登録日:2018/05/13 (日) 17:48:34
更新日:2024/06/22 Sat 18:35:14
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警察がパトロールなどに使用する
自動車のこと。略してパトカー。英語だとPolice car。
基本的に国産車が使われるが、時々外国車が使われることも。
ナンバーは覆面以外大抵は8ナンバー。昔は覆面も8ナンバーだった。
◇種類
日本においては制服パトカーと覆面パトカーの2種類に大別され、更に細かく分類される。
制服パトカー
警察官が制服を着用して乗るパトカー。交通違反の取り締まりや地域のパトロール、110番通報時に現場に素早く臨場する時などに用いられる。
白黒のパンダカラーに大型の赤色回転灯を装備しており、パトカーと言えばまずイメージするもの。
所属する部隊・種類・用途により排気量・出力が分けられており、途中で所属が変わるということは滅多にない。
そりゃ、街中のパトロール用に3.5リッターエンジンなんて要らないよね。
一番出力・排気量が大きいのは高速隊・交通機動隊向けで、次いで警ら、ミニパトの順となる。
高速・交通機動隊向けは大排気量・ハイパワーエンジンを装備し、逃げ回る不審車を追いかけるのに適している。
警ら・ミニパトは街中を巡回走行し、犯罪の抑止に役立てられる。
車種はパトカー仕様がメーカーで用意済みのクラウンが選ばれることが多いが、地域によってはスポーツカーが選ばれることもある。
覆面パトカー
普段は一般車のフリをし、緊急走行時や検挙活動の時に赤色回転灯を点灯させ、サイレンを鳴らすタイプ。
交通取締用・警護用・捜査用の3種類があり、必ずしも制服を着用した警察官が乗っているとは限らない。
回転灯は反転式と着脱式に分かれ、着脱式は屋根上に電気配線が、反転式は室内に水抜き用のホースがある。反転式は交通取締用に多く、着脱式は捜査・警護用に多い。
交通取締用は公道を走りながら、あるいは路肩に駐停車した状態で違反車両を探し、見つけ次第回転灯とサイレンを鳴らして違反車を取り締まる。乗っている警察官は青色か黒色の交通機動隊の制服を着用している。
警護用は要人の移動時に要人が乗る車両と一緒に走りながら警護を行う物で、高級セダンやスポーツカーが選ばれやすい。乗っている警察官はスーツを着用している。
捜査用は私服着用の刑事が乗って犯罪捜査に用いるもので、セダンタイプの他ミニバンが選ばれることも多い。秘匿性を上げるために刑事の自家用車やレンタカーを覆面として使う例もある。
販売台数が非常に少ないスズキ・キザシが覆面パトカーに選ばれたため、一時は「キザシを見たら覆面だと思え」という噂が流れた。
ミニパト
軽自動車やコンパクトカーを用いたパトカーで大体は制服パトカーと同じような格好をしている。狭い路地や田んぼのあぜ道、農道にも入っていけるが、エンジンは基本的にベースモデルのままなので逃走車の追跡にはあまり向かない。
都道府県の予算で購入されるので全国的にこの車種で統一!というのはあまりない。
最近はコンパクトカーが選ばれる例が多いが、軽自動車ベースのミニパトもまだまだ多い。
◇パトカーの装備品
回転灯
緊急走行時にサイレンを鳴らすのと一緒に点灯させる。サイレンを鳴らさず、回転灯だけ点灯させている時もある。回転灯だけ付けている時はパトロール中の意味らしい。
ちなみに現在のデザインを考案したのは映画評論家の水野晴郎。
車両によっては昇降機が装備されており、回転灯が上下するものもある。
サイレン
緊急走行時に鳴動させる。昔の刑事ドラマでパトカーの出動シーンで「ファンファンファン…」と鳴るシーンがあるが、これはかつて警視庁の所轄地域課所属車が鳴らしていたもの。
無線機
通報を受けた警察署の指令センターからパトロール中の車両に情報を伝達する。伝達はオペレーターの音声による。
カーナビ
