ダイアリー・オブ・ザ・デッド

登録日:2020/06/29 (月曜日) 01:45:00
更新日:2023/02/26 Sun 14:32:46
所要時間:約 3 分で読めます




これは実際に起きた事件を記録したドキュメンタリー映画である。

ジェイソン・クリード監督、デブラ・モイナハン編集

『死の終焉』


















‥‥‥‥という設定の、フェイクドキュメンタリー映画

監督・脚本はジョージ・A・ロメロ
『ジョージ・A・ロメロのデッドシリーズ』の第五作。
2007年公開のアメリカ・カナダ合作映画。

概要

シリーズ初のPOV方式の映画であり、世界の終焉を描いていた前作と違い、本作では第一作目『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』と同じく「世界の終わりの始まり」を描いている。
そのため作中の時系列は『ナイト~』とほぼ同じだが、ロメロ映画ほぼ全てに共通する要素である「作中の年代と関係なくリアルタイムの科学技術や社会情勢を反映させる」という特徴により、ネットや電子機器が発達しており旧式ラジオやモノクロブラウン管テレビが登場した『ナイト~』とはかけはなれた世界観となっている。
しかし一方で『ナイト~』作中で放送していたラジオニュースがそのまま本作に登場するなど、『ナイト~』の別視点の物語であることも作中ではっきりと示されており、時代設定自体は1968年である。

正直POV映画としてはリアリティーに欠けるマンガ的な演出が多かったりヒロイン・デブラ役の演技がイマイチだったり、フェイクドキュメンタリーという性質上、社会風刺が露骨でシリーズ中最も説教臭い内容だったりと好みが別れる作風ではあるが、それでも魅力的なキャラクター達や愛に溢れたゾンビの描き方はロメロ節を感じさせる。『ロッテントマト』でも61%の支持を得て「フレッシュ」判定を受けている。
総合的には同年代に公開された実写版『バイオハザードシリーズ』よりも遥かに優れたゾンビ映画と言えるだろう。


ストーリー

森で卒業制作のホラー映画を撮影していたピッツバーグ大学の映画学科の学生ジェイソン・クリードらのもとに、死者が動き出し人を襲うというニュースが飛び込んできた。

死者は皆人喰いの化け物になる

新たな世界のルールに翻弄されながらも、ジェイソンらは生き延びるために必死で抗うが‥‥‥‥‥。


彼は撮り続けた。

死人が動きだし生者を喰らっても、仲間が死に生ける死者達の仲間入りしても、恋人が悲嘆にくれても、仲間が死にかけても自分の最期の時まで

彼は撮り続けた。



登場キャラクター

ピッツバーグ大学関係者

◆ジェイソン・クリード

演者:ジョッシュ・クローズ
本作の主人公。白人男性。映画学科のドキュメンタリー映画監督志望。デブラの彼氏。
「ゾンビアポカリプス」をカメラで記録し続ける。
最初こそ「有名人になるため」という野心が見え隠れしていたが、次第にそれは「真実を記録しなければ」という使命感となり、最終的には狂気と化す。
映画終盤にゾンビ化したリドリーに噛まれ、デブラにカメラを託して介錯として射殺された。

◆デブラ・モイナハン

演者:ミシェル・モーガン 
本作のヒロイン。白人女性。メイク担当志望。ジェイソンの彼女。ペンシルベニア州スクラントン出身。『死の終焉』の編集を担当しネットにアップロードした。
普通の大学生で冷静だったり取り乱したりと忙しい。
最後まで生き延びることが冒頭でわかる。

◆トニー・ラヴェロ

演者:ショーン・ロバーツ 
白人男性。監督志望だが、自主制作映画ではメイクを担当。
ニューヨーク州クイーン出身。
冷静だがゾンビの存在を頑なに認めない。この手のキャラはホラー映画では存在自体が死亡フラグだが、これはロメロのゾンビ映画である
中盤で胸を貫かれても平然としているゾンビを目の当たりにして現実を直視し、平静を保ち気配りができるイケメンと化す。
最後まで生き延びる。
演者は前作『ランド・オブ・ザ・デッド』で傭兵マイクを演じた。

