クワルナフ(黒白のアヴェスター)

登録日:2019/11/23 Sat 14:05:28
更新日:2023/10/30 Mon 03:21:20
所要時間:約 ? 分で読めます





彼らは言った。
みんなの祈りが希望を生む。
希望は光となって奇跡を起こし、
必ず貴様を討つのだと。


……よく分からない。


奇跡とは何だ?
希望とは何だ?
みんなとはいったい、どういう単位だ?


具体的な数を言え。
奇跡とやらを起こすのに、
どれだけの“みんな”が必要なのだ。

祈りが? 想いが? そして涙が?
抽象的すぎて話にならない。

勇気の成分を表にして出せ。
覚悟の量を数値化しろ。

私はそう言ったのだが、
しかし彼らは分かってくれない。



黒白のアヴェスター』の登場人物。

名前の由来はゾロアスター教の悪魔(ダエーワ)アジ・ダハーカの異名『悪なる光輪(ドゥシ・クワルナフ)


プロフィール

種族:星霊
性別:男性
二つ名:破滅工房
魔王序列:一位
所在地:絶滅星団サウルヴァ

戒律:天翔ける破滅の戦輪(プシュパカ・ラタ)



概要

善なる義者(アシャワン)と敵対する悪なる不義者(ドルグワント)の頂点に君臨する絶対悪、『七大魔王』の一角。
善の殿堂『聖王領(ワフマン・ヤシュト)』による序列は一位。与えられた異名は『破滅工房』


その正体は、星に芽吹いた魂『星霊』と言われる超生物で、その中でも星そのものを肉体として操るタイプの一種
極超巨星サイズの星体に、太陽に匹敵する大きさの目と口が幾つも開いているという異形の星。

星を喰らう星であり、宇宙を超高速で移動しながら他の星を喰らい、無限に増殖と巨大化を続ける空前絶後のモンスター
作中ではおよそ2300年にわたって活動しており、574個の銀河を滅ぼしてきた

そして捕食した星やそこに住まう生物を体内で加工し、全く新しい存在として作り替えては無造作に吐き出すという生態を持つ。
そうして作られた子供たちに対してクワルナフは一切頓着せず宇宙にばら撒き、それが元でどんな問題が起きようとまるで気にも留めない。

休むことなくすべてを貪り、作り、吐き出し、作品を求めて善も悪も奪い合い悲劇を連鎖させるその生態から『破滅工房』と名付けられた。


人物

その性格は非常に理知的。
というよりも数式めいた、良くも悪くも四角四面なもの。
己の存在を数の集合と自覚しているため、数字を何よりも重要視している。

また、2300年以上もの間魔王として君臨しながらなお自壊衝動がない、どころか未だなお自身の成長を求めている。
その器に限界はなく、ひたすら愚直に歩く姿は、単純な競争ではもはや誰も追いつけないだろうに止まらない。

また、製作者としては非常に高い自負があるようで、テレワーク会議会合(ガーサー)マシュヤーナが作品のひとつである原初環(マシュヤグ)が誤作動を起こしたと進言した際には、



私の作品(こども)に間違いなど起きん。

おまえが我が子の“誰”を持っているかは与り知らんが、私は子の自立を認めている。
よって干渉などはしていないし、伴侶との付き合い方にも口は出さん。

あるがままに生き、あるがままに朽ちるのが子供たちの本懐ならば、
彼らが何処で何をやろうとそれは彼らの機能である。

おまえが本質を把握していないだけだろう。
もう一度言うが、私の眷属は無謬であり、誤りなどない。


と、マシュヤーナが機能を誤解しているだけだと作品を擁護した。


そして、彼にはもう一つの側面があり、それが彼自身も忘れてしまった魂体の姿。

嫣然と流れる波打つ金髪に、真紅の瞳は森羅を映す万華鏡。数十の銀河を纏め上げた法衣ですらそれを纏う当人の煌びやかさには及ばない。
『悪は絢爛無垢』という善悪二元真我(アフラ・マズダ)の理を体現する美男子の姿こそが、クワルナフの魂の姿である。


しかし、この姿でいる時のクワルナフには常の思考力はなく、生気の感じられない虚ろな様子で、かつて自分やみんなが求めた何かを、助けを求めるかのように彷徨う白痴の有様を晒している。

