デッドマンズQ

登録日:2018/06/23 Sat 16:17:04
更新日:2024/04/13 Sat 01:31:11
所要時間:約 7 分で読めます








私の名前は『吉良吉影』

いつ…なぜ私が死んだのかはどうしても思い出せない

ひとつだけ言えることは 自分は決して天国へはいけないだろうという実感があるだけだ


これからどうするのか? それもわからない……

永遠に時が続くというのなら

『仕事』を『生きがい』にしておけば 幸福になれるかもしれない



『デッドマンズQ(クエスチョンズ)』は、『オールマン』1999年12・13・14号に掲載された荒木飛呂彦原作の全3話の短編漫画。


◆概要

ジョジョの奇妙な冒険 Part4 ダイヤモンドは砕けない』(以下「第4部」)のスピンオフ作品であり、現在では単行本『死刑執行中脱獄進行中 荒木飛呂彦短編集』や第4部のコンビニコミック版最終巻に収録されている(なお、第4部文庫版には未収録)。

主人公は第4部のラスボス吉良吉影で、本編で命を落として幽霊になった彼が奇妙な体験に巻き込まれていく姿を描いている。

「殺人犯暗殺編(第1話)」、「屋敷幽霊編(第2・3話)」の2つのエピソードがあるが、本項目ではメインの物語である後者に主にスポットを当てて話を進めていく。


◆あらすじ

死後、幽霊となった吉良吉影は『あるもの』の依頼を受け、殺し屋として活動していた。幽霊となったその身には数々の「制約」が付きまとい、苦難の日々が続く。しかしそんな中でも、仕事を生きがいにして前向きに生きようと努力していたのだった……。


◆登場人物

ご存知第4部のラスボスにして、本作の主人公。
自身の名前や生前の価値観などは覚えているが、それ以外の生前の記憶は全く無く、スタンドキラークイーンを使役するような描写も全くない。
外見もかなり変わっており、奇妙な柄のスーツを身に纏い、顔つきも『第5部 黄金の風』におけるグイード・ミスタのようになっている*1
殺し屋としての仕事を全うしながらも、幽霊故に安息を得られない現実にいら立っているが、それと同時にこんな状況でも「何とかして平穏を手に入れたい」という生前の彼にも通じた考えを持っている。
目的は違えど、殺人を躊躇うことなく行う点も生前と同じである。

  • 女坊主
吉良に殺しの仕事を依頼している尼僧。本名は不明。
屋敷幽霊の情報などを吉良に話し、調査を依頼する。
出自は不明だが、どうやら似た建造物の幽霊を過去にも何度か見ている模様。
なお、吉良との関係はあくまでビジネスの相手で、吉良は彼女を嫌っている節があり、彼女も彼女で成仏しようとしない彼の姿勢に疑問を抱いていた。

  • 殺人犯
「殺人犯暗殺編」のターゲットで、15年前に樫の木坂にて児童を殺害しており、時効成立を目前に控えていた。
依頼は「最も喜んでいる時に恥をかかせて迎えに行く(殺す)」というかなりえげつないもの。
時効の件の記事がある新聞の切れ端(恐らく吉良が持ってきたもの)を見て調子に乗った結果、部屋の入室条件である「魂の許可」をしてしまい、入ってきた吉良に背中をナイフで刺されて殺された。

「殺人犯暗殺編」で、ターゲットの殺人犯と同棲している女性。
何故そんな事をしているのかについて吉良は「知っていて匿っていた」と判断している。
殺人犯に釘を刺されていたのか、部屋に入ろうと工作をする吉良になかなか魂の許可を出さなかった。

女の飼っている犬。
幽霊である吉良の事が見えるらしく、彼に飛びかかろうとした事で吉良は散々な目に遭う事に…。

  • 新幹線内にいた家族
「屋敷幽霊編」で目的地に向かう為の新幹線内にいた母子。
吉良が座席でゆったりしていた所で子供がうるさくしていた事から、母子共々吉良に攻撃される。


◆本作品の幽霊

  • 幽霊の制約
吉良は成仏していない幽霊として登場しているが、彼らの行動には以下のような制約がある。
  • 魂ある者との接触は危険とされており、実際に体の部分を通過されると通過された部分がちぎれたりするなどしてしまう(なお、取れたパーツの接着自体は容易に出来る模様)。
  • 魂の「結界」によっては入れる場所、入れない場所があり、そういった場所に入る為には中にいる人から入る許可を得るなどして「魂の許可」を得なければならない。
これらによってどうも出来ずに路頭に迷う幽霊も多く存在し、吉良本人もかなり苦労している。
この制約は荒木氏の「もし死後の世界があるなら、それは何でもありの世界ではなく、この世と同じ『ルール』があるはずだ。幽霊も生きてる時と同じか、それ以上に苦労しなくてはおかしい」という発想から出来たもの。
『ジョジョ』本編に登場する幽霊達にもそれらは適用されているのだろうか?


