ポットディーノ・ニカワス

登録日:2016/06/25 (土) 06:33:00
更新日:2025/09/16 Tue 22:35:44
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「始祖様に誓って、真実を歌いあげましょう!」


逆転裁判6』の第1話、『逆転の異邦人』に登場する人物。

クライン教の総本山である『ジーイン寺院』の住職で、奉納舞を行う際などに奏でられる弦楽器『ダマラン』の奏者という顔も待っている。年齢は36歳。
また、ダマランの教室も開いているらしく、クライン王国法廷のサイバンチョは夫婦で彼の指導を受けていた。

容姿は色白で栗色の長髪に長い髭という一昔前のヒッピーの様なものであり、
顔には異国の僧侶らしくフェイスペインティングを施している。
また、口調も丁寧で泰然自若としたものであり、どことなくナザレのイエスのような印象を与えている。


奉納舞でいつも通りに演奏を披露した後、寺院に帰依していた少年僧ボクト・ツアーニが寺院の警備員を殺害して奉られていた秘宝を強奪しようとした場面を目撃してしまい、
検察側の要請を受けて仕方なく法廷に姿を現した。
その法廷では、ダマランの奏者という一面を生かして『逆転裁判5』の証人であった伊塚育也に続く歌に合わせた実況者泣かせの証言を披露する。

名前の由来は、『ぽっと出の』と『俄か』という言葉を繋げてアレンジしたものであり、
当初はそのまま『ニワカス』という名前になる筈であったのが、最終的に現在のものに改められたらしい。*1
名前の一部とはいえカスはいかがなものかと思われたのだろうか。


以下ネタバレ注意


















クライン教に対する信仰心は厚いものの、業務連絡の書かれた『連絡書』の文字が読めなかったりとだんだんとおかしな面が露わになり、
終いには出身地がヨーロッパでクライン王国に移住してきたのは半年前であると白状する。
…どうやってそんな短期間で住職になれたのだろうか。寺院がよっぽど人手不足だったのか、或いは住職の地位を金で買ったのか?
しかし、検事席にいたのが同じく移民であった亜内文武首席検事であったことが幸いして
それ自体は大した問題にはならず、かえって彼の信仰心の厚さを傍証する事になってしまった。

その後は総本山の住職という立場と、弁護士が蛇蝎の如く嫌われているという特殊な状況を味方につけて瀕死の弁護士成歩堂龍一を追い込んでゆくが、
証言した通りの状況では犯行を目撃する事が物理的に不可能であった事が立証され、更にその時どこにいれば被害者の姿を見る事ができたのかという観点から彼自身が犯人であると指摘されてしまい…
ついにぶっ壊れた。

「アンタは言ってはいけないことを言ってしまったんだ‥‥」


以下重大なるネタバレにつき、ゲームを未プレイの方は注意

















「デエエエエエエス! トゥゥゥ!
ザァァァ! ロイヤァァァァァ!」


冒頭から見ていれば一目瞭然なのだが、実は彼こそが警備員であるミーマ・ワルヒトを殺害した張本人である。

成歩堂に告発された上に、今まで散々公言してきたクライン教への信仰心まで疑われてしまい激昂。
ヘアバンド代わりに頭に巻いていたケーブルを解いて何処からともなく召喚した二台の巨大なスピーカー*2とダマランを接続し、
今までの穏やかな言動が嘘みたいな過激な口調と派手な演奏テクニックに豹変してしまうという、これまた逆転裁判5の某犯人みたいな変貌*3を遂げてしまった。
その結果、フェイスペインティングを施していることもあって民族音楽の演奏家と言うよりはヘビメタのロッカーの様な有様となってしまうが、
背面弾きなどの超絶的なテクニックとド派手な言動で傍聴人を扇動して再度味方につける事に成功する。

犯行時刻、寺院内が停電していたという事実を盾に追及から逃れようとするが、凶器となってしまった秘宝の箱に蛍石のように蛍光する石材が使われていたことを成歩堂に思い出されてしまい撃沈。
しかも、箱を調べた結果新たに判明した事実により、被害者が警備員という立場を悪用して泥棒をしようとしていたという事が明らかとなった為、
【窃盗を咎められた被告人が警備員である被害者を撲殺した】という前提そのものが成り立たなくなりついに後がなくなってしまう。

それでも尚、凶器が宝物の箱であったことを根拠に言い逃れをしようとするが、犯行時刻の直前に行われた奉納舞を撮影した写真と現在のポットディーノ自身を比較した成歩堂にアッサリと本物の凶器がもう一本持っていたダマラン*4であったことを見抜かれてしまいまたもや窮地に立たされてしまう。
しかし、宝物を入れる箱を調査した際に錠前が壊れていたことが判明していた事が幸いし、
「鍵を持っている自分ならわざわざ錠前を破壊して箱を開ける訳がない」ということを根拠に今度こそ言い逃れをする事に成功する。

だが、その後の証言中に勢い余って鍵を全く違った名称で呼んでしまった事が災いし、
即座に推理を組み立てなおした成歩堂に鍵の使い方が違っていることをみぬかれ、”正確な鍵の使い方”を知っている彼にしかこの犯行が行えない事が立証されて遂に犯人であると特定された。


真犯人特有のブレイクモーションでは、逆手に握ったダマランをあたかも野球のバットの如く横薙ぎにふるってスピーカーを破壊し、終いには聖飢魔Ⅱばりに証言台に叩きつけてダマランまで真っ二つにしてしまう
そして、頭上へ飛んで行ったダマランの胴部分が彼自身の頭めがけて降ってきたことにより、インド舞踊の様な珍妙な動きをしながら後ろへひっくり返ってしまった。

