一億年ボタンを連打した俺は、気付いたら最強になっていた~落第剣士の学院無双~

登録日:2021/03/14 Sun 21:16:23
更新日:2024/10/06 Sun 07:05:58
所要時間:約 13 分で読めます





その剣――

一億年の重み。


  • 書籍版
レーベル:富士見ファンタジア文庫
著者:月島秀一
イラスト:もきゅ
  • コミカライズ版
レーベル:角川コミックス・エース
原作・原案:月島秀一(原作)、もきゅ(キャラクター原案)
作画:士土幽太郎

月島秀一によって小説家になろうに連載されている小説作品。

◇解説

小説家になろう」に連載されているファンタジー小説の書籍化作品。
令和元年における年間ランキング一位を獲得。

落ちこぼれの主人公が『一億年ボタン』の特性を生かした努力し、それによって最強の力を手にするというもの。
剣戟バトルものと学園ものの要素が絡んだ、男性向け・少年漫画の傾向が強い王道作品。
世界観はファンタジーものであるが、インフラに関しては現代レベルの技術がみられる

書籍化版はweb小説版に大量の加筆を入れ、新規書下ろしを挟んだものとなっている。
2021年2月現在では20万部数を発行。

士土幽太郎によってヤングエースUPでコミカライズ化された他、ドラマCDも決定された。



◇あらすじ

自分を育ててくれた母の為に立派な剣士になろうと努力する少年、アレン=ロードル。
しかしアレンは才能がないせいで剣術学院から『落第剣士』と蔑まれる日々を過ごし、
ある日、ドドリエルが母を侮辱したことで『発言の撤回』と『剣術学院退学』を懸けた決闘をする事に。
だがドドリエルは類稀なる才能を持つ学院屈指の天才剣士。どう戦っても勝てない事を想像して挫けてしまうアレン。

そんな時、時の仙人と名乗る老人から持ちかけた魔法アイテム『一億年ボタン』を押して異界へと飛ばされていく。
強くなるために何度も『一億年ボタン』を押し、十数億年という長い時の中で修行を重ねたアレンは『極限の剣技』を手にした。
そうしてアレンはドドリエルを撃破するだけでなく、剣武祭でも優勝を勝ち取った事で、かの剣術の名門『千刃学院』から推薦入学の話が持ち込んでいく。
こうして『落第剣士』と呼ばれたアレンがあらゆる敵と戦い抜き、やがて世界へその名を轟かせていく事となる。



◇用語

◆一億年ボタン
アレンが出会った老人が手にした、世にも珍しき魔法アイテム。
その名の通り押した者は「異界」に移動し、そこで一億年の時過ごすというもの。

空中には一億年を示すまでの時計があり、一秒刻むごとにカウントされる。
ちなみにその時計の一年は地球における太陽暦と同じ仕組みとなっている。
「異界」であるためか、世界の法則が現実世界のものとかなり異なっており、
  • 太陽が存在しないが暖かな光に包まれている為、光が差さない所も明るい反面「影」がない。
  • 異界の広さは狭く、家を出て真っ直ぐ歩くとすぐに家の裏口に辿り着く構造になってる。
  • 一億年経っても老衰することはないが、例外的に自害したら死ぬ。
しかし一億年経たない限りはこの異界から脱出することは不可能である。

……名称や効果で何となくわかると思うが、元ネタはトラウマとして名高い作品5億年ボタン
とはいえ、あちらとは異なり
  • 「無限に食料が湧き続ける魔法の食料庫」
  • 調整しなくとも湯加減がばっちりな大浴場
  • 寝心地の抜群な大きめのベッド
それらが一通り用意されているが、一億年も孤独に生きる過酷な環境を紛らわすことは出来ず、
媒体毎に違えど、味覚障害・記憶喪失思考停止・廃人寸前の状態に陥った。

しかも現実の世界へ戻る瞬間に『異界で過ごした一億年の記憶』が丸ごと消去される仕組みとなっている。
老人は「この場にいるお主(スイッチを押した者)にとってその一億年が、ほんの一瞬で過ぎる(意訳)」と解説したが、
実際は『時の牢獄で一億年を過ごした間の記憶をリセットされる』と言うのが正しい。
アレンは異界から脱出しては記憶を消された状態でボタンを押し、地獄のような無限ループを繰り返してしまった。
……流石に過酷すぎたのか、書籍版とコミカライズ版では『異界で過ごした一億年の記憶』は消去されず、
その事もあってか、現実世界に戻されたアレンは「気が済むまで何度も」一億年ボタンを自分から押している。

  • 剣術学院
剣術を学ぶ学院。初等部・中等部・高等部・大学の四つに分かれており、
中等部は満十三歳から満十五歳まで、高等部は満十六歳から満十八歳までが通う事となっている。
学生同士の剣を用いた私闘は学則で禁止されており、これを破った者は停学・退学といった厳しい罰が下される。

