スパム(空飛ぶモンティ・パイソン)

登録日:2016/09/08(木) 17:24:22
更新日:2024/03/21 Thu 18:08:22
所要時間:約 10 分で読めます





SPAM♪SPAM♪SPAM♪SPAM♪SPAM♪SPAM♪SPAM♪SPAM♪Lovely SPAM~♪Wonderful SPAM~♪

 「スパム(SPAM)」は、イギリスのコメディ番組空飛ぶモンティ・パイソンで放送されたスケッチ(=コント)。
 初回放送は1970年12月15日。
 日本語版では「スパムの多い料理店」「スパムの多い大衆食堂」とも訳されている。

 この項目では、元ネタであるランチョンミート「スパム(SPAM)」についても紹介・解説する。


【あらすじ】

 舞台は何故かバイキングが大量にたむろしている大衆食堂「ミジェット食堂」。
 そこにこれまた何故か空中からお客さんのバン夫妻がやって来た。
 早速、やけに厚化粧のウェイトレスに料理を注文しようとしたのだが…。

  • &ベーコン
  • 卵&ソーセージ&ベーコン
  • 卵&スパム
  • 卵&ベーコン&スパム
  • 卵&ベーコン&ソーセージ&スパム
  • スパム&ベーコン&ソーセージ&スパム
  • スパム&卵&スパムスパム&ベーコン&スパム
  • スパムスパムスパム&卵&スパム
  • スパムスパムスパムスパムスパムスパム&豆
  • スパムスパムスパムスパム
  • 伊勢海老のグラタン・トリュフの卵・スパム乗せ


 …何故かほとんどの料理に「スパム」が添えてあった。

 それを嫌がったご婦人はスパムが無い料理は無いのかと苦情を言うも、「スパム&卵&ソーセージ&スパム」なら少な目だ、とまたもやスパム入りの料理を勧められてしまう。
 それを聞いた旦那さん、それなら「卵&ベーコン&ソーセージ&スパム」ならもっと少ない、と提案するも、ご婦人はそのメニューのスパム抜きを注文しようとしたが断られてしまい、
 「私はスパムが大嫌いなのよ!!」と絶叫してしまう。
 すると突然バイキングが歌い出し……。


SPAM♪SPAM♪SPAM♪SPAM♪SPAM♪SPAM♪SPAM♪SPAM♪Lovely SPAM~♪Wonderful SPAM~♪


 ……やけに声が良いバイキングの喧しい歌を何とか鎮めたウェイトレス。
 しかしどうあがいてもこの食堂の料理からスパムを除く事は出来ないと告げ、それを聞いたご婦人はさらに絶叫してしまう。
 そんな彼女を宥めた旦那さん。自分が代わりに食べてあげると言ったが、その言葉につられてまたバイキングが歌いだし……。


SPAM♪SPAM♪SPAM♪SPAM♪SPAM♪SPAM♪SPAM♪SPAM♪Lovely SPAM~♪Wonderful SPAM~♪


 そして「スパム&豆&スパムスパムスパム」を注文するが豆の在庫は無いと言われ、
 最終的にスパムだらけになってしまうのだった。
 ちなみに日本語吹き替え版ではこのシーンに「可愛いスパム」を注文しようとしたもののウェイトレスに「可愛いスパムは無いわよ!」と言われた旦那さんが、
 「代わりのスパムは無いの?」と返答するやり取りが追加されている。


 また五月蠅くなったバイキングをウェイトレスが抑えていた時、新たな来客が。
 今回の『空飛ぶモンティ・パイソン』の序盤のスケッチに登場したハンガリー人がこの店を訪れたのだ。
 そして彼は英語の辞書を片手にウェイトレスにこう告げた。


可愛いお尻ちゃん、僕の腸はスパームでいっぱい


 その直後、このハンガリー人はあっという間に警察に連行されたのだった。
 (※どういう理由なのかは後述で解説)


 すると、突然場面は何故か歴史解説番組に。
 髭を生やした歴史学者は北欧からイギリスの大衆食堂へ向かうバイキングの侵攻の歴史を語り出すも、その言葉にスパムが混ざった途端……。


