ズルワーン(黒白のアヴェスター)

登録日:2020/05/16 Sat 18:28:54
更新日:2025/03/26 Wed 10:10:05
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世の中ごちゃごちゃしてないと面白くねえ。
白だ黒だとぱっきり分けて、どいつもこいつも二つに一つ?

何が楽しいんだそんなもん。

出来る奴はみんな残らず戦士(ヤザタ)魔将(ダエーワ)
右か左がすべてだし、敵か味方にしか分けられねえって……

いくらなんでもペラすぎるんだよ。
オレらの知ってる常識(メンツ)だけで、全部が回ってるみたいじゃねえか。

普通はもっとこう、あるんじゃねえの?

他にもままならないあれやこれやが、
一筋縄じゃいかないあっちやこっちや、そっちがよ。

数えきれねえ謎とか未知とか、すげえ奴とか馬鹿な奴が、
今このときもオレらの知らないどっか遠くで、
オレらに関係ないドンパチやったりイチャついたり。

してなきゃおかしいだろう。
それが混沌(セカイ)だって思わねえか?



黒白のアヴェスター』の登場人物。

名前の由来は後期ゾロアスター教における創造神ズルワーン


プロフィール

種族:星霊→人間
性別:男性
身長:180cm
体重:72kg
CV:前田剛

戒律:『我は我によって立つ(デーンカルド・アイオーン)



概要

悪なる不義者(ドルグワント)に抗する善なる義者(アシャワン)戦士(ヤザタ)の一人。

現在の戦士の中ではマグサリオンに次ぐ武功をあげる実力者なのだが、その実態はある意味ではかの凶戦士以上の問題児。

派手な外套に幅広帽、幾つもの装飾品を身に付けた金髪のイケメン。その外見に違わず常にへらへらとした余裕のある態度を崩さず、口を開けば他人の神経を逆撫でするような言葉が飛び出す道化師のような男。
ある程度は擁護派のいるマグサリオンと違い、聖王領(ワフマン・ヤシュト)の構成員からことごとく忌避される嫌われ者のナンバーワン。

父親によって宇宙に放り出されたクインが初めて遭遇した戦士でもあり、ある種の師匠と言えなくもないのだが、聖王領に辿り着くまで一年間も散々振り回した挙句に今でもセクハラをふっかけることが多いため、内心では殺意を抱かれてすらいる。

人物

他人をからかうことに全力を注ぐ性質だが、その一方で嘘は好まない。
自由奔放な振る舞いも自分に正直であることを課しているからに他ならず、またこの宇宙では極めて珍しい真我(アヴェスター)が命じる善悪闘争に懐疑的な人物。


公的には現在の聖王領が拠点とする惑星の出身となっているが、その正体は元星霊

そもそも、現在空葬圏と呼ばれている星系を構成する七つの星において自我を有していた星は後の魔王マシュヤーナ独りだけだったが、『自分の存在を認める他者が欲しい』と望んだマシュヤーナがクワルナフの作品(こども)である原初環(マシュヤグ)を使い創造したのがズルワーンの魂である。
そのためズルワーンはマシュヤーナにとって兄とも弟とも言える存在であり、お互いに自分が先だと言い争っている。

善悪(イロ)が違ったため(いもうと)と戦っていたズルワーンだが、マシュヤーナに敗れ死の直前に一つの疑念を抱いた。



不義者はムカつくが、そもそもムカつく理由がワケのわかんねえ本能だ。
するってえと何か、オレらはてめえの頭で考える知能もない虫か何かか?


そして、自分を喰らいながら、嬉しがりながら泣いているマシュヤーナのおまえはどうだという問いかけに、ズルワーンは真我的な模範解答をしてしまった。



反吐が出る、死んじまえ。


虚しい、こんなものは違う、おまえと争いたくなかった。
そんな本音を漏らせば彼女は拍子抜けするに違いない。そして自分のようにすべてが馬鹿馬鹿しくなるかもしれない。
それを哀れに思ったからこその嘘だったが、結果として自分に向き合っていないと判断したマシュヤーナは死に損ない、腐敗を撒き散らす生ける屍となってしまった。

そしてズルワーン本人も、どんな反応をされても正面から向き合い、正直な気持ちを伝えるべきだったという慙愧の念に囚われることとなった。
彼が自分にも他人にも嘘を吐かないのは、そうした後悔に由来している。


最後の破れかぶれで瞬間転移を行ったズルワーンは、ある星に辿り着くが気が付けば星霊としての力を失い不能者の人間となっていた。
つまりズルワーンは清い身体(童貞)である。

もう善悪闘争にかかわるのはうんざりだったが、その場所が魔将の襲撃を受けて壊滅した集落だったこと、そしてそこにおっかない野郎(マグサリオン)とアルマが派遣されたことで、聖王領に残った最後の魔将の盗伐に協力し以降ズルワーンは自身の出自を隠して戦士として戦うことになった。


彼がマグサリオンを評価しているのは、その善らしくない立ち居振る舞いこそが自分が求める理想(カオス)に近いと感じているからでもある。


戦闘能力

戦士としては非常に希少な銃使い。
銃は他の武器に比べれば扱いが簡単で、それに対して高い殺傷力を持つ。そしてその威力は使い手の身体能力よりも武器そのものの性能に依存する。
そのため『強さが軽薄になる』うえに『格上には通用しない』銃器は義者の武器として向いていないのだが、ズルワーンは例外的に卓越した銃技によって戦果を残している。

マグサリオンとはお互いに好き勝手に戦っているようで結果としてハイレベルな連携が取れるなど、その技量には隙がない。
また、後述の戒律の効果で不死の殺人鬼(ノコギリ)をも殺し得る程。


戒律:『我は我として立つ(デーンカルド・アイオーン)

