まんぷく(連続テレビ小説)

登録日:2019/07/07 Sun 19:15:59
更新日:2024/04/07 Sun 14:04:44
所要時間:約 6 分で読めます




あきらめない夫のそばには、
いつも逃げない妻がいた!


2018年10月1日から2019年3月30日にかけてNHKで放送された朝ドラ第99作目。
同年NHK出版より前後編仕立てのノベライズ版も発売された。
また、公式ホームページでは一週間の内容を漫画で振り返る『漫画deまんぷく』(作画:水谷愛)も連載された。

今や日本国民に欠かせないインスタントラーメンを発明した安藤百福氏とその妻をモデルに、数々の困難に立ち向かう夫婦の物語が描かれる。
夫婦が主軸となるためかいわゆる「子役時代」は存在しない。

ちなみにヒロイン役の安藤サクラはオファー当時娘を出産したばかりで、育児と両立するため撮影時間などに便宜を図られた。

ナレーションは芦田愛菜が担当。
主題歌はDREAMS COME TRUEの「あなたとトゥラッタッタ♪」。

◆あらすじ

1938年、女学校を卒業した今井福子は大阪東洋ホテルの電話交換室に就職した。
長姉の結婚を控え慣れない仕事に張り切るも、ある時間違えて電話先の男と無関係な外国人客に電話を繋いでしまう。
しかし昔習っていた英語でしっかり謝罪した功績で新人ながらフロントに昇格。

ある日結婚式の催し物に自作の幻灯機(スライド映写機)を貸し出してくれた縁から立花萬平と知り合う。
その3年後に偶然再会し、ホテルで電話を間違えられたのはなんと萬平自身だと判明した。
式の最中福子の人柄に惚れていたのもあり運命を感じた萬平はプロポーズする。

はじめこそ「安定した職業じゃないから」と母親の鈴に猛反対されるが最後は彼の真摯さを認められ、1942年に晴れて夫婦となった。

萬平は幻灯機をはじめ、人々を幸せにするものを作る発明家。
結婚後も戦後生活に苦しむ社会をなんとかするため泉大津の海と軍の倉庫に残された鉄板を利用し『たちばな塩業(後のたちばな栄養食品)』を開業、大勢の仲間と共に塩を作った。

また1947年には妻の産後の肥立が悪かったことをきっかけに当時存在しなかった手軽な栄養食品・ダネイホンを苦戦しながらも作り上げる。

しかし倉庫に爆弾が残されていた(しかも魚を捕るためこっそり使われていた)ことと社会的注目度から国民の反乱を恐れる進駐軍に目をつけられてしまう。
不本意ながら脱税の取り締まり対象となってしまい1949年にたちばな栄養食品を解散、程なく縁あって池田信用組合の理事長となった。

就任後8年が経った頃、地元の町工場・織田島製作所は万能調理器(ミキサー)開発のため苦心していた。
それを聞かされた萬平は製作所の手伝いと投資を決意する。
試行錯誤する中、親会社である梅田銀行が景気の変動から投資を止めるよう申告してきた。
萬平は自宅を担保に入れることで投資を続け、久しぶりのものづくりで生き生きした夫の姿を見た福子も承諾。

最終的に萬平は人事異動などもあって理事長を退任し、ほぼ一文無しとなった立花家は福子がパートの給料と夫の退職金でやりくりすることに。
暇になった萬平が今後何をするか考えてると、「毎日の献立を決めるのが大変」という妻の発言から昔闇市で見かけたラーメン屋の行列を思い出した。

