこのフォームがジュヨーの発展形であることを物語っていると言えるだろう。
また、最大の特徴として、相手の殺意や敵意などの害意を取り込んで斬撃の威力に転換するという、戦闘において害意丸出しで襲いかかってくるシス卿などのダークサイダーにとって天敵と言える効果を持つ。

欠点としては、攻撃性を高めた分フォース・体力共に消耗が激しいことと、ジュヨー以上に暗黒面に染まり過ぎること。
そのため長期戦や多人数戦には向いていないことである。
特に深刻なのは暗黒面へと沈むことの危険性。
使用中、戦いの高揚感を要求する精神状態は暗黒面の瀬戸際にあるため、暗黒面への没頭すら前提とする。
事実、この剣術の習得者は全員が暗黒面に堕ちてしまった。
唯一、クインラン・ヴォスのみ光明面に帰還したが、彼も一度は完全に暗黒面に落ちている
メイスも例外ではなく、EP3では命乞いをするシディアスに顔を歪めながら斬りかかったが、これもヴァーパッドの影響で彼が暗黒面に落ちかけていたからといわれる。

因みにこの場面ではメイスはアナキンにセーバーを持った手首ごと切り飛ばされているが、スターウォーズ最強と言われ、なおかつヴァーパッドを通じて長い間暗黒面の力を使っており、まともなセーバー戦ではシディアスすら圧倒した直後の彼でもアナキンの攻撃を全くと言って良いほど予測出来ずに簡単に手首を切り落とされてしまったことは、いかに暗黒面の攻撃性をコントロールするのが難しいのかを如実に表している。

より暗黒面に沈めば長期戦も出来るが、それをやった場合は前述の通り、制御が極端に難しくなり、暗黒面に一気に堕ちてしまう。
短期決戦に長けると言うより、ジェダイにとって短期決戦以外でこの型を扱うのは完全な禁じ手である。

ドゥークーは「暗黒面に没頭してこそ本領を発揮する型」とまで断言しており、ぶっちゃけジェダイ向きではない。

ジュヨーと同じくシス向けと思える剣技だが、意外にも現状生粋のシス側でこの剣技を用いる者はおらず、騎士団を離反したダークジェダイか、コピーしたグリーヴァス位しか使っていない。
創始者がメイス・ウィンドゥなので、シス側で盗んで極めることが時期的に不可能だからだが。
一部では「ジェダイ(創始者メイス一派)が勝手に派生亜流扱いしてるだけで、シス的にはただのジュヨーの範疇に入る剣技としか認識していない」とも言われている。
前から付き合いのあるドゥークーやシディアス、アナキンなどは見知っていただろうが、既に自分の型を極めている彼等には無用だともいえる。

主な使用者:メイス・ウィンドゥソーラ・バルク、デパ・ビラバ、クインラン・ヴォス


◇その他テクニック

◆トラカタ

英語表記は「Trákata」。トラカータと表記されることも。

元々は、ファン発祥の用語であり、公式のものではなかった。
だが、EP1のおよそ100年前を描いたカノン作品「アコライト」で、登場人物の一人であるストレンジャー(カイミール)が使用することが公式サイトで言及された。

“The Stranger uses a style of lightsaber combat called Tràkata, turning the saber on and off during combat.”
(ストレンジャーは、戦闘中にセーバーのオン・オフを切り替える、トラカタと呼ばれるライトセーバー戦闘スタイルを使用する。) ※意訳

ライトセーバーが刀身を自由自在に出し入れ可能な武器であるという特性を活用し、相手の虚を突き、意表を突くためのテクニックである。


◇秘…伝?





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最終更新:2025年04月19日 11:23

*1 フォームそのものは残っているみたいなので、型間の相性など物語を創作する際の演出を縛る設定が無くなったとみるべきだろう。

*2 現実の剣術も、飛び道具を持ち出されたらほぼ勝ち目がないので、それと似たようなものである。

*3 これは使い手の一人オビ=ワンを演じたユアン・マクレガー氏のアドリブが元になっている。

*4 現実の剣術でも、踵をしっかり地面に着けて踏ん張るのは動きが鈍るので好ましくないとされる。

*5 手足の機械化による膂力増大と装甲服の重量を加味してシエンに戻したとされており、実際ヴェイダーの剣技は体重をかけたパワーヒットを多用する威力重視のものである。

*6 ちなみにルーク自身はオビ=ワンからシャイ=チョー、ヨーダからはアタロしか習っていないとの事なので、ルークが暗黒面に引きずられてきていることの暗示のひとつでもある。

*7 元々は逆手持ちだったがマスターであるアナキンの指示により順手持ちに変更。後に「反乱者たち」で再び逆手持ちを取り入れている

*8 一方でダース・モールは媒体によってニマーンの使い手とされている。

*9 コールマン・トレバーにまつわる設定が、交渉の達人として平和に貢献したということと、ニマーンの使い手として成す術もなく一方的に蹂躙されたその惨憺たる作中の末路しか存在しないため、彼はネット界隈を中心に「大先生」と皮肉交じりに呼ばれている