  • 決闘
剣術学院で定められた制度の一つ。
互いの誇りをかけた真剣勝負であり、両者が事前に定めた条件と約束は決して違えてはならない。
これを破った者は剣士失格の烙印を押されてしまう。
その事もあってか、初等部の剣術学院で最初に学ぶ事となっている。
また、互いの条件が基本的に対等なもので臨まなければならない関係上、学院側も中立に徹している。
試合開始から一秒でも遅れた時点で不戦敗になってしまう。

  • 我流
どの流派にも属しない剣士。大抵が流派に入る実力の無いものか余程の酔狂者である。
世間の反応からして専ら『落ちこぼれ』の意味合いが込められている。

  • 魂装
天賦の才を持つ者が厳しい修業の末に会得する武器。
自らの魂を具象化した装備であり、所有者によって異なる能力が発現される。

  • 剣武祭
オービスで月に一度開催される剣士のお祭り。参加費は千ゴルド。
出店で賑わうような楽しげなものではなく、腕に自信のある剣士が一対一の真剣勝負を繰り広げる武の祭典である。
上位入賞者三名には少なくない額の賞金が進呈されており、一位は十万ゴルドの賞金がもらえる。

  • ゴザ村
アレンの生まれ故郷である小さな村。
リーンガード皇国の南部に位置しており、南部訛りが強い。
典型的な田舎風景に加えて過疎化と高齢化が激しく、総人口は百人にも満たない。

  • 大五聖祭
五学院が特に優秀な新入生三人を選定し、総当たり戦によって覇を競う新人戦。
謂わば中等部での学習成果を披露する戦いでもあり、優秀な実績を残せば上級聖騎士への道が一気に近づける。
カレンダー上では五学院の剣術学院に入学した週の最初の週末が大五聖祭となっている。

  • 黒の組織
国内を騒がせている大規模の犯罪組織。
薬物の製造・密輸、人身売買、要人の暗殺といった様々な犯罪行為に関与している。
首謀者、本拠地、その目的に至るまで謎に包まれており、聖騎士でもこの組織の撲滅に動こうとしているが効果はない。
末端に属する者は上からの指示された通りに暗殺や略奪といった仕事をこなすが、鉄砲玉であり使い捨ての存在である。



◇登場人物


◆千刃学園


◆アレン=ロードル

この物語の主人公。くっきりとした目と黒い髪をした少年*1
赤ん坊の頃に父を流行り病で亡くし、自分の為に育ててくれた母親のダリアに楽な暮らしをさせようと*2、立派な剣士になる努力をしていたが、
剣術の才能が無い事から、「落第剣士」としてグラン剣術学院に蔑まれる日々を送ってしまう。
ある日、母親であるダリアを侮辱したドドリエルに「母親への暴言を撤回させる」為に剣術学院の退学を賭けた決闘を申し込んでいくも、互いの実力差を知っている以上、彼に勝つ事ができない、そんな当然の事実に打ちひしがれてしまう。
その最中に出てきた時の仙人から齎された一億年ボタンを何度も押し、十数億年の修行に励む事となる。
努力の甲斐あって決闘においてドドリエルを下し、さらには剣武祭に出場して優勝を果たした。
それによって千刃学院への推薦入学をした彼は、新たに出会ったクラスメイトとの交流を育みながら様々な敵と戦う日々を送る。

◆リア=ヴェステリア

「黒白の王女」の二つ名を持つヴェステリア王国の王女。金色の髪をワインレッドのリボンで結ってツインテールをした髪型をしている。
入学式当日に更衣室で着替えている最中にタイミング悪く出くわしたアレンに「敗者は、勝者の奴隷になる」という取り決めで決闘を行う。

◆ローズ=バレンシア

「賞金稼ぎ」の二つ名を持つ美少女剣士。赤い瞳とピンクがかった銀色のロングヘアーが特徴。
前回での剣武祭の優勝者であり、今回における剣武祭の決勝戦においてアレンと対戦した。
アレンに敗北したが、その実力をレイアに買われたのと、アレンを追う形で千刃学園に推薦入学した。

◆レイア=ラスノート

千刃学院の理事長でA組の担任。黒いロングヘアーと大きく切れ長な瞳をしている。
元々は千刃学院の卒業生であり、理事長選挙によって新たに就任したという経緯を持つ。
より優秀な生徒を確保すべく、視察場所の一つである剣武祭で決勝まで勝ち上がったアレンとローズに目を付けて推薦入学を持ちかけた。

◆テッサ=バーモンド
千刃学院の生徒。短い髪を上げたような髪型をしている。所属する流派は斬鉄流。名前的にどこぞの大佐殿ではない。
それとは別に、新月流に所属する両目が隠れるほどの長い前髪をした男子生徒・雲影流に所属する前髪を左右に分けた髪型をした男子生徒と行動を共にしている。

◆氷王学院


◆カイン=マテリアル
氷王学園の生徒。
端整で整った顔とツーブロックとオールバックを合わせたような髪型をしており、胸には十字架を模した銀製のペンダントを身につけている。
大五聖祭では中堅として出場し、アレンとの対戦相手として激突する。
魂装でアレンを地に伏せたものの、あろう事か勝った気になって背を向けてしまい、復活したアレンにその隙を突かれて敗北してしまう。