◆エリオット・ストーン

演者:ジョー・ディニコル
白人男性。音響担当。ペンシルベニア州ハリスバーグ出身。中盤では二人目のカメラマンを担当。見た目も言動もオタクっぽい。この手のキャラは2000年代以降のゾンビ映画では存在自体が生存フラグだが、これはロメロの(以下略)
終盤に入浴直後にゾンビ化したリドリーに襲われ死亡。
後にゾンビ化。
まあ、オタク野郎よりイケメンが生き延びた方が後世のためになるよね。

◆トレイシー・サーマン

演者:エイミー・ラロンド
グラマラスなブロンド白人美女。テキサス出身。自主制作映画ではミイラ男に襲われる美女役。ゴードの彼女であるリア充。
普通のホラー映画なら存在自体が死亡フラグだが、これはロメロ(ry
ポロリはしないし脱がないし濡れ場も無い(ロメロ曰く「今そんなことしてる場合じゃないじゃん?」)。映画の進行と共に心身共にたくましくなっていき、最終的にはゾンビ化したリドリーに襲われた際、狂気に憑かれ自分を助けず撮影を続けるジェイソンにぶちギレ、キャンピングカーを強奪して去っていった
結果としてウィルモット邸に残されたデブラ達の脱出手段を絶ったのだが、特に制裁を受けた描写もない。
過去作の主人公達のように新天地を目指したのかも‥‥‥‥。

◆ゴード・ソーセン

演者:クリス・バイオレット
白人男性。ペンシルベニア州ダンビル出身。トレイシーの彼氏。
病院では拳銃を手に大活躍するが、点滴に繋がったゾンビに背後から噛まれ感染症に罹患し、翌日に衰弱死した。
ゾンビ化直後、トレイシーに射殺され仲間達に埋葬された。

◆メアリー・デクスター

演者:タチアナ・マンスラニー
白人女性。信心深い。
キャンピングカーを運転するが、ゾンビを轢き殺した罪悪感に耐えきれず拳銃で自殺を試みるが失敗し致命傷を受けながらも死ねなかった。
病院で失血死、ゾンビ化しアンドリューに射殺された。

◆リドリー・ウィルモット

演者:フィリップ・リッチオ
白人男性。自主制作映画のミイラ男役。ホラー映画では定番の金持ちのボンボンだが、特に嫌なやつではない。ペンシルベニア州フィラデルフィア出身。
映画冒頭の
ジェイソン:「死人が走るな!足が折れるだろ!」
リドリー:「でもそれじゃトレイシーに追い付けない」
というやり取りは『ナイト~』でのロメロとビル・ハインツマンのやり取りが元ネタと思われる*1
映画序盤でフランシーンと共にフィラデルフィアの豪邸に帰り、束の間の安息の時を過ごしビデオ通話でジェイソン達を自宅に招待するが、ゾンビ化した使用人や両親、噛まれたフランシーンに襲われ、戦った末に噛まれてしまい自暴自棄になる。
丁度そのタイミングでジェイソン達がやってきたため、自分が噛まれたことを隠して歓迎するが、既に感染症に罹患して衰弱し意識が朦朧としており、『ゾンビ』における死ぬ間際のロジャーを彷彿させる支離滅裂な言動を見せた末、中庭で死亡・ゾンビ化してウィルモット邸内を徘徊し始める。
その後は入浴直後のエリオットに襲い掛かり、取っ組み合いの末に浴槽で溺死させ、更にトレイシーに襲い掛かり、皮肉にも映画序盤の自主制作映画のように追いかけるが殴り倒される。
最後はシェルターに籠るのを拒んだジェイソンと遭遇し、押し倒して噛みつくが、背後からアンドリューに剣で頭を裂かれ倒された。