この魂体であれば巨大な星体より遥かに打倒できそうに感じられるが、この魔星は核を砕かれた程度で滅びるような領域はとうに逸している。
流石に影響がないわけではないが、その瞬間に創造力と思考力を奪われた、底なしの胃袋を持つ絶滅星団という暴虐の魔獣が残り、宇宙は無への坂道を転がり落ちるという誰にとっても絶望の事態にしかならない。

この白痴の状態ですらスィリオスとカイホスルーの見立てではバフラヴァーン相手に五分五分というのだから、その規格外さがわかるというもの。



そんな彼はある日、ナダレの崩界によって相まみえた聖王領を滅亡寸前まで追いつめて疑問に思った。
500を超える銀河を喰らって成長してきた自分と、数えてみれば銀河ひとつ分程度の人員でしかない敵対する義者たち。



私が喰らってきたモノの数は、彼らが言う“みんな”よりも遥かに多い。
これは確かで、ならば明確な力関係にならないかね?
別に彼らの祈りとやらを軽く見ているつもりはないが、
こちらの重みも甘く見てほしくはないのだ。


数字にすれば一目瞭然。それだけの絶望を食べてきた自分が勝つのは必然だったし、現実としてそうなった。
けれど彼らは納得しない。理不尽だ、狂っていると魔王を糾弾する。



彼らには、彼らの理屈がきっと存在するのだろう。
私には分からないが、だからといってくだらないと断ずるようでは成長できない。
相手の在り方が狂気にしか見えないのはこちらも同じで、
計り知れぬものには脅威を覚える


ゆえに知性の怪物は知りたいと願った。
義者と不義者は相容れない。互いに互いを狂気と感じるが、しかし相手にも相手なりの理屈はきっとあるはずだ。

そう考えた現状、宇宙一巨大な生物(クワルナフ)は、それを知らなければならないと決意した。
だからこそ聖王領の構成員を極少数見逃し、他者の意識に同調する機能を持つ(クイン)を創造した。



おまえは奇跡を蒐集しろ。
みんなの祈りとやらに触れて、吟味し、その真髄を教えてくれ。
あくまで物量がものを言うのか、理外の法が存在するのか……
知らねばならん。知らずにおれん。知ったうえで私が喰らう。

+ 忘却した彼の真実
クワルナフの出自。それは現在の戦士が地雄(アスラ)、魔将が天将(デーヴァ)と呼ばれていた旧世代に神子として生み出された善側の希望。

「美しくあれ」と望まれ、そして『美しいものは、それに触れたものをもまた美しくする』という類感魔術の性質を極限まで突き詰めることで『ただ美しい世界において、争いも嘆きも生まれはしない』という理念によって善も悪も区別なく“みんな”を浄化し二元論の闘争に終止符を打つことを目的として生み出された。
それはすなわち新たな法則による天地開闢。次代の神たる器と呼ぶに相応しい存在であったと言える。

しかし、彼にも彼を生み出した星の民草にとっても想定外だったのは、希望の光輪(クワルナフ)が善側の決戦兵器である『神剣』に心奪われてしまったということ。

『美の浄化』を存在理由とするクワルナフが司る『美』とは、自然的な美しい情景や工芸、詩歌などの『文化美』であり、戦闘に於ける強さや戦術眼のような『戦闘美』とは相容れぬ存在であった。
しかし彼は神剣、すなわち『極限まで研ぎ澄まされた殺戮の武具』の機能美に魅せられ、憧れてしまったことで、自らの覇道を歪ませてしまう。


渇望が歪んだまま、当代の善悪闘争が決着したことで生ずる宇宙規模の転墜現象により、クワルナフは「美しくあれ」という原初に望まれた在り方を忘却し、唯一残った『神剣への憧れ』から武具を製造する破滅の工房へと転がり落ちてしまった。


ゔぃしゅゔぁかるまん


ひらにやがるば・ぷらじゃーぱてぃ・とゔぁしゅとりがるばはてぃ
ぶふらすてぃや・ゔぃしゅゔぁかるまん

クワルナフの星霊としての権能。
喰らったものを体内で合成し、まったく新しいものとして作り替える機能であり、戒律とも関係する能力。
クワルナフの作品(こども)はこの宇宙の一般的な文明レベルを遥かに上回るオーバーテクノロジーの塊であり、クワルナフと同じ不義者だけでなく義者でさえも求める代物。

