少林サッカー

登録日:2020/01/14 Tue 21:36:01
更新日:2020/01/18 Sat 23:16:46
所要時間:約 12 分で読めます





少林拳は最高~♪

根性焼き~♪


世界初!超ド級サッカーエンターテイメント

日本上陸!


君はまだ、究極のサッカーを知らない。


『少林サッカー(原題:少林足球/英題:Shaolin Soccer)』は2001年に公開された香港/中国映画。

チャウ・シンチー(周星馳)監督・主演。日本配給はクロックワークス / ギャガ=ヒューマックス(現:ギャガ)。

往年の香港のカンフー映画や武俠小説、日本の漫画のファンであるチャウ・シンチーが、それ等の世界観と世界中で人気のサッカーを組み合わせて描いたスポ根エンターテインメントである。

チャウ・シンチーは本作の企画について大好きな『キャプテン翼』にインスパイアを受けたと語っており、アイディア自体は以前からあったが、満足の行く出来とするためにはCGアニメの発展を待たねばならかったと答えている。

元が日本の漫画に影響を受けたということもあってか、解りやすく破天荒な物語は日本でも大ヒットを記録した他、米国でも高い評価を受けて次作『カンフーハッスル』の製作へと繋がることになった。

元々、チャウ・シンチーは90年代前半より活動を開始した香港映画界では若い世代に人気のある監督だったが、本作が国外でも大きな話題を集めたことから中国以外でも名を知られるようになった。


【物語】

※以下はネタバレ含む。

かつて、香港のサッカー界の大スターで黄金の脚と呼ばれていたファンは、弟分のハンから八百長が持ちかけられていることを知らされ、激昂するも小切手の額の大きさから応じてしまい決勝でスポーツマンとしての誇りを捨ててゴールをわざと外す。

……その姿を見たファンを応援していた筈の観衆は激怒してフィールドに雪崩れ込むと一斉にファンに襲いかかり右足を鈍器で散々に痛め付けるのだった。

……それから20年の後。
今やサッカー界はファンの後を継いでスターとなったハンの物となっていた。彼は引退後、自分がオーナーとなって最強のチーム“魔鬼隊(デビル)”を設立、連覇を重ねていた。

そんな中、右脚がダメになってしまった後はハンの雑用係としてコキ使われてきたファンは、予てより頼み込んでいた“自分にサッカーチームを任せてくれる約束”を確認しようとするが、ハンに無下に断られてしまうのだった。

長年の鬱憤もあり怒ったファンは20年前の小切手が不渡りだったとも訴えるが、ハンは嘲笑しながら全ては自分が仕組んだことだと語り、ファンを襲わせたのも自分だと明かすのだった。
ハンのインタビューの為にマスコミが詰め掛けているが、今のゴミの様になった自分が、しかも自分のスキャンダルを明かしても聞き届けては貰えないだろう……本当に全てを失ったファンは街へと出るが、そこで街頭モニターに映ったサッカーの試合でキックに文句を付ける一人の若い男と出会うのだった。

その、奇妙な男の名はシン。
周囲で起きる街中のトラブルについて「少林拳を学んでいれば……」と、何にでも注釈を付けるシンに呆れていたファンだったが、二人の出会いは正に大きな運命とも呼ぶべきものだった。

シンの目的は、自分も含めて世に出る方法が見つけられずに燻っている兄弟弟子皆で少林拳を世に知らしめること。

ファンの目的はハンの支配を打ち破れる最強のサッカーチームを作ること。

少林拳の実力が嘘ではなかったことを知ったファンとシンが再会したことで、紆余曲折を経て結集した少林チームは、ファンの課した試練も乗り越え、遂に少林拳の魂を取り戻し本選へと出場。名だたる実力チームを相手に快進撃を続けるのだった。

