ジョジョ・ラビット

登録日:2021/03/18 (木) 23:08:44
更新日:2024/11/15 Fri 22:19:23
所要時間:約 4 分で読めます




Let everything happen to you
Beauty and terror
Just keep going
No feeling is final

––Rainer Maria Rilke


愛は最強。


「ジョジョ・ラビット(原題:Jojo Rabbit)」は、フォックス・サーチライト・ピクチャーズ*1製作のアメリカ映画。
本国アメリカでは2019年10月、日本では翌2020年の1月に公開された。また、トロント国際映画祭で一ヶ月先に先行公開されている。

【あらすじ】

第二次世界大戦下のドイツに暮らす10歳の少年、ジョジョ。
アドルフ・ヒトラーの幻覚がイマジナリー・フレンドとして現れるほどの熱心なナチ信者であるジョジョは喜び勇んでヒトラー・ユーゲントのキャンプに参加するが、
訓練の一環として殺すように命令されたウサギを逃がそうとしてしまった事から「ジョジョ・ラビット(ウサギのジョジョ)」という不名誉なアダ名を付けられた上、手榴弾の事故で顔と足をケガしてしまう。
それでも母に励まされながらナチ党の事務所で奉仕活動をしていたが、そんなある日、ジョジョは亡くなった姉の部屋で不審な物音を耳にする。
物音が気になったジョジョは、壁の中の隠し部屋にユダヤ人の少女が匿われているのを見つけてしまい––。

【概要】

第二次世界大戦下のドイツを、「ナチスに憧れる少年」を通して描く異色の戦争&ブラックコメディ&ヒューマンドラマ映画。
ポケ戦』みたいなものをイメージして頂ければ大体あってる。

監督・脚本は『マイティ・ソー/バトルロイヤル』の監督として知られるタイカ・ワイティティ。
映画自体も氏の得意とするコメディ映画の体裁を取っているが、同時に第二次大戦やナチのユダヤ迫害を題材にした反戦・反ヘイトのメッセージなども込められている。

主演は本作が映画デビューとなるイギリスの子役、ローマン・グリフィン・デイヴィス。
母親役にスカーレット・ヨハンソン、ジョジョと親交を深めるクレンツェンドルフ大尉役にサム・ロックウェルなど、MCUでよく観る実力派が脇を固める。

アカデミー賞では脚色賞、グラミー賞ではビジュアルメディア向けコンピレーション・サウンドトラック賞を受賞。先行公開されたトロント国際映画祭でも観客賞を受賞している。
また、アカデミーでは他にも5つの部門にノミネートされた他、ゴールデングローブ賞でも作品賞、主演男優賞にノミネートされている。

【登場人物】

ヨハネス・ベッツラー(ジョジョ)

演:ローマン・グリフィン・デイヴィス

物語の主人公である、戦時下のドイツに暮らす10歳の少年。
2年前に父が出征先で音信不通になって以降、母子家庭で暮らしてきた。
表向きは熱心なナチ党員として勇しく振舞っているが、実際は靴紐も結べない、ただの怖がりな子供。
いじめられっ子であり、イマジナリー・フレンドのアドルフ・ヒトラーを心の支えにしている。
また、物語冒頭のキャンプで手榴弾の事故を起こしてしまい、顔と足に大きな傷を負っている。

ある日、亡くなった姉の部屋でユダヤの少女エルサと出会い、色々とやりあった末に「彼女を匿う交換条件として『ユダヤ人の秘密』を聞き出し、ユダヤ殲滅のための本を作る」作戦を思い付く。
本の取材として交流を深めていく内、ジョジョの心境に変化が起こっていき––。

奇妙な冒険はしないし、実は王子様だったりもしない。

エルサ・コール

演:トーマシン・マッケンジー

本作のヒロイン。
ベッツラー家の壁の中に匿われていたユダヤ人の少女で、亡くなったジョジョの姉、インゲの友人。
両親は彼女を逃して収容所へ送られてしまい、結婚を約束した恋人であるネイサンとも離れ離れになっている。
教養とユーモアに溢れ、更に度胸があり機転も利く利発な少女だが、「大人の女性」に憧れる、傷つきやすいなど年相応な側面も見せる。

ジョジョにデタラメな「ユダヤ人の秘密」を教えていく内、彼を弟の様にからかい、可愛がるようになる。

アドルフ・ヒトラー

演:タイカ・ワイティティ

ジョジョにしか見えないイマジナリー・フレンド。
親しみやすいお茶目なオジサンであり、ジョジョにとっては「一番の親友」であると同時に「ヒーロー」の象徴でもある。
彼を時に励まし、時に助言を与える存在だが、ジョジョがナチに疑問を覚えていくにつれ、彼の態度も変化していき––。