◎あえて戒律を持たない。
→他者の能力を無効化する。

マシュヤーナへの後悔に端を発する、厳密に言えば戒律であって戒律でないズルワーンの特性。

綾模様おばさん天に座する神が真我という法則を垂れ流し、誰もが盲目的に戦い続けるこの世界において、世の無常を知ったうえでその法則に従わず『自分の頭で考え、決める』という生き様を己に課したもの。


自分のやりたいことをやりたいようにしかせず、時に悪を肯定したり悪に同情的な言動も見せる奔放で無責任な男として傍目には映るが、己の主は己だという信念によって世界の法を無力化する。

この効果は他者の戒律だけでなくこの宇宙に限定的な特性にも影響を及ぼし、例えば『そういうものだから』という理由にならない理由で不死身の殺人鬼にもズルワーンの攻撃は殺傷力を有する。

また、副次的な効果として原初環が破壊されてもその複製品の中で例外的にズルワーンは消失しない。
ついでに言うと、ズルワーン自身はウォフ・マナフの星霊加護などの能力を自由に使える。
宿儺といいその辺のいいとこどりは相変わらずである。


ただし、その起源がマシュヤーナに由来するため、マシュヤーナと対峙した時に最大の効力を発揮するがそれ以外の場合はムラが多い劣化したものになってしまう。
実質的に対マシュヤーナ専用の力と言って差し支えない。


……そして、神座という宇宙の真実を知る者にとって、この名前と在り様は皮肉的としか言いようがない。



■■■

+ おまえたちが■■■を識ることは永遠にない
金髪で派手な服装と言動を好む飄々とした問題児。卓越した銃技を持ち、性格の悪い嫌われ者。敵味方を問わず、関わった相手を引っ掻き回そうとするトラブルメーカー。
しかし人として生きることに独自の信念を持ち、その点では誰よりも真面目な男。
生殖能力のない男性不能者だが、相思相愛の恋人っぽい女性がいる。

同じ容姿、同じ性格、同じ技能あと同じ声を持つ同一人物としか思えない男が、どの神座時代にも一人だけ存在する。
本人たちに自覚はないものの、確実に時代を跨いでいつの世にもいる男。


ズルワーンのもうひとつの真実。それは“観測者”と呼ばれる立ち位置の存在であるということ。

第一神座:善悪二元真我(アフラ・マズダ)を流出させている真我がまだ人間だった頃、恋人のような立ち位置であった副官の青年ヴァルナ。
彼を含む現在は奈落迦(ナラカ)と呼ばれている五人は、どのような経緯かは不明だが神座のシステム中枢と同化している。

そしてヴァルナ…『黒白のアヴェスター』の物語の中ではなぜか「奈落迦となった5人」の内ただ一人だけ真我から名を語られない男は神座を残し続けるため、神座を次代に明け渡すために行動する自身の触覚を派遣した。
それが観測者。本人にその自覚はなくとも、神座闘争を活性化させる神の操り人形(オモチャ)
然るべきとき、然るべき者の手に座が渡るよう、現場を見届け、誘導し、記録していく狂言回し。
自身は決して表舞台に立たず、しかしすべての時代を股にかけ、核心に関わり続けるトリックスター。

人間となったズルワーンが不能なのも、ヴァルナの『俺の女はミトラ(アイツ)だけ』という信念による。
初代インポ


現にズルワーンはクインを聖王領に案内し、フレデリカがマグサリオンと接触して萌え豚化する遠因となり、ズルワーンを追ってきたマシュヤーナを感知した暴窮飛蝗が聖王領を襲撃し、原初環とマグサリオンを引き合わせるなど、本人は直接関わらないが確実にズルワーンに起因する方法で前半の物語を加速させている。
…しかし、その真実の一端に気づいた真我の干渉の結果、ズルワーンは「自分自身の意志で生きていない」と(本人には自覚0なのに)破戒認定されインセスト以外の全存在からズルワーンの記憶が消失し存在・名前すら認識不可能になり
さらに真我から「時の果てまで変わることなくただ全てを見続けろ(意訳)」と他の存在に何一つ干渉することも出来ず文字通り「観測」しか出来ない様にされた
そしてその理由も知らされぬまま最愛の半身の絶望を見るしかなかったズルワーンが独り、「自分の意志で立っている」事の証明を真我と勝負する事を誓った後、後半では観測者不在のまま物語は続行していく。その理由は……

ズルワーンはその本質に対して無自覚だったが、歴代の観測者が持つ『ひとりの人間として自立したい』という渇望は、彼の慙愧に由来しているのかもしれない。



余談

名前の元ネタのズルワーンは後期ゾロアスター教の中でもズルワーン教と呼ばれる一派が信仰する創造神。
その名前は『時間』を意味し、全善なる世界の創造に疑念を抱いたことで善神アフラ・マズダと悪神アーリマンの双子神が生まれ善悪闘争が始まったという。


戒律名のデーンカルドはゾロアスター教の風俗についてが記された百科事典。
第三巻では最近親婚(フヴァエトヴァダタ)を称賛する内容が長文で書かれている。

アイオーンはグノーシス主義における高次霊のことを指すが、ローマ帝政時代のアイオーン神像とされていた像が近年ではミトラス教におけるズルワーン神の像であるという研究が進んでいる。


ズルワーンの登場時、TwitterなどのSNSでは「やばいインポマンが出た」とにわかに盛り上がりを見せた。
何一つ間違っていないのだが事情を知らない人間からしたらまるで意味が分からないこと請け合い。


正田卿曰く司狼です(直球)』
読者「知ってた」





ごちゃごちゃしてるのがいいんだよ。
割り切れねえ項目があって、(ペラ)く片付かないからwikiが面白くなるんだろうが。

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最終更新:2025年03月26日 10:10