鈍感なシンが傷つけてしまった饅頭屋のムイ、少林チームを手に入れようとするもファンに断られたことから、反対に全力で叩き潰すことを決めたハン……様々な人物の思惑も孕みつつも、人気者となった少林チームは決勝でデビルに挑むが、デビルはハンの裏工作によってドーピング等を得て少林チームを越える怪物集団へと変貌していた……。


【主な登場人物】

※吹替は初公開時のもの。

  • “金剛腿”(鋼鉄の脚)阿星(シン)
演:チャウ・シンチー/吹替:山寺宏一
少林拳の五番弟子で本作の主人公。
演じているのは監督自身。若者設定だが老けて見えるのは仕方がないので気にするな。
他の兄弟弟子が様々な理由で少林拳を広める情熱を失っている中でも唯一人目標を失っていなかったが、結局は自分でも効果的な方法を見つけられずに低賃金の仕事にしかありつけずに、浮浪者も同然の暮らしをしていた。
情熱だけはあるが周囲への配慮が欠けているタイプで、来る度にトラブルの元になるので兄弟子達からも厄介者扱いされており(逃げ足も速い)、自分から相手に踏み込んでいった出会いであったムイを知らずに傷つけたりしていた。
しかし、ファンとの出会いによりサッカーという目標を得て、皆と合流した後はチームの精神的支柱となり、 得意のキックを活かしてエースストライカーとして快進撃を続ける原動力となる。
漸くムイを傷つけていたことを悟って臨んだ決勝では自分達の力も通じないデビルの猛攻に苦しめられるが、ムイの加勢により逆転のチャンスを得る。
最後は全てを巻き込む全力の必殺シュートで文字通りデビルチーム全員を巻き込んでゴールを奪い勝利を勝ち取る。
優勝後は、晴れて少林拳を流行させることに成功した模様。
尚、歌やダンスも好きだが作曲センスと歌唱力は壊滅的。


  • 阿梅(ムイ)
演:ヴィッキー・チャオ/吹替:魏涼子
本作のヒロイン。
饅頭屋で働く若い女性だが、顔面が痘痕で荒れ果てており、それを隠すために長い髪を前面に垂らす等、格好も野暮ったく酷い容姿をしている。
しかし、実は太極拳の達人であり、その神業を使った饅頭作りに魅せられたシンに無遠慮に話しかけられて関わりを持つことになる。
意味不明なダンスを見せられる等、最悪な出会いであったものの、デリカシーは無いが自分にも優しくしてくれたシンに惹かれていき、一度は雇い主の女主人に言われてゴミ箱に捨てたつまみ食いした饅頭の代金としてシンが置いていったボロ靴を修理して待っていた。
サッカーを通して有名になっていくシンに応えるべく、自分なりに綺麗になろうとしたものの、入った美容室が流行から大きく外れたファッションをさせる三流美容室であった為に、今時肩パッド入りの服にケバメイクの怪物のような姿にされてしまい、シンの兄弟弟子達から大笑いされてしまう。
それでもシンに告白するものの、鈍感で恋愛感情ではなく友情と割りきっていたシンには通じず、ショックから雇い主の女主人に暴言を吐き、饅頭屋からも姿を消してしまっていた。
……が、それでもシンの側に立ちたいとの想いから決勝では頭を丸めて助っ人として参加。
シン達の剛には剛で対抗した業では対抗出来なかったデビルの剛のシュートを柔の業で無効化し、チームを勝利に導いた。
尚、顔面が痘痕だらけだったのは小麦粉アレルギーのせいであったようで、饅頭屋を辞めた後の決勝では美しい顔になっていた。*1
決勝戦後は、晴れてシンと恋人になったようで、二人の写真が大々的に広告された雑誌の表紙を飾っている。


