腑破十臓

登録日:2019/10/05 Sat 20:23:44
更新日:2025/02/02 Sun 16:11:46
所要時間:約5分で読めます





このシンケンレッドはオレが戦う相手でな……悪いがここは手を引いてもらう


もし、できないと言うのであれば……


腑破(ふわ)十臓(じゅうぞう)とは『侍戦隊シンケンジャー』の敵キャラクターである。

演・CV:唐橋充
SA:清家利一

データ

身長:200cm
体重:88kg

概要

本作の敵対勢力「外道衆」の幹部格。
初登場は第七幕「舵木一本釣」。

薄皮太夫と同じように元々は人間として生まれながら、人の道に外れた行いによって「外道に堕ち」、その一員となった「はぐれ外道」である。
その為、他のアヤカシと違って水切れを起こすことがない代わりに二の目を持たない。*1

常時アヤカシの姿である太夫と違って生前の人間としての姿と外道衆としての姿の両方を持ち、自在に使い分けることが可能。
人間としての姿は無精ひげを生やし、ボサボサの髪で顔の半分を隠し、和服と洋服を混ぜたかのような装いの上から白いボロボロの上着を羽織った物々しい雰囲気を出す男性。
アヤカシとしての姿は白い人骨と赤い骸骨に猿を混ぜたかのような怪人であり、さながら白い炎に焼かれているかのような姿となっている。
なお生前は黒い羽織だった。


人物像

一人称は「オレ」。
常に気怠げで虚無的な態度の持ち主だが、その実態は「命を斬る」ことや「強者との一対一の殺し合い」に激しく執着する本作屈指の戦闘狂で、戦い以外には一切の価値を見出していない。
この世の全ては夢幻と断じ、「人を斬り、斬り合うことのみがこの世の真実」と嘯く。

血祭ドウコク曰く「半端者のテメェを自由にしてやった」らしく、実際他のアヤカシからは激しく蔑視されてるはぐれ外道でありながら、それなりの地位を与えられている模様。
ただしそれに対する恩義や忠誠心を一切持ち合わせておらず、強者との斬り合いのみを求め、戦いの邪魔になると判断すればドウコクも平然と出し抜いたり、他のアヤカシの計画を邪魔することも厭わない。

生前は約200年前の武士であり、死病に侵され、妻に止められながらもその妻を捨て、刹那の快楽を求めて人を斬り続けたことで外道に堕ちた。

一族の中に外道となった者がいるという理由から家族の遺体はどの寺でも埋葬を避けられていたが、現在はそれを憐れんだ天幻寺の住職が建てた墓の下に眠っている。
この天幻寺は志葉家の菩提寺であり、志葉丈瑠は先祖の墓参り(&インロウマルの受け取り)に来た際に十臓の一族の墓も目にしている。

この様に殺伐とした修羅であり、他の外道衆の面々と同じく愛嬌や親しみやすさとは無縁のキャラクターだが、作中では唯一梅盛源太の握った寿司を高く評価した人物であり、自分が食事しようとした直前に源太本人が留守にした際には一貫食べて立ち去ろうとしたところ、静かに感激してもう一貫食らうという意外な一面を見せた。
ちなみに江戸前寿司の発祥は1800年代とされているので、十臓が江戸で人斬りを行っていたのであれば生っぽい寿司に触れる機会はあったと思われる。
その目つきは源太曰く「相当なグルメ」らしい。

戦闘能力

武器は異形の日本刀『妖刀裏正(うらまさ)
赤い鋸状の峰を持つそれは、逆刃こそが本性であり、強敵と戦う際にはそこを使用する。

他の面々と違い、光弾や何かしらの飛び道具などの特殊な技は一切使わず、己の剣術のみを用いて戦うが、その実力は外道衆の中でも指折りと言われるウシロブシや(負傷していたとはいえ)シンケンレッドと三つ巴を展開して互角以上に渡り合ったほど高く、ドウコクに拾われたのもそんな実力を見込まれてのことと思われる。

またその力も裏正に頼り切ったものではなく、裏正が折れて筋殻アクマロから支給された蛮刀毒泡沫(ばんとうどくほうまつ)*2という蛮刀を使用していた際でも、シンケンジャーを苦戦させた。

劇中の行動

丈瑠との因縁

本格参戦までの間、シンケンジャーの戦いを傍観していた十臓は、丈瑠の実力と彼の中にある「歪さ」を見出し、「自分を満足させるに足る相手」と認め、第十一幕でのウシロブシも交えた初の本格交戦を皮切りに、彼との一対一の戦いに固執するようになる。

暫くは自分を出し抜こうとした上に邪魔までしたことからドウコクに制裁として「縛られ」たり、シンケンジャーが取り込み中だったり、前戦で丈瑠が満身創痍だったりして中々戦いにありつけななかったが、第二十六幕にて遂にその念願叶い、漸く丈瑠とサシで勝負。
激しい斬りあいの末に重傷を負わせるが、その捨て身の攻撃で裏正をへし折られ敗北、海に落ちた。

しかし密かに生き延びており、第三十三幕以降は再戦と裏正の修復の為に太夫と共に筋殻アクマロに雇われ、彼の片腕として何度も丈瑠と刃を交え、両者共に因縁を深めていく。


裏正の真実

実は裏正の正体は自らが捨てた妻の魂を素材にアクマロが鍛えた刀
当然十臓に裏正を与えたのも、他ならぬアクマロその人である。
『本物の地獄』を求めるアクマロにとって、この世の者でもあの世の者でもないはぐれ外道の十臓は邪法「裏見がんどう返しの術」を成功させるための重要な鍵であり、そもそも十臓が外道に堕ちたこと自体、アクマロの計略の内であった。

第四十二幕にてアクマロからその真実を聞かされ、第四十三幕ではそのアクマロから「妖刀に囚われた妻の魂の解放」を取引材料として協力を持ち掛けられる。
誰もが「家族の為なら協力しかねない」という危惧の中、シンケンジャーの妨害もアクマロによっていなされ、遂にその一太刀が術の鍵となる石堤を破壊して地獄を開放してしまう。
......と思われたが、それはアクマロに向けられた。


十臓さん……ッ!!何故……!!?