◆フランシーン・シェーン

演者:メーガン・パーク
白人女性。
リドリーと共にウィルモット邸に行くがゾンビに顔を噛まれてしまい、リドリーに始末された。

◆アンドリュー・マクスウェル

演者:スコット・ヴェントワース
白人男性。映画学科の名誉教授。ベトナム帰還兵。
自称・居場所の無い人間。アル中。
影のある人間で常に悲観的だが、アーチェリーの達人で作中もっとも頼りになる。
最後まで生き延びる。 

ジェイソン達が遭遇した人物


◆ストレンジャー(異邦者)

演者:マーティン・ローチ
アフリカ系アメリカ人男性。元ペンシルベニア州軍人。
アフリカ系アメリカ人達を集めて倉庫を要塞化し物資をかき集めた生存者達のリーダー。
ベン、ピーター、ジョン、ビッグ・ダディに次ぐ「強い黒人」。
ジェイソン達を倉庫に招き一時保護する。
主役以外がこの役割なのはシリーズ初。

◆ホワイトマン(白人男)

演者:ボイド・バンクス
ストレンジャーの仲間で唯一の白人男性。
演者は前作でも黒人(ビッグ・ダディ)の部下(ブッチャー)を演じていた。

◆カーネル(大佐)

演者:アラン・ヴァン・スプリング
白人男性。ペンシルベニア州軍大佐。
ヒャッハーな略奪者のリーダーと化した本作のヴィラン。ジェイソン達を脅しストレンジャーから貰った物資を殆ど奪った‥‥‥が、特に制裁を受けず物語から退場した。
前作『ランド・オブ・ザ・デッド』に登場したピッツバーグ前哨基地司令官ブルーベイカーと同一人物だが、大人の事情で本作での役名は「カーネル(大佐)」。
次回作『サバイバル・オブ・ザ・デッド』では主人公になるが、また役名が変更され「サージ(軍曹)」になる。でも同一人物である。

◆サミュエル

演者:R・D・レッド
聴力に障がいがある農夫。 
ダイナマイトでゾンビをぶっ飛ばすやベーやつ。
末路も含めて現実離れしたマンガ的なキャラクター。

◆タトゥード・バイカー

演者:ジョージ・ブザ
ピッツバーグ大学の女子寮で火事場泥棒していた白人デブ。


その他の人物

◆ブロディ

演者:トッド・ウィリアム・ショーダー
最初のゾンビを撮影したニュース番組チャンネル10のカメラマン。
無編集・無修正でYouTubeに動画をアップロードした。

◆ブリー

演者:ローラ・デ・カータート
チャンネル10のリポーター。
ゾンビに頸動脈を噛まれ死亡。

◆ポリス・オフィサー(警官)

演者:ダニエル・カッシュ
ブリーを殺したゾンビを射殺した警官。

◆ニュースキャスター

演者:ティノ・モント
ニュース番組の司会者。
ゾンビ現象の原因がウィルスによる精神病であるというガセ情報を流す。

◆バースデイ・パーティー・ファーザー(オレンジの服の男性)

演者:スコット・ギブソン 
娘のバースデイパーティーに呼んだピエロに噛まれ、後にゾンビ化し病院でゴードに射殺された。

◆バースデイ・ガール

演者:ジェイミー・ブローチ
誕生日にゾンビアポカリプスに巻き込まれた可哀想な女の子。

◆エルダーリーマン&エルダーリーウーマン(老夫婦)

演者:ロン・ペイン&シェリー・クック
『ゾンビ』のマルチネス一味のように身内の遺体を政府の命令に背き引き渡さなかった老夫婦。
ゾンビ化した息子が州警察の隊員に噛みついた報復として心臓を撃ち抜かれ、後にゾンビ化したと思われる。
演者のロンは前作で浮浪者を演じていた。

◆トルーパー(州警察官)

演者:ジェームズ・ビンクレー
防護服を着て市民の救助活動をしていた州警察の白人ハゲ。
老夫婦が匿っていたゾンビに噛まれ、激昂。報復としてゾンビ化させるためあえて頭ではなく胸を撃ち抜いて本来は救助すべき老夫婦を射殺し、自害した。