事件・事故の発生場所を迅速に確認するために装備。ミニパトの場合はベース車についていない限り未装備のことが多い。
カーロケーター
GPSを利用してパトカーの現在位置を署が把握するための装備。車両搭載のカーナビにも他のパトカーの位置が表示できるようではある。
かつてはレーダー探知機でも電波を受信することが出来た。ちなみに同様の機器は
タクシーや路線バスにも付いている。
電光掲示板
後部席の後ろに装着され、「パトカーに続け」・「検問実施中」などの表示を出す事ができる。
速度測定器
スピード違反が疑われる車両の速度を測定する。
◇車種
パトカーに選ばれる車種は様々だが、トヨタのクラウンのようにメーカーが既にパトカー仕様として用意している例もある。
制服パトカーの代表的な車種は
- クラウン・マークX(トヨタ)
- セドリックセダン・クルー・スカイライン(日産)
- ギャランΣ・ギャラン・シグマ・ディアマンテ(三菱)
- レガシィ(SUBARU)
- ソリオ(スズキ)
など。以上のうち、クラウン、マークX、スカイライン、レガシィ、ソリオ以外の車種はほぼ絶滅している。
珍しい例だとGT-R、レクサスLC500、NSX、ポルシェ・911などが導入されるところも。これらは地元有志や自動車メーカーからの寄贈だったりする。
その一方、
日産・フェアレディZはデビューして間もないRZ34以外、すべての歴代車種が国費での導入実績がある。
交通取締用の覆面パトカーには長らくエンジン排気量が3リッター以上という条件が設定されており、クラウン、マークX、スカイラインなど制服パトカー同様車種がある程度絞られる。
一方捜査用覆面は一般車に溶け込む必要があるため、5ナンバー以上の車であればほぼ何でも覆面パトカーとして選ばれる可能性がある。
なお廃車後は機密保持の問題などから中古車市場に出回ることはまず無い。廃車時には無線機やカーロケーターなどの保安上問題になる装備品を取り外すか破壊し、民間の廃車工場へ送られて解体される。
極稀に高速隊から地域課に転属させたり、交通安全協会などに交通安全指導車として寄贈されたりするが、あくまで例外的なもので、その多くが解体される運命をたどる。
ドラマや映画などの撮影で使われるパトカーは劇用車と言って専門の会社が本物そっくりに仕立てた車。
制服パトカーを廃車する時に真っ黒に全塗装してから解体するというのはガセ。廃車時には車体の表記類をスプレーで塗りつぶすだけ。車体表記の塗りつぶしに尾ひれがついた結果、
都市伝説の仲間入り。
覆面パトカーの一部は
自衛隊の警務科や厚生労働省麻薬取締部など警察以外の警察組織に転用される例も少ないながら存在する。
パトカーの保存も少ないながら行われている。
日産自動車が保存しているフェアレディZの神奈川県警高速隊や、栃木県運転免許センターに保存されているマスタング、
福島県の双葉警察署に所属していた170系クラウンパトロール双葉31号車がその一例。
パトカーにはグレードエンブレムが多くの場合取り付けられていない。これは制服・覆面共通事項。
◇パトカー乗務員
パトカーを運転する警察官は厳しい訓練を受けている。
何しろ要求される技能は高出力・大排気量の大型エンジンを搭載したパトカーを交通量が多く渋滞の激しい道路であろうと狭い住宅街の路地であろうと一般車との人身・物損・接触事故を起こさず、周囲の交通に危険を及ぼすさずに事件・事故現場へ急行したり、挙動不審の車両・人物を迅速に発見・追跡・確保出来なければならない。
要求される腕前レベルは二種免許以上とも。
現行の警察車両はAT化が進んでいるものの、MT車が後方支援車両を中心にまだまだ残っているためAT限定免許の警察官はパトカーの乗務員にはなれないとされる。
主な訓練内容
- 高速でスラローム・クランク通過
- 急停止・急発進・急反転・急旋回
- 片側のタイヤを細い板に乗せ、脱輪しないように通過