SPAM♪SPAM♪SPAM♪SPAM♪SPAM♪SPAM♪SPAM♪SPAM♪Lovely SPAM~♪Wonderful SPAM~♪


 そしてスタジオどころかエンディングのクレジットまでスパムまみれにしながら、今回の『空飛ぶモンティ・パイソン』は終わったのだった。


【元ネタについて】

 このスケッチで大量に現れる「スパム(SPAM)」は、アメリカに本社を置く「ホーメル食品(Hormel Foods Corporation)」が開発した缶入りのランチョンミートの事。
 1930年代から続く非常に歴史の長いブランドであり、現在は世界中で(色々な意味で)広く親しまれている食品。
 イスラム教のハラールに対応したスパム、減塩スパム、脂肪少な目のスパム、照り焼き風やベーコン、チーズ入りのスパムなど種類も豊富である。
 また常温でも3年間は保存可能と言う「非常食」としての側面もあり、東日本大震災でも大量のスパムが救援物資として提供されている。

 日本の大半の地域ではあまり広まっていないものの、各地のスーパーでスパム缶が多く売られており、
 特に第二次世界大戦後しばらくアメリカに占領されていた沖縄県では、スパムを始めとするランチョンミートが郷土料理となるほど浸透している。
 またその関係もあり、沖縄県は他の地域よりスパムを安く買う事が出来る。
 他にも日系人が多いハワイは世界的にもスパムの消費量が多い所で、
 「スパムむすび」「ロコモコ丼」などスパムとご飯を合わせた名物料理が生まれている。


 このように「食品」としてしっかり愛されているスパムだが、一方でかつての欧米諸国の人々、特に軍隊ではうんざりさせられる存在であった。
 確かに非常時や戦闘中の食料としてスパムは非常にぴったりなのだが、問題はその量。
 今日もスパム、明日もスパム、明後日もスパム、その次もまたその次もスパム……
 何日経ってもスパムだらけの食事が延々と続いてしまったのである。

 そして、同じような事態が第二次世界大戦中やそれ以降のイギリスでも勃発した。
 経済不況や食糧不足が襲い、あのジャガイモすら配給制を余儀なくされる中、スパムなどの肉類もイギリス国民へ毎日の様に配給されたのだが
 実はスパムに限っては山ほど送られてきておりストックもいっぱいあったので配給制の対象外だったりした。
 こちらでも今日もスパム、明日もスパム、明後日もスパム、その次もまたその次もスパム、スパム、スパム、スパム、スパム、スパム、スパム、スパム、スパム……と言う光景が続いたのだ。
 ちなみにバイキングが歌ってるコーラスの内容は当時のホーメルのTVCM内容をちょっとだけ変更した物だったりする。

 この苦しい日々を基に、モンティ・パイソンのメンバーが創り出したのが、この項目で紹介した「スパム」と言う訳である。
 ただしメンバーの1人・テリー・ギリアムのみはイギリスではなくスパム発祥の地アメリカの出身。


【もう1つの意味】

 ……と、ここまでは文面通り食品「スパム(SPAM)」と言う側面から解説したが、実はこのスケッチにはもう1つとんでもない側面がある。
 実は英単語には「スパム(SPAM)」と言う発音と非常に良く似た「スパーム(Sperm)」と言うものがあるのだ。
 どういう意味なのか、ドイツ語式に単語末尾に"a"を足して「スペルマ」と読めば分かる人もいるかもしれない。




 ……つまり、男性の立派なイチモツから、達した時にドピュっ!と出るあの白い液体の事なのだ。


 それを踏まえてあの食堂のメニューを見てみると……。

  • 卵&スパム⇒女性から出る卵&男性から出る液体?
  • ソーセージ&スパム⇒立派な息子&そこから出る液体?
  • ソーセージのスパム抜き⇒男性不妊?


 ……と言う感じで下ネタまみれになってしまうのである。

 さらに、終盤に現れたハンガリー人が登場した序盤のスケッチは「危険なポケット英会話ブック」と言うタイトルで、
 卑猥な翻訳ばかり書いてある英語の辞書を片手に悪戦苦闘する内容。
 そのせいか、完全に「スパム」の発音が「スパーム(Sparm)」になってしまっている。
 つまり、「僕の腸の中はスパームでいっぱい」と言うのはそういう事である。


 なお、こんな内容のスケッチを放送した「BBC SPAM TV」はイギリスの公共放送局である。念のため。 


【その後の影響】

◇スパムメール

 『空飛ぶモンティ・パイソン』でも屈指の人気を誇るこのスケッチ、当然ネット界隈というかハッカー界隈にも大きな影響を与えた。
 現在、無差別にあちこちに届く迷惑メールや勝手に送信される広告など、スパムの如く人々をうんざりさせるような内容のメールの事を「スパムメール」、もしくは「スパム(spam)」と呼ぶが、
 この語源は食品の方ではなく『モンティ・パイソン』の方である。