◆キャッツ

演者:ジョージ・A・ロメロ
「ゾンビの正体は移民です」というとんでもないガセ情報を発表するホームステッド警察署長。
我らの監督。毎回出てくるなぁ。

◆セル・フォン・ウーマン(携帯電話の女)

演者:ジャネット・ロー
東京の惨状をネットにアップロードしたアジア系アメリカ人女性。
ロメロのシリーズ作品でアメリカ国外の様子が描かれるのは非常に珍しい。

ゾンビ

お馴染み謎パワーで蘇ったヒトの屍達。
ゾンビアポカリプス直後であるため、身体は新鮮。
知能は下等動物並で常にヒトの肉を欲して徘徊するが、生前の記憶も僅かに残っている。ゾンビという種族であるためゾンビと人間を見分け共食いしない
ウィルス系や放射線系のゾンビ映画と違い、『ロメロのデッドシリーズ』では自然の法則そのものが変容しているため、脳が損傷していない遺体は全てゾンビ化するし、ゾンビに噛まれると感染症を罹患し衰弱死を経てやっぱりゾンビ化する。

◆ファーストゾンビ

演者:アレクサンドリア・デファビ
作中最初に登場する女ゾンビ。
ブリーに噛みつき殺害した直後、警官に撃ち殺された。
本作の看板キャラクター。

◆ゾンビトルーパー

演者:マット・バーマン 
ペンシルベニア州警察隊員の成れの果て。交通事故により全身に致命的な火傷を負って死亡・ゾンビ化した模様。
ジェイソン達を大いにビビらせた。
演者は前作でカウフマンのボディーガード役とスタントマンを兼任していた。本作でもスタントマンを兼任。

◆ゾンビサージン

演者:グレッグ・ニコテロ
外科医の成れの果て。ゴードに射殺された。
演者は『死霊のえじき』、『ランド~』でそれぞれジョンソン二等兵、ブリッジキーパーゾンビを演じ、特殊メイクを兼任。本作でも特殊メイクを担当している。因みに皮肉にも元々医者を目指していた。

◆ゾンビナース

演者:ドナ・グロース
看護婦の成れの果て。デブラにAEDで感電させられ目玉が破裂し、更にゴードに射殺された。
演者は本作の脚本監修。

◆I.V.ゾンビ

演者:ニック・アラチョティス
点滴に繋がった白人ハゲゾンビ。患者の成れの果て。
ゴードを地獄に送り、エリオットに点滴で頭を貫かれた。
演者は前作でアリーナファイトゾンビを演じた。

◆バップキス・ザ・クラウン

演者:カイル・グレンクロス
『死霊のえじき』以来毎回登場するピエロゾンビ。名前はパップキス。ピエロの扮装をしたままゾンビ化していた。

◆ビリー・モイナハン

演者:ジャク・バーマン 
デブラの弟。ゾンビ化した母に殺されゾンビ化した模様。
『ゾンビ』のゾンビガール&ボーイと同じく動きが機敏。
デブラに抱きつくがアンドリューにアーチェリーで射抜かれた。

◆デッド・ミセス・モイナハン

演者:トリッシュ・アダムス
デブラの母。ビリーと共にウェストバージニア州から帰る途中でゾンビに噛まれた様で、帰宅後にゾンビ化。
デブラに発見された際は夫の遺体を喰らっていた。


余談

  • 特典DVDには本編からカットされたメインキャラ達の独白が収録されている。
  • ロメロの盟友トム・サビーニやサイモン・ペッグ、ギレルモ・デル・トロ、スティーブン・キング等の有名人が声のみカメオ出演している。探してみよう。

ジョージ・A・ロメロのデッドシリーズ関連項目






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最終更新:2023年02月26日 14:32

*1 『ナイト~』のセメタリーゾンビがやたら機敏なのは、作劇上バーバラを民家へ追い詰める必要があるため