「ラーメンだ、福子!」

自宅で誰でも手軽に食べられるラーメン。
1958年、需要どころか発想すら無かった世紀の大発明が始まる。
まずは屋台のラーメンに引けを取らない味を模索し、ラーメンを食べ歩く。そこで九州出身の店主の豚骨ラーメンの味に感動し、安価手軽に入手できる家畜食材(牛豚鶏)のそれも骨や安い部位の肉だけを用いて、ここまで旨く作れることに感動し、ヒントにした。
立花家では鶏を家で飼っていてさばいていたおり、ニワトリを殺すところが衝撃的で抵抗もあるのだが肉は美味で皆で喜んで食べていたので、鶏の骨や安い部位の肉で豚骨ラーメンに引けを取らない鶏ガララーメンを発案する。(現実の安藤百福の日清食品も、豚食はイスラム教のイスラム圏で不浄で禁忌だが鳥肉は食べる、インドのヒンドゥー教では牛は神聖な動物で牛食は禁忌だが鳥肉は食べるという世界進出も含めた将来性で鶏を選択している)
これがまんぷくラーメンにつながる。
油で天ぷらのように麺を揚げる製造方法、じょうろで濃度ムラが発生しない(工場ではシャワーにした)濃いスープの味付けなど、量産化に向けた即席ラーメン(インスタントラーメン)製造技術を確立していく。
さらにインスタントラーメンの市場が拡大していくのは良いが模倣品や粗悪品まで出て食中毒まで起こす事例が発生し、インスタントラーメン全体が報道を含め叩かれてしまうが、特許も取得してライバルを排除するのではなく懐柔する。
即席ラーメン工業会という業界団体を結成し会員社には会員料に特許料込みで安全安心な即席ラーメンの製造技術の特許を解放し、ライバルを受け入れてインスタントラーメンの将来展望と業界全体を盛り上げる方向に舵を切る。
しかし、その即席ラーメン工業会もわずか10年余りで加入社が300社を超えて、安売り合戦でジリ貧となってしまったところで、打開策で容器入りのまんぷくヌードルの開発に着手する。
さらにカップラーメンでは上下逆転製造方法で麺をカップに落として入れるのではなく上からカップをかぶせる製造レーンや、麺を揚げる際に隙間を作り下部は疎にして上部は密にしてお湯の対流を作り出しカップ内で均等な時間で完成する粗密配置、当時最新鋭だったフリーズドライの具に発砲スチロールの容器やアルミのふたなど最新技術を導入している。

紆余曲折のすえ後世に名を残した萬平は、一旦会社を部下たちに任せ、妻と共に未知なる世界の麺を求めて海外旅行に向かうのだった。


◆主な登場人物

◼︎立花家

  • 今井福子→立花福子
(演:安藤サクラ)
本作の主人公。
突拍子も無いことを思いつく夫に振り回されながらも、持ち前の前向きさで支えていく。
また福子自身なかなか機転が利き、主婦ならではの視点で新しいアイデアを出すことも。
昔取った杵柄で英語が得意。顔芸も得意。

  • 立花萬平
(演:長谷川博己)
福子の夫。
幼い頃から各地を転々としていたため大阪弁はからっきし。
人当たりは悪くなく技術も閃きもたしかだが、頑固な職人気質で周囲を顧みない。
憲兵に捕まった際の経験から、人は食べることが何より大切だと考えている(その割に本人は熱中すると食事を摂らなくなる)
最終的にまんぷく食品の社長としてインスタントラーメンを日本に広めた。

  • 立花源
(演:久保蓮生→二宮輝生→西村元貴)
福子と萬平の長男。
萬平が平賀源内の「源内」、鈴が源義経の「義経」と名付けようとして対立し福子の折衷案で「源」と命名された。
父に似たのか器用で悪戯好き、そして頑固。
就職する頃には学生運動の成れの果てでまんぷく食品にコネ入社する少々情けない有様だったが、まんぷくヌードルの開発で少しずつ何かが変わっていく。

  • 立花幸
(演:三宅希空→小川紗良)
福子と萬平の長女で、源の妹。
名前には福子の名前と合わせて「幸福」という願いが込められている。
両親や兄と同じくはっきり言う性格で、大学生になる頃には女性の社会進出が進み始めたのもあり衝突が多くなった。
しかしその若い感性は当時難航していたまんぷくヌードルの普及に一役買う。

◼︎福子の家族

  • 今井鈴
(演:松坂慶子)
福子の母。
空襲で家が焼かれたのをきっかけに、立花家と同居している。
「私は武士の娘です」が口癖で毅然とした性格。そのため視聴者からは「ぶしむす」の愛称で呼ばれている。
大抵はワガママを通すため上記の発言をするが、いざという時自他共に鼓舞するためにも使う。
経営者だった夫を若くして亡くし、女手一つで福子たちを育て上げた。
そのため娘や姪、孫を心配するあまり安定しない職業の男性と外国人を嫌っている。
しかし実のところミーハーかつ目立ちたがり。「武士の娘」にもいつの間にか「源義経の末裔」という設定が生えていたり。

