イメルダ(ウルトラ兄弟物語)

登録日:2020/12/09 Wed 08:19:22
更新日:2022/05/07 Sat 11:31:01
所要時間:約 7 分で読めます




イメルダは、かたおか徹治の漫画作品『ウルトラ兄弟物語』の登場人物。


概要

初出は別冊コロコロコミック1982年7号(小学館)に掲載された「宇宙戦士( スペースコマンド )アンドロマルスの戦い」のエピソード。
表題の通り、当時展開していた『アンドロメロス』の設定に準拠した漫画となっている。

宇宙の独裁者「ソドム」率いる勢力・ソドム帝国の構成員を務める凛とした表情の女性で、イメルダ隊と呼称される部隊の隊長格。
年齢は不明だが恐らく人間でいうところの10代後半と思われる。まあウルトラ世界なら1万年くらい生きててもおかしくないけど。
外見は地球人同様のヒューマノイド型だが、ウルトラ族やアンドロ超戦士と並ぶ巨体。
ビキニアーマー風の露出度高目な甲冑に身を包んでおり、イメージ的には『ワルキューレの冒険』と『アテナ』の中間くらい、と言えば適切だろうか。
武器は剣で、後述する兄が生前使っていた物をそのまま得物としている。

かつて兄がアンドロマルスとの一騎打ちで命を落とした光景を目の当たりにしており、マルスを兄の仇として狙っている。
ソドム帝国に参加していたのも、いずれアンドロ警察隊員であるアンドロマルスが帝国を打倒しに現れる事を予期しての事であり、組織に対する忠誠心は無い。
最終的にマルスの出現と同時に、彼を自らの手で殺すために組織を離反、一時共闘して帝国を打倒した後、マルスとの一騎打ちに臨むが……


『宇宙戦士アンドロマルスの戦い』ストーリー解説

物語冒頭、一人の戦士がアンドロマルスと刃を交える場面から物語は始まる。

剣と剣の交錯の末、マルスの手により戦士は斬られ、落命。
その場を立ち去ろうとするマルスであったが、戦士が落とした剣を一人の幼い少女が拾い、涙を流して慟哭する。

少女「人殺しっ!! よ、よくも兄をっ!!」

一瞬少女を振り返るも、すぐさまその場から去り行くマルス。その姿を、少女は涙ながらに無言で睨み付けていた……


この物語は宇宙の愛と平和のために戦った……、ある戦士の戦いの記録である――。

マルスが戦士と戦ってから数年後、宇宙の独裁者「ソドム」率いるソドム帝国が突如として台頭。
宇宙を荒らしまわり、惑星という惑星を手あたり次第に征服するそのやり方は、冷酷無比で全宇宙から恐れられていた。
そして、そのソドム帝国の軍勢の中に、成長したかつての少女……イメルダの姿もあった。

アンドロマルスは、アンドロ警察隊員としてアンドロメロスに密命を受け、「宇宙の悪」に関する情報を探るシークレット・エージェントとして活動していた。
ソドム帝国の旗艦である宇宙船に潜入したマルスは、ソドム帝国の支配者・ソドムが部下たちを前に、決起集会染みたシュプレヒコールを行っている光景を目の当たりにする。

ソドム「今こそ我がソドム帝国がウルトラどもを倒す時が来た!!」
ソドム「我々の手により工作したプラズマ装置の故障で、やつらはその修復作業で精一杯だ!!チャンスは今だ!!」

ウルトラの国がピンチに陥っていることを察したマルスは、ウルトラの国へ密かにアンドロサインを送る。
だが、ソドム帝国の構成員にイメルダ……かつての少女の姿を見つけてしまった事で動揺、その隙をつかれてレーザーセンサーに引っかかり、見つかってしまう。
すぐさまソドム帝国の戦闘員たちに取り囲まれるマルス。その姿を見て、イメルダもまた動揺を隠せずにいた。

イメルダはソドムに自身がマルスを討つことを宣言するも、ソドムは自分がマルスを殺すとそれを却下。
ウルトラ侵略前の景気付けと称し、自らの必殺光線「ソドムボンバー」をマルスに放つ。
間一髪攻撃を避けたマルスは、額のアンドロスポットからアンドロビームを放って攻撃するも、その程度の攻撃はソドムには通用しない。
ソドムは追撃として、手元のウィップから巨大な龍を召喚し、マルスを雁字搦めにした上で雷撃を加えて大ダメージを与えた。
窮地に陥ったマルスを、戦闘員たちが意気揚々と八つ裂きにしようとする。万事休す……

と、次の瞬間、イメルダが突如戦闘員たちを自らの剣で一刀両断し、マルスを拘束から解放する。
突然の事に怒りに震えるソドムに対し、イメルダは言い放った。

イメルダ「この男は他の者には殺させはしない!!わたしのこの剣で地獄に墜とす!!」
ソドム「ぬおおっ!!裏切りおったかっ!!」
イメルダ「ふん!!仲間に入ったのもいずれ、この男とめぐり会えるとふんだから!!もとより忠誠心などもたぬっ!!」