◇ホーメル食品の対応

 自社の「スパム」がとんでもないスケッチに使われたホーメル食品、当然当初は迷惑がっていたのだが、
 その内容の人気や知名度の結果、逆に自身の商品の宣伝として利用する事となった。
 モンティ・パイソンのミュージカル『スパマロット』のスポンサーとなる、スパム博物館にモンティ・パイソンのコーナーを設ける、などがその例である。

 ただし、上記のスパムメールなどで「スパム」の名前が別の方向で有名になってしまった事もあり、
 食品のスパムは「SPAM」、迷惑メールは「spam」と書くようにして欲しい、と提案している。

 これは「商標の普通名詞化」という現象を避けるため。*1
 商標名が普及した結果類似の商品全般の俗称として一般名詞化してしまうと、「その言葉が『特定の会社』の『特定の商品のみを指す』言葉」であると主張できなくなってしまう。
 こうなってしまうと他社製の類似製品も一緒くたに同じ名前で呼ばれることとなり、
 他社製品と区別するというブランドの最大の利点が殺されたことで法的にもその商標に対する一切の権利が主張できなくなり、
 最終的には有象無象の類似商品と戦う上で最大の武器になる「知名度」が得られなくなってそれらの無数の商品のひとつとして埋もれていってしまうこととなる。
 事実この項目を読んでいる人の中にもSPAMと同様の他社製ランチョンミートを一纏めにスパムと呼んでいる人もいるのではないだろうか?

 その事もあり、「スパム(Spam)」と言う単語はホーメル食品の商標登録名となっているので念のためご注意を。



◇再演

 1971年に発売されたレコードアルバム「Another Monty Python Record」、2014年に行われた最終ライブ「モンティ・パイソン 復活ライブ!」など、その後も何度かこのスケッチの再演が行われており、
 その度にあちこちスパムまみれと化している。
 なお後者では件のハンガリー人や歴史学者の場面はカットされ、次のスケッチへ続く内容へと改められている。

 またAMIGAで出されたモンティパイソンのゲームではプレイヤーキャラのガンビーがライフ回復と一定数回収しなければならないアイテムとしてSPAM缶があったりする。

◇パロディ

 昔から愛されているこのスケッチだが、近年でもアニメ『ガールズ&スパムパンツァー』のOVA第2話(BD/DVD第2巻収録の特典映像)で盛大なパロディが行われている。
 時間こそ短いが、スパムの歌は勿論突然混ざるバイキングの船の映像、それを止めるために怒鳴るウェイトレス役など細かいところまでばっちり再現している。

 ただし何故か台詞や表記は「○パム」と伏せ字になっている。
 「スパム」と言う言葉が商標登録されているからなのか、それとも彼女たちが言っていたのは「SPAM」とよく似た発音の別の単語だったのか……?

【余談】

  • 『空飛ぶモンティ・スパムパイソン』では今回のスケッチ以外にも「Every Sperm Is Sacred(全てのスパームは神聖なり)」と言う曲を筆頭に、様々なスケッチや劇場版作品で「スパーム」ネタが使用されている。

  • また本来スパムネタとは関係ない映画『モンティ・パイソン・アンド・ホーリーグレイル』のミュージカル版の題は『Spamalot(日本語版:モンティ・パイソンのスパマロット)』である。*2

  • アメリカのバラエティ番組『サタデー・ナイト・スパムライブ(Saturday Night SPAMLive)』でも、何を頼んでもチーズバーガー、チップス、ペプシしか出てこない「オリンピアカフェ」と言う似たようなスケッチが恒例のネタとなっている。残念ながらスパムも注文出来ない


この項目がスパムだったスパム籠りの皆さま、スパム・スパムをお願いしまスパム。


このSPAMがSPAMったなら……\SPAMッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • モンティ・パイソン
  • スパムの多い料理店
  • みんな大好きスパム
  • スパム
  • スパムwiki(スパム)
  • バイキング
  • スペルマ
  • SPAM
  • Sperm
  • カオス
  • イギリス
  • 伝説
  • 英国面
  • スパムメール
  • 下ネタ
  • ガールズ&スパム
  • ガールズ&パンツァー※イギリスの公共放送で流れました
  • スパムまみれ
  • コント
  • ランチョンミート
  • BBC

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年03月21日 18:08

*1 例えば「テトラポッド」も商標名だが、消波ブロック全体を指すことがあるのと同様

*2 映画の作中、キャメロット城内で騎士達が歌い踊る場面で歌われた「Knights of the Round Table (Camelot Song)(訳:円卓の騎士(キャメロットの歌))」に、「We eat ham, and jam, and Spam a lot.(ハムもジャムもスパムも沢山食べるよ)」という歌詞があり、これが「Spamalot」の語源になったという。