人竜戦役

登録日:2018/06/08 Fri 00:23:11
更新日:2025/05/31 Sat 12:17:14
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全てを知りたければ私の元まで来い。

おまえに私と戦えるほどの力があるなら真実を教えてやろう……。



概要

『人竜戦役』とは『ファイアーエムブレム 封印の剣』『ファイアーエムブレム 烈火の剣』で語られる戦争の事。

この二作品の舞台となるエレブ大陸には人族と竜族が共存していた。
竜族は火竜族・氷竜族、そして竜の頂点たる神竜族(火竜のヤアンが言うには)の三つに分かれており、
人間を遥かに超える力と知識を持ちながら人の領土を侵すことがないため平和に暮らしていた。

しかし本編の約1000年前、突然人間が竜族の領土に侵攻を始める。
何故人間が侵略を始めたかは定かではないが、パントは竜という強大な存在が「そこにいる」という恐怖感に耐えられなかったからではないかと推測している。
また、漫画『覇者の剣』では繁栄を極め、爆発的に増えすぎたことで新天地を求めた当時の人間の人口問題があったことがエルフィンの口から語られている。
簡単に言えば人口論の話しであり、無作為に人が増えればそれを原因として食べるものもその作物を育てる土地も不足する。
その解決策として竜の住処を奪えば戦争で人口は減り、奪った土地も手に入りで人間側としては一石二鳥のグッドアイディアだったわけである。
この突然の人間の侵略に竜は抵抗するという形で、どちらかが大陸の覇権を握るまで終わらない『人竜戦役』は始まりを告げた。

そして追い詰められた竜は強大な魔力を暴走させて『終末の冬』と呼ばれる異常気象を引き起こす。その暴走により世界は昼が夜になり、夏に雪が降り始めた。
またこれ以降竜は人の姿を取る様になったと伝えられている。

竜に対抗するため人も魔力の結晶たる『神将器』を開発、その持ち手たる八神将を選び出し一気に巻き返しを図る。

時が流れ八神将は竜族の長である魔竜がいる竜殿に乗り込み、これを討伐。

こうして人竜戦役は人間側の勝利に終わり、人間が大陸の覇権を握ったと言われている。
本編時点で竜は伝説の存在であり、会った事のある人間はほぼいない。





以下ネタバレ













というのは人間側に伝わっているもので、おおよその流れは事実だが細部は色々と異なっている。

開戦の理由は人間側に伝わっている通りだが、最初のうちは竜の大きな体格とちっぽけな人間の群れでは話しにならず、攻めてくる人間に対して守勢の竜族が蹴散らして追い払うこともそう難しいことではなかった。
しかしどこまでもあきらめない人間の心は、戦いの長期化によって人が竜に勝る決定的な武器を明らかにし、人間側の有利に進んでいった。
というのも竜は圧倒的な力と寿命を持っているがそれ故か個体数が少なく、長い年月が経つうちに逆に人間は減るどころか増え続けたからである。
いかに個の能力が優れていても数の暴力の前にどんどん押されていった竜は打開策を講じる事になる。

それは竜の頂点である神竜の力を増幅して『魔竜』とすること、そして個体差を補うために魔竜に戦闘しか出来ない『戦闘竜』を作らせる事であった。

「自然の理に反する」と神竜族はこの策に難色を示すが、竜種の存続にかかわる事なので他の竜は聞く耳を持たない。
そんな中で他の竜族が何とか神竜族の理解を得ようと考えた頃、神竜たちは集団で姿を消した。

しかし他の竜と分かれていいのか迷ったせいで避難が遅れていた少女がいた。その娘の名前は神竜イドゥン
竜族はこれ幸いと幼さの残るイドゥンを捕らえて心を奪い*1魔竜イドゥンに改造、長の命令のみ受け付け、戦闘竜を産みだす兵器にされた。
神竜族はこれに気付いたが、助けに行って同じ目に会うリスクを考え見捨てる事にした。

こうして数の差を補った竜族は戦況を盛り返すことに成功するが、魔竜の存在に気付いた人間は『神将器』を作り出す。

そして八神将は神将器を持って竜の本拠地である『竜殿』に攻め込み決戦へ。

しかし、一箇所で強大な神将器の魔力と竜の力のぶつかり合った事で自然の理を歪め、神竜族の予感が的中して、未曾有の天変変異である『終末の冬』を興してしまう。
八神将が神将器を厳重に封印したのは『秩序の崩壊』の再来を防ぐ為だったからである。
ただし、時代を重ねるごとに神将器の力が弱まり、ロイ達の時代では振るっても秩序の崩壊には至らないらしい。

自然の理が壊れ新たな秩序が生まれたが、それは人間に傾き竜を拒絶する秩序であった。
竜は自分の姿を保つ事すら難しくなり、新たな秩序の世界で形が取りやすい『人間』の姿になるべく、竜石に本来の姿を封印した。
これによって人間と竜の戦力差は決定づけられたうえに、人間は無力な人間形態の時の竜を執拗に狙い始める

