アトランティスの戦士(遊戯王OCG)

登録日:2019/08/24 Sat 01:05:35
更新日:2025/04/23 Wed 00:27:00
所要時間:約 7 分で読めます





アトランティスの戦士》は、遊戯王OCGに存在するカード。
パック「FORCE OF THE BREAKER」に収録。

【概要】

効果モンスター
星4/水属性/水族/攻1900/守1200
このカードを手札から墓地へ捨てて発動できる。
デッキから「伝説の都 アトランティス」1枚を手札に加える。

FORCE OF THE BREAKERにて多数登場した、手札から捨てることで特定のフィールド魔法をサーチできるモンスターの一体。
このモンスター群には当該フィールド魔法の影響下で攻撃力が2100になる(攻撃力に影響しないフィールド魔法の場合は、素の攻撃力が2100である代わりに当該フィールド魔法が存在しないと自壊するデメリットアタッカーになる)という特徴がある。
このカードも、《伝説の都 アトランティス》の強化値200に合わせてデメリットのない星4以下のモンスターでは高めの攻撃力を有する。
アトランティス下では「レベル3で攻撃力2100になる」という点も重要で、当時ロックギミックとして人気を博していた《レベル制限B地区》などをすり抜けて攻撃できる。併用もできるし、対策にもなるという万能カード。
当時は下級アタッカーのラインは1900であり、これを有する《ハーピィ・クィーン》とこのカードは頭ひとつ抜けた評価をされていた。
すべてのデッキにたしなみのように《早すぎた埋葬》《リビングデッドの呼び声》が収録されていた頃は、勝手に墓地に行けるということさえメリットにすらなっていたのである。

そもそも《伝説の都 アトランティス》自体が最も古くからフィールド魔法をキーカードにした専用デッキ【伝説の都 アトランティス】を組まれ続けるほどの優秀なカードである*1
そのため、普段はそれを持ってきつつ、サーチが不要となればアタッカーに回ることのできるこのカードは登場以降【伝説の都 アトランティス】の必須カードに近い扱いを受けている。
















おれは伝説の都アトランティスをついに見つけたんだ!

アトランティスはほんとうにあったんだ!ほんとうだ! 信じてくれ!


《マーメイド・ナイト》<でたらめを言わないで!

ぶったるんどる!>《水陸両用バグロスMK-3》

\お前は一週間の謹慎だ!/

嘘なんかじゃない…! 「そこ」は「海」じゃなく、「そここそ」が「伝説の都アトランティス」なんだーッ!!


……さて。
本当にそれだけのカードなのであれば、わざわざアニヲタwikiに単独項目を立てるには値しない。
》の項目あたりに併記しておけば良いからである。


【このカードの特異性と問題】

ではこのカードの特異性とはどこにあるのか。その詳細な解説に際して前提知識として、
そもそものサーチ対象、《伝説の都 アトランティス》のテキストをご覧頂きたい。

伝説の都 アトランティス
フィールド魔法
このカード名はルール上「海」として扱う。
(1):フィールドの水属性モンスターの攻撃力・守備力は200アップする。
(2):このカードがフィールドゾーンに存在する限り、お互いの手札・フィールドの水属性モンスターのレベルは1つ下がる。

重要なのは「このカード名はルール上「海」として扱う。」この部分である。
これは俗に「効果外テキスト」と呼ばれるもので、そのカードのゲームにおける「特殊な扱われ方」を定義している。
言うなればカードそれぞれが個別に持っている特別ルールである(すなわち追加ルールの説明であり効果ではない)。
カードそれぞれといっても大部分はパターン化されたもので、モンスターカードであれば「このカードは通常召喚できない。」という制約などは有名だろう。

さておき、この「カード名を特定のカード名として扱う」テキストも他に所持しているカードがいくらか存在するテキストではある。
それらのカードのカード名はルール上(言い換えるなら、ゲーム上で)常に定義されたカード名として扱う。
この分類はデッキ構築の段階から既に適用範囲内であるので、例えば《ハーピィ・レディ》として扱う4体のモンスター達は大元と合わせて3枚までしかデッキに入れられない。
もちろん、同じくルール上《海》として扱われる《海》(《伝説の都 アトランティス》)と《海》(《忘却の都 レミューリア》)と《海》(《幻煌の都 パシフィス》)と《海》(《深海の都 マガラニカ》)と《海》(《海》)の場合であっても5種15枚の中から合計で3枚までしか投入することができないのである。

もちろん、デュエル中でも適用され続けている。
そのため、例え効果が無効化されている状況下でも、そもそも“効果”ではないため有効。
《禁止令》や《マインドクラッシュ》などでカード名を指定するならばテキストで定義されたカード名(この場合は《海》)の方を宣言しなくてはならない。


……このあたりまで読むと、ある疑問に行き着いたのではないだろうか。

「それなら、《伝説の都 アトランティス》をサーチする時はどうなるの?」

そう、ここからが本題である。
もう一度念を押して言うが、「ルール上、常に、テキストによって定義されたカード名のカードとして扱う」のである。
カードとして「も」扱うではない。

《疑似空間》等でカード名をコピーしても結局《海》になってしまう上、魔法カードのサーチもやはりフィールド魔法の《海》としてサーチできるだけに過ぎない。
つまり、デュエル中《伝説の都 アトランティス》として扱えるカード名のカードは、今のOCGには1枚も存在しない。
デッキに入れようとした時点で既に《海》に変化してしまうのだから。
あろうことか、効果によって指定されたカードがルール上存在しないという悲劇のカードが誕生してしまった瞬間である。