「ドリャドリャドゥドゥルドリリャ!‥‥ドゥラ?」

「‥‥どぅららぴゃらぴゃらぴー‥‥」


犯行の動機は、寺院の秘宝を強奪するという実にシンプルなもの。
わざわざクライン王国に移住して住職にまでなった努力は凄いが、はっきり言ってそれは努力の方向音痴であり、殺人まで犯してしまったのであるから当然の如く認めれる様な代物ではない。
そもそも、金目当てだったのであればわざわざ回りくどい事などせずに『異国よりやってきた新機軸の音楽家』とでも銘打って普通に演奏していれば
あれだけの技術を持っていたのであるから食うには困らなかった筈である。

逮捕後の取り調べでは、「自分が強奪する前にクライン王国で暗躍している反政府結社『反逆の龍』に脅迫されて秘宝を引き渡す羽目に陥ってしまい、頭を抱えていたところ被害者に秘宝の箱を持ち去られそうになって中身が空であるとバレるのを恐れて衝動的に殺害してしまった」と供述しているが本当のところは定かではない。

因みに、筆者はブレイクモーション時のピート・タウンゼント*5しか分からなかったものの、
本性を現してからの彼の演奏には様々なギタリストの奏法やパフォーマンスが取り入れられているという。
探してみるのも一興かもしれない。


+ ネタバレ
第5話において、取り出したあとの秘宝は『反逆の龍』ではなく王族関係者の手に渡っていたことが判明。
取り出す命令を出したのがそもそも法務大臣インガ・カルクール・クラインであり、『反逆の龍』がそれに関わっているという部分は事実の隠蔽目的で作られた政府主導のカバーストーリー。
ポットディーノは買収されて計画に加担し、空の入れ物にまるで中身があるようにごまかしていた。
中身が空なのがバレそうになって衝動的に殺した部分は本当で、事実が露見される事態を恐れて口封じをした。

ちなみに、寺院の秘宝が盗まれた事件(第1話の事件)と、それ以前にちょくちょく発生していた”秘宝以外の寺院の所有物が盗難される事件”は別件。
後者はミーマ・ワルヒトが自分の生活費捻出のために行っていたもので、ポットディーノは関わっていない。
あくまで彼がやったのはミーマ殺しのみ。
そのため同じ場所で起きた2つの事件で加害者であり被害者でもあるという何だかよくわからない珍しい事態になっている。
近いパターンだと逆転検事2の緒屋敷司、大逆転裁判2のビリジアン・グリーンらがいるが、この2人は未遂で終わったため純然たる殺人加害者では彼が唯一。

仮にバレたとしても、ミーマと『反逆の龍』が繋がっていたと濡れ衣を着せれば乗り越えられそうな案件なので、殺人さえしなければ(命令を下した王族が口添えしたりしてくれれば)無罪になっていた可能性がある。
まぁ王族親衛隊などから後日口封じでポットディーノが消される可能性もあるため、無事のまま終われるかとなると何とも言えないが。

余談

海外版(アメリカ版)での名前は「Pees'lubn Andistan'dhin」
1974年にイギリスのロック歌手ニック・ロウが発売した楽曲「(What's So Funny 'Bout)Peace, Love, and Understanding」を人名風に捩った逆裁らしい名称。
この曲は一時期ヒッピーに傾倒していたニック自身が、ヒッピームーブメント終了後に当時を振り返った哀愁や皮肉を歌詞に込めているのが特徴で、
ポットディーノのヒッピーっぽい見た目の要素にも合っている。

ちなみに同じ海外版でもフランス語版での名称は「Sterh'uey Tu'heifen」
こちらもこちらでロックバンド、あのレッド・ツェッペリンのバカ売れしたアルバムの収録曲「天国への階段(Stairway to Heaven)」が元ネタ。
階段の上の祭壇に安置されていた秘宝を盗んだミーマを殺して、文字通り天国の階段を上らせたという皮肉が込められているのだろうか。

ちなみに豹変したあとに流れるエレキギターバリバリのBGM「ポットディーノ ~Head-Banging」は、ロックだけにロックマンX4ジェット・スティングレンステージのBGMのギターパートとそっくり。
両方とも堀山俊彦氏が作曲したもので、やっぱりロック繋がりで一種のセルフパロディも含んでいるのかもしれない。


また正体発覚後に演奏に合わせて歌うように証言する様々なモーションや重低音のような会話SEなど彼専用の要素がガン盛りされているおかげで、
3DS版ではかなりゲームの容量を彼に費やしているのがニンテンドードリーム2016年7月号のスタッフインタビューで明らかになっている。



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最終更新:2025年09月16日 22:35

*1 この経緯のためスタッフ内でも名称の混乱があり、本作プロデューサーの江城元秀氏などは発売後も『ニワカス』だと勘違いしていた模様

*2 アンプが見当たらない事から、恐らくはアンプ内蔵型のスピーカー。

*3 会話中に流れる効果音も、豹変後には「ポポポ…」というお馴染みのものから「ドドド…」といういわゆるデスボイスを表現したかのような重低音のものに変わっている。

*4 よりにもよってエレキギター型。非常に勘のいい人はここで豹変後の展開が読めたらしい…。

*5 ギター破壊。