例として、主人公兼ヒロインのクインも彼の作品のひとつ。人間と同じ構造を持ちながら他者と意識を同調させ、宇宙に放り出されてもなお活動可能な自動人形である。
また、マシュヤーナの虎の子である原初環(マシュヤグ)が、複合要因とはいえ第一神座の法則を部分的に超越する『時間軸の歪曲』という効能を発揮したことが、この権能が神域に達していることを証明している。


戦闘においては、目だけで並の恒星に匹敵する巨体による単純な捕食行為だけでなく、この権能で分身に口径だけでも星を飲み込む巨大な砲身を形成させ、そこから多種多様な属性の、一撃で星系を破壊する砲撃の雨霰を放つことが可能


ただしクワルナフ本人はこの能力の根底にある真実を忘却してしまっているため、十全に発揮できない状態にある。


戒律:天翔ける破滅の戦輪(プシュパカ・ラタ)

◎武器になる物を生み続けねばならない。
→凶悪かつ強大な破滅の権化になっていく。

クワルナフの『破滅工房』という呼称の根源ともいえる戒律。

武器を作れば作るほど、その存在は強化され更に強大な武具の作成を可能となる。彼の極超巨星に至る成長のその根源たる力。

彼がこの戒律を定めたのは、旧世代が終結し当時の記憶を喪う中で、朧げに残った『剣への憧れ』を縁にしたため。
しかし、希望の光輪に“みんな”が望んだのは武器などでは決してなく、ゆえに己の真実を見失った魔王は宇宙を回遊する破滅の戦輪として本来の姿からひたすらに遠ざかっていく。

仮に真実を思い出しても、己の本質と乖離したこの戒律がある限りそこへの回帰は破戒となり、クワルナフが本来有するはずだった権能を十全に揮うことは事実上不可能。すなわち『詰み』である。

そして忘れてはならないのは、この戒律の効果を設定したのは他ならぬ綾模様おばさん真我である。
やっぱりミトラって糞だわ



+ 『あなた方は■■■。だから私は■■■在ろう』

満たし万象を救い給え、我が不変なる美よ(ローカパーラ・ヴィシュヴァカルマン・ヴァーストゥ)


クワルナフが本来であれば有していた覇道。その強度は後世における流出・太極と同等の域にある新たな世界法則。
渇望はおそらく『世界を、“みんな”を、美しくすることで救いたい』
流出すると清浄な空気の中で那由多の果てまで黄金律によって創造された建造物が立ち並ぶ、害意とは無縁の美しき街並みが現出する。

『美しい』という概念は善悪を超越したものであり、クワルナフの美に触れたものは心洗われ、苦しみや悲しみ、争う心や悲しむ心を癒され救済される
さらに美しいものに触れた者は己も美しくより高次の存在へと引き上げられるという類感魔術の属性により、他者を染め上げる覇道としての性質は極めて強い。

この法則下に置かれた者は前述の通り美しく『不変なるもの』となり、他者からの攻撃により一切傷付かなくなるという恩恵があり、軍勢変生に近い性質を持つ。
そして彼らは芸術に関する才能を開花させ、自然物は美しい情景を描きそれを見た知的生命は文化的な美を芸術という形で表現し、『美しさ』が相乗的に拡散することによって澄んだ心の持ち主たちは理想郷を描き出す。


しかし、本来であれば文化美を司るクワルナフが『神剣』という『武器』に憧れを抱いたことで、渇望に歪みが生じ己の在り方を定義する言葉をクワルナフは忘却。
結果、『天翔ける破滅の戦輪』などという本質と真逆の戒律を定めたため、真実を取り戻したとしても真我による天罰に抗するために力を割かねばならず、この法則による天地開闢は永遠に完成することができなくなってしまった。


絶滅星団サウルヴァ

クワルナフの所在地。……というより、クワルナフを含む分身たちの総称

クワルナフと同じ性質を持つ50以上の星からなる群体。本体に比べると恒星サイズと小さ目だが、あくまで『本体に比べると』であり通常の生物にとっては巨大にすぎることに変わりはない。
そしてこれらすべてを破壊しなければクワルナフの討伐は叶わない。