裏切り者を粛正しようとするソドムの光線を、イメルダは剣で受け止める。
ソドムの号令と共に戦闘員たちが一斉に2人に襲い掛かり、マルスとイメルダは己の獲物で切り結ぶ。

と、轟音と共に宇宙船の壁が破られ、ゾフィー隊長率いるウルトラ兄弟以下、宇宙警備隊が駆け付ける。マルスのアンドロサインが届いたのだ。
激戦の末、帝国の構成員はソドムを残して全滅するも、ウルトラ6兄弟も戦闘不能に陥ってしまっていた。
マルスもまた満身創痍であり、ソドムの放つ光線の連撃を必死で避けつつも、じりじりと押され始めていた。

マルス「正義が悪に負けるのか!?イヤッ!!負けるわけにはいかんのだ!!」

が、一か八か放った、額のアンドロスポット並びに両手からの同時光線技「複合光線トリプルマルスビーム」がソドムに直撃。
さしものソドムもこれには敵わず、遂に斃れる。

遂にソドム帝国は滅んだ……が、マルスはイメルダに、何故彼女が仇である自分を助けたのかと問う。
イメルダは無言で手袋をマルスに投げつけると、今こそ兄の仇を討つと宣戦布告する。

イメルダ「この手でお前を殺すためっ!!兄の( かたき )!!今こそとってやるっ!!」

先ほどの戦いで既に満身創痍かつ全身がボロボロのマルスであったが、それは目の前のイメルダも同じ。
イメルダとマルスの剣が交錯し、さしものイメルダも相手の実力の高さに感嘆せざるを得なかった。

と、突如マルスが「イメルダ、あぶないっ!!」と叫び、剣を彼女の背後に向けて投擲する。
戦士にあるまじき振る舞いにイメルダは激昂するも、剣が過ぎ去った後に背後から聞こえてきたのはウィップを構えてイメルダを狙っていたソドムの断末魔
マルスの必殺光線を受けてもなお生きていたソドムも、顔面に剣を深々と突き刺されて遂に絶命するしかなかった。
憎んでいたマルスが、戦いの中でもなお敵である自分の事を気遣っていた事実に、既に満身創痍だったイメルダは力を落とし、倒れる。

イメルダ「マ、マルス………。あなたって人は……」

力なく横たわるイメルダに、マルスは彼女の兄と戦った時の事を語る。

マルス「君の兄さんと戦ったのは………、男と男の真剣勝負………」
マルス「男であれば………、戦いたくなくとも戦わねばならない事がある……」

マルスと戦った兄が誇りを胸に散っていった事を知ったからか、イメルダは微かに微笑みを浮かべると、そのまま意識を失う。
その場に居合わせたウルトラマンタロウは、光の国のウルトラクリニックに搬送すれば彼女は助かるとマルスに告げるのだった―――


戦う愛の戦士……、アンドロマルス………。かれの戦いは今、まさに始まったばかりである!!


関連キャラ

イメルダの兄で、妹同様のヒューマノイド型宇宙人。やはり露出度の激しい鎧(『聖闘士星矢』の雑兵風)を着ている。
動機は不明だが、アンドロマルスと一騎打ちの末に敗れ、命を散らした。
イメルダが作中で使用している剣は彼の遺品である。

  • アンドロマルス
アンドロ超戦士の一人であり、前述の通りイメルダにとっては兄の仇であるが、同時に兄を亡くした彼女の事も気遣っていた模様。
ちなみに『ウルトラ兄弟物語』では珍しい事ではないが、本作でマルスが使っている長剣は映像作品・グラビア記事ともに存在しない漫画オリジナルの武器である。

  • ソドム
宇宙の独裁者を名乗る黒づくめの侵略者で、ソドム帝国を称して全宇宙の支配を目論んでいた。某ダー●・ヴェイダーを簡略化したかのようなバイザー顔の外観。
極悪非道な悪役ではあるが、戦闘員からはそれなりに敬意を払われていた描写もあり、マルスとの決着を優先したイメルダに裏切られて組織が崩壊したりと割と不憫。

  • アベル
イメルダと同じソドム帝国の構成員で、こちらは褐色肌の男性の姿をしたヒューマノイド。アベル隊を率いる。
ウルトラ兄弟が駆け付けた際に戦闘員たちと共に彼らと戦う場面があるが、倒された場面もなくそのままフェードアウト。


余談

かたおか徹治氏がインタビューで語ったところによると、イメルダのデザインは当時の読者のお姉さんがファンレターに同封して送ったオリジナルキャラクターの案をそのまま採用したものとの事。

著者が『ウルトラ兄弟物語』として通して執筆した作品群は、イメルダの登場した「宇宙戦士アンドロマルスの戦い」が事実上最終作となった。


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最終更新:2022年05月07日 11:31