  • “黄金右脚”(黄金の脚)明鋒(ファン)
演:ン・マンタ/吹替:玄田哲章
20年前まではサッカー界を代表するスーパースターで傲慢になる程のエースストライカーであったが、金に目が眩み、弟分のハンから聞かされた八百長に加担してしまい、暴徒と化した観客に右脚をダメにされてしまった。尚、ニックネームの“黄金右脚”は腹に書いてある。間抜けだ。
ハンに顎で使われつつも、自分の知識を伝えられる後継者を得られることを望んでいたが、ハンに20年前の真相を聞かされると共に放り出された失意の中でシン達と出会うことになる。
シンの超人的な能力を見ても“サッカーは決して一人では勝てない”との持論を崩さず、敢えて反則しか仕掛けてこないチームを練習試合で当てて、結果的に少林チームの覚醒を呼び込む等、優れた指導者である。
自分の夢を叶えてくれたシン達への想いは強く、ハンから買収を持ち掛けられた時にもハッキリと断った。


  • “無敵鐵頭功”(鉄の頭)
演:ウォン・ヤッフェイ/吹替:岩崎ひろし
少林拳の一番弟子で、修行によって何でも砕ける頭を得ている。
……が、物語の当初はナイトクラブで下働きをさせられており、得意業も活かせずに寧ろオーナー達にバカにされるネタにされていた。
シンのせいでトラブル続きらしく、二人で居なくなった歌手の替わりにステージに立って歌った時には、余りの歌の酷さからぶちギレた客に暴行を受けた挙げ句、クビにされたのに弁償の為にタダ働きさせられる羽目となった。
凄まじいインパクトを残して視聴者の腹筋を崩壊させた反則上等の修理工チームとの一戦では相手のブリーフを被らせられる屈辱を受けるものの、その瞬間に少林拳の魂を取り戻して逆転の一撃を与えた。


  • “旋風地堂腿”(旋風脚)
演:モク・メイラム/吹替:中田和宏
少林拳の二番弟子で、物語の当初は皿洗いをしていた。
頭髪が薄いのを気にしている。
修理工チームとの戦いで魂を取り戻した後は、地を這うような(体操の鞍馬やカポエラめいた)脚の動きで自在にボールをコントロールして周囲を文字通りに蹴散らした。


  • “金鐘罩鐵布衫”(鎧の肌)
演:ティン・カイマン/吹替:稲葉実
少林拳の三番弟子で、物語の当初は証券マンと、兄弟弟子の中では一番まともな仕事に就いていた。(しかし、乗るのが自転車、食べるのがラーメンと本人が言うほどの成功者かどうかは不明。)
携帯電話も所有し家族も居るが、結局はシンの言葉に応じてサッカーチームに合流することになる。
修理工チームとの戦いで魂を取り戻した後は、無敵の肉体と吸引力により強固なボールコントロール(身体に張り付いているだけだが)で敵チームを蹴散らした。
決勝では、途中退場となった“魔の手”に続いてGKとなるも“鎧の肌”を以てしてもデビルのパワーは止められなかった。
しかし、デビルの集中放火を一人で耐えきりボールを繋いだり、家族に決意を告げる等、この一連のシーンは震える程に格好いい。


  • “鬼影擒拿手”(魔の手)
演:チャン・クォックァン/吹替:檀臣幸
少林拳の四番弟子で、物語の当初は無職だった。
ブルース・リー擬きで、他のチームメイトが少林拳の修行服モチーフのユニフォームなのに、彼のみはブルース・リー風のジャージである。
修理工チームとの戦いで魂を取り戻した後は目にも止まらぬ擒拿(きんな)でゴールのエリア内全てをカバーする驚異的な防御力を見せ、修理工チームが奥の手として放った靴飛ばし攻撃をボールをキャッチする序でに全て回収してしまった程。
本選でも驚異的な鉄壁の守護神として活躍し、自分達同様に武術の技法を加えたサッカーを使うブレードシスターズの猛攻も余裕で捌ききった。
……が、決勝では意地を見せるもデビルの攻撃を防ぎきれずに倒れ、少林チーム初の退場者となってしまう。
中の人はブルース・リーの物真似芸人で、チャウ・シンチーに見出だされた人物。
尚、本作の集団ダンスの振り付けも行っている。


