FN F2000

登録日:2012/03/03(土) 03:41:41
更新日:2025/07/17 Thu 20:03:53
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性能

全長:694mm
重量:3600g(EGLM装着時 4600g)
銃身長:400mm
使用弾:5.56mmNATO弾
装弾数:30+1
作動方式:ショートストロークガスピストン ターンロックボルト
発射速度:850発/分
銃口初速:900m/秒

概要

ベルギーのFNハースタル社が設計・製造し2001年に発表したブルパップ突撃銃
形状、機能ともに次世代の画期的な銃という触れ込みであった。
IWS(Integrated Weapon System:統合火器システム)としてFCS、GL1グレネードランチャーも装備可能。同時期の米国のXM29 OICW*1に類似している。


長所

全体のデザインはFN社のP90のように人間工学に基づいた設計。樹脂製の外装やプログレッシブトリガーも引き継いでいる。
弾倉はM16らの所謂STANAGマガジンに対応。そのため上部給弾下方排莢は引き継げなかったが、前方に排出することで解決している(後述)。
P90とちがい、射手の足元に薬莢をばらまく事もないので踏みつけて転ぶという事態も起きにくい。
また各部をモジュール化することでメンテナンスが容易であるとしている。

独特な排莢方式

それまでのブルパップ式では、機関部がストック内にある構造上作動音や硝煙が射手に悪影響を及ぼしたり排莢方向の都合スイッチングができない(銃によっては切り替えすらできず左手では容易に構えられない)デメリットを抱えていた。
そこでF2000ではチューブを介して前方にロケット鉛筆の如く押し出して排莢するようにして解決した。
射撃後ボルトに引き抜かれた薬莢はショットガンなどのチューブ式マガジンの要領*2で銃身右上部のエジェクションチューブに勢いよく押し込まれる。エジェクションチューブ内では5発ほどが並び、戦闘がチューブ先頭に達したときだけゲートが開いて外に排莢される。
薬莢が逆流したりしないような仕組みも完備されており、この点で不評はあまり見られない。

そして薬室付近に開口部がなくなるため、動作不良時に確認できるようインスペクションポートを設置。パカッと開いて確認と対処が出来るようになっている。
これはレシーバーの密閉性が高まることにもつながり、作動音や硝煙が直接射手に響かないようになっている。



バリエーション

  • 標準モデル
1.6倍のスコープが装備されている。ピカティニーレール状のもので固定されているが独自規格らしく、少し寸法が異なる。
  • タクティカル
トップレールとバックアップ用アイアンサイトを装備
  • タクティカル TR
タクティカルに3面レールハンドガードを追加したモデル
  • F2000S
スロベニア軍採用モデル。タクティカルのようにレール装備だが、キャリングハンドルを兼ねたものとなっている。



採用国

スロベニア
サウジアラビア
その他ベルギーなどの特殊部隊などで使用されている。

特にサウジアラビアは調子こいて55000挺注文した模様。
東西あらゆる兵器を運用するサウジに統制という二文字はなかった…*3



なんか採用国少ないなと思ったかもしれないが、それもそう。2019年頃にはカタログ落ちしているのだ。



短所

  • 2000年代にもなって自動ホールドオープン非対応
複雑な機構故か開口部を減らしたかったからなのか、撃ちきった際のホールドオープンに対応していない。AKやG3系、FNC以外はなんだかんだ実現しているのに…
  • トリガープルが最悪
P90と変わりこそないものの、ブルパップ式(リンクを介して間接的に撃発する)とプログレッシブトリガー(1段目でセミオート、2段目でフルオート)の組み合わせでトリガーの引き心地が最悪となっている。
  • マガジンが自重で落下しない
開口部を減らしたかったからなのか、マガジンの周囲を覆っており弾倉交換時に射手が引き抜く必要がある。覆っているガスケットは着脱可能でこそあれどかなり面倒。
  • FCS使わん
FCSはグレネードランチャー向けで、レーザー測距とその地点への正確な着弾を支援する。しかしながら高価なわりにそれだけの機能であり、単なるM203装着のM4カービンと戦闘能力の差はほぼないしFCS分重い。

銃にハイテク組み込み機器を搭載するというのは時代遅れとの戦いとなる。特にスマートフォンや戦術データリンク等が発達している2020年代の現状、スタンドアロンなそれらはあまり注目されない。

レトロフューチャーを半端に実現してしまったが故、現実と合致せずにF2000は過去のものとなってしまった。
スロベニアでは未だ現役のようであるが、併用しているSCARや他国のHK416などに取って代わられる未来もありうるだろう。



余談

チューブ式前方排莢はこれが最初というわけではない。
ソ連のTKB-022PMでは1962年代よりチューブ式前方排莢のブルパップを実現している。外観もベークライトでフレームを覆ったブルパップ式とF2000どころかAUGら黎明期のブルパップ式突撃銃を先取りしたような過激な銃であった。
AKMを置き換えるには及ばず試作どまりとなったものの、これがAKMを置き換えた未来ではどうなっていたか、想像すると恐ろしい…



追記・修正はF2000を50000挺買った人、お願いします。

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最終更新:2025年07月17日 20:03

*1 2004年に中止され、その後XM8とXM25 IWASへと分岐した。詳細はXM8の項目を参照

*2 薬室をチューブマガジン、エジェクションチューブをショットガンの銃身に見立てるとよい

*3 政治的要因から国交断絶に対する冗長性を取ることを念頭に置いているとされる