演じているのはワイティティ監督本人。
氏はユダヤ人である事を公言しており、ある意味配役自体が盛大なブラックジョークである。
ちなみに戦時中の広報映像でのヒトラーも登場するが、顔は出ないようになっている。

ロージー・ベッツラー

演:スカーレット・ヨハンソン

ジョジョの母親。
「おしゃれで頭が良くユーモアのセンスもある美人な肝っ玉母ちゃん」という完璧超人じみたスペックの母親だが、実は密かにユダヤ人であるエルサを匿い、反体制活動に参加していた。
それ故ナチに憧れるジョジョに内心頭を悩ませているが、それでもジョジョを愛し、立派に育て上げようとする母親の鑑。
エルサからも大人の女性として深く尊敬されている。


クレンツェンドルフ大尉

演:サム・ロックウェル

ドイツ軍に所属する隻眼の軍人。通称「キャプテン・K」。
面倒臭がりな性格を隠しもしないダメ大人だが、作戦失敗の任を負わされてユーゲントの指導役を押し付けられた挙句、ジョジョの起こした手榴弾事故の件が監督不行届と見做され、さらに降格させられてしまった上にママにキンタマ蹴り上げられたちょっとかわいそうな人。
それでもジョジョには彼なりに親身に接しており、実際は子供好きなのかもしれない。……というか、この映画ではママに次ぐマトモな大人である。
部下のフィンケル(演:アルフィー・アレン)とはちょっとアヤシイ関係。


ヨーキー

演:アーチー・イェーツ

ジョジョの唯一の「生身の」友達である少年。
「小柄で丸々とした体型の鈍臭いメガネ少年」という役満みたいな属性のいじめられっ子であり、ジョジョが唯一強気に出られる相手。
素直な性格でちょっと頭が弱いが、それ故か何気なく真理を突く発言も多い。そして何よりもハチャメチャに良い子である。
そんな彼も、ユーゲントの一員として戦争に巻き込まれて行き––。

ミス・ラーム

演:レベル・ウィルソン

ボールみたいな体型の豊満な女性ナチ党員。
愛国心故に沢山の子供を産んだと豪語する熱心な愛国者だが、粗野な性格。
実際に同じ顔の子供が大量にいる。*2
当初はコメディリリーフ的な側面が強かったが、街が戦火に呑まれる中でとんでもない事をしでかす。

ディエルツ大尉

演:スティーブン・マーチャント

黒服に身を包んだゲシュタポのエージェント。
同じ格好をした四人のエージェントを従えており、挨拶は毎回一人ずつ行う。
挨拶は勿論、片手を上げて「ハイル・ヒトラー」。

【余談】

ヒトラーを描いた映画として真っ先に挙がるであろう作品『ヒトラー 最期の12日間』。
日本では総統閣下シリーズとして知られている一連のシーンは、海外においても有名なミームとなっており、他のナチスを題材にした映画でもパロディとして引用されている
『ジョジョ・ラビット』では、特に本編でそのミームをパロってこそいないものの、あろうことか海外の公式Twitterアカウントが同作の該当部分を丸ごと使用して『ジョジョ・ラビット』の内容を紹介する公式嘘字幕を公開している。

その内容はいつものように総統閣下が、自分(をモデルにしたイマジナリーフレンド)が出るハリウッド映画の情報を配下から聞き「ちくしょーめ!」とブチギレるというもの。いつもの総統閣下シリーズである
今回、総統閣下の逆鱗に触れたのは「自分を演じる役者(と監督と脚本)がよりにもよってユダヤ人であること」だった。
インスタでタイカ・ワイティティ監督をフォローしている者を追い出したあと、「まずタイカ・ワイティティという名前がふざけていること」、「チャップリンやメル・ブルックス」、「このミームも10年前のものでだいぶ古いこと」に怒りをぶちまけた。
ひとしきりキレて少し冷静になったあと、対抗策としていっそのこと「我々でヒトラーの映画を作るのはどうだ?」と提案。
そして、総統閣下自らが「あれこそが映画だ」と太鼓判を押すマイティ・ソー/バトルロイヤル』の監督を連れて来いと命じたところでオチとなる。





すべてを経験せよ
美も恐怖も
生き続けよ
絶望が最後ではない

––ライナー・マリア・リルケ





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最終更新:2024年11月15日 22:19

*1 現「サーチライト・ピクチャーズ」

*2 「ナチ・クローン」と呼ばれるが、本当にクローン人間なのか単にそっくりな兄弟なのかは不明。演者はデイヴィスの双子の兄弟。