  • “軽功水上漂”(軽功・空渡り)
演:ラム・ジーチョン/吹替:塩屋浩三
少林拳の六番弟子で、物語の開始した当初はスーパーの店員。
修行時代は痩せていたが、現在は“空渡り”が使えていたとは思えない程に醜く太ってしまっている。
本人曰くホルモン異常とのことだが、間を置かずにスナック菓子食べ続けたりしている為に、本当に病気だけが理由なのかは怪しい所。
生卵が好物で、ファンにシンの練習に使われた時にはシンの汚い靴に付着した卵に吸い付く意地汚さを見せた。
修理工チームとの戦いで魂を取り戻した後は巨体を軽々と宙に舞わせてボールを運ぶ機動力で活躍した。


  • ブレードシスターズ
演:カレン・モク/吹替:田野恵
演:セシリア・チャン/吹替:日野由利加
本選準決勝に於ける少林チームの対戦相手で、敵チームのエースである美人姉妹……髭が生えてるが。
少林チーム同様に武術の心得があるようで、ディフェンスを突破して猛攻を加えるが“魔の手”に阻まれた。
中の人達は日本でも名前を知られていた美人女優だがこの扱いである。(更に言えばカレン・モクは以前からのチャウ・シンチー作品の常連で不細工メイクや酷い扱いが定番になっていた。)


  • リーダー
演:ヴィンセント・コク/吹替:天田益男
少林チームの本選に於ける初戦のチームのキャプテンで、みすぼらしい上に試合前に煙草を吸っているオッサンもいる少林チームをバカにしていたが、抵抗する間も無く40vs0で敗れる。
映画内ではそれだけの存在だが、演じている中の人が香港映画界の大物喜劇俳優・脚本家・監督だというのが特に面白い。


  • “魔鬼隊”(デビル)FW
演:セッ・チーワン/吹替:水野龍司
ハン率いるデビルのエースで、ドーピング等の効果により人間業を越えたシュートを放つ。


  • 強雄(ハン)
演:パトリック・ツェー/吹替:菅生隆之
現在の香港サッカー界の最高権力者で、先輩で自力では越えられなかったファンを陥れた後は自らが絶対エースとして君臨し、現在はクラブのオーナーとして密かにアメリカから輸入した新薬を利用したドーピング等で強化したチーム“デビル”を率いて五連覇を成し遂げる等、好き放題をしている。
自分が追い落としたファンを側に置いてこき使い続ける等サディストだが、追い出したファンが連れてきた少林チームの余りのみすぼらしさに、自分が参加費用を出してまで参加を許可してしまったことが失脚の原因となった。
決勝で“デビル”が敗れた後は諸々の悪事が明るみに出てチーム共々永久追放となった。
悪辣な人物だが、靴下に穴が空いていたり、元はスポーツマンだからか、やり過ぎている“デビル”のプレイに引いたりと可愛い所もあるオッサン。
日本人からはやしきたかじんにしか見えないのも好印象。


【余談】


  • ド派手なVFXが話題を呼んだ本作だが、役者達は徹底したサッカーの練習もして撮影に臨んでいる。
    実際、迫力ある場面も地味に存在しているのは注目である。

  • 他にも、妙にインパクトのある作曲家志望の若者や反則上等の修理工チームのリーダー等の面白キャラが目白押しで、彼等は次作『カンフーハッスル』にも登場している。

  • 本作のモブキャラの1人である「バナナの皮で転ぶ通行人」は当初から美女として登場した人物である。演じたリー・ホイは美少女コンテストの優勝者であり、当時はチャウ・シンチーが代表を務める映画製作会社「星輝公司」に所属していた。





追記修正は少林拳を会得してからお願いします。

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