  • 屋敷幽霊
「屋敷幽霊編」の舞台となる第4部の舞台・M県S市杜王区にある建物の幽霊「幽霊屋敷」ではない。
原型の建物は50年以上前に旧陸軍将校の屋敷だったが、空襲を受けて消失。
しかし、屋敷は幽霊となって残っている状態となっており、過去にその建造物の付近で56人もの自殺者・変死者が出ている。

なお、このアイディアは『ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン』でも、エンポリオ・アルニーニョのスタンド「バーニング・ダウン・ザ・ハウス」として登場する。









以下、ネタバレ注意!!















屋敷幽霊にやってきた吉良。その部屋のつくり、幽霊として存在する室内の物体を見て驚く。
が、同時に疑問も抱いていた。屋敷幽霊の中に許可なくは入れたのは何故か。そして中に人のいない屋敷で誰を殺害すればいいのか。

そんな中、部屋の中には自分が平穏に暮らすのに欲しいと思っていたものが(年代が古いとはいえ)数多くある事に興奮。
その中からいくつかを持って帰ろうとするが、棚の引き戸を開けた所で突如7・8個の卵が落ちてきた。見るとそこにはさらに多くの卵が……。

そしてまた1つ卵が落ちそうになったところを吉良はキャッチするが、ここで奇妙な事に気が付いた。成長しない幽霊であるはずの卵が突然動いたのだ。

驚いて手を放し、卵は床に落ちて割れてしまった。しかし奇妙は終わらない。
台の上に置いてあった卵2つがなくなったかと思えば今度は吉良の服のポケットの中に移って孵化し始めた。

ここで吉良はこの卵の中の生物が「幽霊ではない」と気が付いたのだった。
割れた卵からは何かが動いてきている。警戒する吉良。
そこから生まれてきたのは……。











以下、更なるネタバレ注意!!

















生まれてきた生物は両生類のような姿で、小動物程度の大きさの謎の生物だった。

その生物は吉良のポケットを通じて彼の左腕に移動。そして左腕を侵食し始めた。
そしてテーブルで割れていた卵から出てきた生物の方も幽霊でできたテーブルを侵食。
それぞれ吉良の左腕はツタが生え、テーブルはハエに変化していた。

これらを見て吉良はこの生物についてを理解し始める。
この生物達は「魂の掃除屋」ともいうべき存在であり、この世で次々と死んで幽霊になったものをこの世から消し去る事でこの世が幽霊だらけにならないように「清掃」するのが目的なのだ。
そしてこの屋敷幽霊も「卵(掃除屋)の巣」で、吉良が卵に触れた為に彼を掃除しようとしているのだった。

やむを得ず左手を切り落とす吉良。
だが、もちろんこれで終わりなはずもなく、「魂の掃除屋」から逃げる吉良*2

吉良は逃げながらこの状況を打開する為に、銃がある部屋を壁に掛けてあった写真を頼りに探し始めた*3
しかし、執拗な掃除屋の追跡によって吉良は追い詰められ、脚から掃除され始めてしまう。

万事休すか、衝撃で吹き飛ばされた吉良だったが……







写真の部屋は……ここだ……!






吉良は寸でのところで写真の部屋に辿り着き、中に飾ってあった銃で掃除屋を撃ち殺しもし弾が入っていなかったどうするつもりだったのだろうか?、飛ばされた衝撃によって窓ガラスを破って下へ転落する形で脱出に成功した。

こうして命からがら逃げ延びた吉良。彼のそばにはクラシックのSP版のレコード2枚が落ちていた。
「騒動が無ければそれらを聴けたのに」とがっかりする吉良だったが、ここで女坊主からの依頼について思い出す。


この屋敷の「卵」の事を「知らずに」依頼したというのか?

それとも……


違和感を感じた吉良は自殺や変死した人物の数について調査を行う事を決め、その結果次第では女坊主も殺し、そのついでに取れてしまった左腕も彼女の腕で事で代用しようと考えていた。

そして銃と弾丸の箱を手に、今夜の休み場所についてを検討するのだった。




もし!お前の追記・修正したことに「誤り」があれば……

覚悟するんだな…… 管理人ぶりやがって……

あの世が本当にあるのかどうか自分で体験することになる……



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最終更新:2024年04月13日 01:31

*1 このビジュアルの衣装は後にゲーム『ジョジョの奇妙な冒険 アイズオブヘブン』において、川尻浩作のスペシャルコスチュームの一つとして採用された。

*2 故意か偶然か、この構図は第4部本編でシアーハートアタックの自由を利かせるために、左腕を切り落として東方仗助達から逃げる生前の吉良の逃走方法と全く同じである。

*3 竹久夢二の絵が隣にかけてあったこの家の所有者だった軍人の肖像画にもあり、そこには銃と剣も映っていた。