あなたが、カード名の欄に「伝説の都 アトランティス」と書かれたカードをデッキに何枚投入しようとも、
《アトランティスの戦士》の効果を発動してみても、
ルール上、デッキにサーチすべき《伝説の都 アトランティス》というカードは存在しない
探せど探せど、あるのはただただ《海》のみである。
仮に、ルール上《伝説の都 アトランティス》として扱えるカードが他に登場すればこのカードでサーチできるのだが…。
ただ、それはそれで本体ではなく別のカードをサーチする役割になってしまう。それでいいのかアトランティスの戦士。

こうして、《アトランティスの戦士》は「ただの海を、存在もしないアトランティスであると言い張るホラ吹き野郎」の烙印を押されてしまった。

どころか、(遊戯王OCGには戦士族が存在するにもかかわらず)「戦士」と自称しつつ「水」族であることさえもネタにされ、*2

あいつは「アトランティスの戦士」じゃなくて「海の水」

などと言われるようになってしまった。哀れ。
……よりによって題材が「眉唾物の伝説」の代名詞であるアトランティスであったことも悪く働いてしまったかもしれない。*3

一方で、かわいくて全身タイツでおっぱいがとても大きいことで有名な《海神の巫女》が、
「ここは海ですよー」と言うと例えフィールド魔法自体が存在しなくても、みんな二つ返事で信じてくれたりもする。
味方はダイダロス一族くらいだ…

…当たり前だが、このテキストを言葉通りにしていては効果が意味を為さないため、遊戯王OCGにおいては専用の特殊裁定が存在する。
「《アトランティスの戦士》の効果を起動した場合のデッキ内捜索中のみ、
カード名欄に「伝説の都 アトランティス」と記されているカードをルール上《伝説の都 アトランティス》として扱って良い」ことになっている。

彼のみが、伝説の都の探し方を……そこが海ではなくアトランティスであることを知っている。

などと言い換えてみると、少しはロマンを感じることもできる……かも?

ただ、あくまで特殊裁定に頼るのみでエラッタによる対応はするつもりがないようで、2022/4/29発売の「デュエルロワイヤル デッキセットEX ROUND2」で《アトランティスの戦士》と《伝説の都 アトランティス》が再録されたがテキストの変更はない。
まぁ、どちらをエラッタするにしても何かしらの影響は避けられないだろうが…*4
遊戯王のルール、テキスト的な部分から考えると「ルール上のカード名を変えるカードの元々の名前を参照する方法が存在しない」というのがこうした特殊裁定がなされ、テキスト変更も行われない理由だと考えられている。「元々のカード名」を参照する効果は無数に存在するが、それらは全て効果によってカード名を変えられる前のものであり、ルールから変えられているものには対応できないのである。

こうして、《伝説の都 アトランティス》にちょっと目を通せば一発で気づけるはずのあまりにもお粗末な問題は、一応の解決を見た。
ただし想像できるだろうが、当時のプレイヤーには「誰も気付かなくて普通に使ってた」「まぁコンマイだから」「《海》なんてサーチしないし」と笑って思い過されていたということも付記しておく。
最近では「特殊裁定がルールを捻じ曲げているのがおかしい」という意見も出ているようだが、ほんとにこの時期はこんなもんじゃないレベルのルールのごたごたや「調整中」が多かったので…。
こういう笑ってしまえるレベルのミスはあまり問題にならなかったのだ。
どちらかというとサーチ先があまりにもひどい《キラーザウルス》の方がネタにされていたのである。

しかし、ある意味でコンマイ語の項目に書いてあるようなルールが複雑というもの以上に根本的なミスは、皮肉なことに今でも伝説として残っている。
幸か不幸か、《海》の関連カードの強化は現在も続いている上に、そういった「《海》が手元にないと何もできないから、何が何でも素早く手札に加えたい」といったデッキでは採用候補に挙がり続けていることが、このネタをさらに際立たせ続けることになってしまった。
ゲームや公式データベースでも「《海》を手札に加える手段として有用にもかかわらず、海で検索しても出てこない」という有様で、もし、カードのどこでもいいから海という言葉が含まれていれば、採用率はもう少し上がるかもしれない。

余談であるが、残念なことに、この方面での御同輩もごくわずかながら存在する。有名所では《ウィンドフレーム》とか。


追記・修正は海ではなく、伝説の都アトランティスを見つけることができた人がお願いします。

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最終更新:2025年04月23日 00:27

*1 実際当時の【伝説の都 アトランティス】は、その高いカスタム性から多くのプレイヤーが組んでいた名刺代わりのようなデッキだった。つまりその【伝説の都 アトランティス】の方向性で好む戦術が分かるのである

*2 これ単体ならさして珍しいことでもない…どころかむしろ遊戯王では水属性で「戦士」を名乗ってるモンスターに戦士族である事の方が少ないぐらいである。「海を守る戦士」「魚ギョ戦士」などはいずれも戦士族ではないし、「海皇」の軍勢は悉く「兵」だが全て海竜族…と上げるとキリがない。数少ない例外に「深海の戦士」が存在するが、こいつはGB版のフレイバーテキストから「スーツを着た人間」であることが判明しており、魚人系のモンスターは全て戦士族以外に分類する、と言う観点で考えるとむしろしっかりとした線引きはされていると言える。あまりこのネタを振りかざすと「碌に遊戯王の事知らない癖に聞きかじりのネタを振り回すにわか」と受け取られる恐れがある

*3 余談だがアニオリではアトランティスは実在した事になっている。(ドーマ編のダーツがそこの王様)

*4 《アトランティスの戦士》を「《海》をサーチ」に変えると海テーマのデッキ全てに採用可能になってしまいカードの個性が薄れるし、《伝説の都 アトランティス》の「海として扱う」のテキストを変えると今度は《海》でサポートされるカードとアトランティスが噛み合わなくなってしまう。一番影響が少ないのは「海として"も"扱う」だろうか。