◆黒の組織


◆ドドリエル=バートン

グラン剣術学院の生徒。よく目立つ青い髪を後ろに纏めた髪型が特徴。
目鼻立ちが整った容貌とバートン男爵家の長男坊という生まれ、何より「天才剣士」であってか、
グラン剣術学院の女生徒からも人気が有り、学院では取り巻きの女生徒を連れている。
常にアレンに嫌がらせをしているイジメの常習犯であり、アレンの母親を中傷する発言をしたことで
「発言の撤回」と「アレンの退学」をかけた決闘を申し込まれてしまう。
決闘の当日ではアレンと決闘するも、一億年ボタンによって強くなったアレンに敗れ去った。
決闘に敗れた後は行方を晦ましていたが、犯罪組織である黒の組織の末端に身を置いている。

◆グラン剣術学院


◆教師一同・教頭・校長
グラン剣術学院に勤務する教師、並びに教頭と校長。
アレンを厄介者扱いしており、入学して間もない頃のアレンが流派に入ろうとするも「才能がない」という理由で全て門前払いにした。
教頭や校長もアレンへのいじめを放置していたが、アレンが剣武祭に優勝して千刃学院から推薦入学を持ちかけられたと知るや、掌を返して擦り寄ってきた。
これは、アレンが五大学院の一つである千刃学園に入学する事自体が自分達の利益になり得る為であり、彼らは「その魂胆」でアレンに取り入ろうとしたと思われる。
そんな彼らの醜い姿に辟易していたアレンからにべもなく断られてしまった。残念でもないし当然である。

◆生徒
グラン剣術学院に属する生徒。
彼らもアレンのことを疎ましく思っており、アレンの退学を賭けた決闘ではアレンの敗北を望む者が多くいたほど。
アレンがドドリエルに勝利しても彼への評価を改めることはなく、それどころか「落第剣士」「卑怯者」「暗器使い」と陰口を叩いていく*3
剣武祭に参加した観客や剣士、千刃学院の生徒はアレンの実力を認めて評価を改めたというのに……。

◆ポーラ=ガレッドザール
グラン剣術学院の寮の寮母。
身長二メートルを超える巨躯と筋肉質の体型、丸太のような二の腕をしている。
明るく竹を割ったような人物であり、寮に帰ってこないアレンを心配して駆けつけている。

彼が剣武祭に出場する時は「うちの寮生が男を見せようってのに、金を出し渋っちゃ寮母やってらんないよっ!」と参加費である千ゴルドを出している。
無一文だったアレンを泊めてくれたり、食事を提供し、困ったときは相談に乗るなど、グラン剣術学院の中では唯一味方と言えるべき存在であった。

◆ゴザ村


◆ダリア=ロードル
アレンの母親。50歳。
夫を亡くしてからアレンを女手一つで育てており、アレンのために毎日見を粉にして働いていた。
南部特有の訛りが目立つ喋り方をしているが、時の仙人に対しては流暢な標準語で問い詰めている。
煎餅やおかきが好きで、アレンは久々に会うときにお土産としてこれを買おうとした。
この時のお財布の中身がたったの520ゴルドしかなかったが、結果的にアレンが剣武祭に出場するきっかけとなった。
アレンと再会した時は心から喜んでいたが、自分の息子が学院でいじめに遭っている事を知らなかった。
一方で時の仙人を敵視しており、彼に一撃を食らわせようとした。結局かわされて椅子を壊してしまったが。
同時に一億年ボタンの存在やそれを使われていた事を知る場面がある。

◆竹爺
幼少期に竹馬や手製のめんこなどで遊んでもらった老人。
彼もまた時の仙人を敵視しており、一億年ボタンの存在を把握している。

◆その他

◆時の仙人
アレンと出会った謎の老人。
「時の仙人」という名は自称であり、本名は不明。
しかし他の登場人物たちはもちろんの事、地の文もこの老人を「時の仙人」と呼称している。

◆バブル=ドミンゴ
剣武祭に出場した剣士。身長二メートルもある角刈りの大男。
背中に背負う大剣を武器に相手を一撃で粉砕する「金剛流」の流派に所属する。
格下と見なした相手をとことん見下し、威張り散らす人物であり、
対戦相手であるアレンが我流であることを知るや否や、彼を嘲るように笑った。
しかし、そのアレンの一撃で敗北してしまった。

◆グリス=ヴェステリア
ヴェステリア国王の父にしてリアの父親。
一人娘であるリアを溺愛しており、国中からもその溺愛ぶりが知れ渡っている。
実際どの程度のものかというと、生まれてすぐにリアの周囲から『男』を排除し、身の回りをする世話人だけでなく護衛騎士も全員女性にする程。


追記・修正は一億年ボタンを押して、尚且つ十数億年修行した者にお願いします。

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最終更新:2024年10月06日 07:05

*1 目つきは母親、髪の色は父から受け継いだもの。

*2 アレンが通っているグラン剣術学院の入学費と授業料はダリアが少ない給金を貯めて工面したもの。

*3 コミカライズ版では生徒の一人がアレンに水の入ったペットボトルを投げつける場面があった。返り討ちにあったが。