運転技能の訓練だけでなく、アルコール検知器・地図・無線機の使い方から要人警護・交通規制・逮捕術・不審な人、車両の見分け方、自殺志願者の保護などの訓練を受ける。
応援の警察官を乗せたり、任意同行の人や逮捕・検挙された人を乗せたりする以外で後部座席は通常使用しない。
あと後部座席のドアは内側から開けることが出来ない。チャイルドロックをかけ、操作レバーにカバーをしてしまう場合と内側のドアレバーを取り外してしまう場合の2種類がある。
◇覆面パトカーの見分け方
交通違反の取締で街中を動き回る覆面パトカー。大きな特徴は以下の通り。
- フロントグリル内に怪しく光る物体がある
- 制服着用の警察官が二人乗っている
- 車両後部のガラスがスモークガラスになっている
- 車体後部にアンテナが載っている
- ナンバーが地元ナンバー
1.は違反車を発見した時に追尾走行する時に点灯する警告灯。自家用車にはまず付いていない。
2.は言わずもがな。捜査・警護用覆面パトカーが違反車を見かけた時は交通課の警察官に応援要請をするだけ。警察官が二人乗っているのは違反を確実に目撃するため。
3.は後部から車内を見えづらくするのと電光掲示板を設置するため。前を法定速度で走っている車がいて追い越したら運転席と助手席には警察官が!というのはよくある光景。
4.は警察無線用のアンテナ。最近はガラスに貼るフィルムアンテナが増えたため、これについてはあまり信用ならない。
5.は警察は原則として自分の管轄地域外の取締はしない。その地域のナンバープレートで、上記の特徴のいずれかが当てはまったら覆面と考えよう。
なお覆面パトカーを見かけたからと言って急ブレーキを踏むのは追突事故の危険性があるため絶対やめよう。日頃から法定速度・制限速度を守る癖をつけ、矢印信号、黄色信号に注意して運転すれば自然と覆面パトカーも怖くなくなる。
◇海外のパトカー事情
海外、特にアメリカ等武器の所持が民間人にもある程度認められている国ではパトカーの装備や使用法等、現状の日本ではまず出来ないものも多い。
追跡シーンを撮影した映像でも、前後左右どこからでも容赦無く逃走車両に突っ込みにいったりするのは日常茶飯事。
また「追跡してる車両の左右どちらかの後方付近にパトカーの鼻先を並べ、そのまま押し込むようにぶつけてスピンさせる」という行動があったりするが、これはP.I.Tマニューバと呼ばれる強制停止の為の技術。
そのP.I.Tマニューバや体当たりで追跡対象を何としても止める事をしやすくする為、加えて銃やその他の装備を沢山積めるペイロードという点から、パトカーのベースにする車両も頑丈で重量のあるSUVやピックアップトラックが中心になりつつあり、逆にセダン型は消えつつある。
覆面パトカーの扱いに至っても中には一目で警察車両であると分かってしまうものもあるが、これはギャングの縄張り等の警察官でも命の保証が出来ない危険地帯の夜間パトロールでは、敢えてそうしておかないと最悪の場合路上強盗等と間違われて撃たれる事もある為の措置である。
◇おまけ
パトカーは最も身近な警察車両という、言うなれば「善のマシンの代表格」である。そのため、
中にはこのようなイメージを逆手に取った、
実写映画版『トランスフォーマー』のバリケードのような「悪者が善の側に偽装している」というパターンも見られる。
覆面パトカーを使って「一般の車をあおる→煽られた車がスピードを上げる→はいスピード違反ね」というマッチポンプ的手段で点数を稼ごうとする悪徳警官も存在することを考えると、ある意味リアルかもしれない。
- 覆面パトカーが一般の車をあおる→煽られた車がスピードを上げる→はいスピード違反ね というひどいマッチポンプをやることがある。後ろ向きのドライブレコーダーは忘れずに -- 名無しさん (2018-05-13 22:34:56)
- ↑1928年頃のアーカムにはそう言う保安官がいたようだ。 -- 名無しさん (2020-05-17 10:16:32)
最終更新:2024年06月22日 18:35