裏正の正体など、初めて見た時から気付いていた……


そう、当の本人は裏正を初めて手にした段階で刀が妻の魂を材料に使っていることを理解し、その上で殺戮を重ねていた正真正銘の外道であった。


外道に堕ちるとはそういうことだ……最早こいつも、一蓮托生!


片目の黒と白を反転させ、もう片方の目を赤い瞳の不気味な三白眼に変えると、再びアクマロを斬りつけ、裏正が完全に元通りになったことを確認すると石堤を破壊。
はぐれ外道ではない真の外道が石堤を破壊した事により、術も完全に瓦解した。

そして、アクマロの最期を見届けると再び単独行動に戻り、以後はこれまで通り丈瑠との戦いを求めるようになる。

そして......

第四十五幕にて、本来の志葉家当主が表に出てきたことにより全てを失った丈瑠に最終決戦を挑んだ。
第四十六幕から第四十七幕では昼夜を分たぬ熾烈な斬り合いを繰り広げた果てに丈瑠が放った渾身の一撃を受け致命傷を負う。
しかし、外道に堕ちた身故に簡単に死なず、更に斬り合いの快楽を追い求め嬉々として裏正を手に取り、同時に丈瑠を言葉巧みに言い包めて同じ外道に堕とそうとする。
だがそこへ駆けつけた仲間達の声が、丈瑠を人間に押し留める。
十臓は地面に突き刺さった裏正を支えにして立ち上がり、丈瑠に近づこうとするが、不意にその足が止まり、十臓の目には足を掴み戦うことを止める妻の幻影が映る。
幻影が消えると、そこにあったのは十臓の足に突き刺さって足止めする裏正であった。それは十臓の意志に反して決して抜けることはない。

裏正……ここに来て…っ!

いや、この時を待ってか!?裏正ァァァァアアアアアッ!!

そう、妻もまた物言わぬ刀となりながらも、二百年もの間十臓の外道を止められるその瞬間を待っていたのだった。
十臓を外道たらしめていたのは、「人斬りへの執着から人としての絆を捨て去ったこと」
これまでの幽鬼のような態度から一転なりふり構わず必死になって裏正を足から引き抜こうとする十臓だが、断ち切ったはずの人の絆を目の当たりにしたことで己の『外道』を繋ぎ留められず肉体が火花を散らしながらひび割れて崩壊。


それは……!お前の…『真実』なんじゃないのか…?

否…全て幻だ!!この…快楽こそォオオオオ!!

お前の剣…骨の…髄まで……ゥウァアアアアアアアッッ!!


丈瑠との戦いで噛み締めた手応えを称えるも、最後は執着と無念がこもったような断末魔の絶叫を上げながら爆散し、肉体は塵芥となって果てた。
そして最後に残された裏正も、改めて紡がれた丈瑠と仲間たちの絆を見届けると満足気に成仏するかのように光となって消え去っていったのだった。


嗚呼ァァアアアアアアアアアアアアッ!!!


その後の活躍

Vシネクスト 宇宙戦隊キュウレンジャーVSスペース・スクワッド』にて、宇宙忍デモストが宇宙暗黒忍法「天魔転生」で復活させたスーパー戦隊ヴィランズの1人として登場。
怪盗BN団を強襲した。


余談

モチーフは猩々。
一見七福神とは関係がない様に思えるが、一部地域では福禄寿と同一視されている寿老人の代わりに七福神入りしている。

演者である唐橋氏は過去に『仮面ライダー555』にて海堂直也/スネークオルフェノクを演じていたことや、東映外でも『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY』にてキール星人グランデを演じていたことで特撮ファンの間では有名。
ただ、彼らが少なからずコミカルな部分を持っていたのに対して、この十臓がそういった要素が殆どない完全にシリアスな役柄であったため、当時そのギャップに驚く人は多かった。

人間体の配役はオーディションを行ったものの決まらず、スケジュールが迫る中で唐橋氏にオファーがかかったという。
当時イラストレーターとしての仕事が増えていた唐橋氏はデザイン事務所を立ち上げる直前で登記まで済ませていたが即決で出演を承諾。

しかし「わざわざオファーで来るということは555の海堂の感じを求められているのだろう」と、真面目な台詞であることを把握しつつもどこか軽さを残した芝居で初回の撮影に臨んだが、
撮影を見ていたスーツアクターの清家利一氏に殺さんばかりの視線を向けられ、「台本ちゃんと読んだか?こいつは刀のため生きる剣士だ」と静かに怒られたという。
スケジュールの都合か監督としては十分OKだったのか、撮り直されずに初回の撮影が終了したが、清家氏の眼力に圧された唐橋氏は次の撮影から演技を急修正したそうな。



…面白い。Wiki籠もり、次に会った時は追記・修正させろ。

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  • ※日曜朝7時30分です。
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最終更新:2025年02月02日 16:11

*1 二の目→アヤカシは命を2つ持っており、一度倒されても巨大化した状態で復活できる。水切れは簡単に言えば「エネルギー切れ」。アヤカシは定期的に三途の川で沐浴を行う必要があるため、水切れが進行≒体が乾ききってしまうとしばらく三途の川から出られなくなるらしい。

*2 プロップは第十九幕に登場したアヤカシ・オイノガレの武器『油坏滑蛮刀(あぶらつきなめりばんとう)のリペイント