この頃、氷竜族と一部の火竜は『竜の門』を通って別大陸に避難する。

そして八神将は火竜族の長を倒して対魔竜兵器『封印の剣』を持ってイドゥンの元に辿り着く。
しかし、そこにいたのは強大な魔竜ではなく、ただ儚げな1人の少女であった。
そんな「魔竜」の姿に八神将の中でも倒すべきか否か意見が分かれ、倒すべきだとする八神将の敵意に反応してイドゥンは魔竜となり襲い掛かる。
八神将のリーダーであるハルトムートはそんなイドゥンに「あわれ」の感情を抱き、その感情に呼応した封印の剣は彼女を封印するという道を選ぶ。

そしてハルトムートはベルンの森深くに神殿を造りそこにイドゥンを『封印の剣』と『ファイアーエムブレム』で封印した。
そして彼女を監視するために『ベルン王国』を建国したのだった。





余談

基本的に人間と全ての竜が全面戦争していたように語られるが、FE大全によれば実際に人と敵対していたのは火竜と戦闘竜だけらしい。
氷竜に関しては「烈火の剣」本編では「人との戦いに敗れ、多くの仲間を失いながら異世界に逃れた」とニニアンやニルスが語る一方、
「大全」では「争いを嫌って異世界に逃れた*2」とされており、やや経緯は不透明な部分がある。
ただ、そもそも大全の設定は戦闘竜を作るという他の『竜』の意向とで神竜との亀裂が生まれた原作の話しを無視しており、
人竜戦役は完全に火竜を戦犯とした流れを前提に再設定がなされているので、それを受け入れられるかの問題はある。
どうも紋章の謎でアカネイアを建国した初代国王が神殿から神器なりを盗み出した盗賊だったのを抹消とか、謎の過去作改変ブームの時期の本だから仕方ない。
この本の2年後に覚醒が発売されて過去作の扱いにファンがキレ、ヒーローズの初期まで公式が過去作エアプ呼ばわりされたのもファンなら既知の事実ではある。
そんな調子なのでそもそも発生条件が難しい烈火の異伝には触れず、ネルガルもアトスと決別した悪い魔法使いとしか書かれていない。
また作中でどう見てもエリックに騙されて連れてこられたクラリーネが、領内の不審者として捕らえられたなど原作のシーンを見ればあり得ない解説文もある。


基本的に人間は竜族に敵意を持っているが、極少数は竜と共に生きる事を選択した人間もおり、そういう人達はナバタの里で神竜と生きる道を選んだ。
別大陸に行った氷竜族はそこでも人間と遭遇したらしく、接しないように生活していたようだが、烈火本編後のニルスが共存の道を探すようになる。

また竜族は人間とは価値観及び倫理観が根本から異なっているようで、自分たちを絶滅寸前まで追い詰めた人間への憎しみなどはなく、
人間との生存競争に敗北しただけ*3と淡々と受け止めている。


またネルガルは『人竜戦役』真っ只中に氷竜のエイナールと結ばれるという状況を考えればとんでもないことをしている。
二人の間にニニアンとニルスが生まれていたが、エイナールは人間(或いはイドゥンの様に利用しようとする竜族)に捕まってしまいネルガルは妻を探しに出かけ、
おそらく力不足でエイナールを死なせてしまい、力を求めるようになってしまった。(だが力を求めてエーギル研究などを始めるのはアトスに出会った以降なので狂ったきっかけそのものではない)
両親が帰ってこなかったので姉弟は別大陸へ旅立っている。

なお氷竜族が行った別大陸とは詳細不明。一部のファンからはアカネイア大陸ではないか?と噂されていたが、根拠はない。
しかし後にFEHにて竜祭り版のニルスが実装された際に、神竜ナーガの事を知っているかのような言動をしたため、この説に信憑性が帯びた。
そもそもアカネイア大陸で竜族が理性を失うなど衰退が訪れた原因については作中で明確にされておらず、エレブ大陸で起こった人竜戦役が他の地へ影響を及ぼしたのではないかとの推測もある。
(メタ的に言えば、ゼフィールのような人ではなく竜を擁立する人間の台頭など、実は加賀さんが構想していたプロットを引用してるんじゃないかとの意見もある)

『覇者の剣』では同時期にハルトムートも始祖竜のミリィザとの間に息子を作っているが、やむを得ずに妻子を封印している。

敵である竜族のヤアンは人竜戦役の終末の冬の真相についてペラペラと話す。
感慨も感傷もなくヤアン自身もまたイドゥンのことを道具として扱い、「あわれ」などを不可解な人の感情としている。




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最終更新:2025年05月31日 12:17

*1 これはイドゥンが長の命に従わなかったためであり、魔竜化に必須の条件だった訳ではない。

*2 「烈火の剣」の支援会話では、これに似た「おとぎ話」をフロリーナが語る場面がある。

*3 ただこれについてヤアンは人間に全滅させられた竜族の意地として答えた部分も否めず、烈火の剣に登場する火竜は人間への憎悪に満ちておりニニアンやニルスも望郷の想いに満ちていた。