  • 今井咲→小野塚咲
(演:内田有紀)
福子の長姉。
美人で物静かなため昔から男が寄ってきており、その度に福子がデートの監視役に駆り出されていた。
結婚後肺結核を患い、事情を知った萬平から紹介された医者が最善を尽くすも若くして亡くなる。
他界後はたまに福子と鈴の夢枕に立つようになるが、萬平に赤紙が来た際「これで福子は(母の望み通り)未亡人になれる」と言うなどブラックな発言も。

  • 香田克子
(演:松下奈緒)
福子の次姉。
物語開始時点で既婚者かつ4人の子持ち。
妹夫婦に何かあった際は夫とともに快く家の空き部屋を貸し出し支える。

◼︎香田家

  • 香田忠彦
(演:要潤)
克子の夫で職業画家。
物語開始時点では鳥の絵を描く売れない画家で、親から資金援助されていた。
戦争で色覚異常を患って以来青を多用した絵を描くようになり、以降は売れっ子に。
1958年にはモデルとして来た女性の「既成概念をぶち壊して」というアドバイスに従いビビッドな抽象画を描き始める。
妻と娘にベタ惚れな、いわゆる親バカ。

  • 香田タカ→神部タカ
(演:岸井ゆきの)
克子と忠彦の娘で4姉弟の長女。
しっかり者だが繊細で、結婚後は夫の悪気ない無頓着さに泣かされることが多い。
ある意味福子のあり得たかもしれない未来を体現してるのか。

  • 神部茂
(演:瀬戸康史)
大阪帝大出身の男性。
戦後の混乱期、路頭に迷いハンコ屋で生計を立てていた香田家に忍び込んだことがきっかけで萬平たちと知り合う。
タカとは大学卒業を待って恋愛結婚。
しかし当初から惚れ込んだ萬平の事業の手伝いを何より優先しようとして度々家族を呆れさせている。

◼︎その他

  • 小野塚真一
(演:大谷亮平)
咲の夫。
妻が亡くなった後も鈴たちの好意で親戚同然の関係を築いている。
一度萬平を諦めようとした福子を諭した際の台詞は、本作を代表する名言の一つとされている。
物語開始当初は証券会社に勤め、その経験から萬平の事業に関わる際は必ず経理担当。
1958年から1969年までのどこかで再婚し、子持ちとなる。
普段は穏やかで心優しいが、一度怒ると物凄い迫力を見せる。*1

  • 世良勝夫
(演:桐谷健太)
世良商事という商社の社長。
商人らしく口達者で顔が広い上、かなりの現実主義者。
基本的にコネも商才も無い萬平たちには口うるさいながら必要不可欠な人材である。
まんぷくラーメンとまんぷくヌードルに対し需要が読めなさすぎて酷評しまくったが、なんだかんだ最後まで付き合い売り込みもした。


◆用語

  • ダネイホン
戦後の栄養失調に苦しむ人々を救うため開発されたペースト状の栄養食品。
ワカメ(東京進出の際昆布に変更)、牛骨、菜種油などを混ぜ合わせビタミンやタンパク質を摂取できるようにしている。
モデルは安藤百福氏が実際に開発した栄養食品「ビセイクル」。

  • まんぷくラーメン
現実のチキンラーメンに相当。
美味しいラーメンでみんなが幸せになるというのと、萬平と福子の名前を合わせて『まんぷく』という意味が込められている。番組タイトルの由来もこれ。
パッケージデザインは忠彦が考案した荒波を乗り越える船のデザインだが、売れ行きが伸びなかった頃鈴に『てんぷくラーメン』と揶揄された。

  • まんぷくヌードル
現実のカップヌードルに相当。
あさま山荘事件でカップヌードルが広まった実話は省略され、代わりに歩行者天国の映像がきっかけとなっている。



追記・修正はまんぷくヌードルを食べながらお願いします。

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最終更新:2024年04月07日 14:04

*1 偽ダネイホン騒動・偽まんぷくラーメン騒動の時には世良と共に販売会社へカチコミしており、特に後者は世良が止めに入るほど滅茶苦茶怒り狂った