絶滅星団は特定の宙域に留まらず、宇宙を移動する回遊魚のような生態をしている。

本編の20年前には聖王領と正面衝突し、魔王3体の討伐を成し遂げた英雄ワルフラーンを撃破し聖王領を壊滅に追い込んだ。

前述の通り、本体であるクワルナフの魂体を破壊したところで機能停止することはなく、むしろ知性を喪った状態で暴走するため、『破滅工房』を倒すためにはこの星団を破壊し尽くす必要がある。

ちなみに、カイホスルーの見立てでは普段のクワルナフとバフラヴァーンの戦力は7:3でクワルナフ優位だが、魂体を破壊され知性を失った場合でようやく五分五分。
これだけでも第一位魔王がどれほど規格外であるかが窺える。


余談

名前の由来である『クワルナフ』は『光輪』を意味し、本来であれば聖霊アフラ・マズダが持つ世界の支配権を示す『輝ける光輪(アクワルタ・クワルナフ)』などのシンボルとして扱われる。
仏像が背負う後光などもこのクワルナフに由来するとされる。


戒律名の由来であるプシュパカ・ラタはインド神話における魔王ラーヴァナが有する空飛ぶ戦車。


覇道太極の由来はローカパーラがインド神話における四方(八方とも)から世界を守護する神々の総称、ヴィシュヴァカルマンはその中でも『アタルヴァ・ヴェーダ』において北方の守護神にあてられる『全知であるもの』を意味する創造神、ヴァーストゥが『建築物』『環境』の意味。
意訳すると『全知なる守護神(ローカパーラ・ヴィシュヴァカルマン)が創造する世界(ヴァーストゥ)』といった具合になる。


第二神座の舞台である都市ソドムは地球ではなく絶滅星団の残骸上に存在したことが正田卿から言及されている。
隔離街のM(マーダー)区画から発掘されるオーパーツは、クワルナフの作品の残骸と推測される。


魂体が明らかになった結果付いた渾名は『徘徊ボケ老人』。いくらなんでもあんまりである。
クワルナフ「クインや、夕飯はまだかのう?」
クイン「お父様、さっき銀河食べたでしょう」

また、作品を擁護する態度からナダレにも『親馬鹿』と呼ばれている。
正田作品ではコズミック変質者鬼畜外道など、こと主人公に関してはロクデナシの父親が多い傾向にあるが、殺しあう関係とはいえ娘のクインに対して期待をかけその自主性を認めているあたりはまともな方と言える。
『まともな父親』の定義が乱れる。
大天使ハゲエルが唯一の救い。


旧lightで隣のラインのライターだった高濱亮による通称は『暗黒ド○えもん』




















さて、銀河(どらやき)でも喰うか

                _______
              /-、 -、    \
             /  |  ・|・  | 、    \
            / / `-●-′ \    ヽ
            |. ── |  ──    |   |
            | ── |  ──     |   l
            ヽ (__|____  / /
             \           / /
               l━━(t)━━━━┥____
              / /       ヽ  ヽ  . /\
            /| |         |   |_/ . /
          /| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\/|
            |    絶滅星団     | /
            |_______________|/






追記・修正は星を食べながらお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 正田崇
  • 七大魔王
  • 魔王
  • 破滅工房
  • クワルナフ
  • 暗黒ド○えもん
  • 父親
  • 絶滅星団
  • 徘徊ボケ老人
  • 神座万象シリーズ
  • イケメン
  • ゔぃしゅゔぁかるまん
  • 満たし万象を救い給え、我が不変なる美よ
  • 無慙の萌え豚
  • 開闢
  • 黒白のアヴェスター
  • 天翔ける破滅の戦輪
  • 絶滅星団サウルヴァ
  • 忌まわしき光輪
  • 星霊
  • 極超巨星
  • 不義者
  • 覇道
  • 覇道神
  • プシュパカ・ラタ
  • 惑星
  • ドルグワント
  • 戒律
  • 理知的
  • ローカパーラ・ヴィシュヴァカルマン・ヴァーストゥ
  • 第一神座
  • 美神
  • 太極
  • 流出
  • 流出位階
最終更新:2023年10月30日 03:21